エピソード
第弐拾四話「最後のシ者」
渚カヲルとシンジ、タブリスの正体、リリスを前にした選択
第弐拾四話「最後のシ者」は、惣流・アスカ・ラングレーに代わるフィフスチルドレンとして現れた渚カヲルが、孤立した碇シンジへ無条件に近い好意を伝えながら、第17使徒タブリスとしてターミナルドグマへ侵入するエピソードです。カヲルは十字架に固定された巨人がアダムではなくリリスだと知ると、人類が生き残る未来を選び、自分を殺すようシンジへ求めます。短時間で初めて「自分は好意を受ける価値がある」と教えられたシンジが、その相手を初号機の手で殺すまでを通じ、好意、裏切り、自由意志、共存できない生命の選択を一つの場面へ集中させます。
ネタバレ:TVシリーズ第弐拾四話およびビデオフォーマット版24'の全展開、渚カヲルの正体、アダムとリリス、初号機によるカヲルの死、放送版と追加版の差までを詳しく扱います。






第弐拾四話は、最も欲しかった好意を与えた相手を殺させる
シンジは、父ゲンドウから拒絶されることを恐れ、ミサトへ弱さを見せ切れず、アスカとは互いに傷つけ合い、前話で二代目レイを失いました。周囲の誰も信用できない時期に、カヲルだけが出会った直後からシンジの内面を理解し、好意を明言します。だから数日の関係でも、シンジにとって代替できない重さを持ちます。
しかしカヲルはNERVの新しいパイロットであると同時に、SEELEが送り込んだ第17使徒です。人間の姿、言葉、優しさを持ったまま、NERV最深部へ進みます。過去の使徒のように会話不能な怪物ではないため、迎撃することは敵を倒す作戦ではなく、理解し合えた相手を選択によって死なせる行為になります。
- 精神的に崩壊したアスカが保護され、代替パイロットとして渚カヲルがNERVへ来る。
- カヲルは湖畔と共同浴場でシンジへ接近し、好意を伝え、二人は短い時間で親密になる。
- 異常な同期率とレイとの類似から、ミサトはカヲルを警戒し調査する。
- カヲルは無人の2号機を操ってターミナルドグマへ進み、第17使徒タブリスだと判明する。
- 最深部の巨人がアダムではなくリリスだと知ったカヲルは、人類へ未来を譲り、初号機の手で殺される。
アスカの保護―フィフスチルドレン登場の前に、二人目の生活が終わる
ビデオフォーマット版24'の冒頭では、アスカが加持の死をシンジから知った過去と、幼い日に母キョウコの死を目撃した記憶が重ねられます。連絡がない理由を拒絶だと思っていた相手が、すでに戻れないと分かる。同期率低下の原因だった複数の喪失が、ここで一つの事実へ固まります。
現在のアスカは荒れた建物の浴槽で発見され、ほとんど反応できない状態で保護されます。2号機パイロットとしての誇りを失っただけでなく、食事、学校、会話という日常生活からも離脱しています。NERVは治療対象として彼女を収容しますが、傷ついた子供の居場所を作るより先に後任を用意します。
カヲルがフィフスチルドレンとして配置されるのは、アスカが人間として不要になったからではありません。しかし運用上は、動かないパイロットを動くパイロットへ交換する形です。前話のレイ素体群と同じく、組織は固有の関係を持つ人間より、機能を継続できる要員を優先します。
湖畔での初対面―レイの死が残した場所に、カヲルの歌が届く
シンジは零号機の自爆で生まれた湖の岸に座り、ベートーヴェン交響曲第9番の旋律を口ずさむ少年と出会います。都市とレイの喪失を記録する場所に、悲嘆を説明せず音楽を楽しむカヲルが現れる対照です。
カヲルはシンジの名前を知り、すぐ隣へ座り、音楽を人間文化の価値として語ります。シンジは相手の距離の近さに戸惑いますが、拒絶はしません。これまでの人間関係では、拒まれないことを確かめてから近づく必要がありました。カヲルはその手順を飛び越えます。
湖は水際を意味する「渚」という名字とも響きます。陸と水の境界にいるカヲルは、人間と使徒、友人と敵、生と死のどちらか一方へ固定されない人物です。初対面の柔らかさの中に、すでに最後の場面の境界選択が置かれています。
フィフスチルドレン―異常に高い同期率が、経歴そのものを疑わせる
