1927年、ニューヨークの拘禁から脱獄したゲラート・グリンデルバルドはパリへ姿を消し、ロンドンに足止めされたニュート・スキャマンダーは、若き日のアルバス・ダンブルドアの密命を受けて再びクリーデンスを追う——『魔法ワールド』前日譚第2作。レタ・レストレンジの過去、ナギニの呪い、クイニーの離反、そしてラストでグリンデルバルドが告げる『お前はオーレリアス・ダンブルドアだ』という衝撃の宣告までを描く、シリーズの分水嶺となる一本。

基本データ 2018年・デヴィッド・イェーツ監督

前作に続きデヴィッド・イェーツが監督、J.K.ローリングが脚本を続投。撮影はフィリップ・ルースロ、美術はハリー・ポッター本編からの盟友スチュアート・クレイグ、衣装はコリーン・アトウッド、音楽はジェイムズ・ニュートン・ハワード。製作費約2億ドル、上映時間134分。ワーナー・ブラザースの『魔法ワールド』ブランドを支える前日譚シリーズの第2作にあたる。

物語上の位置 1927年パリ、シリーズの分水嶺

前作から半年後、舞台はジャズ・エイジのニューヨークから、戦間期のパリとロンドン、そしてホグワーツへ広がる。米国魔法議会(MACUSA)の拘禁から脱獄したグリンデルバルドは、フランスで自身の信奉者を組織化し、第二次世界大戦を予告する『純血優越』の演説で世界の魔法社会を二分していく。若き日のアルバス・ダンブルドアが本格的に映画に登場するのも本作からである。

受賞・評価 視覚効果賞ノミネートとシリーズ最大の論争作

第91回アカデミー視覚効果賞をはじめ複数の技術賞候補に挙がった一方、批評・観客反応は前作より大きく割れた。情報量の多さ、複数の謎の同時進行、クリーデンスの正体をめぐる伏線回収の是非など、シリーズで最も賛否が分かれた一本。全世界興収は約6億5500万ドルで、シリーズ最高額からは一段下がった。

この記事の範囲 オーレリアス・ダンブルドア宣告と血の誓いまで完全解説

冒頭のMACUSA移送脱獄から、ペール・ラシェーズ墓地での集会、レタ・レストレンジの自己犠牲、クイニー離反、グリンデルバルドのクリーデンスへの宣告『お前はオーレリアス・ダンブルドアだ』、そしてホグワーツでアルバスとニュートが交わす血の誓い(ブラッド・パクト)の開示まで、重大ネタバレを前提に踏み込む。

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概要

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald)は、デヴィッド・イェーツが監督し、2018年11月16日に米国で、同年11月23日に日本で公開されたファンタジー映画である。J.K.ローリングが前作に続いて脚本を単独で書き下ろし、ワーナー・ブラザースの新シリーズ『魔法ワールド(Wizarding World)』前日譚映画の第2作にあたる。

舞台は1927年、前作の結末から半年後の時間軸。前作で米国魔法議会(MACUSA)に拘束されたゲラート・グリンデルバルドが、欧州側への身柄引き渡しを名目とする大西洋上空の移送中に脱獄するところから物語は始まり、ロンドン、パリ、そしてホグワーツへと舞台を移していく。前作の主要キャストであるエディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォーグラー、アリソン・スドル、エズラ・ミラーが続投し、本作からジュード・ロウが青年期のアルバス・ダンブルドアを、ジョニー・デップが素顔のままグリンデルバルドを本格的に演じる。

本作は当初予定された3部作構想が拡張された5部作構想の第2作として企画され、最終的にはこの5部作構想は3作で完結することになる。シリーズ全体の中心にいるのが、ハリー・ポッター本編で繰り返し語られたものの一度も映像化されていなかった『青年期のアルバス・ダンブルドアと、彼の最大の親友にして最大の敵となるゲラート・グリンデルバルド』という二人組の物語であり、本作はその二人がなぜ正面から戦えないのか——血で交わした不可侵の誓い——という核に踏み込む第一作になっている。

本記事は結末を含む全編の内容に踏み込む。脱獄シーン、レタ・レストレンジの過去、クリーデンスの正体宣告、クイニーの離反、ホグワーツでの血の誓い開示まで順に解説するため、物語の重大な驚きを保ちたい場合はまず本編を鑑賞してから読んでほしい。

原題
Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald
監督
デヴィッド・イェーツ
脚本
J.K.ローリング
音楽
ジェイムズ・ニュートン・ハワード
撮影
フィリップ・ルースロ
米国公開
2018年11月16日
上映時間
134分
ジャンル
ファンタジー、冒険、ミステリー、群像劇
主な舞台
1927年・ロンドン/パリ/ホグワーツ/(プロローグのみニューヨーク)
主舞台組織
英国魔法省/MACUSA/フランス魔法省/グリンデルバルド派

あらすじ

以下は結末までを含む全編のあらすじである。物語は、欧州への身柄引き渡しを目前にしたグリンデルバルドのMACUSA移送脱獄から始まり、ニュート・スキャマンダーの英国魔法省への呼び出し、若き日のアルバス・ダンブルドアからの密命、パリへの追跡、ティナ/クイニー/ジェイコブの再合流、レタ・レストレンジの少女時代の過ち、ヌメンガード地下のグリンデルバルドの集会、レタの自己犠牲、クイニーの離反、そして『お前はオーレリアス・ダンブルドアだ』という最後の宣告までを順に追う。

プロローグ——大西洋上空のMACUSA脱獄

幕開けは雷雨の夜のニューヨーク。前作のラストでアリゾナの護送車基地に収監されたゲラート・グリンデルバルドを、米国魔法議会(MACUSA)が国際魔法使い連盟に引き渡すため、巨大な漆黒のセストラル牽引馬車に乗せて欧州へ移送しようとしている。議長セラフィーナ・ピッカリーは『彼の口を封じ続けたまま運べ』と命令するが、その口元には封印魔法が施され、舌は黒い金属の鉤で繋がれている。

馬車が雷雲を抜けて大西洋上空を駆け抜けるとき、グリンデルバルドの寡黙な信奉者でMACUSA幹部のアバナシーが、護衛のオーラたちを次々と襲撃する。極めつけは、グリンデルバルドが薬で意識を失っているふりをして看守を呼び寄せ、自身の杖を取り戻す瞬間である。彼は『お前は私の友になってくれるか?』とアバナシーに微笑み、二人の身柄を入れ替えて——もはや人質となったアバナシーが拘束具に繋がれ、グリンデルバルドが解放される。

