キャプテン・マーベル、ミズ・マーベル、モニカ・ランボーの三人のヒーローが瞬間移動で「入れ替わる」現象に巻き込まれ、ハラの復讐に燃えるクリーの新指導者ダー=ベンと対峙する、フェーズ5中盤のチーム結成譚にしてキャロル・ダンヴァース2作目の長編。

基本データ 2023年・ニア・ダコスタ監督

マーベル・スタジオ製作、ウォルト・ディズニー配給。MCUフェーズ5の第7作。『キャンディマン』(2021)で頭角を現したニア・ダコスタが、MCU長編をブラック女性監督として初めて手掛けた。上映時間105分はMCU長編歴代最短である。

物語上の位置 キャロル・モニカ・カマラの初遭遇

『キャプテン・マーベル』のキャロル、『ワンダヴィジョン』で能力を得たモニカ、『ミズ・マーベル』のカマラ——三作品の主人公が初めて一本の長編で交差する。ハラの太陽が冷えてクリーが危機に陥り、その「復讐者」として現れたダー=ベンが、量子バンドを使って他の星から資源と空を奪う。

受賞・評価 興行は失敗、人物造形は評価

ロッテン・トマト批評家評は約62%、観客評A−、メタスコア50点台で批評は割れた。全世界興収は約2億ドル台にとどまりMCU長編で歴代最低水準を記録し、興行的には失敗とされる。一方で三人の主演の化学反応、105分の引き締まったテンポ、惑星アラドナのミュージカルシーンは肯定的な評価を得た。

この記事の範囲 結末・モニカの犠牲・ポストクレジットまで完全解説

ハラの危機、量子バンドの覚醒、三人の能力が「入れ替わる」現象、ニック・フューリーのSABERステーション、フラーケンの群れ、惑星アラドナでの結婚と歌の戦い、ダー=ベンによる太陽強奪、最終決戦、モニカ・ランボーが別ユニバースへ取り残される結末、マリア・ランボー/ビナリーとビースト登場のミッドクレジット、カマラがケイト・ビショップを訪ねるポストクレジット——すべてのネタバレを前提に解説する。

目次 34項目 開く

概要

『マーベルズ』(The Marvels)は、ニア・ダコスタが監督し、ダコスタとメーガン・マクドネル、エリッサ・カラセックが脚本を執筆した2023年公開のアメリカのスーパーヒーロー映画である。マーベル・スタジオが製作し、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給した。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)通算33作目、フェーズ5の第7作にあたり、2019年の『キャプテン・マーベル』の直接の続編であると同時に、ディズニープラスで配信されたドラマ『ワンダヴィジョン』(2021)と『ミズ・マーベル』(2022)の主人公が初めて長編映画に合流する作品でもある。米国・日本ともに2023年11月10日に劇場公開された。

中心となるのは三人の女性ヒーロー——軌道上の独立行動で居場所を絶っていたキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)、SABERステーションで地球外脅威の監視に従事するモニカ・ランボー(テヨナ・パリス)、そしてジャージーシティの高校生で量子バンドを腕に巻いたミズ・マーベルことカマラ・カーン(イマン・ヴェラーニ)——である。三人がそれぞれの場所で「光に近い波長のエネルギー」を行使した瞬間に、空間がねじれて三人が物理的に入れ替わってしまう現象(エンタングルメント)が物語の入口となる。

敵役はクリー帝国の新興指導者ダー=ベン(ザウィ・アシュトン)。『キャプテン・マーベル』の終盤でキャロルがスプリーム・インテリジェンスを倒した結果、ハラは内戦に陥り、本作の現在では太陽そのものが死に向かっている。ダー=ベンは「アニヒレーター(殲滅者)」と呼ばれるキャロルへの復讐と、ハラ復興のために、もう片方が失われている古代の遺物・量子バンドの片割れを手に入れ、他の星から資源・水・空気・恒星そのものを略奪し続けている。

本作は、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が運営する地球軌道防衛拠点SABER、惑星アラドナで歌で意思疎通する文化圏、フラーケン猫グースの大量繁殖、そして三人それぞれの家族——ジョセフとムニーバとユスフ・カーン、マリアの娘モニカ、キャロル自身の引き受けた孤独——を、105分という短尺に詰め込んだ密度の高い長編である。本記事は、結末でモニカ・ランボーが別ユニバースへ取り残される展開、ミッドクレジットで姿を見せるビースト/ハンク・マッコイとビナリー化したマリア・ランボー、ポストクレジットでカマラがケイト・ビショップ/ホークアイを勧誘する場面まで、すべてのネタバレを前提に整理して記している。

原題
The Marvels
監督
ニア・ダコスタ
脚本
ニア・ダコスタ/メーガン・マクドネル/エリッサ・カラセック
原作
マーベル・コミック(キャロル・ダンヴァース/モニカ・ランボー/カマラ・カーン)
音楽
ローラ・カープマン
撮影
ショーン・ボビット
米国公開
2023年11月10日
上映時間
105分
ジャンル
スーパーヒーロー、SF、宇宙活劇、コメディ

あらすじ

以下は結末と二つのポスト・クレジット・シーンを含む全編のあらすじである。三人の女性ヒーローが「入れ替わり現象」を通じて初めて出会い、孤独に飛び続けてきたキャロル・ダンヴァースが「家族」を取り戻していく一方、その代償としてモニカ・ランボーが別ユニバースへ閉じ込められる——という二重の物語が並行して進む。

