エヴァンゲリオン百科事典

映画

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生

DEATH編とREBIRTH編の内容、完結編・各編集版との違い

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』は、1997年3月15日に公開された二部構成の劇場版です。TVシリーズを人物の記憶から再編集する「DEATH」編と、新作完結編の途中までを先行上映する「REBIRTH」編を組み合わせています。REBIRTHは『Air/まごころを、君に』の完成版と同じ長さではなく、弐号機とエヴァ量産機の戦闘途中で終わります。本作を理解する鍵は、総集編と未完の新作部分を一つの完成映画として混同しないことです。

ネタバレ:TVシリーズ第壱話から第弐拾四話、劇場版第25話「Air」前半の展開に触れます。

DEATH AND REBIRTHシト新生の公式ポスターを用いたアクリルブロック
DEATH編とREBIRTH編を組み合わせた『シト新生』の公開当時ポスタービジュアル。

『シト新生』は何を上映した作品か

『シト新生』は、TVシリーズの結末を一本の新作映画として完成させた作品ではありません。前半で第壱話から第弐拾四話までを再構成し、後半で劇場用に制作中だった第25話の一部を先行して見せます。劇場公開時に観客が見たのは、過去を振り返るDEATHと、まだ終幕へ到達しないREBIRTHの組み合わせでした。

邦題の「シト新生」は、死と再生を意味する英題DEATH AND REBIRTHの音を「使徒」に重ねた表記として読めます。しかし、DEATHが全人物の死、REBIRTHが世界の完全な再生を一対一で描く二章という意味ではありません。DEATHは編集方法の名称、REBIRTHは新作パートの名称であり、後半の物語は次の映画で完成します。

本作の二つの役割
  • DEATHはTV全26話の短縮版ではなく、主に第壱話〜第弐拾四話を人物別に再配置する。
  • REBIRTHは新作完結編の先行上映で、後の「Air」前半に対応する。
  • 映画だけでは人類補完計画の結末や浜辺のラストまで到達しない。
  • 完結を見るには『Air/まごころを、君に』へ進む。

DEATH編―時系列を崩して人物を再構成する

DEATHは、使徒が順番に現れて作戦で倒されるというTVシリーズの進行をそのまま縮めません。碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー、渚カヲルを中心に、記憶、会話、孤独、親子関係、他者への欲望をつなぎ直します。初見の観客へ設定を漏れなく説明するより、TVシリーズを見た観客の記憶を別の並びで刺激する編集です。

同じ台詞や構図が別の人物へ反響し、出来事の因果より感情の類似が先に立ちます。シンジが父に認められたい気持ち、アスカが他者より優れていたい焦り、レイが自分の輪郭を問う感覚、カヲルがシンジへ向ける受容は、それぞれ別の生を持ちながら「他者とどう結び付くか」という問いへ集められます。

そのため、DEATHの隣り合うショットを作中年表として読むことはできません。幼少期と2015年、戦闘と学校生活、独白と現実の会話が編集上は連続しても、実際の時間は離れています。事件の日付や初出を調べる場合は各話索引へ戻り、DEATHでの順番は再編集上の関係として記録します。

弦楽四重奏という編集の枠

DEATHを束ねる印象的な枠が、四人の少年少女と弦楽器です。シンジ、レイ、アスカ、カヲルが同じ舞台へ集まり、演奏の準備をするような場面が、人物別の回想を区切ります。これはTV本編の空白日に四人が実際に演奏会を開いた、と確定させる場面ではありません。再構成編のために設けられた視覚・音響上のフレームとして機能します。

四重奏では、各奏者が異なる旋律と音域を保ちながら全体を作ります。境界をなくして一つになる人類補完計画とは違い、違う者が違うまま同じ時間を共有する形式です。DEATHが完結編の前にこの構図を置くことで、他者との調和は同一化ではなく、分離を保った応答でも成立するという可能性が浮かびます。

同時に、演奏前の待機や調律には、結末へ向かう準備の感触があります。TVシリーズの記憶が個別のパートとして呼び戻され、REBIRTHで再び進行する現在へ渡されます。総集編を単なる情報整理ではなく、一種の序曲として見る理由です。

REBIRTH編―NERV侵攻から量産機戦へ

REBIRTHは、最後の使徒カヲルを殺した後、シンジが行動できなくなった時点から進みます。ゼーレはNERVを切り捨て、戦略自衛隊が本部へ侵攻します。対使徒組織の施設で、人間が人間を排除する戦闘が始まり、ミサトはシンジを捜して初号機へ向かわせようとします。

湖底へ沈められた弐号機の中で、アスカは母の存在に気づき、機体とのつながりを回復します。弐号機は戦略自衛隊を退け、ゼーレが投入した9体のエヴァ量産機と戦います。TV本編の終盤で自信と同調率を失ったアスカが、最も圧倒的な戦闘能力を見せる反転がREBIRTHの中心です。

ただし、REBIRTHは量産機との決着、人類補完計画、シンジの選択まで描きません。上映は次の展開を待たせる位置で終わり、物語の完結は1997年夏の『Air/まごころを、君に』へ持ち越されます。後発の完成版「Air」はREBIRTHに対応する素材を含みますが、編集と完成内容を備えた劇場版第25話として扱います。

『Air/まごころを、君に』との違い

シト新生DEATH+REBIRTH。TV再構成と完結編の先行部分を組み合わせる。
Air/まごころを、君に完成した劇場版第25話と第26話。補完の発動と浜辺まで描く。
REVIVAL OF EVANGELIONDEATH(TRUE)²+完成版第25・26話。再構成から結末まで連続させる。

