映画
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
マリと式波アスカ、第9・第10の使徒、ニアサードインパクトを徹底解説
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、2009年6月27日に公開された新劇場版第2作です。式波・アスカ・ラングレーと真希波・マリ・イラストリアスが加わり、碇シンジ、綾波レイ、周囲の人々の関係がTVシリーズとは異なる方向へ進みます。第9の使徒に侵食された3号機事件、第10の使徒によるNERV本部襲撃、シンジがレイを救うため初号機を覚醒させる結末が、14年後の『:Q』へつながるニアサードインパクトを引き起こします。
ネタバレ:本作全編、第9の使徒に侵食された3号機のパイロット、第10の使徒戦、ニアサードインパクトと次作への接続に触れます。





『:破』で物語はどこから変わるのか
『:序』はTVシリーズ第壱〜六話に対応する出来事を多く残しました。『:破』はその既視感を利用しながら、新キャラクター、新エヴァ、使徒戦の組み替えによって因果を大きく分岐させます。公式イントロダクションも第2作から未知の領域へ入ると示し、同じはずの物語が別の到達点へ進みます。
映画前半では、レイが食事会を計画し、アスカが他人との共同生活を知り、シンジとゲンドウの距離がわずかに近づきます。後半では3号機事件がその可能性を壊し、第10の使徒戦でシンジが世界より一人を救う選択をします。人間関係の前進と破局が一つの作品に収められるため、題名の『破』は戦闘による破壊だけでなく、既存の筋道を破る段階として機能します。
- 真希波・マリ・イラストリアスと仮設5号機が冒頭から登場する。
- アスカは惣流ではなく式波で、3号機のテストパイロットを務める。
- レイがシンジとゲンドウのために食事会を計画する。
- 第10の使徒戦で初号機が覚醒し、ニアサードインパクトの引き金となる。
ベタニアベースと仮設5号機
冒頭は北極圏のNERVベタニアベースから始まります。マリは仮設5号機へ乗り、封印施設から逃れた第3の使徒を追います。多脚と車輪を持つ仮設機は、初号機や2号機と異なる局地仕様で、施設のトンネル内を高速移動します。
マリは損傷と痛みを受けても戦闘を楽しむような反応を見せ、使徒を巻き込んで機体を自爆させます。嫌々ながら搭乗を始めたシンジ、成果で自分を証明しようとするアスカ、命令へ従うレイのいずれとも違う姿勢です。彼女が誰の目的で動いているかを明かさないまま、物語へ外部の変数を持ち込みます。
加持リョウジはベタニアベースを離れ、ゲンドウへ重要物を渡します。NERV各支部、加持、ゲンドウ、ゼーレの思惑が同じではないことが、使徒との正面戦闘の裏で進みます。冒頭を第3新東京市の外に置くことで、新劇場版の世界が一都市と本部だけではないと示します。
式波・アスカ・ラングレーの登場
アスカはエヴァ2号機で第7の使徒を撃破し、鮮烈に登場します。自分の能力へ強い自信を持ち、他のパイロットを見下し、ミサトの家でシンジと同居することになります。TV版の惣流・アスカと外見や声、2号機パイロットという役割は共通しますが、姓、階級、過去の示し方、後の式波シリーズという設定は別です。
アスカは一人で成果を上げることに価値を置き、他人へ頼ることを弱さと見なします。第8の使徒が衛星軌道から落下した際、シンジ、レイと3機で受け止める作戦を経験し、単独では達成できない戦いを知ります。三人が走る経路と都市の支援が一つにつながり、前作ヤシマ作戦の協働をパイロット同士の連携へ広げます。
共同生活の中で、アスカはシンジの料理を食べ、レイが食事会を開こうとしていることを知ります。競争相手としてしか見なかった二人に、それぞれ自分とは違う関係の作り方があると気づきます。彼女の表情が和らぐほど、後の3号機事件で失われる可能性が具体的になります。
真希波・マリ・イラストリアスの役割
マリは仮設5号機を失った後、パラシュート降下でシンジと偶然接触します。名前も目的も十分に説明しないまま、2号機を無断で起動し、第10の使徒へ挑みます。NERVの規則や学校の人間関係から外れた彼女は、既存人物だけでは選ばれなかった行動を起こす存在です。
2号機では、機体の拘束を一段階外す獣化第2形態を使用します。人型兵器として制御する通常運用から、エヴァの生物的な力へ近づく危険な方法です。マリは躊躇なく負荷を受けますが、単に戦闘好きだから無敵なのではなく、機体は大破し、彼女自身もレイを救いきれません。