ハラの太陽とダー=ベン

映画は、ハラの暗い空から始まる。クリー帝国の首都星ハラは、本作の現在時点で深刻な環境危機に陥っている。空は煤色に濁り、海は枯れかけ、何より太陽そのものが冷え始めている。背景にあるのは『キャプテン・マーベル』のラストでキャロル・ダンヴァースが「スプリーム・インテリジェンス」を打ち倒した一件である。最高知性体を失ったクリーは三十年以上にわたる内戦に陥り、その結果として恒星制御の技術と社会基盤を同時に崩壊させた。

ハラの民は、キャロルを「アニヒレーター(殲滅者)」という古い呼び名で語っている。彼女は救済者ではなく、太陽と国土を滅ぼした災厄として記憶されている。クリーの司令官ダー=ベンは、この呼び名を受け継ぐ若い指導者であり、自国の崩壊の責任をすべてキャロル個人へ突きつけて止まない人物として描かれる。

ダー=ベンが探しているのは、古代の遺物「量子バンド(Quantum Band)」と呼ばれる金属の腕輪である。一対で機能するこの腕輪は、宇宙の二点を直接結ぶ「ジャンプ・ポイント」を強引に開き、エネルギー・水・空気・あるいは恒星そのものを別の場所へ移送する力を持つ。バンドのうち片方は、辺境惑星に眠る古代神殿から、本作冒頭でダー=ベンが武力で奪取する。もう片方の所在は彼女にも分からない。

カマラのバンドと「入れ替わり」

場面は変わって、米国ニュージャージー州ジャージーシティ。ドラマ『ミズ・マーベル』の終盤で大叔母の遺品から手渡された古い腕輪——量子バンドのもう片方——を腕に巻いたまま、高校生カマラ・カーンは自分の小さな部屋でキャプテン・マーベルのファンアートを描き、二次創作の小説に没頭している。彼女のヒーロー名は『ミズ・マーベル』、ヒーロー活動はジャージーシティの路地裏の小競り合い止まりで、世界規模の事件にはまだ手が届いていない。父ユスフ、母ムニーバ、兄アーミルとの賑やかな家族の食卓が描かれ、彼女がただの十代であることが強調される。

同じ夜、ハラから遠く離れた辺境惑星マ・ラデルでは、ダー=ベンが量子バンドの片方を起動して「ジャンプ・ポイント」を作り、惑星の大気と空気を一気に奪い取る。爆発的なエネルギーの揺り返しは、銀河の彼方にいるキャロル、地球軌道上のSABERで観測中のモニカ、そして地球上で偶然バンドを起動したカマラの三人に同時に伝わる。

その瞬間、三人は物理的に位置を入れ替えてしまう。キャロルはカマラの自宅の食卓に転送され、家族と鉢合わせし、カマラはSABERの観測室、モニカはマ・ラデルの真空の宇宙空間に放り出される。三人が「光に近い波長のエネルギー」——フォトン・ブラスト、量子バンドの作るジャンプ、モニカの吸収して放出するエネルギー——を行使するたびに、入れ替わりが起きる、というのが本作の中心ギミックである。エンタングル現象を解かないかぎり、戦闘も日常もまともに成立しない。

三人は、ニック・フューリーが指揮する軌道防衛拠点SABER(Sentient Anchoring Bio-Electric Resource)に集合する。フューリーは『シークレット・インベージョン』を経て本格的に地球を離れ、惑星規模の脅威監視と多種族難民の保護をこの軌道ステーションから取り仕切っている。彼の手によって、三人は短い時間で互いの能力と立場を把握し、入れ替わり現象を逆に利用して連携する訓練を始める。三角形に並んだ三人が瞬発的にポジションを取り替えながら一人の敵を仕留める格闘シーンは、本作で最も印象に残るアクション設計となった。

惑星アラドナと「夫」プリンス・ヤン

ダー=ベンの次の標的は、惑星アラドナである。ここは住民が日常の意思疎通を「歌」で行う、極めて様式化された文化圏で、空も建築も赤と金で彩られている。キャロルは過去にアラドナの平和維持任務を引き受けた経緯から、その王族の一人であるプリンス・ヤン(パク・ソジュン)と政略上「結婚」した状態になっている——もっとも、本人は事務的な締結のつもりで、家族としての生活を共有してはいない。

三人がアラドナに到着するなり、住民は歌い踊って王女キャロルを迎え入れる。ダー=ベンに先回りされ、彼女はアラドナの海を量子バンドのジャンプ・ポイントで根こそぎ奪い取り、ハラへ転送してしまう。アラドナは一夜にして枯れた星となる。

ダー=ベンを足止めするためにキャロルが選んだ手段は、王族としてアラドナの儀礼に従い、ヤンと「正式な」結婚式をその場で挙げて全住民を動員することだった。アラドナでは儀式そのものが歌で進む。三人のヒーローが歌に乗せて住民の戦力をまとめ上げ、ダー=ベンと量子バンドを起動した部下たちを押し返す、というMCU長編でほとんど例のないミュージカル風シーンが展開する。アクションと様式化された歌唱の融合は、観客の好みを大きく分けたが、本作の作家性を象徴する一場面となった。

