物語 / 単行本
HUNTER×HUNTER 第27巻
漫画『HUNTER×HUNTER』第27巻「名前」を解説。キルア対ユピー、イカルゴ対ブロヴーダ、プフの脱出、ナックルの解除、王とネテロの対話を整理する。
第27巻「名前」は2009年12月25日に発売され、No.281からNo.290までを収録する。宮殿突入作戦は護衛軍との分散戦へ入り、キルア、イカルゴ、モラウ、ナックルらが別々の判断を迫られる。
メルエムはネテロとの対話を求めるが、討伐側は戦闘を避けられない。ネテロは王の名前を条件に勝負を提案し、二人は宮殿から離れた決闘場所へ向かう。

単行本第27巻『名前』の書影 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

神速でユピーの動きを止めるキルア 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

APR解除を迫るユピーとモラウを守るナックル 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

地下でイカルゴと銃撃戦を行うブロヴーダ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

モラウの煙の監獄から脱出を図るプフ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博
基本情報
| 媒体 | 漫画単行本 |
|---|---|
| 巻数 | 第27巻 |
| 巻題 | 名前 |
| 発売日 | 2009年12月25日 |
| 収録話 | No.281〜No.290 |
神速でユピーを止めるキルア
キルアは神速を使い、ユピーの反応より先に打撃と電撃を重ねる。相手を倒す火力ではなく、動きを止めて時間を作る戦いである。
落雷と疾風迅雷で自動的に反応し、巨大な腕の間へ侵入する。ユピーは攻撃を受けても致命傷を負わないが、自分の身体が意図どおり動かない状況に置かれる。
電気の蓄えが尽きると神速は続かず、キルアは離脱する。優勢に見えた連打は時間制限付きであり、討伐を完了した結果ではない。
メレオロンを送り出す役割
キルアは神速の後、メレオロンと神の不在証明を組み合わせて戦場へ戻す。透明化は本人だけでなく、触れて息を止める仲間も隠す。
メレオロンは攻撃力で護衛軍を倒せないが、接触を悟られず能力を運ぶ役割を担う。ナックルの天上不知唯我独損と組み合わせることで価値が増す。
キルア自身はゴンのもとへ向かい、作戦全体の優先順位を変える。仲間を適切な場所へ渡してから、自分が守る相手を選ぶ。
イカルゴとブロヴーダの銃撃戦
地下ではイカルゴがブロヴーダと戦い、車両や施設を利用して位置を隠す。正面の火力では相手の連射能力に及ばない。
眠りガスを使ってブロヴーダの意識を奪い、止めを刺せる状態へ持ち込む。しかしイカルゴは引き金を引かず、殺害を選ばない。
敵を生かした判断は危険を残すが、後にブロヴーダが人間側へ関わる余地を作る。勝利を死亡確認だけで決めない一戦である。
煙の監獄を出たプフ
モラウは煙の監獄でプフを閉じ込めていたが、内部に残っていたのは分身の核となる繭だった。プフは細かな鱗粉へ分かれて外へ出る。
モラウは拘束が成功していると考え、能力を解除して確認する。相手の身体構造を知らないため、閉じ込めた対象の量と本体位置を正確に測れない。
プフはモラウの煙管を奪い、川へ捨てる。煙の兵隊を新しく作れなくなり、モラウは既存の分身だけで戦場を支える。
ビゼフを救出するヒナとシドレ
宮殿崩壊の地下で、ヒナとシドレはビゼフを見つけて連れ出す。王直属護衛軍の決戦と並行して、下層の人間と蟻も脱出へ動く。
ビゼフは東ゴルトーの権力機構へ属していたが、崩落後は保護される側になる。地位が失われ、誰と行動するかが生存を決める。
シドレには人間だった頃の記憶につながる反応が残る。救助の場面は、キメラアントが全員同じ忠誠と価値観を持たないことを示す。
百式観音の爆発と救出
遠方の戦闘で生じた大きな爆発は宮殿側にも伝わり、突入組は王とネテロの状況を推測する。音と揺れだけでは、どちらが優勢かまでは分からない。
シュートは負傷して戦線を離れ、ノヴの能力で救出される。精神を消耗したノヴも、設置済みの入口を使う搬送役として作戦へ戻る。
モラウも後にノヴの空間へ退避する。前線で戦い続けることだけが貢献ではなく、負傷者を回収して作戦の損失を抑える役割がある。
ナックルがAPRを解除した理由
ナックルのAPRはユピーへ利息を加え、一定額を越えれば絶へ追い込む。時間を稼ぐほど勝利条件へ近づく能力である。
ユピーはモラウとメレオロンを殺せる状況を作り、ナックルへ能力解除を要求する。仲間を救うため、ナックルは蓄積した利息を捨てる。
解除は戦術上の敗北だが、仲間の命を勝利条件より優先した結果である。ユピーも約束どおり二人を殺さず、敵への見方を変える経験を得る。
プフとユピーが王へ向かう
プフとユピーは護衛軍として王の位置を最優先し、宮殿の敵を残して決闘場所へ急ぐ。二人とも王への忠誠は強いが、判断の仕方は異なる。
