JOJOジョジョの奇妙な冒険 百科事典
Part 6 / 人物

エンリコ・プッチ

えんりこぷっち

第一世界線main_manga

ネタバレ範囲: Part 6最終話まで

# エンリコ・プッチエンリコ・プッチは、第6部『ストーンオーシャン』の主要な敵であり、グリーン・ドルフィン・ストリート重警備刑務所の教誨師を務める神父である。DIOと交わした思想と「天国へ行く方法」を受け継ぎ、空条承太郎から記憶を奪い、刑務所内の人間とスタンドを計画へ組み込む。スタンドはホワイトスネイクからC-MOON、メイド・イン・ヘブンへ変化する。

最終目的は、人々が未来に起こる運命をあらかじめ知り、その覚悟によって幸福を得る世界を作ることである。しかし、その世界を実現する過程で他者の記憶、自由、生命を奪い、自分の計画へ反する可能性を徹底して排除する。

基本情報と教誨師の立場

プッチは1972年にアメリカで生まれた。第6部の2011年時点では三十九歳で、刑務所の囚人へ宗教的な助言を与える職務に就く。穏やかな口調と聖職者の身分により、看守、囚人、面会者の近くへ不自然さなく接近できる。刑務所は外部との連絡が制限され、人の経歴や所有物を管理しやすいため、DISCの保管と能力者の配置に適している。

プッチは全構成員を率いる組織の長ではない。相手の欲望、恐怖、刑期、能力を見極め、必要な期間だけ協力者として使う。正体が露見しそうになれば、同じ側の人物でも切り捨てる。教誨師という救済を担う役割と、人間を目的の部品として扱う行動の落差が、人物の根本的な矛盾になる。

双子の弟ウェス

プッチには、同じ日に生まれた双子の弟ドメニコがいた。病院で別の母親の赤ん坊が死亡し、その母親がドメニコを自分の子とすり替える。プッチ家は弟が死んだと思い、ドメニコは別の家庭でウェス・ブルーマリンとして育つ。プッチは先天的に足の指へ異常を持って生まれ、家族の中で宗教と運命を考える少年になる。

後に聖職者を目指していた時、告解を通じてウェスの出生に関わる事実を知る。守秘義務のため家族へそのまま真実を話せず、妹ペルラとウェスが恋愛関係にあることを止めようとする。兄妹が血縁を知らずに愛し合う状況を防ぎたいという出発点は、家族を守る意図だった。だが秘密を抱えたまま第三者へ解決を委ねた判断が、取り返せない暴力を呼ぶ。

私立探偵への依頼と悲劇

プッチは、ウェスとペルラを別れさせるため私立探偵へ依頼する。探偵はウェスの養家の出自を調べ、人種差別団体とつながる者たちを呼び寄せる。ウェスは暴行を受け、木に吊るされる。ペルラは彼が死亡したと思い、絶望して命を絶つ。

ウェスは生き延び、怒りと絶望によってスタンド能力を暴走させる。プッチは差別的な暴力を依頼したつもりではないが、結果を生んだ自分の判断から逃れることはできない。彼は悲劇を偶然や人間の無知による不幸として受け止め、未来を知らなかったこと自体を苦痛の原因と考えるようになる。この経験が、運命を事前に知れば覚悟できるという「天国」の思想へ結びつく。

一方で、ペルラとウェスへ真実を伝えず、他人を操作して別れさせようとした自分の選択を、自由意志の問題として最後まで十分に引き受けない。

DIOとの出会い

神学生だったプッチは、教会でDIOと出会う。DIOは日光を避けながら、人間の心理、運命、重力について語る。プッチが利益を求めず、DIOを怪物として恐れるだけでもないことから、二人の間に特別な信頼が生まれる。DIOはプッチの足へ触れて異常を治し、スタンドを発現させるきっかけとなる矢の一部を渡す。

さらに、自分の骨と「天国へ行く方法」を記したノートの存在を託す。プッチを単なる命令に従う部下として扱わず、自分の思想を理解できる友人に近い相手として選ぶ。プッチもDIOの残虐行為をすべて直接経験した上で批判的に継承したのではなく、彼が語る運命の理論と自分の悲劇を結びつける。DIOへの忠誠と、自分自身の救済への欲求が分離できない関係である。

ホワイトスネイク

ホワイトスネイクは、人間から記憶とスタンド能力をDISCとして取り出す。記憶DISCを奪われた者は経歴や人格の基盤を失い、スタンドDISCを奪われれば能力を使えない。二枚を同時に失った承太郎は仮死状態となる。取り出したDISCは別の人間や生物へ挿入でき、適性が合えば記憶や能力を利用させられる。

プッチは刑務所内に多数のDISCを保管し、囚人へ能力を与えて徐倫たちへ差し向ける。ホワイトスネイクは幻覚と酸による攻撃も行い、対象へ夢のような状況を見せながら身体を溶かす。近距離での格闘能力も持つが、プッチの強みは正体を隠して相手の情報だけを抜き取る運用にある。DISC化は、本人の人生を本人から切り離し、必要な部分だけを配置するプッチの思想を能力として表す。

承太郎と徐倫を利用した罠

プッチはDIOの天国計画を知る承太郎の記憶を狙う。ジョンガリ・Aを使った罠によって承太郎を刑務所へ呼び込み、徐倫を守る瞬間の隙を突いて二枚のDISCを奪う。承太郎は娘を逃がすためスタンドDISCを渡すが、徐倫は父の記憶も取り戻すため刑務所へ残る。プッチにとって親子の愛情は予測して利用できる弱点である。