フラーケンの大量発生とSABER

ダー=ベンが次に狙うのは、SABER本体である。彼女は地球の太陽と大気を直接奪うため、SABERのジャンプ・ゲートを乗っ取る計画を立てる。SABERはダー=ベンの先遣隊に襲われ、ステーションは深刻な損傷を負う。生存者たちは限られた数の脱出ポッドに乗り換えなければならないが、人員は多すぎる。

ここで、本作で最も観客の話題をさらった一場面が起きる。SABERの猫グース——『キャプテン・マーベル』でフューリーが拾い、口の中の次元ポケットにテッセラクトを呑み込んでみせたあのフラーケン——は、本作の時点で既に大量の卵を産んでおり、SABERには無数の「子グース」が居着いている。フューリーは彼らを総動員し、避難中の人間を一人ずつ口の中の次元ポケットに飲み込ませて運ばせる。

猫が人間を「口で飲んでは吐き戻す」という光景がコミカルなまま、廊下と通路を流れるようなロングテイクで処理され、ローラ・カープマンの音楽(劇中曲『Memory』をミーム的に組み直したアレンジ)と組み合わさって、緊張とコメディが同居する見せ場が完成する。グースたちが一斉に脱出ポッドへ吐き戻すラストの動きは、本作公開後にSNSで最も拡散された一場面である。

ダー=ベンの最後の一手

ダー=ベンの真の目的は、量子バンドの片方しか持っていない自分の劣勢を踏まえたうえで、もう片方——カマラの腕に巻かれている方——を奪うのではなく、バンドを使って強引にジャンプ・ポイントを「壊れた」状態のまま開きっぱなしにすることだった。片側だけのバンドで強行的に作ったジャンプ・ポイントは、本来の安定構造を持たず、空間そのものに穴を空けてしまう。彼女はその穴を、地球の太陽の中心を直接ハラへ繋ぐ位置に開き、地球の太陽の核を丸ごとハラへ吸い出す計画を立てている。

三人のヒーローは、地球軌道上の太陽近傍へ移動し、ダー=ベンの装置と直接対峙する。ダー=ベンは片方のバンドを起動し、地球の太陽中心へ「穴」を空け始める。空にはハラへ伸びる金色の柱が立ち、地球側の太陽の輝度は急激に落ちていく。

戦闘の終盤、キャロルはダー=ベンと一対一でぶつかり、もう片方のバンドを使って彼女のバンドを壊そうとする。ダー=ベンは破壊を受け入れず、無理矢理にもう一段階バンドを過負荷で作動させようとして、その瞬間にバンドが暴走し、彼女自身も含む地球の太陽近傍に空間そのものの裂け目を生む。ダー=ベンは爆発に呑まれて死亡する——MCUのヴィランとしては比較的早い決着である。

モニカの犠牲と「向こう側」

問題は、ダー=ベンが死んだあとも空間の裂け目が残ったままで、放置すれば地球側のユニバースに別ユニバースの物質が流れ込み、いわゆるインカージョン(並行宇宙同士の衝突)の起点になりかねないことだった。インカージョンは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で示された通り、両側のユニバースを物質ごと衝突させる、マルチバース・サーガで最も致命的な事象として描かれてきた。

裂け目を閉じる唯一の方法は、エネルギーを吸収して放出する性質を持つモニカ・ランボーが、内側からその波長を逆位相で打ち消すことだった。モニカは三人の中で「自分の側ではなく、もう一方の側に行く必要がある」と告げて、別ユニバースへ自ら飛び込む。

キャロルとカマラの目の前で、モニカは裂け目の向こう側に消える。残ったキャロルとカマラは、地球側の安全を取り戻し、太陽の核の流出を止める。しかしモニカは戻ってこない。彼女は別のユニバースに閉じ込められたまま、本作の現在には帰還しない。これがマルチバース・サーガの中盤で起きた、もっとも重く、もっとも淡々と処理された別れの場面である。

残された二人と新しい誓い

事件後、キャロルはアラドナを失った住民のもとへ戻り、王女としての責任を引き受けて復興に協力する。彼女は『キャプテン・マーベル』のラストで宇宙を孤独に飛び続ける選択をしたが、本作の終盤では、たった一人ではなく仲間と家族を持つ生き方へ初めて踏み出す。マリア・ランボーが既に逝去している今、モニカもいなくなった今、自分の周りに人を増やすことそのものが、彼女にとって重い決断である。

カマラはジャージーシティに帰り、家族の元へ戻る。だが彼女の中では「ヒーロー個人」の段階は既に終わっている。家を出る彼女の表情は、自分の世代のヒーローを束ねる立場へ進む決意を帯びている。キャロルから「家族」と呼ばれて以来、カマラの中では『キャプテン・マーベル』の続きが個人の話ではなくチームの話になっている。

本編の最後のカットは、暗い宇宙の中で太陽光に照らされたキャロルとカマラの並ぶ姿である。三人で始まった物語が二人で終わる構図は、本作の損失をはっきり見せる。同時に、カマラがこのあと若い世代のヒーローたちを集めて回る次の物語の入口でもあった。

ポスト・クレジット・シーン

本作には、エンドロール中の「ミッドクレジット」と、本編後の短い「ポストクレジット」の二つの追加シーンが置かれている。意味の重さは前者にあり、後者は次のストーリーへの軽い予告である。

