物語 / 単行本
単行本第28巻『再生』
『HUNTER×HUNTER』単行本第28巻を解説。ネテロ対メルエムの決着、貧者の薔薇、王の再生、ゴンとピトーの交渉、パームとキルアの再会を整理する。
単行本第28巻『再生』は2011年7月4日に発売され、No.291からNo.300までを収録する。ネテロとメルエムの戦いが決着し、宮殿ではゴン、キルア、パーム、ピトーらの選択が並行して進む。
ネテロは百式観音零の掌でも王を倒せず、心臓停止を引き金に貧者の薔薇を爆発させる。瀕死の王はプフとユピーの肉体を得て再生し、ゴンはコムギの治療後にピトーを連れてカイトのもとへ向かう。

単行本第28巻『再生』の書影 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

メルエムへ百式観音を放つネテロ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

地下墓地で爆発する貧者の薔薇 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

プフとユピーの肉体で再生するメルエム 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

王の命令を受けコムギを守るネフェルピトー 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博
基本情報
| 媒体 | 漫画単行本 |
|---|---|
| 巻数 | 第28巻 |
| 巻題 | 再生 |
| 発売日 | 2011年7月4日 |
| 収録 | No.291〜No.300 |
百式観音九十九の掌
ネテロは百式観音九十九の掌を連続して放ち、メルエムを地下深くへ押し込む。膨大な打撃回数を一つの流れにし、王が反撃へ移る空間を削る。
メルエムは損傷しながらも致命傷を避け、柱や壁の配置からネテロの手順を読む。速度だけで上回るのでなく、打撃の組み合わせに潜む選択の癖を探す。
ネテロは王を人類から離れた場所へ運ぶ目的も果たしている。戦場の位置は戦いの背景ではなく、最後に使う手段の被害範囲を決める準備になる。
王が見つけた針の穴
メルエムは何千何万という攻防の中から、ネテロ本人にも意識しにくい偏りを見つける。軍儀で培った読みが、百式観音の選択へ応用される。
一度目の突破でネテロの片脚を奪い、二度目に片腕を奪う。それでもネテロは出血と痛みを制御し、失った手足を祈りの停止理由にしない。
王は名前を聞くためネテロを生かそうとし、殺害だけを目的にしていない。この制限が対話の余地を作る一方、人間側には敗北を受け入れる余地がない。
零の掌が使い切ったもの
ネテロは残る腕で祈り、百式観音零の掌を発動する。観音が王を包み、ネテロの生命力に近いオーラを光へ変えて一点へ放つ。
零の掌は通常の攻撃より大きな損傷を与えるが、メルエムを殺せない。技の後のネテロは老い切った姿となり、念能力者として使える資源をほぼ失う。
最大技で届かなかった事実は、人間側の敗北を意味するように見える。しかしネテロが準備した決着手段は、個人の念だけに限られていない。
名前を告げたネテロ
ネテロは女王が王へ付けた名がメルエムだと伝える。王が求め続けた情報を渡し、対話の約束を果たしたように見せる。
続けて、人間の悪意と進化を侮るなと告げる。敗者の負け惜しみではなく、自分の身体へ埋め込まれた兵器を示す最後の警告である。
メルエムはネテロの指を追い、心臓が止まる瞬間に危険を察する。しかし自爆式の起動条件まで知らず、爆心から離れる時間は残らない。
貧者の薔薇による決着
ネテロの心停止を引き金に、小型で安価な大量破壊兵器・貧者の薔薇が爆発する。念能力の優劣とは別の、人類社会が量産した破壊力で王を包む。
薔薇は大きな爆発だけでなく、後に残る毒によって被害を広げる。爆心を耐えた生命も安全ではなく、接触した者へ連鎖する性質を持つ。
個人としてのネテロは王に勝てなかったが、討伐作戦は人類の兵器を含めて設計されていた。勝敗を武人同士の決闘だけへ限定すると、決着の構造を見失う。
パームがキルアへ託した役割
改造されたパームはキルアと対峙し、ゴンの所在を尋ねる。敵意を向ける姿にキルアは警戒するが、会話の中で以前の感情と判断が残っていると知る。
キルアはゴンを支え切れない苦しさを語り、涙を流す。パームは、ゴンに必要なのは自分ではなくキルアだと伝え、友人のそばへ戻る役割を確認させる。
プフの操作はパームを完全な道具にできず、本人は蟻側から距離を取る。再生されたのは身体能力だけでなく、自分で選ぶ人格でもある。
プフの分身とナックルの判断
ナックルはプフと対峙するが、相手は身体を細かな分身へ分けて宮殿から離れようとする。打撃が当たる一体を追うだけでは、本体の目的を止められない。
プフは王を探し、コムギを危険として排除したい。護衛軍として王へ忠誠を誓いながら、王本人の望みと異なる結果を選ぼうとする。
討伐隊は宮殿内の敵を倒すだけでなく、誰がどこへ向かい何を守るかを追う必要がある。分散能力が情報と人員の不足をさらに大きくする。
ゴンが迫った治療時間
ピトーはドクターブライスでコムギの治療を続け、ゴンはカイトを治させるため待つ。ピトーの説明する必要時間をそのまま受け入れず、短縮を要求する。