嵐の中、馬車のセストラルが切り離され、グリンデルバルドはピッカリーの杖と国際魔法使い連盟の議長杖を奪い取り、雷雲のなかへ消える。落雷で照らされた彼の青い目が、観客に向かって直接視線を投げる——ここから物語は半年後、舞台をロンドンへと移していく。

ニュート・スキャマンダーと英国魔法省

半年後、ロンドン。前作の事件で米国魔法議会から非公式に名を上げたニュート・スキャマンダーは、国際旅行禁止令を解いてほしいと英国魔法省に出頭する。だが副大臣に近い職位の兄テセウス・スキャマンダーが彼の弁護に立ち、もう一人の上級職員トーキスは、ニュートに『魔法省の正式なオーラ補佐として、グリンデルバルド派対策の任務に就くなら旅行禁止を解いてやる』と取引を持ちかける。

ニュートは、いずれの陣営にも属さない『戦わない動物学者』の立場を頑なに守り、その条件を断る。短い会話の中で、兄テセウスとの距離、そしてニュートが学生時代から英国魔法省に対して抱いてきた違和感が、いくつかの言葉と目線の交換だけで観客に提示される。

魔法省を出たニュートはホグワーツへ向かう。そこには、すでに学校で『闇の魔術に対する防衛術』を教える教師として若き日のアルバス・ダンブルドアが立っており、彼は人気のない天文学塔の屋上でニュートと密会する。

用語:魔法省

若きダンブルドアの密命とパリ

アルバス・ダンブルドアは、ジュード・ロウが本作で初めて映画に正式登場させる青年期の姿で立っている。深いボルドーのロングコート、整えられた赤茶色の長い髪と顎ひげ、青い目。ハリー・ポッター本編のリチャード・ハリス、マイケル・ガンボン版より細身で、しなやかで、どこか青年の翳りを帯びている。

ダンブルドアは、ニュートに対して『パリに行ってほしい』と告げる。そこには、生死不明のままMACUSAから流出したクリーデンス・ベアボーンが潜伏しているはずであり、グリンデルバルド側もそのオブスキュリアルを自軍に取り込もうと動いている。『なぜあなた自身が行かないのですか?』と尋ねるニュートに、ダンブルドアは『私はあの男と戦えない』と短く答える——本作のクライマックスで開示される血の誓いを、最初に観客に予告する台詞である。

ニュートはこの密命を引き受け、姿変えと密航を駆使してパリへ向かう。同時期、ティナ・ゴールドスタインもMACUSAのオーラとしてパリでクリーデンス追跡任務に就いており、クイニー・ゴールドスタインは記憶を消されたはずのジェイコブ・コワルスキーをロンドンのニュート宅へ連れてきている——クイニーが彼に弱い恋慕の魔法をかけ、ローパポート法を踏み越えて二人で結婚する道を探していたのである。

アルバス・ダンブルドアの人物ページ

クイニーとジェイコブの再会

ロンドンのニュートの家に飛び込んできたクイニーとジェイコブの再会は、本作の数少ない明るい一幕である。ジェイコブは前作のラストで記憶を雨に流されたが、クイニーの読心術と弱い記憶魔法によって、ふたたびクイニーへの愛情を呼び戻されている。だがニュートとティナの妹は、ジェイコブが本来の自由意志で自分を選んだのではないことに、すぐ気づく。

ニュートはクイニーが密かにジェイコブにかけていた『弱い恋慕の呪文』を解除する。記憶が戻り、自分の感情が魔法によって操作されていたことを知ったジェイコブはクイニーと衝突し、結婚を拒否する。クイニーは『私が悪い、姉のところへ戻る』と言い残してロンドンを発つ——だがその逃避が、後半のクイニー離反劇の最初のドミノとなる。

残されたニュートとジェイコブは、ティナとクイニーを追ってパリへ向かう。ニュートの旅は、英国魔法省の旅行禁止令を破ったうえでの密航である。

パリの霧——クリーデンスとナギニ

クリーデンスは、シティ・ホール駅での銃撃から生き延び、現在はパリ郊外のサーカス団『シルク・アルカン』に身を寄せている。彼は団長スキェンダー(チェコ系のサーカス興行師)に、自分の母親の正体を知っていれば教えてほしいと願い出ているが、スキェンダーは知っていることを隠している。

サーカス団の見世物の一人が、本作で物議を呼んだキャラクター、ナギニである。彼女はマレディクタス——母から子へ女系に伝わる血の呪いを受けた女性で、一定の期日を超えると永久に大蛇の姿に固定されてしまう——という設定で、現時点ではまだ人間の姿と蛇身を行き来できる。ハリー・ポッター本編のヴォルデモートの使い魔ナギニの遥か前史にあたる人物像であり、本作で彼女はクリーデンスの仲間として檻から共に脱走する。

クリーデンスは、自分の出生の手がかりを持つ人物として、シルク・アルカンの帳簿に記された名前『イルマ・デュガード』を追ってパリの旧市街へ向かう。エズラ・ミラー演じるクリーデンスの目に、本作では前作の暗い恐怖ではなく、自分の名と血を求める青年の渇望が宿る。

レタ・レストレンジの過去——船上の取り違え

ロンドン側の物語の縦糸が、ニュートのホグワーツ時代の元恋人で、現在は兄テセウスの婚約者となっているレタ・レストレンジ(ゾーイ・クラヴィッツ)である。彼女はフランスの名門純血家系レストレンジ家の最後の生き残りに近い人物で、ニュートとは魔法生物学の研究室で出会い、互いに孤独な学生時代を慰め合っていた過去がある。

レタは、英国魔法省のテセウスのもとを離れてパリへ向かい、ニュートとともにレストレンジ家の家族霊廟と、家族の出生記録を辿る。彼女が背負っているのは、幼い少女時代の取り返しのつかない過ち——大西洋を渡る蒸気船の中で、泣き止まない異母弟コルヴァス・レストレンジ五世の籠を、隣室にいた別の女性の赤ん坊の籠とこっそり入れ替えたという過去である。船は嵐で沈み、籠ごと入れ替えられたコルヴァスは海の底に消えた。レタはそれを誰にも話さないまま大人になった。