ミッドクレジットでは、モニカ・ランボーが「向こう側」のユニバースの白い病室で目を覚ます。窓のないクリーン・ルームで、彼女は包帯を巻かれた姿で身を起こす。視界の端から声が聞こえる——「あなたが目を覚ましてよかった、モニカ」。声の主は、本作の世界とは別のユニバースを生きるマリア・ランボー本人である。マリアはここでは死んでおらず、しかも空軍時代の友人「キャロル」ではなく、宇宙のヒーロー「ビナリー」として活動している側の人物として描かれる。母を亡くしているはずのモニカが、別ユニバースで生きているままの母と再会するこの場面は、本作のもっとも切れ味のある一カットである。

そして部屋の奥から、青く長い体毛と眼鏡を備えた人物が顔を出す。「あなたは別の現実から来たのね。とても興味深い」と語るその人物は、ハンク・マッコイ博士/ビースト——20世紀フォックスの旧『X-MEN』映画シリーズで同役を演じたケルシー・グラマーが、ほぼ二十年ぶりにそのままの姿で復帰した役である。MCUがフォックス時代のミュータント映画と地続きの可能性を初めて長編本編で示した瞬間であり、続く『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)に向けたマルチバース統合の予告でもあった。

本編後のポストクレジットでは、カマラ・カーンがケイト・ビショップ(ヘイリー・スタインフェルド/ドラマ『ホークアイ』の主人公)の自宅に押しかける場面が描かれる。カマラは『アベンジャーズ・イニシアチブ』ではなく、自分と同世代のヤング・ヒーローを集める計画を一人で勝手に立ち上げており、ケイトに「あなたを最初の一人に勧誘しに来た」と一方的に告げる。ファンが長く期待してきた「ヤング・アベンジャーズ」構想の地ならしであり、フェーズ5以降の若い世代の物語への扉である。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して示す。三作品(『キャプテン・マーベル』『ミズ・マーベル』『ワンダヴィジョン』)の連続をまたぐため、固有名詞は多めである。

主要人物

  • キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル
  • モニカ・ランボー
  • カマラ・カーン/ミズ・マーベル
  • ニック・フューリー
  • プリンス・ヤン(アラドナの王子)
  • ユスフ・カーン(カマラの父)
  • ムニーバ・カーン(カマラの母)
  • アーミル・カーン(カマラの兄)
  • ブライアン・「ブライ」・カーン(アーミルの婚約者)
  • グース(フラーケン)と無数の子グース

ヴィラン/対立者

  • ダー=ベン(クリーの新指導者・アニヒレーターの継承者)
  • クリーの先遣部隊
  • 崩壊しつつあるクリー帝国
  • 暴走した量子バンドの片割れ

サポート/脇役

  • 別ユニバースのマリア・ランボー/ビナリー
  • ハンク・マッコイ博士/ビースト(別ユニバース)
  • ケイト・ビショップ/ホークアイ(ポストクレジット)
  • SABERの管制官・乗組員
  • アラドナの住民

組織

  • クリー帝国(崩壊期)
  • SABER(地球軌道防衛拠点)
  • S.W.O.R.D.(旧式・モニカの所属歴)
  • アラドナ王室
  • カーン家
  • カマラの構想する新世代ヒーロー集団(ヤング・アベンジャーズ)

場所

  • ハラ(クリー首都星)
  • 辺境惑星マ・ラデル
  • 惑星アラドナ
  • 地球(ジャージーシティのカーン家)
  • SABERステーション(地球軌道上)
  • 破壊された太陽近傍空間
  • 別ユニバースの病室(ミッドクレジット)

アイテム・技術

  • 量子バンド(一対の古代遺物)
  • ジャンプ・ポイント(強行起動の不安定型)
  • フォトン・ブラスト
  • モニカの光エネルギー吸収・放出
  • カマラの『ヌア』結晶を起点とする硬光形成
  • SABERのジャンプ・ゲート
  • フラーケンの次元ポケット

能力・概念

  • 三者のエンタングルメント(位置入れ替わり)
  • 光に近い波長のエネルギー
  • ハラ滅亡の連鎖(スプリーム・インテリジェンス喪失の余波)
  • インカージョン(並行宇宙の衝突)
  • マルチバース
  • ヤング・ヒーロー世代の浮上

ポストクレジット要素

  • 別ユニバースのマリア・ランボー
  • ビースト(フォックス版『X-MEN』からの直接継承)
  • カマラのケイト・ビショップ勧誘
  • 次世代チームの予告

主要登場人物

本作は三人の主演を中心に、SABERのフューリー、アラドナのヤン、カーン家、そしてダー=ベンを置く、比較的小さな人物表で動く。105分の短尺をこの規模で割り振り、入れ替わりギミックと家族劇とミュージカルと宇宙活劇を同時に成立させようとした構成上の挑戦が、本作の評価を割った要因でもあった。

キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)

前作から二十数年を経て、本作のキャロルはほとんど誰ともまとまった会話をせずに宇宙を飛び続けてきた人物として現れる。アラドナの王女であることすら、もう一つの逃げ場として処理しており、家族の生活には参加していない。マリア・ランボーが亡くなった現実に向き合いきれず、その娘モニカと連絡を絶ってきた負い目も背景にある。