カヲルは人類補完委員会から直接送られ、アスカに代わって2号機の適格者になります。通常ならパイロットと機体の適合には訓練と心理状態が影響しますが、カヲルはほぼ初回から非常に高い同期率を示します。しかも値を自分で調整できるような挙動を見せます。
リツコはデータ上は問題がないとしながら、その成立条件を説明できません。ミサトは経歴の欠落、SEELEからの直接指定、異常な能力を結びつけて監視します。レイの秘密を見た直後であるため、「適格者」という制度そのものが信頼できない段階です。
カヲルが2号機と同期できる理由は、通常のパイロットと同じ母子関係だけでは説明されません。終盤で彼はエントリープラグに乗らず機体を動かし、2号機内部の魂が閉じこもっている限り支配できる趣旨を示します。同期試験は操縦能力の証明であると同時に、使徒としての能力を隠す実演でした。
カヲルと三代目レイ―人の形を持ちながら、人だけではない二人
カヲルは三代目レイへ、自分と彼女は同じだと語りかけます。二人ともNERVが用意した少年少女の形を持ち、人間社会の名前と役割を与えられています。しかしその身体と魂の由来は、一般の人間と同じではありません。
レイは言葉を全面的には肯定せず、カヲルを警戒します。ビデオフォーマット版24'では対話が延長され、両者の類似がより明示されます。レイが自分を理解し始めた直後に、完成した自己認識を持つようなカヲルと会うことで、同じ条件でも選び方が異なることが示されます。
最終局面では、カヲルだけでなくレイも強いA.T.フィールドを展開します。これは彼女が単なる人間のクローンではなく、使徒と同種の力へ接続していることを示します。ただし本話だけでレイの魂の固有名や由来をすべて説明したとは扱わず、後続作品を含む情報と区別します。
共同浴場の会話―シンジへ「好意を受ける価値」を先に認める
NERVの共同浴場で、カヲルはシンジの手へ触れ、心の壁と傷つくことへの恐怖を言葉にします。シンジが説明する前から核心へ到達するため、理解された安心と、見透かされる不安が同時に生まれます。
カヲルはシンジに対する好意を明言し、シンジには好意を受け取る価値があると伝えます。父の承認を得るためエヴァに乗り、他人の期待へ応えることでしか居場所を確かめられなかったシンジにとって、成果を条件にしない言葉です。
二人の関係を友情だけへ狭める必要も、作中が定義していない恋愛関係へ固定する必要もありません。日本語の台詞は好意と「好き」を明確に含み、身体的な近さと信頼を描きます。一方、二人が恋人という社会的関係を結ぶ時間はありません。親密さの事実と、その分類の余白を両方残すのが正確です。
一晩の滞在―シンジが父への恐怖を、自分から話せた相手
カヲルは住む部屋の準備が整っていないとして、シンジのいる部屋へ泊まります。並んだ布団の間に会話が続き、シンジはゲンドウを嫌っていること、他人との関係で傷つくことを語ります。聞かれても答えを濁しがちなシンジが、自分から内面を差し出す珍しい場面です。
カヲルは評価や助言で話を閉じず、シンジが苦しんでいる状態をそのまま受け止めます。そして自分はシンジと会うために生まれたのかもしれないと伝えます。シンジが欲しかった「自分であること自体を必要とされる」経験が、最も直接的な形で与えられます。
しかしカヲルは、シンジの過去を初対面の相手とは思えないほど理解しています。その知識が使徒としての感覚か、SEELEから得た情報かは明言されません。安心の根拠と不自然さが同居し、後の正体判明を単なるどんでん返しではなく、最初から見えていた違和感にします。
SEELEとカヲル―送り込まれた使者にも、最後の選択までは支配できない
カヲルはSEELEによってNERVへ送り込まれた存在です。ビデオフォーマット版24'では湖畔でモノリスと会話し、自分にアダムの魂があり、アダムの再生した身体はゲンドウ側にあることを示す情報が加わります。
SEELEはカヲルを計画のために配置しますが、彼の感情と最後の判断まで命令できません。カヲルは人間をリリンと呼び、距離を置いて観察する一方、音楽、会話、シンジとの関係を通して人類の生を価値あるものと認めます。
そのため「SEELEのスパイだから最初からすべて演技だった」と解釈すると、死を選ぶ場面の意味が失われます。目的を持って接近したことと、接触の中で生まれた好意は両立します。カヲルは使者でありながら、託された目的より自分の判断を優先します。
