1995年の地球に不時着した記憶のない女性兵士ヴァースが、若き日のニック・フューリーと組んでクリー帝国の嘘を暴き、自分が「キャロル・ダンヴァース」という地球の戦闘機パイロットだったことを取り戻していく——『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』を繋ぐMCUフェーズ3の屈指の前史。

基本データ 2019年・アンナ・ボーデン/ライアン・フレック監督

マーベル・スタジオ製作、ウォルト・ディズニー・スタジオ配給。MCUフェーズ3の第21作にして、女性キャラクターを単独タイトルの主人公に置いた初のMCU作品。上映時間123分、製作費約1.5億〜1.75億ドル、全世界興収は約11億2820万ドルを記録した。

物語上の位置 1995年・銀河と地球のあいだ

クリー帝国とスクラル人の長い戦争の末期。クリーの精鋭部隊「スターフォース」の一員「ヴァース」が、戦闘で地球へ墜落し、自らの過去——空軍パイロット、キャロル・ダンヴァース——を取り戻していく。SHIELDがまだ「アベンジャーズ・イニシアチブ」を立ち上げる以前の前史であり、ニック・フューリーがまだ片目を残しデスクワーカーだった時期に当たる。

受賞・評価 11億ドル超とパイナー・トプラク起用

ロッテン・トマトの批評家評は約79%、メタスコアは64点、CinemaScoreはA。北米初週末興収は約1億5300万ドル、最終的に全世界興収11億ドル超えを記録し、女性単独主演の実写映画として初めて10億ドルの大台に乗せた。作曲家パイナー・トプラクは、女性として初めてMCU長編単独作のメインスコアを担当した。

この記事の範囲 結末・スプリーム・インテリジェンス・グースまで完全解説

ハラでの悪夢と訓練、トロスでのスクラル捕獲、地球C-53への墜落、ブロックバスター・ビデオでのフューリーとの出会い、ローソン博士の正体マル=ヴェル、ペガサス計画、ルイジアナのマリア・ランボー再会、テッセラクト、スプリーム・インテリジェンスの檻を破る覚醒、ロナンのクリー艦隊撃退、ヨン・ロッグの追放、グースがテッセラクトを呑む二つのポスト・クレジット、そしてフューリーのポケベル——すべてのネタバレを前提に解説する。

目次 35項目 開く

概要

『キャプテン・マーベル』(Captain Marvel)は、アンナ・ボーデンとライアン・フレックが共同監督し、ボーデン、フレック、ジェニーヴァ・ロバートソン=ドゥウォレットが脚本を執筆したアメリカのスーパーヒーロー映画である。マーベル・スタジオが製作し、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給した。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)通算21作目、フェーズ3の第6作にあたる。2019年3月8日に米国で公開され、同月15日に日本で公開された。

原作は、マーベル・コミックで「キャプテン・マーベル」の名を継承してきた歴代キャラクターのうち、米国空軍パイロット出身のキャロル・ダンヴァース版である。本作の脚色は、クリーとスクラルの長期戦争、宇宙の戦士ヴァースとしての記憶、空軍時代のマリア・ランボーとの関係、そしてスプリーム・インテリジェンスとの最終的な決別を、コミックの長い歴史から要素ごとに抽出して90年代の地球と銀河の双方を跨ぐ前史として再構成した。製作のケヴィン・ファイギは本作を「アベンジャーズ集合篇の最終決戦に間に合うように、その前史をついに語る時が来た」と位置づけ、続く『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年4月公開)への発射台として設計した。

本作は、MCU初の女性キャラクター単独主演作であり、その意味で歴史的な意義を持つ。主演のブリー・ラーソンは2013年の『ショート・ターム』、2015年の『ルーム』でアカデミー主演女優賞を受賞した俳優で、本作以降の続編『マーベルズ』(2023)まで同役を継続することになる。共演はサミュエル・L・ジャクソン(フェーズ1からのニック・フューリー、本作ではディエイジング処理で1990年代前半の若い姿)、ジュード・ロウ(ヨン・ロッグ)、ベン・メンデルソーン(タロス)、アネット・ベニング(マル=ヴェル/ローソン博士/スプリーム・インテリジェンス)、ラシャーナ・リンチ(マリア・ランボー)、ジェマ・チャン(ミン=エルヴァ)、リー・ペイス(ロナン・ジ・アキューザー)、クラーク・グレッグ(若き日のフィル・コールソン)など。

本記事は、冒頭のハラの悪夢から、トロスでのスクラル捕獲、地球C-53への墜落、若きフューリーとの出会い、ローソン博士/マル=ヴェルの正体、ペガサス計画への潜入、テッセラクトの所在、ルイジアナでのマリア・ランボーとの再会、スプリーム・インテリジェンスの檻を破っての覚醒、軌道上でのロナンのクリー艦隊撃退、ヨン・ロッグの追放、二つのポスト・クレジット・シーン(2018年現代パートでアベンジャーズ残党とフューリーのポケベルに応答するキャロル登場と、グースがフューリーの机にテッセラクトを吐き戻す場面)までを、すべてネタバレを前提に整理して書いている。