本作で彼女がカマラ・カーンと出会い、若いファンの素直な敬意と、家族の食卓の温度に触れて、長く後回しにしてきた「人と暮らす」という選択肢へようやく一歩を踏み出す。終盤、地球の太陽を救うために自身の能力を限界まで使う場面は、力の見せ場ではなく、誰のためにその力を使うのかの確認の場面として演出されている。

ブリー・ラーソンは本作で、前作の固い表情から一段抜けた柔らかさをキャロルに加えた。家族と並ぶ場面で見せる小さな戸惑いと、モニカの犠牲を黙って受け止める場面の静かさが、長く飛んできた人物の現在地として説得力を持つ。

キャプテン・マーベル/キャロル・ダンヴァースの人物ページ 前作:キャプテン・マーベル

モニカ・ランボー(テヨナ・パリス)

ドラマ『ワンダヴィジョン』のヘックス侵入で能力を獲得した元S.W.O.R.D.職員、現SABER所属の宇宙工学者。母マリアを病で亡くしたあと、キャロルが葬儀にも戻ってこなかったことを長く許せずにいる。本作の冒頭、SABERの観測室で彼女がキャロルの姿を見て口にする最初の台詞は、技術的な確認ではなく「叔母さん、ようやく来た」という抑えた一言で、その距離が会話の前に決まっている。

彼女の能力は光・電磁波・あらゆる波長のエネルギーを吸収して再放出する性質を持つ。三人の中で唯一、「キューブ状の物体」(量子バンド)にも「人間の身体」(キャロル本人)にも直接介入できる存在として位置づけられる。終盤、空間そのものに開いた裂け目を内側から閉じる役を彼女が引き受けるのは、能力の論理として自然な選択である。

別ユニバースへ取り残されるラストは、本作で一番重い決断であるにもかかわらず、説明的なセリフが置かれない。マリアの代わりに自分が「向こう側」へ行くことを、彼女自身が選び取った場面として淡々と処理されている。テヨナ・パリスの抑えた芝居が、その短さを成立させた。

カマラ・カーン/ミズ・マーベル(イマン・ヴェラーニ)

ニュージャージー州ジャージーシティの高校生。パキスタン系移民のカーン家の末娘で、キャプテン・マーベルの熱烈なファンであり、彼女についての二次創作小説をひそかに書き溜めている。ドラマ『ミズ・マーベル』で大叔母の遺品の腕輪——量子バンドのもう片方——を腕に巻いて能力を得た。腕輪を起動すると、結晶のような硬い光で拳・パンチ・建造物の足場を形成できる。

本作のカマラは、家族との会話の温度をそのまま劇場サイズへ持ち込んだ唯一の存在である。SABERへ転送されてもまずフューリーをファンとして拝み倒し、キャロルに会えば握手の仕方を悩み、自分の二次創作の話をして恥ずかしがる。彼女の素直な空気が、本作の重い人物関係を緩和し、三人の入れ替わりギミックを「楽しい」と感じさせる装置として機能している。

ポストクレジットで彼女がケイト・ビショップを訪ねる場面は、彼女がただのファンの位置から、自分の世代のヒーローたちを束ねる立場へ一歩進んだ瞬間でもある。イマン・ヴェラーニ自身が公言する筋金入りのMCUファンであることが、役柄と現実の境界をほとんど消す形で活きた。

ダー=ベン(ザウィ・アシュトン)

クリー帝国の新興指導者で、本作の主敵。スプリーム・インテリジェンスを失って以来、内戦と環境崩壊の続くハラを立て直すことだけを目的に動いており、その目的のためにはほかの星々の資源を強奪することも全く厭わない。彼女自身は冷酷というより、自国を救うために自分の身を含めすべてを差し出す覚悟を決めた指導者として描かれる。

彼女がキャロル個人を「アニヒレーター」として敵視する理由は、神話的・宗教的な怒りに近い。クリーの民にとってキャロルは恵みではなく災厄であり、ダー=ベンはその怒りを背負って立つ役を引き受けている。同時に、量子バンドの片方しか持たない自分の劣勢を自覚しており、「壊れたままジャンプ・ポイントを開く」という自殺的な戦術を最後に選ぶ追い詰められ方が、彼女を単純な悪役ではなく国民国家の崩壊を引き受けた指導者として印象づける。

脚本上の弱点として、彼女の動機が物語の中で十分に展開される時間がなかったことが批評で指摘された。105分という尺の制約と、三人の主演の関係構築に比重が置かれたことの裏返しでもあり、本作の興行的評価を割った要因の一つでもある。

ニック・フューリーとプリンス・ヤン(サミュエル・L・ジャクソン/パク・ソジュン)

フューリーは本作の時点で、地球から離れて軌道防衛拠点SABERを運営している。ドラマ『シークレット・インベージョン』を経て地球側の信頼を失い気味の彼が、軌道上で再起し、フラーケン猫の群れをはじめとする多種族の難民・家族を抱える指揮官として描き直されている点が、本作のフューリー像の核である。彼の動きは作戦指揮よりも、三人の主演に「家族」の機能を提供する側へ寄っている。

プリンス・ヤンは、惑星アラドナの王族で、キャロルの政略上の「夫」。歌で意思疎通する文化圏の住人らしく、長台詞は乏しいが、最後までキャロルの選択を尊重し続ける優しい立ち位置に置かれた。パク・ソジュン(韓国の俳優、『梨泰院クラス』などで知られる)が本作で英語圏ハリウッド本格進出を果たした。