もう一人、レタの過去を追っているのが、レストレンジ家に対して『家の最後の男系の男児を殺す』ブラッド・オース(血の誓い)を父から受け継いだ青年ユスフ・カマである。彼はレタの異母兄弟コルヴァス五世の存在を信じ、その男児を見つけ出して殺すために、パリでクリーデンスを追っている——コルヴァス五世こそクリーデンスではないか、という推理を抱いて。

クイニーの離反——グリンデルバルドの優しさ

パリの街頭でジェイコブと別れて錯乱したクイニーは、雨の中で身を寄せる場所を失う。そこへ、紳士的な微笑みをたたえた長身の男性が傘を差し出し、自分の馬車の屋根の下へ彼女を招き入れる。観客にはすぐ分かる——ゲラート・グリンデルバルドである。

グリンデルバルドはクイニーに対して、決して声を荒げず、決して呪文を撃たない。代わりに、『君の妹(ティナ)が君から離れたのも、君が愛するノーマジ(マグル)と結婚できないのも、ローパポート法と国際魔法機密保持法の縛りのせいだ。これらを取り払えば、君は誰とでも自由に愛し合える』と、彼女のもっとも痛む箇所を真綿で包んだ言葉で撫でる。

本作で観客がもっとも息を呑むのは、グリンデルバルドが武力ではなく、愛と自由という耳ざわりの良い言葉でクイニーを獲得していく過程である。彼女は読心術の使い手でありながら、グリンデルバルドの心の奥(純血優越と戦争の予感)を読み通せない——あるいは、読みながら、それでもなお魅了されてしまう。本作のヴィランは、暴力ではなく『理解されることへの飢え』を武器に人を取り込んでいく。

ペール・ラシェーズ地下集会の演説

本作のクライマックスは、パリのペール・ラシェーズ墓地の地下、ヌメンガードに通じる古代円形劇場のような空間で行われるグリンデルバルドの大集会である。各国から集まった数千人の信者と、変装で潜り込んだニュート、ティナ、ジェイコブ、テセウス、レタ、ユスフ・カマ、フランス魔法省のオーラ隊が、白い円形の階段席を埋める。

壇上のグリンデルバルドは、武力革命を煽る荒々しい演説者ではない。彼は静かに、低い声で、観衆の頭上に巨大なヴィジョン——第二次世界大戦のヨーロッパ、強制収容所、原子爆弾のキノコ雲、ホロコーストとロンドン大空襲——を空中投影してみせる。『これがノーマジに世界を任せた結果である。我々魔法族にはこれを止める力がある。これは戦争の呼びかけではない。我々の自由の宣言だ』と。

演説の最後に、彼は会場の信者一人ひとりに対して『今ここで私から離れるか、私に従うかを選べ。離れる者は道を開けてやる』と告げる。立ち上がって退場しようとした若いオーラの女性が、フランス魔法省の同僚に背中から呪いをかけられ床に倒れる——演説に潜入していたティナの上司である。グリンデルバルドの信奉者の手によって。

壇上に膝を屈める信者の数は、最初の数十人から、数百人、千数百人へとうねりのように増えていく。グリンデルバルドはその上に、青い炎の輪——『プロテゴ・ディアボリカ』(防御の悪魔の炎)——を会場全体に張り巡らせ、信者だけが通過できる結界を作る。信者ではない者がこの青い炎に触れれば、燃え尽きる。

観衆の中で、レタ・レストレンジは、テセウスとニュートの兄弟と短く目を交わす。彼女は階段の頂上に進み、グリンデルバルドへ静かに歩み寄り、『私はあなたを知っている、ゲラート、あなたは私を知らない』と告げて——杖の先から一撃を放ち、彼を押し戻す。グリンデルバルドはレタを焼かない、しかしその瞬間、彼の青い炎は彼女を呑み込む形で大きく揺らぐ。レタはニュートとテセウスに向かって『I love you(あなたたちを、愛している)』と微笑み、青い炎の壁の向こうへ消える——彼女の自己犠牲によって、ニュート、ティナ、ジェイコブ、テセウス、ユスフ・カマ、そして観衆の半分がプロテゴ・ディアボリカの外側へ脱出する。

『お前はオーレリアス・ダンブルドアだ』——クリーデンスの宣告

炎の壁の中、クリーデンス・ベアボーンが残る。グリンデルバルドは、ここまでの旅程と、ベアボーン家の養子記録、レストレンジ家の家族霊廟が示した取り違え事件、そしてダンブルドア家にまつわる隠された出生記録を踏まえて、クリーデンスに向き直り、最後の宣告を与える。

『お前の本当の名前はクリーデンス・ベアボーンではない。お前は——アウレリウス・ダンブルドア(Aurelius Dumbledore)だ。お前の兄、アルバス・ダンブルドアこそが、長年お前から名前を奪っていた男だ』。グリンデルバルドはクリーデンスに、出生地ゴドリックの谷の風景、母ケンドラ・ダンブルドアと父パーシバル・ダンブルドアの記憶らしき断片を見せ、彼の中に長年眠っていたオブスキュラスをふたたび解放するための『目的(憎しみの対象)』を与える。

クリーデンスは、その名前を受け取り、グリンデルバルドの渡す杖——ニワトコの杖の一部のように見える漆黒の杖——を握りしめる。ヌメンガードの城に戻った彼のもとへ、不死鳥が舞い降りる。『ダンブルドア家の長男に絶望が訪れたとき、不死鳥が現れる』という古い言い伝えを、グリンデルバルドは静かに口にする。

この宣告の真偽は本作公開時、ハリー・ポッター本編の設定(アルバスにはアバーフォースとアリアナしか兄弟がいない)と矛盾し、世界中で激しい論争を呼んだ。シリーズ第3作『ダンブルドアの秘密』で、この『血のつながり』がどう再解釈されたかは、本記事末尾の続編接続パートで触れる。

ホグワーツ——血の誓いの開示

パリから生還したニュート、ティナ、ジェイコブ、テセウス、ユスフ・カマは、まずホグワーツへ向かう。ニュートは、レタの遺品から父スキャマンダーの古い遺物——青いガラス球の中に閉じ込められた、銀色の鎖と一滴の血——を取り出し、これをアルバス・ダンブルドアの校長室(当時はまだ闇の魔術に対する防衛術の教官執務室)の机に置く。

ダンブルドアは黙ってそのガラス球を持ち上げ、闇に翳して言う——『若いころ、私とゲラートは血の誓い(ブラッド・パクト)を交わした。互いに対して直接戦わない、互いを傷つけないという誓いを、血で結んだのだ』。ニュートが見つけてきたのは、その血の誓いの容器そのものだった。『これがある限り、私はあの男に手を出せない』と告げる青年期のダンブルドアの瞳には、若き日の自分の選択への後悔と、その後悔を共に背負う仲間が初めてできたことへの静かな喜びが同居している。