原題
Captain Marvel
監督
アンナ・ボーデン/ライアン・フレック
脚本
アンナ・ボーデン/ライアン・フレック/ジェニーヴァ・ロバートソン=ドゥウォレット
原作
マーベル・コミック(キャロル・ダンヴァース版『キャプテン・マーベル』)
音楽
パイナー・トプラク
撮影
ベン・デイヴィス
米国公開
2019年3月8日
上映時間
123分
ジャンル
スーパーヒーロー、SF、宇宙活劇、90年代レトロ

あらすじ

以下は結末と二つのポスト・クレジット・シーンを含む全編のあらすじである。本作は、自分の名は「ヴァース」だと信じ込まされていたクリーの戦士が、地球で「キャロル・ダンヴァース」という以前の自分と再会し、自分の能力の本当の出どころと、クリー帝国によって奪われていた記憶の真相を取り戻すまでの物語である。

ハラの悪夢と訓練——プロローグ

映画は、クリー帝国の首都惑星ハラの夜から始まる。長身の女性兵士「ヴァース」が眠りながら短い断片だけの夢を見ている。爆発で吹き飛んだ実験機の残骸、見覚えのない年配の女性、空気を裂くような閃光、そして自分が誰かに何かを大事なものを渡される手——どれも繋がらず、どれも自分のものか判然としない。彼女は汗で目を覚まし、街路へ出て、自分の上官にして指導役のヨン・ロッグの家へ向かう。

ヨン・ロッグはクリーの精鋭遊撃部隊「スターフォース」の隊長で、ヴァースに格闘術と能力の制御を叩き込んできた人物である。彼は屋上で訓練を始め、「お前の力は感情から来ている。怒り、痛み、自尊心——その全部をコントロールしろ。お前がクリーらしい兵士になるまで、お前は本当のお前じゃない」と告げる。クリーが理想とする戦士像——感情を抑え、命令に従い、戦術として機能する存在——を、彼女は教え込まれ続けてきた。

ヴァースの腕からは、青い光を帯びた粒子状のエネルギー「フォトン・ブラスト」が放たれる。ただし彼女自身は、この力がどこから来たのか、なぜ自分にだけ宿っているのかを知らない。クリーの記録上、彼女は約6年前に意識不明の状態で発見され、瀕死だった彼女にヨン・ロッグが自分のクリーの血を輸血して救った、ということになっている。記憶は最初の一日からしか繋がっておらず、それ以前の人生は彼女の中に存在しない。

二人は、銀河の最高権威「スプリーム・インテリジェンス(最高知性体)」の前へ参拝する。スプリーム・インテリジェンスは個体としては実体を持たず、面会者の前には「その人物が最も尊敬する人間」の姿で立つとされる。ヴァースの前に現れるのは、彼女自身が記憶していないはずの中年の女性科学者で、ヴァースはその顔だけは何故か知っている。誰なのかは分からない。スプリーム・インテリジェンスは、「お前は感情を抑えきれていない。お前を完成させるためには、もう少しの忍耐が要る」と告げて、彼女を次の任務へ送り出す。

トロス潜入とスクラル捕獲

スターフォースが向かう次の戦場は、辺境惑星トロス。クリーが何十年も戦い続けてきた敵が、変身能力を持つ知性体スクラル人である。スクラル人は他者のDNAをスキャンしてその姿と声を完璧に複製でき、潜入と工作で銀河を脅かす——とクリーの公式見解は語る。トロスでは、クリー側に協力していた潜入工作員が消息を絶ち、スクラルがその情報を握ったまま地下へ潜伏したという。スターフォースは工作員の救出と情報の確保のために投入される。

現場でヴァースは、自分の能力を抑え込むよう繰り返し命じられる。撃ち合いの最中、彼女は瞬発的に「青い光」を放ちかける——だが指輪型の抑制装置で、フォトン・ブラストの出力は人為的に抑え込まれている。クリー軍は、彼女の力の本当の出どころも、本当の最大出力も、彼女自身には決して知らせていない。

ヴァースはスクラル軍に捕獲され、敵艦に運び込まれる。敵の指揮官タロスは、彼女を椅子に固定して、コミックでは「メモリー・プローブ」と呼ばれる装置で彼女の記憶を強制的に再生し、特定の場面を探そうとする。映写機のように展開される彼女の記憶の断片——空軍学校での落下訓練、墜落するロケット試験機、爆発に向かって走る彼女自身、年配の女性科学者の死、何かを発射する銃口——のすべてに、観客は彼女と一緒に立ち会わされる。タロスは何かを探している。それが何なのか、本人には分からない。

ヴァースは脱出する。フォトン・ブラストで艦内を突き破り、脱出ポッドで近くの居住惑星——彼女のクリーの呼び名でC-53、つまり地球——へ墜落降下する。

ブロックバスター・ビデオ店とニック・フューリー

1995年6月のロサンゼルス。スーパー戦士の女性が、ブロックバスター・ビデオの天井をぶち抜いて店内に墜落する。VHSテープが散らばる店内で彼女は身を起こし、ピンボール台に貼られた『トゥルー・ライズ』の宣材を一発で破壊して、何が起きたかを確かめる。彼女のクリー製通信機は地球の電子機器に接続できない。

通報を受けて現場に駆けつけたのが、SHIELDのデスクワーカー、エージェント・ニコラス・ジョセフ・フューリーである。本作の彼は、後のフェーズ1以降に観客が知っているフューリーよりずっと若い。両目とも残っており、革のロングコートも、白い顎髭もまだない。サミュエル・L・ジャクソンの実写映像にデジタル処理(ディエイジング)を施し、1990年代半ばの俳優の顔として再構築した姿である。