ユピーは戦った人間へ一定の敬意を持ち始める一方、プフは王の心を変えたコムギの存在を危険視する。合流しても情報共有の目的は同じではない。
王の救出を急ぐことで、突入組は宮殿で即座に全滅せずに済む。しかし護衛軍が王へ戻れば、ネテロとの一対一という前提が崩れる危険が生まれる。
戦いを拒む王と任務を負うネテロ
メルエムはネテロをすぐ殺さず、人間と蟻の将来について話そうとする。コムギとの対局を通じ、力以外の価値を認め始めている。
ネテロは王の言葉に変化を感じても、討伐任務を放棄できない。個人として会話へ応じたい気持ちと、会長として背負う決定が衝突する。
双方が同じ目的で戦うのではない。王は自分の名を知りたいという不足を抱え、ネテロはその情報を勝負の条件へ使う。
名前を賭けた決闘
ネテロは王が自分を負かせば、女王の付けた名前を教えると提案する。王は殺さずに敗北を認めさせる条件を受け入れる。
巻題の「名前」は、単なる呼称ではなく王が自分を何者と考えるかへ関わる。王としての地位と、母から与えられた個人名が分かれている。
二人は宮殿から離れた場所へ移動し、他者を巻き込まない形で戦いを始める。交渉が成立しても、人類と蟻の対立が解決したわけではない。
突入組が得た時間と失った資源
キルアの神速はユピーを倒せなくても、ナックルのAPRへ利息が加わる時間を作る。モラウの煙の兵隊も同様に敵の注意を分散するが、プフに煙管を奪われると補充できない。討伐側は時間を稼ぐたび、電力、煙、体力という有限資源を失う。
ユピーは身体を変形させ続け、攻撃範囲と移動方法を更新する。突入組は最初に立てた役割分担だけでは追いつけず、その場で誰を救い、誰を追うかを選び直す。
ノヴは前線の精神的圧力から退いた後も、四次元マンションの入口を使ってシュートやモラウを救う。戦える状態かどうかと、作戦へ貢献できるかどうかを分け、残った能力を搬送へ集中する。
ナックルとユピーの取引
APRが破産条件へ近づく中、ユピーはモラウを人質として能力解除を迫る。ナックルが解除しなければ計画上の勝利へ近づくが、目の前で師を失う。選択肢は戦術と感情を切り離せない形で提示される。
ナックルは解除を選び、これまで積み上げた利息を消す。失敗を隠さず、仲間の命を取った結果として受け入れる。能力の数値が優勢でも、その数値を維持する意思がなければ勝利条件は成立しない。
ユピーは約束を守って攻撃を止め、人間の行動へ敬意を持つ。護衛軍として王を守る目的は変わらないが、敵を単なる排除対象と見る段階から変化する。この経験がプフとの判断差を大きくする。
王をめぐるプフとユピーの差
プフは王を理想の統治者として保とうとし、コムギが王へ与える感情変化を排除したい。ユピーは王への忠誠を保ちながら、自分が戦った人間の覚悟を認める。二人は同じ救援先へ飛んでも、王に望む状態が異なる。
プフは分身体を使って宮殿と王の間を移動し、情報を自分の目的に沿って選別する。王へ全てを正直に報告する補佐役ではなく、理想から外れる情報を隠す主体となる。
ユピーの判断は戦場での直接経験から変わり、プフの判断は王の精神を守るという観念から硬直する。護衛軍を一枚岩として扱うと、同じ忠誠から反対の行動が生まれる理由を見失う。
王の名が戦闘条件になるまで
メルエムは女王から名を聞く前に生まれ、王として呼ばれてきた。コムギとの対局で個人同士の関係を知るにつれ、自分にも母が付けた固有名があると聞き、その内容を求める。
ネテロは名前を知っているため、単純な力比べでは得られない報酬として提示できる。王は相手を殺さず降参させる制約を受け入れ、普段なら瞬時に終わる戦いへ手順を加える。
名前を教える約束は、ネテロが王の統治案を承認することでも、人類側が降伏することでもない。個人の問いへ答える条件と、種の存続を賭けた討伐任務が同じ決闘に重なり、勝敗の意味を複数にする。
殺さなかった選択が残すもの
イカルゴはブロヴーダへ止めを刺さず、ユピーは取引後のナックルたちを見逃す。異なる場所で敵を殺せる側が手を止め、討伐戦を単純な全滅競争から変える。相手への理解は陣営全体の和平ではなく、個別の経験から生まれる。
見逃された側が後にどう動くかは、その瞬間には保証されない。殺さない選択は将来の協力を確定する契約ではなく、再び敵対する危険も引き受ける。だからこそ、引き金や能力解除を選ぶ人物の価値観が強く現れる。
王とネテロも会話による理解へ近づくが、こちらは戦闘を止められない。第27巻は小さな戦場で成立した猶予と、種全体の対立で成立しない猶予を並べ、相互理解だけでは解決しない規模の差を示す。
巻内の各判断は、敵を信頼したから成立したのではない。殺害以外の結果を選ぶ人物が、その後に起こる危険まで自分の責任として引き受けている。
HUNTER×HUNTER 第27巻が残したもの
第27巻は、宮殿各所の戦いで勝利条件が揺らぎ、最後に王とネテロが名前を賭けた決闘へ入る巻である。
キルアの電力、モラウの煙管、ナックルの利息には限界があり、仲間の命を守る判断が計画を上書きする。
メルエムは対話を望み、ネテロは任務を優先する。互いを理解し始めても、戦闘を避ける共通条件には届かない。