しかし徐倫は同じ関係を、危険な場所に留まり続ける意志へ変える。プッチは必要な記憶を得た後も、ジョースター家が計画を阻む可能性を恐れ、徐倫と協力者を消そうとする。目標が天国への到達であっても、実際の行動にはDIOを倒した血統への警戒と執着が含まれる。

DIOの骨と緑色の赤ちゃん

DIOの骨はスポーツ・マックスの能力で動き出し、周囲の囚人の生命を吸収して緑色の赤ちゃんへ変化する。赤ちゃんへ近づく者は距離に応じて縮小し、通常の方法では触れられない。プッチはDIOから教えられた十四の言葉を唱え、赤ちゃんに認められる経路を作る。ホワイトスネイクと赤ちゃんが融合すると、プッチの身体と能力は新しい段階へ進む。

この手順はDIO本人の復活ではない。骨、罪人の魂、言葉、場所、時をそろえ、DIOが考案した方法をプッチの肉体で実行する儀式である。徐倫たちが赤ちゃんを先に確保しても、プッチは対話と引力を使って融合を成立させる。他者を道具として扱う一方、自分自身もDIOの計画を完成させる器へ変える覚悟を持つ。

ウェザー・リポートとの決着

ドナテロ・ヴェルサスがウェザーの記憶DISCを戻すと、ウェザーはウェスとしての過去と怒りを取り戻す。ヘビー・ウェザーが無意識に発動し、広範囲の人間がカタツムリへ変化する。プッチは能力の原因と対処を知るため、ウェザーを直接止めに向かう。ウェザーはプッチを追い詰め、殺害できる位置まで迫る。

プッチは周囲の状況とわずかな偶然を利用し、先にウェザーへ致命傷を与える。弟を救えなかった過去を修復するのではなく、自分の天国計画を妨げる能力として再び奪う選択である。ウェザーの死後、そのスタンドDISCはエンポリオへ託される。プッチが消したはずの弟の力が、最後に自分を倒す形で残る。

C-MOONと重力

緑色の赤ちゃんと融合したプッチは、ケープ・カナベラルへ近づく過程でC-MOONを発現する。プッチ自身を重力の中心とし、周囲の上下を水平方向へ変える。建物、人、車両は中心から遠ざかる方向へ落下し、通常の地面を歩けない。C-MOONの拳で触れた物体は内外が反転し、生物なら致命傷になり得る。

スタンドは本体から離れて攻撃でき、プッチは安全な位置から重力場を利用する。徐倫は身体をメビウスの帯の形へ変え、表裏を連続させることで反転による破壊を逃れる。プッチは能力の強さへ満足せず、新月と重力の条件を利用してさらに先へ進む。C-MOONは最終形ではなく、ホワイトスネイクとメイド・イン・ヘブンの間にある移行段階である。

メイド・イン・ヘブン

メイド・イン・ヘブンは、重力を通じて生物以外の時間を加速させる。太陽と月の運行、天候、物体の変化が速まり、プッチ自身は加速した時間へ対応して移動する。他の人間は時間の進行を認識できても、身体能力を同じ割合で上げられない。承太郎の時間停止は発動できるが、停止が終わるまでの判断に家族と仲間を守る制約が生じる。

プッチはその弱点を突き、アナスイ、エルメェス、承太郎、徐倫を順に殺す。宇宙が終わり、新しい宇宙へ到達すると、生きて一巡した者は未来の運命を身体で理解する。プッチは、出来事を避けられなくても事前に知って覚悟できる状態を幸福と呼ぶ。選択によって未来を変える自由より、確定した苦痛を受け入れる準備を全人類へ強制する思想である。

エンポリオへの敗北

エンポリオだけは徐倫に逃がされ、生きたまま宇宙を一巡する。プッチは新しい宇宙が完全に定着する前に少年を殺し、障害を消そうとする。自分が未来を知っている優位を語りながら、エンポリオが生き残る未来だけは受け入れない。追跡の末、攻撃によってウェザー・リポートのDISCをエンポリオへ押し込んでしまう。

エンポリオは密閉された部屋の酸素濃度を高め、酸素中毒でプッチの身体を麻痺させる。メイド・イン・ヘブンの速度は、呼吸する生物としての弱点を消さない。プッチは完成まで待つよう命乞いをし、自分が死ねば人類の覚悟が失われると主張する。エンポリオは、運命を決めたのはプッチではなく、自分たちが受け継いだ意志だとしてとどめを刺す。

プッチが一巡を完成できずに消滅したため、彼の影響がない世界へ移り、徐倫たちに対応する人物は刑務所の悲劇から解放される。

信仰と支配の矛盾

プッチは自分を私欲で動く悪人とは考えていない。妹の死から、知らない未来へ直面する恐怖をなくすことが救済だと信じる。DIOへの敬愛も、力だけへの服従ではなく、運命を説明する思想への共鳴である。その信念が強いからこそ、他人が同じ幸福を望むかを尋ねない。

記憶を抜き、能力を配り、囚人を捨て駒にし、全人類の未来を一つの仕組みへ固定する。覚悟を尊ぶ言葉と、自分の敗北だけは確定させまいとする最期の行動も一致しない。プッチの危険性は、信仰が偽物だからではなく、個人的な苦痛から得た答えを普遍的な救済とし、全員へ強制できる力を手にした点にある。