人物
ウェルフィン
ウェルフィンは狼型のキメラ=アント師団長。人間時代の名はザイカハル。念能力「卵男」で東ゴルトー王宮を暗躍し、イカルゴとの対峙を経てジャイロを捜す道を選ぶ。
ウェルフィンは、『HUNTER×HUNTER』に登場する狼型のキメラ=アントで、元師団長である。人間だった頃の名はザイカハルといい、ジャイロの軍で軍師を務めていた。キメラ=アントの襲撃を受けた際は麻薬工場の中で応戦したものの、最後は女王のもとへ運ばれて食われ、師団長ウェルフィンとして生まれ直す。のちに王直属護衛軍のシャウアプフから念能力「卵男」を授けられた。
東ゴルトー共和国の王宮では、国務長官ビゼフを取り込んで地位と手柄を得ようと動き、侵入者の正体も独力で突き止めようとした。選別の夜にイカルゴと対峙して両脚を撃たれ、互いの過去を語り合ったすえに相手の依頼を引き受ける。モントゥトゥユピーの死に立ち会ったのち王メルエムと対面し、コムギの名を口にしたことで見逃された。最後は東ゴルトーを離れ、ジャイロがいると見込んだ流星街へ向かう。

ウェルフィン 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

卵男を使うウェルフィン

敵の反応を分析するウェルフィン

ビゼフと対峙するウェルフィン
基本情報
| 所属・役割 | キメラ=アントの師団長。人間時代はジャイロの軍で軍師を務め、女王に捕食されて転生した。東ゴルトー王宮では王直属護衛軍に取り入りつつ、国務長官ビゼフを操って裏から国を動かそうとした。 |
|---|---|
| 初登場・登場媒体 | 原作第188話(単行本第19巻)で姿が、第216話で名前が示された。TVアニメ2011年版では第85話。 |
| 状態 | 生存。東ゴルトーを離れ、ビゼフとヒナとともに流星街へ向かった。 |
| 能力・関係 | シャウアプフから授けられた念能力「卵男」。撃ち込んだミサイルが相手の頭に生きたムカデを植えつけ、命令に背けば膨れ上がって破裂する。使い手が解除する手段はなく、標的が本心から真実を語るとムカデは死滅する。 |
| 人間時代の名 | ザイカハル。暴力をふるう父のもとで育ち、義理の兄弟に助けられた過去を持つ。 |
| 主な関係 | 人間時代の友人ジャイロと、同じく人間時代の仲間イカルゴ。取り入る相手は国務長官ビゼフ。行動をともにしたのはブロヴーダ、ヒナ、シドレ。 |
人物像
外見は長い金髪をもつ人型の狼で、青いシャツと下着だけを身につけた姿で描かれる。足は指行性で、鉤爪の生えた獣のかたちをしている。メルエムを前にして死を目前にした経験のあとは、顔つきが一気に老け込んだ。キメラ=アントとしての初登場は第188話(単行本第19巻)にさかのぼり、人間だった頃の名ザイカハルは第309話(単行本第29巻)で示されている。
臨死の体験を経る前のウェルフィンは、野心的で狡猾、そして慎重だった。王直属護衛軍のもとで自分の地位を一段ずつ積み上げ、それと並行して国務長官ビゼフに取り入り、この男を意のままに動かすことで「影の王」となり、表舞台に立つ危険と責任を避けたまま裏から権力を振るおうと考えていた。人心を操る手際に長ける反面、疑い深さはきわめて激しく、そばにいる相手を片端から警戒している。そうした気質は、彼自身の念能力の形にもそのまま表れている。
自分を疑う癖もあって、彼は勝てると確信できる戦いしか選ばない。イカルゴの尋問を逃れるために気絶したふりをすることさえ辞さなかった。イカルゴに撃たれた場面では執念深さをのぞかせ、相手の苦痛とやがて訪れるであろう死を楽しんでみせたが、イカルゴが再び銃口を向けると一転して脅し、命乞いをし、叫び声をあげた。