カーン家(ザネル・カーン/ニムラ・ブッチャ/サアガル・シェイク)

父ユスフ、母ムニーバ、兄アーミルからなるパキスタン系移民の家族。ドラマ『ミズ・マーベル』で確立した「家族の食卓を中心に物語が回る」リズムを本作にもそのまま持ち込み、カーン家の三人はキャロルが初めて転送されてくる先として、また宇宙活劇の中で唯一の「日常の重力」として機能する。

彼らの存在は本作の作劇的な発明でもある。MCU長編で、主人公の家族が宇宙艦上にまで同行し、ニック・フューリーと並んで作戦を支援する側に回るのは異例である。母ムニーバが家族との別れ際に何を言うか、父ユスフがカマラに向ける視線がどれほど信頼に満ちているか——これらが、本作の温度を決めている。

舞台と用語

本作の舞台は短時間で大きく切り替わる。ハラの煤色の空、辺境マ・ラデルの真空、地球側のジャージーシティの台所、地球軌道のSABERステーション、赤と金のアラドナ、太陽近傍の白い破裂——それぞれの場所が一つの感情を担う設計になっている。とくにアラドナの赤と、終盤の太陽近傍の白とで、本作は冷たい青に偏りがちなMCUの色調から意識的に外れている。

用語面では、量子バンド/ジャンプ・ポイント/エンタングルメント/インカージョン/フラーケン/SABERの六つが要点となる。インカージョンは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で導入された並行宇宙衝突の概念で、本作の裂け目はその予兆として位置づけられる。フラーケンは前作『キャプテン・マーベル』で猫グースの正体として登場した次元ポケットを持つ生物で、本作ではそれが繁殖していた、というオチが大きな笑いどころとして使われている。

用語:マルチバース 用語:アベンジャーズ

制作

ここでは企画の出発点から、キャスティング、撮影、視覚効果、音楽、編集、再撮影と公開準備までの主要な経緯を整理する。

企画と脚本

本作の企画は2019年の『キャプテン・マーベル』公開直後から動き始めていた。マーベル・スタジオは『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』のドラマで導入した二人のキャラクター——モニカ・ランボーとカマラ・カーン——を、長編で本格的に交差させるという構想を掲げた。

脚本は当初、ドラマ『ワンダヴィジョン』にも参加したメーガン・マクドネルが執筆を担当し、後にニア・ダコスタ自身とエリッサ・カラセックが書き直しに加わった。三人のヒーローの能力を「光に近い波長のエネルギー」という一つの軸で統一し、それを起動するたびに位置が入れ替わるという中心ギミックが、企画段階で先行して決まっていたと伝えられる。物語の重さよりも、入れ替わりギミックと三人の関係性のコメディを優先するこの設計が、評価を割った要因にもなった。

監督ニア・ダコスタ

ニア・ダコスタは『Little Woods』(2018)、ジョーダン・ピール製作の『キャンディマン』(2021)で頭角を現した新世代の作家である。MCU長編の監督として、ブラック女性として歴史上初めて起用された。彼女の作家性は、人物の内面を静かに見つめるリズムと、土地と家族の歴史に根を張った視線にあり、本作のカーン家の食卓やアラドナの儀式の撮り方には、その持ち味が色濃く出ている。

一方で、105分という極端に短い尺、複数のドラマからの設定の引き継ぎ、量子バンドのギミック、宇宙活劇のスペクタクル、ミュージカルシーンを同時に処理するという要求は、新進監督にとって過酷な仕事量だった。マーベル・スタジオ側の再撮影介入や公開延期も重なり、最終的に完成形は監督一人の作家性というよりも、マーベル・スタジオ全体の現状を反映する形となった。

キャスティング

主演のブリー・ラーソンは『キャプテン・マーベル』から続投。テヨナ・パリスは『ワンダヴィジョン』で演じたモニカ・ランボーを成人版へ正式に引き上げた形で本作に登壇した。イマン・ヴェラーニはドラマ『ミズ・マーベル』で長編デビュー級の話題を呼んだ新人で、本作が劇場映画デビューとなった。

ヴィランのダー=ベンには、舞台俳優としても評価の高いザウィ・アシュトンが起用された。彼女は撮影当時、長年のパートナーであるトム・ヒドルストン(MCUのロキ役)との間に第一子を妊娠中であり、衣装と振付の調整が現場で行われたと伝えられる。プリンス・ヤン役にパク・ソジュン、カマラの家族にザネル・カーン、ニムラ・ブッチャ、サアガル・シェイクが続投。サミュエル・L・ジャクソンのフューリー、ケルシー・グラマーのビースト(ミッドクレジット)、ヘイリー・スタインフェルドのケイト・ビショップ(ポストクレジット)といった既存・新規キャラクターも合流した。

撮影と再撮影

本撮影は2021年8月から2022年5月にかけて、主に英国パインウッド・スタジオを拠点に行われた。撮影監督のショーン・ボビット(『それでも夜は明ける』『ジュディ/虹の彼方に』)は、宇宙活劇よりも人物の表情と部屋の空気を重視する撮り方で知られ、本作のカーン家の食卓やSABERの内部に、MCU長編としては珍しいほどゆったりした横移動のカメラを残している。