マリがシンジの避難場所へ落下し、2号機の戦いを見せることが、いったんNERVを離れた彼を戻す一因になります。彼女はシンジへ長い説得をせず、現実に起きている戦いを目の前へ運びます。人物関係の中心へ入らないまま物語の向きを変える役割が、完結編まで続きます。
レイの食事会と家族をつなぐ試み
レイは、シンジが作った味噌汁をきっかけに食事へ関心を持ち、シンジとゲンドウを同じ席へ招く食事会を計画します。自分の感情を言葉にすることが少なかった彼女が、二人の関係を良くしたいという目的で他者へ働きかけます。これはTV版に同じ形では存在しない、新劇場版の重要な変化です。
シンジは母ユイの墓参りでゲンドウと会い、会話を交わします。加持の畑で土に触れ、ミサトが背負うセカンドインパクトの記憶も知ります。父に認められることだけが世界のすべてではないと学びつつ、食事会が実現すれば家族関係をやり直せるかもしれないという希望を持ちます。
アスカは食事会の日に3号機起動実験が重なったことを知り、自分がテストパイロットを引き受けます。表向きには自信と都合を示しますが、レイの計画を守る選択でもあります。三人が直接友情を宣言しなくても、相手のために予定を動かす関係が生まれています。
3号機事件と第9の使徒
松代で起動実験を行うエヴァ3号機は、第9の使徒に侵食されます。搭乗していたアスカとの通信は途絶え、機体は敵性対象として第3新東京市へ向かいます。ゲンドウは初号機へ撃破を命じますが、シンジは中に人がいるため攻撃を拒みます。
ゲンドウは初号機の制御をダミーシステムへ切り替えます。初号機はシンジの意志と無関係に3号機を破壊し、エントリープラグまで噛み砕きます。明るい子どもの歌『今日の日はさようなら』が流れる中、機械的な暴力が続くことで、日常と戦闘を分けていた境界が壊れます。
アスカは生存しますが重傷を負い、使徒汚染の疑いで隔離されます。TV版で3号機へ乗る鈴原トウジとはパイロットが異なるため、同じバルディエル戦として結果を混ぜられません。新劇場版では、食事会を守ろうとしたアスカの選択が事件へつながり、シンジ、レイ、アスカの関係を直接断ちます。
シンジがNERVを去る理由
自分の機体が友人を傷つけたこと、父が自分の拒否を無視してダミーシステムを使ったことに怒り、シンジはNERVへ抗議します。初号機で本部を攻撃しかけた後に拘束され、パイロットを辞めて街を出る決断をします。
この撤退は単なる臆病ではありません。人を救うために乗ったはずの機体が、自分の意志を奪って人を傷つけた以上、同じ組織を信頼できないという筋の通った拒絶です。一方、彼が去っても使徒は来るため、レイ、マリ、NERV職員が戦う現実は残ります。
シンジの選択を尊重することと、彼にしか動かせない初号機を必要とすることが両立しません。ミサトは無理に戻すことができず、ゲンドウはレイと零号機で対処しようとします。この行き詰まりを、第10の使徒の圧倒的な力が破ります。
第10の使徒とNERV本部への侵入
第10の使徒は、複数の防衛層を突破し、強力なA.T.フィールドと帯状の腕でNERV本部へ迫ります。マリは2号機の獣化第2形態でA.T.フィールドを破ろうとし、レイはN²ミサイルを抱えた零号機で特攻します。しかし使徒は攻撃を耐え、零号機ごとレイを取り込みます。
使徒がレイの姿を取り込み、識別信号まで利用することで、NERVの自動防衛は敵を排除できなくなります。戦闘力だけでなく、組織が味方を識別する仕組みを逆用した侵入です。マリの2号機も大破し、通常戦力で止める手段がなくなります。
避難していたシンジは、マリによって戦場へ放り出され、レイが取り込まれたことを知ります。3号機事件で『乗れば人を傷つける』と学んだ直後に、今度は『乗らなければ大切な人を失う』状況へ置かれます。どちらを選んでも無傷ではいられません。
シンジがレイを救うため初号機へ戻る
シンジはゲンドウの前へ戻り、自分の意志で初号機へ乗ると告げます。父の命令に従うためではなく、レイを助けるという目的を明言した点で、最初の搭乗とは違います。初号機は活動限界を超えて覚醒し、第10の使徒へ圧倒的な力を振るいます。
使徒の内部で、シンジはレイへ手を伸ばします。レイは自分の代わりがいると拒みますが、シンジは綾波は綾波しかいないと答え、彼女を引き戻します。『:序』で生存を確かめて笑顔を得た関係が、ここでは世界の規模を変える行動へ拡大します。
この救出は感情的には強い肯定ですが、結果が無条件に正しいわけではありません。初号機の覚醒は地上と大気を変え、ニアサードインパクトを開始します。ミサトは一度、シンジへ自分の願いのため進むよう叫びますが、現象の規模が判明すると表情を変えます。一人を救う選択と、多数へ及ぶ結果を同時に見る必要があります。