フューリーは、墜落した女性を「謎の宇宙人」として警戒し、新人のフィル・コールソン(クラーク・グレッグ/同じくディエイジング処理)を連れて追跡を始める。だが、ヴァースは追跡中の地下鉄でフェイス・スクラル——別人に変身したスクラル工作員——を撃退し、フューリーはこの女性が言う「変身する宇宙人が地球にも来ている」という途方もない話を、半信半疑で信じ始める。

ヴァースはフューリーに、自分が探している手がかりを伝える。記憶の中に出てきた年配の女性科学者の名と、彼女が関わっていた実験機の名——「Pegasus(ペガサス)」。フューリーはSHIELDのデータベースから、その符号が空軍とNASAの共同極秘プロジェクトのコードネームだと確認する。

ペガサス計画と若きフューリー

ヴァースとフューリーは、米国国内のペガサス計画基地に潜入する。ここで判明するのは、6年前——1989年——にこの基地で「ライト・スピード・エンジン」を搭載した試験機が墜落事故を起こし、テストパイロットの女性キャロル・ダンヴァース大尉と、エンジンの設計者であるウェンディ・ローソン博士(アネット・ベニング)の両名が死亡した、と公式記録に書かれていることだった。ヴァースが記憶の中で見ていた年配の女性科学者は、ローソン博士本人である。

問題は、書類の写真に映っているキャロル・ダンヴァース大尉の顔が、ヴァース自身の顔と完全に一致することだった。ヴァースはここでようやく、自分がキャロル・ダンヴァースという地球の人間で、6年前に死んだことになっている女性であることを突きつけられる。

潜入中、二人は基地の格納庫の奥で、奇妙に見えるオレンジ色の縞模様の猫と出会う。フューリーは猫好きの中年男として猫に名前を付け(彼が当時観ていた映画の登場人物にちなんで「グース」)、抱き上げてあやす。ヴァースはなぜか猫を見て不穏な空気を察するが、その理由は終盤まで明かされない。

基地の管制官スターフォースの追跡を察知したヴァースとフューリーは、ローソン博士の研究記録を含むデータベースを抜き取り、若き日のコールソンが上層部の追手を意図的に逸らしてくれる短い瞬間に乗じて、基地から脱出する。コールソンは「あの女性は脅威じゃない、と思った」とだけ短く呟き、自分でも理由のつかない判断で、彼女を助ける側に回る。後のシリーズで彼が示し続ける「ヒーローを信じる目」の起点が、この一場面である。

ルイジアナとマリア・ランボー

ローソン博士の暗号文を辿った先は、ルイジアナ州の田舎町ノース・ロチェスター。そこに住んでいるのは、空軍時代のキャロルの僚機であり、もっとも近かった親友、マリア・ランボー(ラシャーナ・リンチ)——コードネーム「フォトン」——と、その娘モニカ・ランボー(11歳のアキラ・アクバル)だった。マリアと娘モニカは、キャロルが6年前の事故で死んだものだと信じてきた。

玄関先で再会したマリアは、ヴァースの顔を見た瞬間に泣き崩れる。死んだはずの親友が、6年経って自分の家の前に立っている。彼女はキャロルではなく「ヴァース」だと名乗り、自分の過去をほとんど何も覚えていないと言う。マリアは、彼女が以前どんな人物だったかを丁寧に教えてくれる。空軍学校でただ一人女性として下級生いじめに耐え、戦闘機テスト・パイロットの椅子を勝ち取り、女性は戦闘任務に出せないという当時の規則と戦い続けた、芯の強い、しばしば不器用な、いつも先に走り出すタイプの友人だったと。

モニカは、母の親友だったキャロルの存在を「叔母さんのように」記憶していて、屋根裏から空軍時代のキャロルの私物を持ち出してくる。フライト・ジャケット、写真、絵葉書。家族の写真の中の自分を見たヴァースは、その日初めて「ヴァース」ではなく「キャロル」として何かを思い出し始める。

ここでヴァースが追っていたタロスが、彼女たちの目の前に姿を現す。タロスはこれまで人間「タレント・コリンス」に変装してSHIELDに潜り込んでいたが、もはやその偽装を解く。観客がこの時点で初めて見るのは、敵としてのスクラルではなく、家族と種族の生き延びる場所を探している指揮官としてのタロスである。

マル=ヴェルの真実とスクラルの真相

タロスは、ヴァースが録音として保存していたローソン博士の音声日誌の最後の一片を再生する。声と姿は地球人のものだが、内容はクリー帝国の高位科学者のものだった。ローソン博士の正体は、地球に潜伏していたクリーの科学者マル=ヴェル本人だった。マル=ヴェルは、自分の所属する帝国がスクラル人に対して何十年も行ってきた殲滅と難民狩りに反旗を翻し、スクラルの避難所と移住計画を地球の軌道上に隠した宇宙ステーションで密かに進めていた。「ライト・スピード・エンジン」とは、難民を帝国の手の届かない遠方の銀河へ送り届けるための装置だったのである。