ポストプロダクション段階では、マーベル・スタジオ史上もっとも介入の多い作品の一つとなった。三人の入れ替わりのテンポ調整、アラドナのミュージカル・シーンの分量、ダー=ベンの動機の補強、ミッドクレジットの追加など、複数回の再撮影が2023年に分散して行われたと伝えられる。完成版の上映時間が105分というMCU長編歴代最短に着地したのは、編集段階で大量に切ったことの結果でもある。

視覚効果

本作の視覚効果は、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)、Framestore、Rise、Digital Domain、Trixter、Cantina Creativeなどの複数社が分担した。三人がリアルタイムに入れ替わる戦闘の合成、量子バンドのジャンプ・ポイントの空間断面、太陽近傍の裂け目、アラドナの色調設計、フラーケン猫の群れと次元ポケットなど、本作は短尺のわりに高負荷の視覚効果を多数抱えていた。

VFX業界では、本作の制作後半に、複数のスタジオが極端に短い納期で作業を強いられたとの報道が出ており、マーベル・スタジオの近年のスケジュール管理問題が公然と議論される一因となった。完成画面の品質は概ね保たれた一方、業界側の労働環境はその後の本格的なストライキ/組合化議論にも影響した。

音楽と音響

音楽はローラ・カープマンが担当。彼女は2021年に『ワンダヴィジョン』で同じくモニカ・ランボーの登場するエピソードのスコアを書き、本作で長編デビューを果たした。MCU長編単独作のメインスコアを単独の女性作曲家が担当するのは、前作『キャプテン・マーベル』のパイナー・トプラクに続いて二度目である。

本作のスコアは、宇宙活劇のスケール感を表面に出すよりも、三人の主演の関係を支える室内楽のテーマと、アラドナのミュージカル風シーケンスのオーケストレーション、フラーケン暴動シーンの古典『Memory』のミーム的アレンジなど、場面ごとに音楽の色を切り替える機動的な書き方が特徴である。サウンド・デザインでは、量子バンドの起動音とジャンプ・ポイントの開閉音が、本作の入れ替わりギミックを観客の耳に覚えさせる役を担っている。

編集と公開準備

編集はキャトリン・ヘドストレムとエヴァン・シフが共同で担当した。完成版の105分は、当初の編集段階より大きく短縮された結果と伝えられている。ダー=ベンの動機を提示する場面の一部、アラドナの儀式の長尺カット、SABER内部の追加場面などが削られた、というのが公開後に脚本側関係者から散発的に語られた内容である。

公開は当初2022年7月の予定が、複数回の延期を経て最終的に2023年11月10日へ落ち着いた。同じ秋にハリウッド全俳優組合のストライキがあり、本作の主演はプロモーションの大半に登壇できなかった。これは興行成績にも影響した、というのが大方の見方である。

公開と興行

本作は2023年11月10日に北米で公開された。製作費は約2億2000万〜2億7480万ドルとされ、本作だけでマーケティング費を含む損益分岐点は4億ドル前後と推計されている。

ところが北米初週末興収は約4640万ドルにとどまり、これはMCU長編の歴代最低スタートである。海外を含めた全世界興収は最終的に約2億0640万ドルにとどまり、MCU長編で歴代最低の興行成績となった。製作費を回収できなかったとして、マーベル・スタジオの近年の戦略——ディズニープラスのドラマと長編を密結合させる方針——への懐疑が業界内外で広く語られる契機となった。

興行不振の要因として複数の事情が同時に指摘される。第一に、前提となるドラマ『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』『シークレット・インベージョン』を視聴していないと、登場人物の関係性に入りづらい構造。第二に、同年に並ぶMCU長編・ドラマの本数過多による疲弊。第三に、SAG-AFTRA(米俳優組合)のストライキにより、主演陣がプロモーションに出られなかったこと。第四に、観客側の関心が縮小していたフェーズ5への評価そのもの。受賞の面では、評価は批評家賞・観客賞ともに限定的にとどまった。

批評・評価・文化的影響

批評はおおむね二つの方向に割れた。三人の主演の化学反応、105分という引き締まったテンポ、アラドナのミュージカル・シーン、グース猫の暴動などを「久しぶりに楽しいMCU長編」と評価する声と、ヴィランの動機の薄さ、上映時間の極端な短さに伴う説明不足、設定の前提となるドラマを観ていない観客への配慮の欠如を批判する声が、ほぼ同じ重さで並んだ。

観客の反応は、北米のCinemaScoreではB(同シリーズ作品の中ではやや低め)だが、ロッテン・トマトの観客スコアは約80%台と健闘した。本作を最後にマーベル・スタジオは「ディズニープラスのドラマと長編を厳密にチェーンさせる戦略」を見直し、以後は『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)以降の長編をドラマと半独立で並べる方向に舵を切ったと業界では分析される。

本作のもう一つの遺産は、フォックス時代の『X-MEN』映画と地続きの可能性を初めて長編本編で明示したことである。ミッドクレジットでケルシー・グラマーのビーストがそのまま登場した瞬間は、続く『デッドプール&ウルヴァリン』へのマルチバース統合の地ならしとなり、MCUの今後の入り口を実質的に書き換えた。

舞台裏とトリビア

本作はMCU長編で歴代最短の上映時間(105分)である。当初は監督ニア・ダコスタの編集案ではもっと長い構成が想定されていたが、テスト試写とスタジオ側の判断で大幅に短縮された。