ゴンにとって目の前のコムギは王側の人間であり、カイトを傷つけた敵が守る対象である。傷ついた少女と復讐対象が同じ場にあるため、怒りの向け先が揺れる。
ピトーは一時間が治療の限界だと頼み、終了後に同行すると約束する。交渉は互いの信頼ではなく、人質、能力、時間を拘束する条件で成立する。
キルアへ向けた残酷な言葉
キルアはゴンへ状況を冷静に見るよう促すが、ゴンは『キルアはいいよね、関係ないから』という趣旨の言葉を返す。支え続けた友人の痛みを切り離す発言である。
ゴンはカイトへの罪悪感とピトーへの怒りで視野を狭め、最も近い相手へ感情をぶつける。事実としてキルアに関係がないのではなく、そう言わなければ自分を保てない状態に近い。
キルアは傷ついても場を離れず、約束の履行とゴンの安全を見守る。友情があるから言葉の害が消えるのではなく、亀裂を抱えたまま次の行動へ進む。
ウェルフィン対イカルゴ
地下ではウェルフィンがイカルゴを追い、ミサイルマンで黒百足を植え付ける。問いへ嘘をつくほど百足が身体を進むため、痛みに耐えるだけでは解除できない。
イカルゴはブロヴーダの安否やパームの情報を守りながら、ウェルフィン自身の目的を探る。敵を倒すことより、互いが女王直属の兵として同じ命令へ戻れない事実が重要になる。
ウェルフィンもジャイロへの記憶と忠誠を残し、王への服従に迷いを持つ。蟻同士の対決は、誰を自分の王とみなすかという選択へ変わる。
護衛軍が王へ与えた身体
爆心地へ着いたプフとユピーは、焼け崩れたメルエムを見つける。二人は自分の肉体の大部分を食べさせ、王の生命と身体を再生する。
メルエムは以前より強いオーラを得て、護衛軍の能力の一部も示す。再生は元の状態へ戻るだけでなく、三者の力が王へ集まる変化である。
プフとユピーは小さな姿になっても、王が生きることへ歓喜する。忠誠の完成に見える一方、薔薇の毒が既に三者へ入り、外見上の回復と生存時間は一致しない。
記憶を失った王
再生したメルエムは名前や宮殿での一部記憶を失い、護衛軍へ状況を尋ねる。圧倒的な力を得ても、コムギとの関係を直ちには思い出せない。
プフはコムギの存在を王から隠し、自分が理想とする王へ戻そうとする。王を守るためという説明が、王の記憶と意思を操作する行為へ変わる。
ユピーは王の復活を優先し、プフほど積極的に記憶を消そうとはしない。二人の献身は同じ方向に見えて、王へ望む姿が異なる。
カイトのもとへ向かう条件
一時間後、ピトーはコムギの治療を終え、ゴンとともにペイジンへ向かう。ゴンは能力を解除したかを確認し、約束の実行を監視する。
キルアは離れたように見えて、移動する二人の後を追う。ゴンに拒まれても、ピトーと二人きりにすれば危険だという判断を捨てない。
ゴンはカイトを元に戻せると信じて進むが、ピトーがカイトへ何をしたかの全容を知らない。希望と現実の差が、次巻の破局へ向けて残される。
個人の武と人類の総体
ネテロは長年磨いた祈りと百式観音で、個人の武として王へ挑む。メルエムはその技へ敬意を示し、名前を聞いて対話する価値を認める。
しかし人類側の最終手段は、安価に量産され多くの独裁国家へ広まった兵器である。修行の尊さとは無関係な技術が、王の耐久を超える。
ネテロの笑みは武人の敗北と人類の勝利を分ける。メルエムが理解したのは一人の底ではなく、種全体が積み上げた悪意の深さである。
再生が奪った王の記憶
プフとユピーの肉体はメルエムの損傷を埋め、以前以上の力を与える。一方、爆発前の記憶の一部が失われ、コムギの名前と存在が空白になる。
身体の回復と人格の連続性は同じではない。何を大切にしたかを忘れた王は、護衛軍が望む支配者へ戻る可能性を持つ。
プフは空白を好機として利用し、コムギを隠す。再生を助けた者が、同時に再生後の自己認識を歪める。
巻内で反復される守る対象
ネテロは人類圏を守るため自爆し、プフとユピーは王を守るため身体を差し出す。ピトーは王の命令とコムギを守り、キルアは傷つけられてもゴンを守る。
守る行動は陣営だけで善悪へ分かれず、他の誰かを犠牲にする危険も持つ。プフの忠誠は王の意思を隠し、ゴンのカイトへの思いはコムギを人質にする。
第28巻の対立は、誰を守るかだけでなく、その本人の望みを守れているかを問う。献身の大きさが正しさを自動的に保証しない。
題名の再生が完全な回復でない理由
メルエムは肉体を再生するが記憶と余命に問題を抱え、パームは人格を取り戻してもキメラアント化した身体のままである。元と同じ状態へ戻った者はいない。
ゴンはピトーの治療を見てカイト再生の可能性を信じるが、その前提はまだ確認されていない。修復能力があることと、死者を元へ戻せることは別である。
巻題は失われたものが簡単に復元される希望だけを示さない。何かを得て立ち上がるたび、毒、記憶、関係の傷が別の場所へ残る構造を表す。
単行本第28巻『再生』が残したもの
第28巻は、王の肉体、パームの人格、ゴンとキルアの関係という複数の『再生』を描きながら、完全には元へ戻らないことを示す巻である。
ネテロは念の決闘で敗れても、貧者の薔薇を起動して人類側の決着を付ける。
再生したメルエムは記憶を失い、ゴンはカイトを再生できると信じる。回復に見える出来事の内部で、毒と喪失が進む。