ゲンドウの掌のアダム―最深部の巨人とは別の身体が、すでに移植されている
ビデオフォーマット版24'では、ゲンドウの掌にアダムの胎児状の身体が移植されている画が追加されます。第八話で加持が持ち込んだアダム標本が、ゲンドウ自身の身体へ組み込まれたことを示す重要な補足です。
ゲンドウは初号機へ向け、ユイに語りかけるように補完計画の時が近いと述べます。初号機にユイとのつながりを見ながら、自分の身体にはアダムを取り込む。妻へ再会する目的のため、人と使徒の境界を自ら破っています。
この追加情報があるため、カヲルがターミナルドグマの巨人をアダムだと思って到達し、リリスだと驚く場面には緊張が生じます。カヲルがSEELEの説明をどこまで信じ、現場で何を確認しようとしたかは完全には説明されません。版差によって生まれる不整合を、単一の隠れた正解で埋めない方が安全です。
第17使徒タブリス―人の言葉と自由意志を持つ、最後の使徒
NERVはカヲルのパターンを青と判定し、第17使徒と認識します。公式の商品展開では使徒名をタブリスとして整理していますが、TV本編の会話でその名称が大きく説明されるわけではありません。渚カヲルという人間名の方が、シンジの経験には重要です。
タブリスは人間と同じ姿で言語を使い、自分の任務と死を理解し、選択を他者へ委ねます。過去の使徒も接触を試みましたが、カヲルは人間社会の意味を言葉として共有できます。使徒側が人間を理解する到達点であると同時に、人間が最も殺しにくい敵です。
「最後の使徒」は敵の番号が最後という意味だけではありません。使徒との戦いが終われば、人類側の組織が隠してきた補完計画と対立が前面へ出ます。外敵を倒せば日常へ戻れるという物語は、カヲルの死とともに終わります。
無人の2号機を従える―アスカの居場所だった機体が、敵の盾になる
カヲルはエントリープラグへ乗り込まず、無人の2号機を起動してターミナルドグマへ向かいます。機体は外からの意思へ応じ、初号機の追撃を阻みます。通常の神経接続と電源管理を越えるため、NERVの運用体系では制御できません。
2号機はアスカが自分の分身としてきた機体です。その機体が彼女の不在中にカヲルへ従い、シンジと戦う光景は、パイロットの固有性をさらに傷つけます。ただしアスカ本人はこの戦闘を見ておらず、心情を直接描いた場面として扱うことはできません。
初号機と2号機の戦闘は、二人のパイロット同士の決闘ではありません。カヲルは2号機を遠隔の障害として動かし、シンジは機体を破壊してでも追いつこうとします。親密な会話の直後に、相手が自分の仲間の機体を操るため、裏切られた感覚が加速します。
カヲルとレイのA.T.フィールド―人と使徒の境界が、同じ力で示される
カヲルはNERV本部の観測機器を遮断するほど強いA.T.フィールドを展開し、空中を移動します。A.T.フィールドが防御壁だけでなく、個体を形作る境界であることを理解しているため、自分の意思で精密に利用できます。
ターミナルドグマ付近では、別のA.T.フィールドが現れ、三代目レイの存在が示されます。レイはシンジとカヲルの対決へ直接言葉を挟まず、両者を見守ります。人の側へ残るか、使徒側へ近づくかという選択を、彼女も別の位置から抱えています。
カヲルとレイの類似は、身体や力が同じだから判断も同じになるという意味ではありません。カヲルは自分の死を選び、レイは生きてゲンドウから離れる方向へ変化します。同じ境界上にいる人物が異なる自由意志を持つことこそ、本話が人間性を血統だけで決めない根拠です。
ターミナルドグマの巨人はリリス―NERVが「アダム」と呼んだ説明が崩れる
カヲルは最深部へ到達し、十字架に固定された白い巨人を見ます。彼は当初アダムと呼びますが、顔を確認してリリスだと認識を改めます。第15話で加持がミサトへ見せた際、NERV内部ではアダムと説明されていた対象が、別の存在だと確定します。
リリスは人類であるリリンの起源側に位置し、カヲルはアダムの魂を持つ使徒側です。両者の接触が何を起こすかについて、カヲルは人類の滅亡へつながる選択として扱います。しかし作中は科学的な反応式まで説明せず、彼が接触を拒んだ判断の結果を示します。