1989年の墜落事故の真相も、ここで明かされる。キャロル・ダンヴァース大尉はあの日、ローソンと共に試験機で離陸し、空中でクリーの追手——若きヨン・ロッグの率いるスターフォース——に襲撃された。墜落したロケットの中で、撃たれる寸前のローソンは、ライト・スピード・エンジンの動力源となっていたエネルギー・コアを敵に渡すまいとして、キャロルに最後の命令を与えた。地上に降りて、エンジンを破壊しろ。キャロルはローソンの銃を握り、エンジン・コアを撃ち抜いて爆発させた。爆発のエネルギーが、彼女の身体に直接吸収された。

つまり、キャロル・ダンヴァースのフォトン・ブラストの本当の出どころは、クリーの輸血でも遺伝子改造でもなく、地球で起きた一人の人間の自己犠牲的な選択と、その日に吸収した一片のエネルギーだったのである。彼女は6年間、自分の力の出どころも、自分が誰だったかも、すべて間違って教え込まれていた。

そして、スクラル人が地球の各機関に潜入していた理由も明かされる。彼らは銀河で迫害される難民の生き残りで、隠れているマル=ヴェルの宇宙ステーションと、ローソンが残したエンジン・コア——つまりキャロル本人——を探していたのである。タロスの妻ソレンと娘も、ロケットの墜落以来、地球の軌道上のステーションに身を寄せていた。

スプリーム・インテリジェンスの檻を破る

ヴァース、フューリー、タロス、マリアの一行は、軌道上に隠されていたマル=ヴェルの宇宙ステーションへ向かう。だが先回りしていたヨン・ロッグらスターフォースに迎え撃たれ、ヴァースは捕獲、再びスプリーム・インテリジェンスのインターフェース空間に拘束される。

ここで、スプリーム・インテリジェンスがキャロルの前に「ローソン博士」の姿で現れていた理由が、はっきりする。彼女がもっとも尊敬していた人物——彼女に「立ち上がれ」と教え続けた指導者——は、クリー帝国の高位ではなくマル=ヴェルだったのである。クリー帝国は、彼女を支配下に置くために、彼女が最も慕う人の姿を借り続けていた。

スプリーム・インテリジェンスはキャロルに、感情を持つな、立ち上がるな、お前の力はわれわれが与えたものだ、と繰り返し命じる。だが彼女の記憶は既に戻っている。スクリーンに映し出されるのは、空軍学校でいじめに屈しなかった少女時代、ゴーカートで転んでも父親の手を借りずに立ち上がる子どもの時代、ロケットに乗る直前のキャロル、そのどれもが——「倒れても、必ず立ち上がってきた」という同じ一つの自画像で繋がる。

キャロルは、首と手首に巻かれた抑制装置の指輪型コントローラーを、フォトン・ブラストで内側から焼き切る。輝く青いエネルギーは、これまでクリーの限界値で抑え込まれていたのに対し、本当の出力を解放されてオレンジから黄金へと色を変える。スプリーム・インテリジェンスのインターフェースが砕け、彼女は自分のスーツの色をクリーの緑から赤・青・金へと自分の意思で塗り替える。「お前はわれわれが作ったヒーローだ」と告げる声に、彼女は短く返事する——「私は六年もお前に証明し続けてきた。もうそれをやめる」。

スターフォースとロナンのクリー艦隊

解放されたキャロルは、ステーション内で待ち構えていたスターフォース全員——ミン=エルヴァ、コラス、ブロン=チャー、アット=ラスら——を単独で叩きのめす。これまで自分が「家族」だと教えられてきた相手の正体が、自分を監視し続けていた監督者と現場の手駒だったことを、彼女は冷静に受け止めて、戦闘でその関係を清算する。

並行して、地上のフューリーとマリアはタロスと共に難民をマル=ヴェルのステーション奥の保管区画へ移し、グース(実はクリー帝国でも危険生物とされる「フラーケン」と呼ばれる種族の異星生物で、口の中に小さな次元ポケットを持つ)が、ライト・スピード・エンジンの本当の動力源だった「テッセラクト」を保管庫から呑み込む形で回収する。テッセラクトは後にMCUで「スペース・ストーン」の容器であることが判明する、シリーズ全体の中心装置である。

宇宙ではロナン・ジ・アキューザー(リー・ペイス)が率いるクリーの巡航艦隊が、地球を「核兵器による浄化」の対象として接近している。難民を守る最後の障害は、艦隊そのものになる。キャロルは、フューリーらが乗るマル=ヴェルの貨物船を地球へ向けて発進させ、自身は単独で大気圏外へ飛び出し、艦隊の発射した核ミサイルの群れをすべて空中で破壊する。最後の一発はキャロルが片手で受け止め、そのまま握り潰す——「彼女、その人を倒すのに、撃つ必要すらない」と艦内のロナンが呟き、撤退を命じる。

戦闘の最後に、地上に堕ちたヨン・ロッグとキャロルが対峙する。ヨン・ロッグは、彼女に「自分と素手で殴り合え、お前が本物のクリーの兵士であることを最後に証明しろ」と挑発する。キャロルは長い視線で彼を見て、フォトン・ブラストを一発、無造作に彼の胸に撃ち込み、答える——「私は何も、お前に証明する必要はない」。ヨン・ロッグは砂塵の中に倒れる。彼女は彼の脱出ポッドにメッセージを乗せてハラへ送り返し、スプリーム・インテリジェンスへの宣戦布告とする。