ダンブルドアは『これを壊す方法を、私たちは探さなければならない』と、本作の閉幕を予告する台詞を残す。本作の物語はここで閉じ、シリーズ全体の課題——血の誓いの破壊と、グリンデルバルドへの正面対峙——を次作『ダンブルドアの秘密』へ持ち越して終わる。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して示す。前作で導入されたMACUSA・ノーマジ・オブスキュラスといった概念に加え、本作からはレストレンジ家系図、マレディクタス、血の誓い(ブラッド・パクト)、プロテゴ・ディアボリカといった魔法ワールドの新概念が大量に投入される。

人物

  • ニュート・スキャマンダー
  • ティナ・ゴールドスタイン
  • クイニー・ゴールドスタイン
  • ジェイコブ・コワルスキー
  • クリーデンス・ベアボーン/オーレリアス・ダンブルドア(と宣告される人物)
  • ゲラート・グリンデルバルド
  • アルバス・ダンブルドア(青年期)
  • レタ・レストレンジ
  • テセウス・スキャマンダー
  • ユスフ・カマ
  • ナギニ(マレディクタス)
  • アバナシー
  • ヴィンダ・ローズィエ(グリンデルバルドの側近)
  • ロジエ・ル・ロワール
  • クラフトール(魔法生物学者の従者)
  • イルマ・デュガード
  • ニコラ・フラメル
  • スキェンダー(シルク・アルカン団長)
  • コルヴァス・レストレンジ四世
  • コルヴァス・レストレンジ五世(赤子)
  • セラフィーナ・ピッカリー(プロローグ)
  • トーキス(英国魔法省)

魔法生物・種族

  • ニフラー(と本作で初登場する子ニフラー4匹)
  • ボウトラックル(ピケット)
  • ケルピー(鞄内の水生獣、ニュートが鱗を清掃する場面)
  • ズーウー(東洋の巨大なネコ科獣)
  • オーグリー(アイルランドの泣く鳥)
  • アウギュレイ
  • マタゴ(パリ地下のフランス系魔法ネコ)
  • セストラル(移送馬車)
  • 不死鳥(クリーデンスの前に現れる)
  • マレディクタス(女系遺伝の血の呪いを受けた人間)

呪文・魔法

  • プロテゴ・ディアボリカ(防御の悪魔の青い炎)
  • ブラッド・パクト(血の誓い)
  • 未検出可能拡張呪文(鞄内)
  • リフレンドラム(記憶魔法/本作でクイニーが解除を試みる場面)
  • アロホモラ
  • アクシオ
  • 守護霊呪文(ニュートとレタの学生時代の幻影)
  • ヴェリタセラム類の自白薬
  • 影変身術(グリンデルバルドの偽装)
  • 魔法地図の動的投影(グリンデルバルドの戦争予言映像)
  • アパレート(瞬間移動)

魔法道具

  • ニュートのスーツケース(魔法動物の生態系)
  • 血の誓いの容器(青いガラス球)
  • レストレンジ家の家系樹(パリの魔法省記録保管室の天井に咲く)
  • イルマ・デュガードの帳簿
  • MACUSAの移送馬車
  • グリンデルバルドの白い杖(後にエルダー・ワンドではない)
  • クリーデンスに渡される黒い杖
  • ニコラ・フラメルの賢者の石(書斎の机上に小さく置かれる)
  • クラインの瓶のようなフランス魔法省記録の機構

場所

  • 大西洋上空(MACUSAの移送馬車)
  • ロンドンの英国魔法省
  • ホグワーツ魔法魔術学校(防衛術教室/天文塔/屋上)
  • パリ市街(モンマルトル、ノートルダム周辺)
  • ペール・ラシェーズ墓地と地下円形空間
  • フランス魔法省(パリの宝石箱のような記録保管室)
  • シルク・アルカン(魔法サーカス団の本拠)
  • ニコラ・フラメルの錬金術師の家
  • レストレンジ家の家族霊廟
  • ニュートのロンドンの家

組織

  • 英国魔法省
  • MACUSA(米国魔法議会)
  • フランス魔法省
  • 国際魔法使い連盟
  • グリンデルバルド派(信奉者集団)
  • シルク・アルカン
  • ホグワーツ教職員
  • オーラ・オフィス(各国)

主要登場人物

本作は前作の四人組——ニュート、ティナ、クイニー、ジェイコブ——を引き継ぎつつ、青年期のダンブルドア、グリンデルバルド、レタ・レストレンジ、テセウス・スキャマンダー、ユスフ・カマ、ナギニという新顔を一気に追加する群像劇である。情報量は前作の倍近く、観客が把握すべき固有名詞は二倍以上に膨らんでいる。

ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)

前作の動物学者としての存在感を引き継ぎつつ、本作のニュートはより明確に『戦わない英雄』としての立場を引き受ける。英国魔法省の取引(オーラ補佐になれば旅行禁止を解く)を断り、ダンブルドアの密命を承諾するという二つの選択は、彼が国家ではなく個人の倫理に従う人間であることを宣言する。

兄テセウスとの関係も初めて描かれる。テセウスは英国魔法省の出世コースを歩んできた『模範生』であり、対するニュートはホグワーツ時代に魔法生物の取り扱いをめぐる事件で退学処分を受けかけた『はみ出し者』——その兄弟の温度差は、エディ・レッドメインとキャラム・ターナーの並びの背丈と肩の角度だけで、台詞に頼らず観客に伝わる。

そしてレタ・レストレンジとの過去——ホグワーツ時代の魔法生物の研究室での、共通の孤独——が、本作で初めて視覚化される。彼が彼女を本当に愛したかは台詞では明言されない。だが彼女がプロテゴ・ディアボリカに呑まれる直前、ニュートとテセウスに同じ重みで投げかける『I love you』は、二人の兄弟が同じ女性を愛した過去をも一瞬で照らし出す。

ニュート・スキャマンダーの人物ページ

アルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)

ハリー・ポッター本編で繰り返し言及されたものの一度も映像化されてこなかった『青年期のダンブルドア』を、本作で初めてジュード・ロウが正面から演じる。年齢設定は四十代半ば、ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術の教授職に就いている時期である。