なぜSEELEがカヲルへリリスの存在を正確に伝えなかったように見えるのか、24'でアダムの身体の所在を知らせながら彼がなお最深部へ進んだのかは、版によって情報のつながりが異なります。「SEELEに完全に騙された」「最初から全部知って演じた」のどちらも確定せず、到達時の驚きと追加台詞を併記する必要があります。
カヲルが人類へ未来を譲る―生きる自由には、死ぬ自由も含まれるのか
リリスを前にしたカヲルは接触をやめ、初号機へ捕らえられます。そして自分と人類の双方が同時に未来を得られないとし、シンジへ自分を殺すよう求めます。人類が生き残ることを、使徒である自分の生より価値あるものとして選びます。
カヲルは死を逃避ではなく、他者へ未来を残す自由として語ります。しかし、その自由を実行する手はシンジのものです。自分で終わるのではなく、好意を伝えた相手へ殺害の責任を負わせるため、慈愛だけでは片づけられない残酷さがあります。
シンジにとっては、人類全体を救う抽象的な選択より、目の前で信頼した一人を殺す具体的な行為です。カヲルが正しい選択肢を用意しても、その正しさはシンジの罪悪感を消しません。自由意志が救いであると同時に、選んだ責任から逃れられないことを示します。
初号機の手の長い静止―決断できない時間を、視聴者にも過ごさせる
初号機がカヲルを握った後、画面は約一分にわたりほとんど動きません。交響曲第9番だけが続き、シンジの表情も手の力も見えない。作画を省いた空白である以上に、殺すか放すかを選べない時間そのものが画面になります。
通常の戦闘なら、敵が動き続けるため反射的な防御を正当化できます。カヲルは抵抗せず、シンジが決めるまで待ちます。動きがないほど、初号機の手は兵器ではなくシンジ自身の意思の形に見えます。
やがて曲が切れ、初号機の指が閉じ、頭部が落下します。長い保留の後に動作は一瞬で終わります。見る側は結果の衝撃だけでなく、結果を避けられないと理解しながら待った時間を共有します。
ベートーヴェン第9番「歓喜の歌」―友愛の合唱が、一人を殺す場面を包む
本話の音楽は、カヲルが初登場で口ずさむベートーヴェン交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」を中心に構成されます。人類の友愛と歓喜を歌う曲を、人類を選ぶため一人の友人が死ぬ戦闘へ重ねます。
旋律は湖畔で二人を結び、シンジの音楽プレーヤーからも聞こえ、最後には初号機と2号機の戦闘を大きく包みます。同じ曲が出会いと別れをつなぐため、カヲルの死後も最初の好意が嘘へ反転しません。
終盤の合唱は戦闘を英雄的に盛り上げるより、人類全体の歓喜とシンジ個人の悲しみを衝突させます。人類の生存は多数にとって正解でも、選んだ個人が歓喜できるとは限りません。補完計画が掲げる全体の幸福への不信も先取りします。
湖畔のシンジとミサト―生存の正論では、カヲルの死を受け止められない
戦闘後、シンジはカヲルと会った湖の岸に座り、ミサトへ出来事を話します。カヲルは自分より良い人間で、生きるべきだったと感じています。相手が使徒だった事実より、自分へ好意をくれた一人を殺した記憶が前面にあります。
ミサトは、生き残る意思を持つ者が生きるべきで、死を望んだカヲルが間違っていたという趣旨でシンジを慰めます。作戦責任者としては、人類を守ったシンジを肯定する必要があります。しかしカヲルの選択と二人の関係を知らないため、その正論はシンジの喪失へ届きません。
シンジが欲しいのは殺害の正当化ではなく、カヲルという存在が失われた悲しみを共有することです。ミサトも加持の死を抱えていますが、互いの喪失を同じ言葉へできません。二人が隣にいながら孤立する場面で、外側の使徒戦は終わります。
題名「最後のシ者」と英題―使者が死者になり、始まりと終わりが重なる
「シ者」は、使者と死者を同時に連想させる表記です。カヲルはSEELEから送られた最後の使者であり、シンジの手で死者になる最後の使徒です。題名の段階で、役割と結末が一語へ折り畳まれています。
英題の前半「The Beginning and the End」は、始まりと終わり、最初と最後を同一の存在へ結ぶ宗教的な句を踏まえます。アダムとリリスという生命の起源が示され、最後の使徒の死によって使徒戦が終わるため、起源と終末が同じ地下空間へ集まります。