別れ、ポケベル、グース

戦いが終わったあと、キャロルはマリアとモニカ、フューリーに、自分はタロスたちと共に新しい安住の星を探しに銀河へ出ると告げる。地球は彼女の故郷だが、まだ救う必要のある人々が宇宙にいる以上、ここに残ってはいられない。モニカはキャロルに、新しい飛行スーツの色を「赤・青・金」に塗り替える提案をしたあと、「お母さんも、私も、あなたが戻ってくる場所はここにあるよ」と告げる。

フューリーは、別れ際にキャロルから一台の改造ポケベル——銀河のどこからでもキャロル本人に直接信号を送れる装置——を受け取る。「本当の緊急事態以外で押すな」とキャロルは念を押す。このポケベルは、本作の23年後の地球で、フューリーがインフィニティ・ウォーの最後にディスインテグレートされる直前に押すことになる装置である。

別れの後、SHIELDの本部に戻ったフューリーは、地球外脅威に対抗する集合チームの構想を整理し始める。彼はキーボードに向かい、空軍時代のキャロル・ダンヴァースのコードネーム「アベンジャー(マル=ヴェルの旗号でもあった)」から取って、新しい計画にこう命名する——「アベンジャーズ・イニシアチブ」。後の『アイアンマン』(2008)のポスト・クレジット・シーンの「アベンジャーズ計画」、そして『アベンジャーズ』(2012)の集合篇に至る、シリーズ全体の出発点となる名前が、ここで生まれる。

オフィスの机では、フューリーの相棒となったオレンジ猫グースが、机に飛び乗って、ぶっきらぼうに伸びをしたあと、フューリーの顔めがけて爪を伸ばす。彼の左目に深い傷が走る。これが、フェーズ1以降の観客が知っている「眼帯のフューリー」の傷の正体である。フューリーが後輩たちに繰り返し「俺の眼は最後に信じた相手から取られたんだ」と語っていた相手は、ヒドラでもクリーでもなく、フラーケンのグースだった、というのが本作の意地悪く美しいオチである。

ポスト・クレジット・シーン

本作には、エンドロール後に二つのポスト・クレジット・シーンが置かれている。第一のミッドクレジット・シーンは、本作の物語内時間の23年後——『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のラスト直後の現代パートに直接接続する。

アベンジャーズ施設の一室。ブルース・バナー、ナターシャ・ロマノフ、スティーブ・ロジャース、ジェームズ・ローズが、机の上に置かれたフューリーの古いポケベル——本作の終盤でキャロルから渡された、銀河のどこからでも信号を送れる例の装置——を取り囲んでいる。サノスの指パッチンで宇宙の半分が消えた直後、フューリーが消える前に押したその装置は、いまも何かを発信し続けている。

「装置の信号源を辿れ」とロジャースが命じた瞬間、画面が一度暗転し、彼らの背後から「あのポケベルを呼んだのは誰?」という声が聞こえる。振り向くと、22年ぶりに地球へ戻ってきたキャロル・ダンヴァースが立っている。次作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)への、シリーズ全体で見ても最大級の橋渡しのカットが、このシーンである。

第二のポストクレジットは、もっと軽い味のシーンである。場面はフェーズ1以前のニック・フューリーのオフィス。書類の積まれた机の上で、グースがゆっくり伸びをしたあと、口を大きく開けて、青いキューブ——テッセラクト——を吐き戻して机の上にコトンと置く。本作の終盤、フューリーがグースを「ただの猫」と思い込んだまま机を共有していた間も、テッセラクトはずっとグースの胃の中の小さな次元ポケットに収まっていた、というオチである。後の『アベンジャーズ』(2012)でロキがテッセラクトを盗み出す前史としても整合する。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して示す。固有名詞は本作以降のMCU理解の手がかりになる。

主要人物

  • キャロル・ダンヴァース/ヴァース/キャプテン・マーベル
  • ニック・フューリー(若き日)
  • フィル・コールソン(新人時代)
  • マリア・ランボー(フォトン)
  • モニカ・ランボー(11歳)
  • ウェンディ・ローソン博士/マル=ヴェル
  • タロス(スクラル指揮官、別名タレント・コリンス)
  • ソレン(タロスの妻)と娘

ヴィラン/対立者

  • ヨン・ロッグ(スターフォース隊長)
  • スプリーム・インテリジェンス(最高知性体)
  • ロナン・ジ・アキューザー(クリー艦隊指揮官)
  • ミン=エルヴァ(スターフォースの狙撃手)
  • コラス(追跡者)
  • ブロン=チャー
  • アット=ラス(医療技師)

サポート/脇役

  • ノラ/ノース・キャロル(少女期)
  • ジョセフ・ダンヴァース(キャロルの父/回想)
  • スティーブ・ダンヴァース(兄)
  • 空軍時代の同僚
  • SHIELDのケラー局長
  • SHIELDのトーマス・ケラー副長(実はタロス)

組織

  • クリー帝国/スターフォース
  • スクラル難民集団
  • SHIELD(戦略国土調停軍)
  • 米空軍/NASA
  • ペガサス計画(P.E.G.A.S.U.S.)
  • 後の構想:アベンジャーズ・イニシアチブ

場所

  • ハラ(クリー帝国首都星)
  • 辺境惑星トロス
  • 地球C-53(1995年のロサンゼルス、ルイジアナ、ペガサス基地)
  • ブロックバスター・ビデオ店
  • マル=ヴェルの軌道上宇宙ステーション
  • クリー艦隊の航宙圏