ジュード・ロウは、リチャード・ハリス/マイケル・ガンボン両者が築いた『老いた賢者ダンブルドア』のイメージを尊重しながら、しなやかさ、悪戯っぽさ、片頬の微笑み、青い目に揺れる秘密——という別の像を作り上げた。彼のダンブルドアは、知っているのに語らず、笑っているのに哀しい。

本作で初めて開示される『血の誓い』は、若いダンブルドアとグリンデルバルドが互いに対して直接戦わないと血で交わした不可侵の誓いであり、ハリー・ポッター本編で『なぜダンブルドアは長年グリンデルバルドと戦わなかったのか』という空白を、シリーズが正面から物語の主題に据えた最初の作品でもある。

アルバス・ダンブルドアの人物ページ

ゲラート・グリンデルバルド(ジョニー・デップ)

前作のラスト数分だけ素顔を見せたグリンデルバルドが、本作では冒頭の脱獄から終幕の宣告まで、ジョニー・デップの素顔で全編に登場する。銀色の短髪、左右で色の違う目(左が薄い灰色、右が薄い青)、白いコートに白い杖、低くゆったりとした声。

彼の暴力は最小限である。本作のグリンデルバルドは、人を斬らず、人を撃たず、人を脅さない。代わりに、人の傷を見つけ、その傷の上にやさしく毛布をかける。クイニーに対しても、クリーデンスに対しても、自分の信奉者に対しても、彼が最初に差し出すのは『君は不当に扱われてきた、私はそれを理解する』というメッセージである。

ジョニー・デップは、長年の派手な役柄(ジャック・スパロウ、ウィリー・ウォンカ、マッド・ハッター)から距離を取り、本作では身振りを徹底的に抑えた静かな悪を演じる。一切のジョークを排した彼の演技は、本作のヴィランをハリー・ポッター本編の『憎悪のヴォルデモート』とはまったく違う極へ運んでいる。

ゲラート・グリンデルバルドの人物ページ 用語:グリンデルバルド

レタ・レストレンジ(ゾーイ・クラヴィッツ)

本作のもう一人の中心人物がレタ・レストレンジである。フランスの古い純血家系レストレンジ家の最後の女系後継者で、ニュートのホグワーツ時代の唯一の友人にして恋人の側面を持ち、現在はテセウス・スキャマンダーの婚約者でもある。

ゾーイ・クラヴィッツは、強さと脆さが同じ厚みで同居する『家族の罪を一人で抱えてきた女性』を、ほとんど目線と細い指の震えだけで表現する。少女時代の蒸気船での赤子取り違え——あれが本当にコルヴァス五世だったのか、それとも別の赤子だったのか——という記憶が、本作の彼女のあらゆる行動を内側から制御している。

クライマックスのプロテゴ・ディアボリカでの自己犠牲は、本作のもっとも美しい数十秒のひとつである。彼女はテセウスとニュートの兄弟双方に向けて、同じ重みで『I love you』を残して炎の中へ消える。

クリーデンスとナギニ(エズラ・ミラー/クラウディア・キム)

クリーデンス・ベアボーンは、前作の地下鉄シーンで散らされたはずのオブスキュリアルだが、本作冒頭で生存していたことが判明する。彼は自分の出生の真実を求めて、サーカス団の檻からマレディクタスのナギニを連れ出し、パリの旧市街でイルマ・デュガード、レストレンジ家系図、グリンデルバルドへと一歩ずつ近づいていく。

エズラ・ミラーの演技は、前作の『恐怖と抑圧で内側を食われる青年』から、『自分の名前を求めて街を歩く青年』へと色を変える。彼の杖の握り方は前作より強く、目線は前作より高い。

ナギニ役のクラウディア・キムは、長く本編でヴォルデモートの蛇として知られたキャラクターの前史を、人間時代の女性として演じる。本作のナギニは、まだ蛇身に永久固定されていない段階にあり、サーカス団の見世物として大蛇に変身する場面と、人間として静かに椅子に座る場面を交互に往復する。クリーデンスへの感情は明確に恋愛ではなく、『同じく檻に閉じ込められてきた者』としての連帯である。

テセウス、ジェイコブ、ティナ、クイニー

テセウス・スキャマンダー(キャラム・ターナー)は、英国魔法省のオーラ主任で、ニュートの兄。第一次世界大戦の戦争英雄であり、レタの婚約者でもある。本作で初登場し、ニュートとの兄弟関係の温度差、レタへの献身、そしてクライマックスでのレタの死を抱きとめる短い数秒で観客の記憶に残る。

ジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォーグラー)は、前作の忘却の雨を浴びながらも、感情のかたちでクイニーへの愛情を保ち続けていた人物として復帰する。本作では、クイニーが彼にかけていた弱い恋愛魔法を解かれた後、彼女との価値観の差で深く衝突し、最終的にクイニーがグリンデルバルド側へ走るきっかけを作ってしまう。

ティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)は、MACUSAのオーラに復職したうえでパリ任務に就いており、ニュートとの再会はぎこちなく始まる。誰かが『ニュートとティナは婚約した』と新聞で読み違えた情報が二人の間に挟まり、本作の前半は二人のすれ違いコメディとして進む。終盤のペール・ラシェーズで、二人は手を取り合って炎の壁の外へ脱出する。

クイニー・ゴールドスタイン(アリソン・スドル)は、本作で最大の変化を見せる。前作の天真爛漫な読心術の少女が、本作では『愛する人と一緒にいるためなら、ローパポート法を破ってでも、グリンデルバルドの言葉を信じてでも』と動く女性へ転調する。彼女の離反は、本作のもっとも痛い静かな悲劇である。

舞台と用語

舞台は1927年、欧州。プロローグの大西洋上空と、ロンドン、パリ、そしてホグワーツが本作の主要舞台になる。前作のジャズ・エイジ・ニューヨークが『新しい大陸の魔法社会』を見せる空間だったのに対し、本作のロンドンとパリは『古い大陸の魔法社会の影』を見せる空間として描かれる。霧、雨、石畳、地下、墓地——本作の画面は前作よりも数段暗く、湿度が高い。

用語面では、レストレンジ家系図、マレディクタス(女系遺伝の血の呪い)、ブラッド・パクト(血の誓い)、プロテゴ・ディアボリカ(防御の悪魔の炎)、フランス魔法省、シルク・アルカン、ニコラ・フラメルといった新概念が本作で初投入される。とくに本作で初めて画面に出てくる『ニコラ・フラメル』は、ハリー・ポッター本編第1作で言及される六百歳の錬金術師であり、本作の時点でもまだ存命であるという接続が示される。