野心以上に彼が大切にしていたのは、失われた友ジャイロであり、必ず見つけ出すと心に決めていた。当初は自分を見逃したイカルゴを裏切るつもりでいたが、互いの過去を語り合ったことで本当の敵はキメラ=アントだという確信が固まり、危険な依頼を引き受ける。以後は同族を、とりわけ王を強く憎むようになった。モントゥトゥユピーが目の前で倒れた直後には全能感にとらわれ、メルエムにも勝てると思い込んだものの、その力を感じ取るとすぐに後悔する。逃げ出しておけばよかった、思い上がって英雄気取りとジャイロへの郷愁に飲まれたのだと、彼はのちに自分を罵っている。
作中での動向
アリになる前のザイカハルは、暴力をふるう父のもとで育った。父に首を絞められたとき、背後で女がそれを見ていながら手を出さず、彼を救ったのは義理の兄弟だった。やがてザイカハルはジャイロと出会う。内側が空っぽで隠すものが何もなかった二人はすぐに親しくなり、どちらの運が悪いかをよく言い争った。彼はNGLの裏側にも関わっていたとみられ(第296話、単行本第28巻)、人間だったイカルゴとも仲間だった。
巣で女王が師団長たちを召集する場面が彼の初登場にあたり、そこで自ら名を選ぶ。続くネフェルピトーの任命の儀式では、ラモットが師団長と幹部たちを殴って回り、各自がオーラを扱えるようにした。アイザック=ネテロ、モラウ=マッカーナーシ、ノヴによる最初の掃討を生き延びた上位個体の一人でもある。女王が王を産んで瀕死になると、ウェルフィンは巣を離れることを選び、タラゲッテ、マエノレ、インザギら少なくとも三体の配下がこれに従った。
選別の数日前、彼は力を得る見返りに王へ忠誠を誓うため、東ゴルトー王宮へ足を向ける。ここでシャウアプフから念能力を授けられ、その使い方も教わった。一方、モラウ=マッカーナーシとノヴがペイジンを追い詰めると、ネフェルピトーはレオルに二人への対処を命じる。ヂートゥがモラウ=マッカーナーシを連れて瞬時に姿を消したあと、レオルは自分ひとりでノヴを相手にはできないと踏み、王直属護衛軍へ増援を求めた。そこで選ばれたのがウェルフィンとブロヴーダである。
建物を出る二人は、孵化を待つ5,000体のキメラの混成体が食料として置かれた庭を横切る。その数と、王が軍儀に熱中して食事を抜いていることを知ったブロヴーダは繭をいくつか食べようかと言い出すが、ウェルフィンは王と王直属護衛軍の機嫌を損ねないよう勧めた。道中では、レオルの誇大な自己評価をあざ笑い、自分はかつての名で呼ばれるのが嫌いだとも口にしている。合流は果たしたものの、敵の追跡を任せていたフラッタが行方を絶つ。ウェルフィンは方針の変更を持ちかけたが、二人が引き返す前にレオルが謝債発行機を発動し、これには捜索の機能があると説明したうえでフラッタは生きていると断言した。
王宮での探索と謀略
ウェルフィンとブロヴーダは、レオルがノヴと戦う間、白い服の兵士たちを近づけない役目を与えられた。一人で平気なのかと問うウェルフィンに、レオルは二人に危険を冒させたくないと答える。ウェルフィンがブロヴーダへ進む方角を示したところで、三体が分かれる前にレオルがモラウ=マッカーナーシとノヴの位置をつかんだ。二人のハンターは別々に動いており、レオルは狙いをノヴからモラウ=マッカーナーシへ切り替える。ウェルフィンは加勢を申し出たが、獅子のアリは王直属護衛軍の前で手柄を独占するためにこれを断った。王宮へ戻る途中、ウェルフィンは白い服の兵士に出くわし、それが念で作られたものだと見抜いてネフェルピトーへ報告している。