アイテム・技術

  • テッセラクト(スペース・ストーンの容器)
  • ライト・スピード・エンジン
  • メモリー・プローブ(記憶探査機)
  • フォトン・ブラスト抑制装置(首輪/指輪型)
  • フューリーの改造ポケベル(キャロル直通)
  • クリーの通信機・武器
  • スーパーパワード・スーツ

能力・概念

  • フォトン・ブラスト/ビノミアル・エネルギー
  • 飛行と大気圏外行動
  • クリーの輸血と義態強化
  • スクラルの変身能力
  • スプリーム・インテリジェンス・インターフェース
  • 「立ち上がる」という主題

ポストクレジット要素

  • 2018年(インフィニティ・ウォー後)のアベンジャーズ施設
  • フューリーのポケベル発信
  • キャロルの22年ぶりの帰還
  • フューリー机上のグース
  • グースが吐き戻すテッセラクト

主要登場人物

本作は人物を多く登場させるが、物語の重心はキャロルを中心とした六人——ヨン・ロッグ、タロス、フューリー、マリア・ランボー、マル=ヴェル/ローソン博士、グース——の周辺に集約されている。以下、それぞれの位置と演者を整理する。

キャロル・ダンヴァース/ヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)

本作の主人公にして語り手。6年前の事故で死亡したとされる米国空軍テスト・パイロットで、墜落の瞬間にライト・スピード・エンジンのコアを撃ち抜いて爆発させ、そのエネルギーを身体に吸収したことで、フォトン・ブラスト(後にビノミアル・エネルギーとも呼ばれる)を操る存在になった。クリーの陣営に拾われ、自分の過去と能力の出どころの両方を「クリーから与えられたもの」と教え込まれて6年間を過ごす。

本作のキャロルが乗り越えるのは、敵そのものというより、「お前の力は誰かから貸し与えられたもので、お前はそれを返さなければならない」という他者の論理である。クライマックスで彼女がスプリーム・インテリジェンスの拘束を破るとき、彼女が放棄するのは怒りではなく「証明し続けてきた義務感」のほうで、本作はその瞬間に最大の高揚をクライマックスへ預けている。

演じるブリー・ラーソンは、2015年の『ルーム』でアカデミー主演女優賞を受賞した俳優で、本作で実写スーパーヒーロー映画の主役に初挑戦した。撮影の前に9ヶ月の身体トレーニングを行い、押し車を引いた負荷訓練の動画が公開当時話題になった。ラーソンは本作以降、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)のポスト・クレジット、『マーベルズ』(2023)まで同役を継続している。

キャロル・ダンヴァースの人物ページ 続編:マーベルズ 次作:エンドゲーム

若き日のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)

本作のフューリーは、フェーズ1以降の観客が知っている革のロングコートと眼帯の戦略家ではなく、1995年のSHIELDの中堅エージェントで、現場捜査と地味な記録作業を兼任するデスクワーカー寄りの人物として登場する。両目とも残っており、ベービー・フェイス・スマッシャーを口に出して言うほどの軽口を叩く、肩肘の張らない四十代の働き手として描かれる。本作のキャロルとの掛け合いは、相互の警戒から始まり、お互いの嘘を見抜き合う共同捜査の段階を経て、最後には「キャロル・ダンヴァースという人物に深い信頼を寄せる男」へ変わっていく一連の人物変化として組まれている。

サミュエル・L・ジャクソンは、本作のためにLola VFXの「フェイシャル・ディエイジング」処理を受けた。手法は、現役のジャクソンの撮影映像のフレームを一枚ずつ、彼自身の1990年代の出演作(『パルプ・フィクション』『ジャッキー・ブラウン』など)の顔写真と参照しながら、皮膚の張り、皺、頬の輪郭をデジタルに若返らせるもの。本作のディエイジングは、後年のシリーズで多用される同種の処理の中でも、長尺パートで違和感なく成立した代表例として、業界の参照点になった。

本作の終盤、フューリーが手帳に書き残す「アベンジャーズ・イニシアチブ」の命名の由来は、キャロル本人の空軍時代の機体に書かれていた「Avenger」のサインだとされる。後の『アイアンマン』(2008)のポスト・クレジット、『アベンジャーズ』(2012)の集合篇、『インフィニティ・ウォー』(2018)の灰のシーンと、ジャクソンの長期演技の起点が本作で初めて画面化される構造になっている。

集合篇:アベンジャーズ ポケベル発信元:インフィニティ・ウォー

タロス/スクラル人(ベン・メンデルソーン)

前半の本作の「ヴィラン」として導入される、変身能力を持つスクラル人の指揮官。クリーの公式見解では、銀河を脅かす侵略者として扱われる種族だが、本作の中盤以降、その立場は完全に反転する。タロスは、銀河で迫害される難民集団のリーダーであり、妻ソレンと娘を含む数十人の家族を、安住の星まで送り届けるためにマル=ヴェルの軌道ステーションを探し続けていた。

ベン・メンデルソーンの演技の鍵は、敵としての凄味と、家族の前で見せる柔らかい喜怒哀楽の落差にある。本物のスクラル形態は緑色の皮膚に長い耳と垂直の口元のシワを持つメイク造形で、地球パートで使う仮の地球人姿(SHIELDのケラー副長)はメンデルソーン自身の素顔である。クリーが何十年も語ってきた「悪のスクラル」というプロパガンダの裏側を、本作はこの一人の俳優の表情で根底からひっくり返す構成を選んだ。