「シト新生を見たから旧劇場版の結末まで見た」という理解は不正確です。シト新生の新作部分は「Air」の途中に相当し、アスカと量産機の戦闘も、初号機を用いる儀式も、シンジが補完を選び直す過程も完結しません。完結編の記事では、NERV侵攻以降の出来事と浜辺のラストを一つの映画として扱います。

反対に、完成版が出たからREBIRTHに価値がなくなったわけでもありません。1997年春時点の制作・公開形態、完成前の映像がどの位置まで提示されたか、観客が夏の完結編をどのように待ったかを示す一次的な版です。作品史を追う場合、完成版へ吸収された素材と、上映単位としてのREBIRTHを分けます。

DEATH各版と映像商品の収録

DEATH編は公開後に編集が調整され、DEATH(TRUE)、DEATH(TRUE)²という表記が生まれました。いずれもTVシリーズを再構成する役割を持ちますが、細部のカットと収録形態が同一ではありません。『シト新生』を指すときは公開時のDEATH+REBIRTH、REVIVALを指すときはDEATH(TRUE)²+完成版二話、と構成名まで示す必要があります。

公式STANDARD EDITIONは、『シト新生』のHDマスターをDISC 6、『Air/まごころを、君に』をDISC 7、DEATH(TRUE)²/Air/まごころを、君にをDISC 8として分けています。この収録順は三者の関係を理解する最も明快な手掛かりです。DISCが違うことは三つの完全に独立した設定世界を意味せず、上映・編集・収録単位が異なることを意味します。

版名を記録する際の注意
  • DEATH、DEATH(TRUE)、DEATH(TRUE)²の上付き記号を省略しすぎない。
  • REBIRTHを完成版「Air」全編と同一視しない。
  • REVIVALを新作の第3作と数えない。
  • 映像特典や別編集を完成本編の確定描写へ混ぜない。

主題歌「魂のルフラン」と音の構成

『シト新生』を象徴する楽曲が、高橋洋子の「魂のルフラン」です。公式シングルは「残酷な天使のテーゼ」と「魂のルフラン」を併録し、TVシリーズと劇場版の音楽的な橋を作ります。タイトルの「ルフラン」は反復や回帰を想起させ、DEATHで記憶を再演し、REBIRTHで物語が再び動き始める構成とも響き合います。

ただし、歌詞の各語を作中設定の公式定義として置き換えることはできません。歌は作品の感情とイメージを広げますが、アダム、リリス、魂、転生の仕組みを説明する設定資料ではありません。楽曲クレジット、商品、映画内の使用位置は音楽索引へ分けて記録します。

DEATHの弦楽器とクラシック音楽、REBIRTHの軍事的な緊張と劇伴、主題歌の回帰感は、総集編と新作部分の切り替えを耳で知らせます。再編集映画でありながら、音が単なる既存場面の寄せ集めにしない重要な軸です。

ポスターと題名が示す二部構成

『シト新生』のポスターは、TVシリーズから切り出した人物と場面を縦横に分割し、赤・黒・水色を強く対置します。画面を時系列に並べるのではなく、断片を再配置するDEATHの性格が表れます。同時に、後半の新作へ向かう機体や人物のイメージが、総集編だけではない上映であることを伝えます。

英題ロゴはDEATHとREBIRTHを並列し、邦題「シト新生」を添えます。復刻された公式ポスター商品とロゴ商品を使うことで、後年のファン制作画像ではなく、公開作品に属する題名と図案を識別できます。一方、商品そのものの発売日は映画の公開日ではないため、画像台帳では原図の作品と復刻商品の確認日を分けます。

見る順番と現在の選び方

  1. TVシリーズ全26話を見る。
  2. 公開史を追う場合は『シト新生』でDEATHとREBIRTHを見る。
  3. 『Air/まごころを、君に』で完成した劇場版第25・26話を見る。
  4. 再構成から結末まで連続して見直す場合はREVIVALを選ぶ。

初見で物語を理解する目的なら、TV全26話の後に完成版『Air/まごころを、君に』へ進めば結末まで到達できます。『シト新生』は必須の中間話ではなく、総集編の編集と完成前のREBIRTHを含む公開史上の作品です。見る目的を、物語の完結、版の比較、1997年の上映体験の追跡に分けると選びやすくなります。

30周年の「月1エヴァ」では、『シト新生』は後継版DEATH(TRUE)²&REBIRTHで上映すると公式に案内されました。再上映でも版が公開当時と同じとは限りません。チケット表記だけでなく、公式が示す上映バージョンを確認します。

よくある疑問

シト新生だけでエヴァの結末まで分かりますか

分かりません。REBIRTHは劇場版第25話の途中で終わるため、完成版『Air/まごころを、君に』が必要です。

DEATHはTVシリーズ全26話の総集編ですか

主要素材は主に第壱話から第弐拾四話までで、人物関係を中心に再構成します。設定や各話の因果を網羅する短縮版ではありません。

REBIRTHとAirは同じですか

対応する素材がありますが、REBIRTHは先行上映された途中部分、Airは編集・仕上げを経た完成版第25話です。同じ上映尺・完成状態ではありません。

30周年上映は1997年公開版そのままですか

公式案内では後継版のDEATH(TRUE)²&REBIRTHを上映すると明記されています。公開当時のDEATH版とは区別します。