場所の選定にも意味がある。クライマックスに用いられるペール・ラシェーズ墓地は、ショパン、オスカー・ワイルド、ジム・モリソンの墓所として実在するパリ東部の歴史的墓地である。地下に古代円形劇場のような秘密空間がある——という架空の上書きが、本作のグリンデルバルド集会の舞台となる。実在の墓地の上に魔法的な地下世界を重ねるという視覚処理は、現実の地続きで魔法ワールドが存在するという本シリーズの世界観を強める。

用語:魔法ワールド 用語:魔法の杖 用語:ニワトコの杖 用語:ホグワーツ

制作

前作の興行的成功を受けて、ワーナー・ブラザースは2016年内に本作の製作開始を発表した。撮影は2017年7月から12月にかけて行われ、製作費は約2億ドル(前作の約1.8億ドルから増額)。本セクションでは企画と脚本、キャスティング、衣装、美術と視覚効果、音楽と音響、撮影と編集を分けて整理する。

企画と脚本

本作は前作公開直後に脚本作業が本格化し、J.K.ローリングが単独で脚本を書き下ろした。ハリー・ポッター本編全8作で脚本を務めたスティーヴ・クローヴスは、本作でも製作として並走している。

本作の脚本上の最大の挑戦は、五部作構想の『第2作』としての位置付けである。前作で導入された四人組のドラマを引き継ぎつつ、青年期ダンブルドアとグリンデルバルドの血の誓い、レストレンジ家の家系劇、ナギニ・マレディクタスの呪いといった新たな縦糸を同時に張らねばならず、結果として本作の情報密度は前作の倍近くに膨れあがった。

脚本上の最も論争を呼んだ決断が、ラストカットで明らかになる『クリーデンス=オーレリアス・ダンブルドア』の宣告である。ハリー・ポッター本編で確立されていたダンブルドア家の家族構成(アルバス、アバーフォース、アリアナの三兄妹)と一見矛盾するこの宣告は、本作公開時、世界中のファンコミュニティで激しい論争を呼んだ。続編『ダンブルドアの秘密』で、この『血のつながり』がどのように再解釈されるかについては、本記事末尾の続編接続で触れる。

キャスティング

本作のキャスティングの中心は、青年期のアルバス・ダンブルドア役を担うジュード・ロウである。彼は2010年代以降、シャーロック・ホームズ映画シリーズのワトスン、『ホリディ』『コールド・マウンテン』といった作品で『落ち着いた英国紳士』としてのキャリアを積んでおり、本作のしなやかなダンブルドアに違和感なくはまった。

兄テセウス・スキャマンダー役はキャラム・ターナー。『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(2015)で頭角を現したばかりの英国俳優で、本作で一気に国際的な知名度を上げた。レタ・レストレンジ役のゾーイ・クラヴィッツは『ディヴァージェント』シリーズ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を経て、本作のレタで初めて魔法ワールドのドラマの中心に立つ。

ナギニ役のクラウディア・キムは韓国出身の俳優で、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のヘレン・チョ博士役で国際的に知られていた。ハリー・ポッター本編で長くヴォルデモートの蛇として描かれてきたキャラクターを、アジア系の女優が前史で人間として演じる——という配役そのものが、本作公開時に大きな議論を呼んだ。

ユスフ・カマ役にはセネガル系フランス人俳優ウィリアム・ナディラム、ニコラ・フラメル役にはチリ系フランス人の演劇人ブロンティス・ホドロフスキー(アレハンドロ・ホドロフスキー監督の息子)。フランス魔法省の幹部や群衆エキストラの多くもフランス・パリでの追加撮影で起用され、本作のヨーロッパ的な空気感を支えている。

衣装デザイン

コリーン・アトウッドが前作に続いて衣装デザインを務めた。彼女は前作で4度目のアカデミー衣装デザイン賞を獲得しており、本作でも第91回アカデミー賞、第72回英国アカデミー賞双方で候補に挙がっている。

本作の衣装は、前作のニューヨーク1920年代から、パリ・ロンドン1920年代へ大きく軸を移している。グリンデルバルドの白いコートと白い杖、ダンブルドアの深いボルドーのロングコート、レタ・レストレンジの黒い細身のドレスとケープ、ティナの旅装のオリーブ色、クイニーの淡いピンクから後半の灰色へ落ちる色設計——どの衣装も、前作以上に各キャラクターの心情と『どちら陣営に近づきつつあるか』を色で語る。

MACUSAの黒い制服群、英国魔法省の濃紺の制服、フランス魔法省の灰青色の制服、グリンデルバルド派の黒と銀の祭服など、各国・各陣営の色彩設計も明確に分けられており、ペール・ラシェーズの大集会で観衆が円形階段に座る場面は、まるでオペラの群像場面のような色面構成になっている。

美術と視覚効果

美術監督は前作に続きスチュアート・クレイグ。本作では1927年のパリを再現するため、英国リーヴスデン・スタジオのバックロットに新規にパリ街路の長大なセットが組まれた。マンサード屋根、鋳鉄製のバルコニー、ペール・ラシェーズの墓所群、ノートルダム遠景、ガス灯と石畳の路地——どれもパリ実地ロケと組み合わせたうえでスタジオセットへ落とし込まれている。

フランス魔法省のロビーは、本作の美術のハイライトの一つである。天井までの高い吹き抜けに、円柱、彫像、書架、台帳が幾何学的に配置され、その天井そのものがレストレンジ家系図の動的タペストリーになって動き続ける——という構成は、ハリー・ポッター本編の魔法省の階段と並ぶ、シリーズ屈指の魔法建築になった。

視覚効果はフレームストアとDNEG(旧ダブル・ネガティブ)を中核に複数のスタジオが並行担当。ペール・ラシェーズ地下のプロテゴ・ディアボリカ(青い炎)のシークエンスは、流体シミュレーション、火炎パーティクル、衣服布のシミュレーション、群衆エキストラのデジタル合成を一つの場面に重ねる、本シリーズで最も複雑なVFXショットの一つとして組み上げられた。第91回アカデミー視覚効果賞の候補に挙がっている。

ニュートのスーツケース内部は前作から拡張され、本作ではケルピー(水生獣)の水中清掃シーンや、子ニフラー4匹のドタバタなど、新しい魔法動物の生態系が加えられている。