メンデルソーンは本作の続編『マーベルズ』ではなく、サミュエル・L・ジャクソンと共演するDisney+ドラマ『シークレット・インベージョン』(2023)で同役の長期版を演じている。本作のタロスは、その20年以上にわたるスクラル難民とSHIELDの関係の物語の出発点として、シリーズ内で長く参照される人物像である。

ヨン・ロッグとマル=ヴェル/ローソン博士(ジュード・ロウ/アネット・ベニング)

ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)は、スターフォース隊長にしてキャロルの直接の指導役。本作の冒頭でしばしば「父親的な指導者」のような顔を見せるが、その正体は、彼女を6年間にわたって「ヴァース」として育て直し、感情と本当の力をクリーの規格へ抑え込み続けてきた監督者である。クライマックスでキャロルに「素手で殴り合え、お前が本物のクリーであることを証明しろ」と挑発するが、彼女のフォトン・ブラスト一発で吹き飛ばされ、脱出ポッドでハラへ送り返される。本作のヴィランは、肉体的に強大な怪物ではなく、相手の自己像を歪めて支配する種類の権威であり、ヨン・ロッグはその顔として置かれている。

マル=ヴェル(アネット・ベニング)は、コミックでは本来キャプテン・マーベルの先代である男性のクリーの戦士「マー=ヴェル」を、映画版で女性の地球潜伏科学者ローソン博士の姿に再構築した人物である。彼女はクリー帝国がスクラル難民に対して行ってきた殲滅政策に背き、密かに難民を地球の軌道で保護する計画を進めていた。1989年の墜落で死ぬが、その遺志はキャロルが引き継ぐ。アネット・ベニングは同時に、スプリーム・インテリジェンスがキャロルの前に現れるときの「最も尊敬する人」の姿としても本作に出演しており、つまりキャロルがクリーで最も慕い続けた相手は、クリーの権力者ではなくクリーに背いた科学者だった、という構造が映画全体の主題と完全に一致するキャスティングになっている。

ジュード・ロウは、撮影当時の役柄について、長らく「ヒーロー側のキャラクター(マル=ヴェル)を演じる」とプロモーションで匂わせる宣伝戦略が取られていた。最終的なヴィラン側へのねじれの開示は、公開後の観客の楽しみ方の一つになった。

マリア・ランボーとモニカ(ラシャーナ・リンチ/アキラ・アクバル)

マリア・ランボー(ラシャーナ・リンチ)は、米国空軍時代のキャロルの僚機にして、もっとも近い親友。コードネーム「フォトン」。シングルマザーで、娘モニカと暮らしている。本作で彼女は、死んだはずの親友を6年ぶりに再会させられる、という劇中で最も重い感情線を担う。涙を流し、怒り、しかし最後にはキャロルの旅立ちを完全に受け止めて、地球の側からキャロルに「お前の本当の故郷はここだ」と告げる。

ラシャーナ・リンチは本作以降、2021年の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』で新世代のダブルオー・エージェントを演じて知名度を一気に広げた俳優で、その後Disney+ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021)と続編『マーベルズ』(2023)には別の形で本作の物語が引き継がれることになる。

娘モニカは本作では11歳の子役アキラ・アクバルが演じる。23年後の現在パート(『ワンダヴィジョン』『マーベルズ』)では、テヨナ・パリスが大人になったモニカ(フォトン)として継承する。本作のモニカが屋根裏からキャロルの私物を持ち出してくる場面、母娘とキャロルが食卓を囲む場面、そして空軍ジェットを操縦できる母を「世界一かっこいい母」と誇る場面——これらは続編へ連なる血脈の出発点である。

グース(フラーケン)

ペガサス基地でフューリーが拾うオレンジ色の縞模様の猫——という最初の見せ方は意図的なミスリードである。グースは地球の猫ではなく、コミックでは「フラーケン」と呼ばれる宇宙生物の地球版で、見た目は猫だが、口を裂くように大きく開けるとそこに小さな次元ポケットを持ち、自分のサイズの何倍もの物体を呑み込んで内部に保管できる。本作の終盤、フューリーの机の上で「ちょっと吐き戻してテッセラクトを置く」というオチのために、グースは映画全体で最も計算された存在として配置されている。

グースの撮影には、Lupita、Reggie、Archie、Risoの四匹の生身の猫と、CGモデル、パペット、フランス人パペティアによる遠隔操作のミックスが用いられた。猫アレルギーがあるとされるサミュエル・L・ジャクソンと至近で撮影できるよう、猫との接触は最小限に抑え、抱きあげる手はインサート、フューリーが顔を寄せるカットは別撮りで合成された、と本作の制作インタビューで明かされている。

なお、コミック版でこの種族の代表的個体は「チューイ」と呼ばれており、本作で「グース」と改名されたのは、フューリーが当時観た映画『トップガン』のキャラクター名から取られた——という設定が、終盤のキャロルとフューリーのやり取りで明かされている。