六日後、彼は逃げ出した女を捜すよう兵士へ指示を出す、慌てたビゼフの通話を聞きつけた。電波が頭に響くとして王宮内での携帯電話の使用をやめるよう戒めると、ビゼフは急を要する用件だと返す。ウェルフィンは逃亡の件をすでに知っていると明かし、女の衣類の切れ端さえあれば見つけられると持ちかけた。ビゼフがそれを取りに走る間、彼は国務長官を操って影から国を支配するという目標に一歩近づいたと悦に入っている。
配下から粗雑な念の伝言が届き、彼は耳鳴りに顔をしかめる。インザギとマエノレが泥と血にまみれた靴を差し出すと、それをタラゲッテのものだと見分けた。侵入者が彼を殺したのか連れ去ったのかを考えるものの、その目的までは読み切れない。シャウアプフに助言を求めることも一瞬頭をよぎったが、自分で侵入者を捜し出して問いただすと決める。ノヴの匂いをたどって王宮の奥へ進み、二階へ上がる中央階段まで達したあと中庭の方向へ折れたが、そこで雨が痕跡を洗い流していた。行動を再現できず、彼は相手が何らかの能力を使ったと推測する。
そこへモントゥトゥユピーが階段を下りてきて、上階へ行く者は王が殺すと告げ、それを触れて回るよう命じた。その翼を見たウェルフィンは、靴は囮で侵入者は飛んで上階へ向かったのではないかと考え始める。彼は王直属護衛軍の名を呼びかけたが、ネフェルピトーの円なら侵入者を捉えていたはずだと思い当たり、問いを最後まで口にしない。代わりに、先週の雨の日にネフェルピトーが円を解いたことはなかったかと尋ねる。そうでなければ忍び込むのは不可能だと踏んだためである。モントゥトゥユピーは、王が自らの腕をもぎ取り、ネフェルピトーがそれを治す間、シャウアプフが円を引き継いだと答えた。
モントゥトゥユピーの説明とは異なり、ウェルフィンはシャウアプフの円が階段より先には届かず、それを見た侵入者が階段を上らずに引き返したのだと考えた。ただし相手の狙いも、まだ王宮内にいるのかも分からない。王直属護衛軍への報告も検討したが、モントゥトゥユピーは自分の名を伝え忘れるだろうと即座に候補から外し、侵入者が来て追い払ったと報告しても得られる手柄は小さいと判断する。さらに、侵入者が捕まれば動機をめぐる嘘が露見し、空騒ぎに終われば信用が地に落ちると見積もった。思案はビゼフの携帯の電波に遮られ、彼はこの男を騙すことに決める。逃げた女と侵入者は通じており、二人は転移して姿を消し、王宮のどこかに爆弾を仕掛けたと語り、配線の切れ端らしきものを見せて話を裏づけた。爆弾は国民が王宮前に集まるまで作動しないと言いくるめ、それを見つけるまでは報告しないよう念を押す。ビゼフには爆弾処理班への連絡を任せ、自分は装置を捜すと告げた。本当の狙いは、処理班に本物の爆薬を隠させ、その発見を自分の手柄にすることだった。
選別の夜とイカルゴとの対峙
ウェルフィンはゼノ=ゾルディックの龍星群を無傷で切り抜けた。選別当日の零時を数秒過ぎたころ、彼は侵入者がインザギとマエノレを一瞬で葬るのを目撃し、その直後に同じ廊下を「フラッタ」が駆けていくのを見る。「フラッタ」は侵入者とすれ違ったはずで、見逃されたのは両者が同じ側にいるからだと結論づけた。レオル隊の幹部がヂートゥやブロヴーダと言葉を交わす間は身を潜め、レオルも一枚噛んでいるのかと疑う。そのうえで、「フラッタ」がレオルを本人の忌み嫌う人間時代の名で呼ぶのに気づいた。