音楽と音響

音楽はジェイムズ・ニュートン・ハワードが続投。前作で確立した『主役テーマ(ニュート/スーツケース)』『ティナ/クイニーの優しい主題』『グリンデルバルドの薄ら寒い陰影』に加えて、本作ではジョン・ウィリアムズの『ヘドウィグのテーマ』を、ホグワーツ場面の終盤に控えめに引用してくる。観客にとって、青年期ダンブルドアの執務室の窓辺にあの旋律が静かに乗ってくる瞬間が、本作随一の『魔法ワールドへ戻った』という時間旅行の合図になる。

ハワードはレタ・レストレンジ専用の旋律も書き下ろしている。フルートとハープを中心とした静かな主題で、彼女の少女時代の蒸気船の回想と、クライマックスのプロテゴ・ディアボリカの自己犠牲の双方で、ほぼ同じ旋律が変奏されて流れる。

音響では、グリンデルバルドの低く乾いた声と、プロテゴ・ディアボリカの『青い炎が空気を裂く音』、そしてペール・ラシェーズの群衆の沈黙——演説中の数千人の観衆が一切音を立てない瞬間——の三層が、本作のドラマを支えている。

撮影とロケ

撮影監督はフィリップ・ルースロが続投。本作はほぼ全編が英国ワーナー・ブラザース・スタジオ・リーブズデンで撮影され、追加でフランス・パリ実地ロケが行われた。リーブズデンには前作のニューヨーク街路セットの隣に、パリ街路セットとフランス魔法省ロビーの巨大セットが組まれている。

撮影期間は2017年7月3日から2017年12月20日にかけての約24週。ジョニー・デップ、ジュード・ロウのスケジュール調整のため、いくつかのシーンは撮影順を入れ替えて行われた。

ロケのハイライトは、パリ郊外のスイス国境近くにある実在の修道院や、リバプール市内のジョージ王朝建築群(前作と同じく、1927年ロンドン/パリの代用として用いられた)。本作の色温度は、前作よりも全体に青く、緑がかった寒色寄りに設計されており、ルースロは『この物語は冬の物語だ』としばしば語っている。

編集

編集は前作に続いてマーク・デイ。本作は『ニュート+ジェイコブ』『ティナ』『クイニー』『クリーデンス+ナギニ』『レタ+テセウス』『ダンブルドア』『グリンデルバルドと信奉者』という七本の縦糸を同時に編む必要があり、編集の難度はシリーズ随一になった。

クライマックスのペール・ラシェーズ地下集会は、観客の入場、グリンデルバルドの登場、戦争予言映像の投影、信者の選別、プロテゴ・ディアボリカの発動、レタの自己犠牲、ヌメンガードでのオーレリアス宣告までを、ほぼ20分の連続したアクション・ドラマシークエンスとして編み上げている。マーク・デイはこの編集により、本作の視覚的なクライマックスをシリーズ屈指の濃度へ押し上げた。

公開と興行

本作は2018年11月16日に米国で、同年11月23日に日本で全国公開された。北米初週末興収は約6240万ドル、最終的に北米約1億5950万ドル、全世界興収は約6億5500万ドルに達した。

全世界興収約6.5億ドルは、本シリーズの基準では十分な数字だが、前作の約8.14億ドルからは下落しており、米国本国での落ち込み(前作の北米約2.34億ドルから本作の約1.6億ドルへ)が目立った。一方、アジア、特に中国本土では前作を上回る興収を記録し、結果として本作の海外比率(全世界興収のうち北米外の比率)はシリーズ最高となった。

受賞面では、第91回アカデミー賞視覚効果賞、第72回英国アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞、サターン賞ファンタジー映画賞、ファンタジー助演女優賞(ゾーイ・クラヴィッツ)などへのノミネートを獲得した。

本作の興行成績の落ち込みと批評の割れを受けて、ワーナー・ブラザースは『魔法ワールド』前日譚シリーズの5部作構想を最終的に3部作へ縮小することを決定し、続編『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)がシリーズ完結編として企画されていく。

批評・評価・文化的影響

本作の批評は、シリーズで最も激しく割れた。米国の主要批評集計サイトでは、批評家評価が前作から大幅に下落し『賛否が拮抗する以下』の水準まで落ちた。観客評価は批評家評価を上回ったが、それでも前作よりは明確に低い数字で着地した。

批判の中心は、情報密度の高さと、五部作構想の途中であるがゆえの『単体としての結末の不在』である。レストレンジ家系図、マレディクタス、血の誓い、オーレリアス宣告という新概念が同時並行で投入され、初見の観客は登場人物の関係を把握するだけで上映時間の半分を使う構成になっている。同時に、本作単体のクライマックスは『次作への引き継ぎ』に終始し、独立した完結感を持ちにくい。

一方、評価された側面も多い。ジュード・ロウのダンブルドア、ジョニー・デップのグリンデルバルド、ゾーイ・クラヴィッツのレタという三人の演技、フランス魔法省のセットデザイン、コリーン・アトウッドの衣装、ジェイムズ・ニュートン・ハワードの音楽——これらは概ね高い評価を受けた。とくにレタの自己犠牲のシークエンスは『シリーズ全体で最も美しい数十秒のひとつ』として、肯定派の評論で繰り返し引用された。

文化的には、本作はハリー・ポッター本編で十数年にわたり築かれた『ダンブルドア家の家族構成』という安定した設定に正面から踏み込んだ作品として記憶されている。クリーデンス=オーレリアス・ダンブルドア宣告は、公開時のファンコミュニティを真っ二つに割り、続編『ダンブルドアの秘密』の解釈と合わせて、シリーズの評価そのものに長く影を落とすことになった。

舞台裏とトリビア

本作冒頭のMACUSA移送脱獄シーンは、当初の脚本では地上の街道で行われる予定だったが、撮影前にイェーツ監督とローリング脚本のあいだで議論が重ねられ、最終的に大西洋上空の馬車という設定に書き換えられた。雷雲と馬車の組み合わせは、ジョン・ウィリアムズ『プリズナー・オブ・アズカバン』の三階建てバスのシークエンスから着想を得たとも語られている。

ジュード・ロウは、ダンブルドア役のオファーを受けたとき、リチャード・ハリスとマイケル・ガンボン両者の演技を改めて見直したうえで、『同じ人物に見えなくてもよい、ただし同じ目をしていればよい』という方針で青年期の像を作り上げたと、公開後のインタビューで語っている。