ミッドクレジット・シーンに登場するハンク・マッコイ/ビースト役のケルシー・グラマーは、20世紀フォックス時代の『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006)以来、17年ぶりに同役を再演している。出演交渉は本作の撮影終盤に進行し、現場関係者の口は固く守られた。

ポスト・クレジットでカマラ・カーンがケイト・ビショップ/ホークアイを勧誘する場面は、ヤング・アベンジャーズ構想の正式な公的予告とされる。同構想は本作以前から噂が出ていたが、長編本編で「カマラが主導して仲間を集める」という具体像を見せたのはここが初めてである。

アラドナのミュージカル・シーンは、当初もっと長尺で全編歌付きのシーケンスが企画されていたが、ストーリーのテンポを優先して大幅に圧縮された。劇中で使われた言語は実在の言語ではなく、本作のために作られた歌唱用の音律体系である。

本作のヴィラン、ダー=ベンを演じるザウィ・アシュトンと、MCUのロキ役トム・ヒドルストンは実生活でのパートナーであり、撮影当時に第一子を妊娠していた。MCU内では「ロキの相方」と「ロキを生み出した会社の同期作品のヴィラン」が同じ家庭で同時進行していた、という珍しい状況になった。

テーマと解釈

本作の中心テーマは「ひとりで飛んできた人が家族を受け入れる」ことである。『キャプテン・マーベル』のラストでキャロルは銀河を孤独に飛び続ける選択をした。その選択は強さの表現でもあり、同時にマリア・ランボーの死に向き合えない逃げでもあった。本作はその逃げを正面から扱い、彼女がカマラの家族の食卓に座り、モニカと言葉を交わし直す過程を、宇宙活劇の合間に丁寧に置く。

もう一つの軸は「自国を救うために他国を犠牲にする指導者」の像である。ダー=ベンは単純な悪ではなく、太陽が冷えていく自国を立て直す責任を一人で背負った人物として描かれる。彼女の動機は、現実世界の資源争奪や気候危機の比喩としても読める。アニヒレーターと呼ばれる側のキャロルが、ダー=ベンの怒りを正当に受け止めようとする場面は、本作のもっとも誠実な瞬間の一つである。

そして三つ目の軸は「世代交代」である。カマラがケイト・ビショップを勧誘するポストクレジットは、フェーズ1からの第一世代アベンジャーズが事実上解散したマルチバース・サーガ以降の世界で、誰が次の世代のヒーローを束ねるのかを、初めて具体的な人物に託した瞬間である。モニカの別ユニバース行きで象徴される「家族の喪失」と、カマラの新世代結成で示される「家族の再構築」が、結末で対になっている。

見る順番(補助)

本作は前提となる作品が多い。最低限、『キャプテン・マーベル』(2019)でキャロルの背景を、ディズニープラスのドラマ『ワンダヴィジョン』(2021)でモニカ・ランボーの能力獲得を、同じく『ミズ・マーベル』(2022)でカマラ・カーンと量子バンドの由来を押さえてから観るのが望ましい。さらに、ニック・フューリーの現在地は『シークレット・インベージョン』(2023)の延長線上にあり、これも先に観ておくと理解が深まる。

本作の後は、ミッドクレジットで登場するビーストの伏線が『デッドプール&ウルヴァリン』(2024)でフォックス版『X-MEN』との直接接合へ展開していく。ポストクレジットのケイト・ビショップ勧誘は、今後の若い世代のヒーロー集合篇の地ならしである。マルチバース・サーガ全体の中での位置を知りたい場合は、フェーズ4・5の流れを整理したガイド記事も参考になる。

  1. 前作『キャプテン・マーベル』(2019)でキャロルの過去と能力の起源
  2. 前提シリーズ『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』『シークレット・インベージョン』で関連人物と量子バンド
  3. 本作三人の合流、ダー=ベンとの対決、モニカの犠牲
  4. 次への接続『デッドプール&ウルヴァリン』へ向けたフォックス『X-MEN』との接合とヤング・アベンジャーズ構想
前作:キャプテン・マーベル 用語:ディズニープラス・シリーズ MCU公開順 MCU時系列順 『エンドゲーム』のその後ガイド

よくある質問(補助)

「あらすじだけ知りたい」場合は、ハラの太陽が冷えていく状況、ダー=ベンが量子バンドで他星から資源を強奪している点、カマラがその片割れを腕に巻いている点、そして三人が能力起動で位置を入れ替えてしまう点を押さえれば全体の骨格は掴める。「結末・ネタバレを知りたい」場合は、ダー=ベンが自滅的に空間を引き裂き、モニカが裂け目を内側から閉じるために別ユニバースへ取り残されること、そしてミッドクレジットで別ユニバースのマリア・ランボーとビーストが登場することが要点である。

「評価を知りたい」場合は、興行は明確な失敗、批評は割れる、観客評は健闘、という三層を分けて理解するとよい。「見る順番」は前作と関連ドラマの先行視聴を強くおすすめする。「ポストクレジットの意味」は、ヤング・ヒーロー世代の集合と、フォックス『X-MEN』を含むマルチバース統合への二方向の予告である。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・キャスト・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Marvel公式:The Marvels
  2. IMDb: The Marvels (2023)
  3. Marvel Cinematic Universe Wiki: The Marvels
  4. Box Office Mojo: The Marvels
  5. Rotten Tomatoes: The Marvels

関連ページ

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参照・確認先

公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。

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