「フラッタ」とブロヴーダが相次いで地下行きのエレベーターに乗るのを、彼は物陰から見ていた。「フラッタ」の腐りかけた体が残す臭いに吐き気を催す。ブロヴーダも「フラッタ」の側についており、扉が開いた瞬間に自分を撃つため先回りしたのではないかと恐れた。爆弾の件をフラッタのせいにできればビゼフに対する自分の価値は揺るぎないものになるだけに、彼は判断に苦しむ。その思考の果てに、ビゼフが死んでいれば計画そのものが無意味になると気づき、彼を捜しに向かった。
中庭を突っ切る途中で足を止めて痕跡を探していると、角の向こうに気配を感じ、それは直後に消える。用心深さから彼は卵男を発動し、壁の陰にいる者へ出てこなければ撃つと告げた。三つ数えて撃ったものの、ミサイルは何も捉えない。それでも無臭の消臭剤の匂いから思い違いではないと確信し、フラッタ以外にも味方に裏切り者がいると判断した。自分の身の安全と、どちらに付くべきかを疑い始めたところでモントゥトゥユピーの苛立った叫びが響き、ビゼフ捜しを最優先にしてよいのかと迷う。数分後、ヒナとシドレがビゼフを地下の避難所へ運ぶのを見つけ、彼は後をつけた。
モニター室に忍び込んだ彼は、イカルゴが気を失ったブロヴーダを撃てずにいるのを画面越しに見る。イカルゴが部屋へ戻る間に隔壁を二枚開け、ヒナ、シドレ、ビゼフを通した。ブロヴーダを殺せなかったイカルゴなら脅威にならないと踏んで、そのまま室内に隠れる。画面の前で泣き崩れたイカルゴが落ち着いたところで、彼は卵男を構えたまま姿を現し、動くな、質問に答えろと迫った。ところがイカルゴは振り向きざまに右肩を撃ち抜く。痛みに叫び、相手を罵りながら、ウェルフィンはミサイルを放って生きたムカデをイカルゴの頭に撃ち込んだ。命令に背いたり自分を傷つけたりすればムカデは膨れ上がって破裂し、命はないと、嗜虐的な笑いとともに警告する。
イカルゴは動じず、抗議を無視して弾を込め直し、仲間への脅威を断つために両脚を撃った。次の一発を構えられたところでウェルフィンは降参する。本人は知らなかったが、この降参はムカデを苦しみもだえさせていた。いずれこうなると分かっていたと嘆き、自分の身の安全を顧みない相手がどれほど危険かに舌を巻く。ムカデを取り除けと迫られると、不可能だと思い込んで気絶したふりをしたが見抜かれ、覗き見を咎められると撃たないでくれと懇願し、能力を解除する手立てはないと認めた。攻撃は殺すために行うのだから、その後どうなるかには関心がないとも付け加えている。
イカルゴとの取引とメルエムとの対面
念能力は使い手の性格を映すという彼の言葉から、イカルゴは人間だった頃の記憶があるかと尋ねる。ウェルフィンは嘘をついたが見抜かれ、目覚めた直後から父に首を絞められた記憶に取り憑かれ、まだ覚えていると呆然としたことを打ち明けた。しばらくして、そのとき自分を救ったのが義理の兄弟だったことを思い出し、その姿がジャイロに重なったのだという。彼はNGLの王となったジャイロとの日々を語り、もう一度会いたいという願いを口にする。その率直さがムカデを死なせ、体内から消し去った。テーブルに身を横たえた彼は、ほかにやることがあるだろうとイカルゴを促した。
隔壁を誰のために開けたのかと問われて素直に答え、ブロヴーダを殺せなかったイカルゴなら与しやすいと思っていたと言い添える。元船長からの問いには、繭に入れられて捕らえられている女がいると明かし、その居場所と、彼女が「1番」と名づけられていたことを伝えた。真実を口にするのがこれほど容易だとは、と彼は思わず笑う。イカルゴが席を外している間、シャウアプフの分身の一つがモニター室のウェルフィンのもとへ現れた。その指示で彼はネフェルピトーへ電話をかけ、自分とブロヴーダがコムギを助け出したと告げる。彼女に代わったふりをしたが、実際に話したのは体を作り替えて声を真似たシャウアプフ本人だった。電話を切ると、ウェルフィンは医者を呼んでくれと王直属護衛軍に懇願している。