ナギニ役のキャスティングを巡っては、ハリー・ポッター本編で長くヴォルデモートの蛇として描かれてきたキャラクターを、アジア系女優が前史で人間として演じることへの議論が公開前から噴出した。クラウディア・キム自身は『この役柄は、檻に閉じ込められた人間として演じるべきもの。その出自を含めて受け止めて演じた』と複数のインタビューで答えている。

ペール・ラシェーズの実地撮影では、本物の墓地のすぐ近くで早朝にショットを撮ったが、墓地内部での撮影は許可されず、地下シーンはリーブズデンのスタジオセットで再現された。地下に古代円形劇場が広がるという設定は、完全にフィクションである。

ニコラ・フラメル役のブロンティス・ホドロフスキーは、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の息子であり、子供時代から父の作品(『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』)に出演してきた俳優・演劇人である。ハリー・ポッター本編第1作で言及だけされていた六百歳の錬金術師を、彼のしわの深い顔と低い声で初めて映像化したことになる。

テーマと解釈

本作の中心テーマは『優しい言葉で勧誘される全体主義』である。グリンデルバルドの危険は、彼が暴力で人を屈服させる怪物だからではなく、彼が傷ついた人間の痛みを正確に見抜き、その痛みに対して『私は理解する、私と一緒に来れば自由になれる』と差し出してくる点にある。クイニーが彼を選び、信者たちが彼を選び、クリーデンスが彼を選ぶ過程は、観客に『なぜ歴史上の独裁者に人々はついていったのか』をやさしくゆっくりと再上演してみせる。本作の公開は欧米で極右ポピュリズムが各国で台頭していた時期と重なり、グリンデルバルドの演説は『戦争の予告』ではなく『自由の宣言』として行われる——という脚本上の選択は、明確に同時代の政治状況へのコメントとして読まれた。

もう一本の柱が『血で結ばれた誓いは、血を超えて続く』である。アルバスとゲラートの血の誓い、レストレンジ家の家族の血、ダンブルドア家の隠された家族の血、ユスフ・カマの父から受け継いだ復讐の誓い——本作の人物のほとんどが、自分が選んでいない血の契約に縛られて動いている。本作のもっとも静かな悲劇は、自分の血と自分の名を選べない人間(クリーデンス、ナギニ、レタ、クイニー)が、外から差し出された『名前』や『誓い』に飛びついてしまう瞬間に集約されている。

そして第三のテーマが、ニュートを通じて繰り返される『戦わない選択』である。英国魔法省の取引を断り、グリンデルバルドの集会で杖を抜かず、レタの自己犠牲を抱きとめて炎の壁の外へ走り出す——本作のニュートは、前作にも増して『戦わずに収める英雄』として徹底される。ハリー・ポッター本編が学園生たちの『闇と戦う英雄譚』であったのに対し、本シリーズはここで、戦いの外側に居続けようとする人間の倫理を、長編五部作の主題として明確に宣言する。

見る順番(補助)

本作は『魔法ワールド』前日譚シリーズの第2作にあたるため、必ず第1作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』を先に観てから本作に入ることを強く勧める。第1作のラスト、アリゾナでのグリンデルバルドの逮捕場面が、本作冒頭の脱獄に直結する。

ハリー・ポッター本編との関係では、本編8作を公開順で通したあとに本シリーズへ移るのが標準的な視聴順である。本編で繰り返し言及されるアルバス・ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルドの関係、ニコラ・フラメル、ナギニ、ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術教室——本編で知ったうえで本作の細部に戻ると、ジュード・ロウのダンブルドアの一瞬の沈黙の重みが何倍にも深まる。

時系列順で観るなら、本作(1927年)→続編『ダンブルドアの秘密』(1932年)→ハリー・ポッター本編1作目(1991年学校入学)と並べ替えることもできる。ただし初見では、設定の発見順が物語の感情を支えるため、公開順での視聴を強く勧める。

  1. 本作1927年・ロンドン/パリ/ホグワーツ(ハリー本編の約64年前)
  2. 前作1926年・ニューヨーク(『魔法使いの旅』)
  3. 次作1932年・ベルリン/ブータン/ホグワーツ(『ダンブルドアの秘密』)
  4. 本編本筋1991年〜1998年(ハリー・ポッターのホグワーツ7年間)
魔法ワールド映画一覧 前作:ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 次作:ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 公開順で見る 時系列順で見る ファンタスティック・ビースト見方ガイド 本編とファンタスティック・ビーストの接続 初心者向けガイド

よくある質問(補助)

『あらすじだけ知りたい』場合は、MACUSAの拘禁から脱獄したグリンデルバルドがパリで信奉者を集め、ニュート・スキャマンダーが若き日のアルバス・ダンブルドアの密命を受けてクリーデンスを追い、パリのペール・ラシェーズ墓地地下で彼の出生の真実が宣告される、という流れを押さえれば十分である。

『結末・ネタバレを知りたい』場合は、レタ・レストレンジが青い炎の中で自己犠牲を遂げること、クイニー・ゴールドスタインがグリンデルバルド側へ離反すること、クリーデンスが『お前はオーレリアス・ダンブルドアだ』と宣告を受けること、そしてホグワーツでアルバス・ダンブルドアが青いガラス球——血の誓い——をニュートに開示すること、が核となる。

『ハリー・ポッター本編との矛盾はどうなるのか』に対しては、本作のラストでグリンデルバルドが告げる『お前はアルバスの弟だ』という宣告は、シリーズ第3作『ダンブルドアの秘密』で再解釈されることになる。本作の時点では、その宣告の真偽は意図的に宙吊りにされている。

『前作との温度差が大きく感じる』に対しては、それは脚本の意図であり、前作の『魔法動物のスーツケース捕り物』から、本作の『欧州全体を巻き込む政治劇』へシリーズの軸が大きくシフトしている、と捉えるのが妥当である。前作の軽さの一部は本作にも引き継がれている(クイニーとジェイコブの再会、ニフラーの子ニフラー4匹のドタバタなど)。

『続編はどれを見ればよいか』に対しては、本作→『ダンブルドアの秘密』(2022)の公開順で問題ない。第3作で青年期ダンブルドアとグリンデルバルドの関係が真正面から決着に向かう。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・受賞・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Harry Potter公式(Wizarding World)作品ページ
  2. Wizarding World公式
  3. Harry Potter Wiki(英語)Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald
  4. IMDb: Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald (2018)
  5. Academy Awards Database (91st, Visual Effects)

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参照・確認先

公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。

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