ニアサードインパクトとカヲルの介入
覚醒した初号機は疑似シン化し、巨大なエネルギーと光の翼を発生させます。リツコは人の域を超えた変化を見て、世界の終わりが始まると認識します。シンジはレイへ集中しており、自分の選択が外部でどの規模の現象になっているか知りません。
エンドクレジット後、月面から飛来したMark.06のカヲルがカシウスの槍を初号機へ投じ、覚醒を停止させます。この時点でニアサードインパクトはいったん止まります。『:Q』の荒廃までがこの瞬間だけで完了したとせず、後の14年間に続く別の出来事を区別します。
カヲルは、今度こそシンジを幸せにすると語ります。『:序』月面での先行登場が、ここで初めてシンジの出来事へ直接介入します。しかし二人はまだ会話を交わしておらず、カヲルが何を知り、なぜ『今度こそ』と言うかは次作以降へ残されます。
TV版中盤との主な違い
| アスカ | 惣流ではなく式波。3号機へ搭乗し、第9の使徒事件で負傷する。 |
|---|---|
| マリ | 新劇場版で新規に登場し、仮設5号機と2号機を操縦する。 |
| 3号機 | テストパイロットはトウジではなくアスカ。ダミーシステムによる破壊の人間関係が変化。 |
| 第10の使徒 | 零号機とレイを取り込み、シンジが使徒内部からレイを救出する。 |
| 結末 | 初号機覚醒によるニアサードインパクトをMark.06とカシウスの槍が停止させる。 |
| 日常 | 海洋研究施設、レイの食事会、アスカの同居など、三人が近づく新規場面が増える。 |
TV版と同じ使徒の外見や戦闘モチーフを見つけても、番号、パイロット、結果が変われば別の出来事です。特に3号機事件は、トウジの記事の出来事を式波アスカへ移すのではなく、各系列で誰が何を選び、誰との関係が壊れたかを個別に記述します。
2.0と2.22の違い
| EVANGELION:2.0 | 2009年6月27日に劇場公開された上映版。 |
|---|---|
| EVANGELION:2.22 | 2010年5月26日のBlu-ray・DVD向けに画・音を再調整し、新作カットを追加した版。 |
2.22は本編111分49秒として商品化され、劇場版2.0から映像・音声の調整と追加カットが行われました。2本の別映画ではなく、同じ第2作の上映版と映像商品版です。現在の視聴で2.22を基準にする場合も、初公開日は2009年の2.0公開日として記録します。
版比較では、追加された日常カット、背景、色、音響、予告を分けて確認します。2.22で情報が増えても、3号機事件とニアサードインパクトという物語の骨格は変わりません。公式Complete Blu-ray BOXでは2.0と2.22を別ディスク項目として確認できます。
劇中歌・主題歌と制作
3号機を初号機が破壊する場面では『今日の日はさようなら』、シンジがレイを救う場面では『翼をください』が使われます。広く知られた合唱曲の素朴な歌声を、暴力と世界規模の覚醒へ重ねることで、学校生活であり得た平穏と、現実に起きる破局の距離を強調します。
主題歌は宇多田ヒカルの『Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-』、音楽は鷺巣詩郎です。前作の主題を引き継ぎながら編曲を変え、同じ人物が別の段階へ進んだことを音で示します。曲の歌詞は設定資料ではないため、ニアサードインパクトや人物の正体を歌詞だけで確定しません。
原作・脚本・総監督は庵野秀明、監督は摩砂雪と鶴巻和哉、制作はスタジオカラーです。公式キャラクター紹介は、シンジ、レイ、式波アスカ、マリを同じパイロット枠で提示しつつ、それぞれ異なる搭乗動機を示します。人物画、作中場面、2.22映像商品を組み合わせ、映画の物語と版の両方を確認します。
よくある疑問
アスカは3号機事件で死亡しましたか
死亡していません。重傷と使徒汚染の疑いで隔離され、その後の14年間を生きて『:Q』に登場します。
シンジはレイを救えましたか
初号機内へ彼女を取り戻しますが、『:Q』で目覚めた時に隣にはおらず、目の前のアヤナミレイ(仮称)は別の個体です。救出の結果は完結編まで追う必要があります。
『:破』の最後にサードインパクトは完了しましたか
カヲルのMark.06とカシウスの槍により、ニアサードインパクトは一度停止します。『:Q』までの14年間に続く出来事と分けます。
2.22だけ見ればよいですか
現在の標準的な映像商品として2.22を視聴できます。劇場公開時の編集・画面を研究する場合は2.0と版番号を分けて比較します。