イカルゴの求めは、コムギは倉庫に隠してあり交渉を望んでいると王か王直属護衛軍に伝えることで、それが済めば解放するというものだった。ウェルフィンは、自分が疑われないよう罠だと伝えるつもりだと言い返す。使者を務めれば王の怒りを買うと恐れ、任務を果たさずに逃げる腹づもりでいながら、口では条件をのむと答えた。運転席へ足を引きずって向かう彼に、イカルゴはジャイロを捜しに行けと声をかける。激昂しかけたウェルフィンは、誰にも明かしたことのない人間時代の名で呼ばれて言葉を失った。イカルゴはかつて友人としてともにキメラ=アントと戦った仲だと語り、過去を忘れたブロヴーダを連れて行くよう頼む。なぜジャイロが生きていると言い切れるのかと詰め寄ると、自分たちが生き延びたのなら、あの男が消化されるままでいるはずがないという答えが返った。
割り切れない思いを抱えたまま、ウェルフィンは悪態をつきながら倉庫を出る。途中で車を止め、パーム=シベリアとイカルゴに縛られ目隠しをされて荷台に乗せられていたビゼフの女たちへ、縄を解いて別のトラックで逃げるよう指示した。本当の敵はキメラ=アントだと思い出させてくれたイカルゴに感謝し、彼は使者を務めることを決める。中庭で出会ったモントゥトゥユピーにイカルゴの提案を伝え、そのうえで前世の記憶があるかと尋ねたが、相手は否定した。飛び去ろうとするその背に卵男を発動し、五秒以内に質問へ答えろと迫る。モントゥトゥユピーは怒りの目を向けながら鼻から血を流し始めた。ウェルフィンは撃ったものの、ムカデが孵る前に相手は血を吐いて倒れ、そのまま息絶える。王直属護衛軍の死は、ジャイロの仇を討つために王すら倒せるという思い上がりを彼に与えた。
催眠にかかった人々の列の間を引きずるように歩く彼を王の円が包み、メルエムが姿を現す。恐怖にかられたウェルフィンはモントゥトゥユピー殺害の疑いを否定し、自分が会う前にすでに襲われていたはずで、下手人を人間の中から捜しているところだと訴えた。感情を読むシャウアプフが現れたことで動揺はさらに増す。王は、恐れの方が勝ってはいるものの自分への並外れた敵意を感じ取ると述べ、その理由を問うた。シャウアプフは、ウェルフィン自身は気づかぬまま自分の秘密に深く関わっていると割って入る。何が起きているのかを必死に探りながら、彼は思い上がった自分を罵った。王直属護衛軍へ怒りをぶつける間に王の錬に圧し潰され、生き延びるためにシャウアプフの秘密を暴こうと考えを加速させる。
東ゴルトーからの脱出と他作品での扱い
王が不意にオーラを収め、腹が減ったと言ってウェルフィンへ目を向けると、彼は何が起ころうとしているのかを即座に理解した。王に食い殺される未来を悟った恐怖はあまりに激しく、彼は髪を失い、一瞬で年老いたように顔つきを変える。それでも死への恐れに追われた思考は断片を結びつけ、彼はコムギという一語を絞り出した。これによって王は彼女を思い出す。王はコムギがパーム=シベリアとイカルゴとともに倉庫にいること、ウェルフィンが使者として遣わされたことを言い当て、当のウェルフィンを驚かせた。伝言を果たさなかったのは自分への敵意ゆえかと問い、共感の力でそれを確かめる。思い出させた礼として、コムギを捕らえた者たちの居場所を告げれば逃がすと約束し、ウェルフィンはそれに従った。立ち去る王の背へ、自分の王はジャイロだけであり、キメラ=アントは敵だと彼は叫ぶ。メルエムは静かに幸運を祈り、人間として生きられるようにと言い残した。