後半の「Knockin' on Heaven's Door」は、カヲルがNERV最深部の扉を越え、神的な巨人の前へ立つ移動を表します。同時に、死の扉を自ら叩き、開ける役目をシンジへ渡す題でもあります。天国へ近づく上昇ではなく、地下へ下降する逆説が本話らしい構造です。
第24話と第24'話―追加場面は、アダムの所在とSEELEの意図を増やす
第24話には初回放送のOAフォーマット版と、追加・修正されたビデオフォーマット版24'があります。公式DVD第7巻は第23話と第24話について両方の版を収録し、放送後の改訂を同じ正史内の異なる提示として確認できます。
24'では、アスカが加持の死を知る場面、湖畔でのカヲルとSEELEの会話、レイとカヲルの対話延長、ゲンドウの掌にあるアダム胚の画などが加わります。カヲルの正体と補完計画の配置を補う一方、ターミナルドグマでリリスへ驚く行動との間に新しい解釈問題も生みます。
映像の一部も描き直され、アスカの浴槽場面など表現が変わります。本記事は現行配信で接しやすい24'を含めて説明しますが、1996年3月13日の初回放送には追加場面がなかったことを区別します。
制作と演出―限られた動きを、会話の密度と待つ時間へ変える
武蔵野美術大学の作品データベースでは、薩川昭夫と庵野秀明が脚本、摩砂雪と庵野秀明が絵コンテ、摩砂雪が演出・レイアウト・作画監督を担当したと記録されています。貞本義行はキャラクターデザインとレイアウト監修を担いました。
終盤の制作状況から既存映像や静止画が多く用いられますが、反応カットの反復は、NERV職員が観測するしかない無力さへ転換されています。最大の静止場面も、動かないこと自体をシンジの逡巡として機能させます。
カヲル役の石田彰は、穏やかで確信に満ちた声により、説明不足の人物を親密さと異質さの両方で成立させます。シンジ役の緒方恵美が示すためらいとの速度差が、カヲルだけが答えを知っている印象を作ります。
TV版最終二話への影響―最後の使徒を倒した後、敵はシンジの内側へ移る
カヲルの死で、NERVが認識する使徒との戦闘は終わります。しかしシンジは勝利を感じず、信頼した相手を自分の手で殺した罪悪感に沈みます。外的な任務を達成するほど、自己を支える関係が失われています。
アスカは反応できず、二代目レイは死亡し、ミサトとは会話が届かない。カヲルだけが無条件に近い好意を示しましたが、その相手もいません。次話では、使徒を倒す物理戦ではなく、シンジが他者と自分の存在理由を問い直す内面劇へ移行します。
同時に、SEELEとゲンドウは使徒戦後の補完計画へ進みます。カヲルが人類の生を選んだ直後、人類側の組織は個人の境界を消す計画を実行しようとする。使徒と人間のどちらが人の自由を尊重したのかという逆転が、終幕の判断軸になります。
第弐拾四話のよくある疑問
渚カヲルの正体は何ですか
NERVが第17使徒と判定した人型の使徒で、公式名称はタブリスです。ビデオフォーマット版の情報では、アダムの魂を持つ存在としてSEELEに送り込まれます。
カヲルとシンジは恋愛関係ですか
カヲルはシンジへの好意と「好き」を明言し、二人の間には強い親密さがあります。一方、作中は二人の関係を恋人と明示しません。友情か恋愛かを一方に限定せず、好意が物語上の事実であることを押さえるのが適切です。
ターミナルドグマにいたのはアダムですか
いいえ。カヲルは到達後、十字架の巨人がアダムではなくリリスだと認識します。ビデオフォーマット版では、アダムの再生した身体がゲンドウの掌にあることも示されます。
カヲルはなぜシンジに殺されることを選んだのですか
自分が生きる未来ではなく、リリンである人類が生きる未来を価値あるものとして選んだからです。ただし死を実行する責任をシンジへ負わせたため、その選択はシンジに深い傷を残します。
第24話と第24'話の主な違いは何ですか
24'ではアスカと加持、カヲルとSEELE、カヲルとレイの追加・延長場面、ゲンドウの掌のアダム胚などが加わり、使徒と補完計画の情報が増えています。
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