ウェルフィンはトラックで東ゴルトーを離れる支度をし、ヒナ、シドレ、ビゼフを拾った。田園地帯に着いたところでブロヴーダを降ろす。ブロヴーダにジャイロの記憶はなかったが、NGLがかつての住処だという確信はあった。ウェルフィンはシドレもブロヴーダ同様に前の暮らしを覚えていないのかと考えたものの、ブロヴーダは彼女には記憶があり、口数が少ないのは子どもだったからだと信じていた。ヒナに促されて二人は別れの言葉を交わす。ウェルフィンは去り際、ジャイロが好んで口にした「死ぬまで死ぬな」という言葉を贈り、何か思い当たらないかと尋ねたが、ブロヴーダには通じなかった。
その後、ウェルフィンはビゼフとヒナを連れてジャイロがいると見込む流星街へ発つ(第315話、単行本第30巻)。道中ではあっさりレオルに背を向けたヒナを詰り、港は安全かと確かめもした。沈み込むビゼフに調子を合わせることはなく、ジャイロは生きている、すでに新しい国を作っているかもしれない、たどり着けば自分たちは特権を持つ側になれると陽気に言い切る。ビールを傾けながら、二度も死にかけたのだからもう怖いものはないと語り、ビゼフがわずかに前を向くと、同じジャイロの言葉で彼を励ました。
ゲーム「Hunter × Hunter: Battle All-Stars」はウェルフィンを操作系として扱っているが、これは誤りである。また漫画「Me & Roboco」第283話には、ウェルフィンとメルエムの最後の対面を下敷きにしたロボコの場面がある。
能力・特徴・関係
キメラ=アントの師団長として、ウェルフィンは並の人間や下位の同族より強く、種族から与えられた多様な能力を扱える。女王に仕えていた頃は配下に対する指揮権を持ち、巣を離れたあともその一部を保っていた。ただし本人は自分を前線の戦闘要員とは考えておらず、ブロヴーダなら難なく自分を殺せると見ていた。一方で、ビゼフを脅す際に腕をもぎ取ると言い放っていることから、成人男性の腕を引きちぎる程度の力はあるとみられる。
嗅覚は鋭く、匂いから個人を追跡し、また区別できる。乾いた血をタラゲッテのものと言い当て、靴の匂いを嗅いで王宮内でのノヴの動きをたどり直したのがその例である。聴覚も優れており、電話の会話を盗み聞きできるが、携帯電話の電波は耳に不快な響きをもたらす。知覚の鋭さは念にも及び、メレオロンが神の不在証明を解いてから再び発動するまでのごく短い間に、その存在を感じ取っている。
知能も高く、幾重にも組み立てた計画を立て、状況の変化に合わせて組み替えられる。ノヴの動きを再現しようとした場面では、際立った推理力を見せた。かつて軍師を務めていた経験から、作戦や攻撃の型を作り、窮地からの抜け道を素早く見つけ出せる。もっとも、考えすぎて悪い筋書きばかりに目を向ける癖があり、自分で自分を怯えさせて目的を果たせなくなることもある。気配を消す点でも巧みで、物陰から観察している間、キルア=ゾルディック、イカルゴ、ヂートゥ、ブロヴーダのいずれも彼の存在に気づかなかった。ヒナ、シドレ、ビゼフを尾行した際も悟られず、メレオロンに至っては、ウェルフィンの側が近くにいると知らないまま鉢合わせするまで彼を感知していない。
シャウアプフから授けられた念能力「卵男」は、彼の性格の複数の面をそのまま映している。戦闘向きとは言い切れないものの、脅しだけで戦いを収められる性質を持つ。もっとも、相手はたいてい降参して条件に従うため実戦の蓄積が乏しく、本人も能力の性質の一部を把握していない。真実を語る誠実さがムカデにとって致命的になることを知らなかったのは、その典型である。