舞台と用語

舞台は宇宙パートと地球パートの二層で組まれている。クリー帝国の首都ハラと辺境惑星トロスでは、高密度の都市彫刻と冷たい青灰色のトーンで未来感が押し出される。一方、1995年のロサンゼルスとルイジアナでは、ブロックバスター・ビデオ、レーザーディスク、True Liesの宣材、CD-ROMでロード時間に苛立つフューリー、ノー・ダウト『Just a Girl』が爆音で流れるバイク走行、当時の空軍と海軍の格納庫の質感など、観客が当時を生きていれば即座に時代感が立ち上がる細かいプロップが大量に積まれる。

本作のもう一つの中心舞台は「マル=ヴェルの軌道宇宙ステーション」である。これは難民スクラルを匿うために地球から打ち上げられた人工施設で、本作のラスト一節で「次の安住の星」を目指す出発拠点として機能する。ステーションには、ライト・スピード・エンジンのコア——テッセラクト——が、何重もの遮蔽下に隠されていた。

用語面では、フォトン・ブラスト(ビノミアル・エネルギー)、スプリーム・インテリジェンス、スターフォース、フラーケン、メモリー・プローブ、テッセラクト、ペガサス計画、ライト・スピード・エンジンが中心。地球側の「アベンジャーズ・イニシアチブ」は本作のラストで名付け親の場面として画面化される。これらの用語の意味は、暗記するより、誰が・どの場面で・何のために使うかを通して理解するほうが定着しやすい。

用語:アベンジャーズ 用語:S.H.I.E.L.D. 用語:インフィニティ・ストーン 用語:インフィニティ・サーガ 用語:フェーズ区分

制作

本作の制作は、翌2019年4月の『アベンジャーズ/エンドゲーム』へ向かう最後のピースとして、シリーズ全体の前史を一気に整える役割を負った。マーベル・スタジオはケヴィン・ファイギの判断で、現代を舞台にする選択を避け、1995年の地球と銀河を跨ぐ前史を真正面から描く方針を選び、監督に独立系映画出身のアンナ・ボーデンとライアン・フレックを起用した。

企画と脚本

マーベル・スタジオは2013年前後から、女性キャラクター単独タイトル作品の本格的な企画開発を始めた。ケヴィン・ファイギは複数の候補のなかからキャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベルを選び、2014年10月のシリーズ・ロードマップ発表会で本作のタイトルと公開予定を初めて公にした。当初の公開予定は2018年7月だったが、フェーズ3の全体スケジュール調整によって2019年3月へ後ろ倒しされた。

脚本は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)の脚本にも参加したニコール・パールマンと、メグ・ルフォーヴが2015年に共同で初稿を執筆した。後にマーベル・スタジオは『Tomb Raider』のジェニーヴァ・ロバートソン=ドゥウォレットを脚本陣に追加し、最終稿の段階でアンナ・ボーデン、ライアン・フレックの二人も脚本クレジットに加わる総五名体制となった。複数の脚本家が関与した本作だが、最終稿の中心軸——「クリーの戦士だと信じていた女性が、自分の本当の出自を取り戻す前史」——は、初稿の段階から大きく動いていない。

脚本上の最大の判断は、本作の物語のほぼ全体を1995年に置き、現代パートを二つのポスト・クレジットに集中させたことである。これは、本作を翌『エンドゲーム』への直接の橋渡しとしてだけ機能させるのではなく、「23年前にキャロル・ダンヴァースという人物が地球で何を選んだのか」という独立した前史として完結させる方針を選んだ結果である。終盤、彼女が地球を発って銀河へ旅立つ展開は、続編『マーベルズ』までの23年の空白期間の必然性を、本作内で完成させる構造になっている。

脚本陣はインタビューで、本作の精神的参照軸として、トニー・スコット『トップガン』(1986)の戦闘機パイロット文化、ジョージ・ミラー『マッドマックス/怒りのデス・ロード』(2015)の主人公像、それに監督ボーデン/フレックの旧作『Mississippi Grind』(2015)と『Sugar』(2008)に通底する「自分の物語を自分で書き直すまでの旅」のテーマを挙げている。

キャスティング

ブリー・ラーソンの起用は2016年7月のサンディエゴ・コミコンで正式発表された。ラーソンはアカデミー主演女優賞受賞直後の俳優で、当初本人はスーパーヒーロー映画への出演に慎重だったが、ケヴィン・ファイギとの長期にわたる面談を経て受諾したと後に語っている。契約は本作を含む複数本の長期出演契約で、後年の『エンドゲーム』『マーベルズ』までを含むものになった。

サミュエル・L・ジャクソンとクラーク・グレッグは、ニック・フューリーとフィル・コールソンの既存役の若き日版として、それぞれ既存契約の延長線上で参加した。ジュード・ロウ役のヨン・ロッグは2017年4月に発表され、当時のプロモーション上は「マル=ヴェル役」とミスリードされる形で長らく扱われていた。ベン・メンデルソーン役のタロスは2017年6月、アネット・ベニング役のマル=ヴェル/スプリーム・インテリジェンスは2017年9月、ラシャーナ・リンチ役のマリア・ランボーは2018年1月、それぞれ発表された。

脇役陣では、ジェマ・チャン(ミン=エルヴァ)、リー・ペイス(ロナン・ジ・アキューザー、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』からの再演)、ジャイモン・フンスー(コラス、同じく『ガーディアンズ』からの再演)、アルジェニス・ソト(ブロン=チャー)、ラスティ・シュウィマー(ノラ)、コリン・フォード(兄スティーブ)、マッケナ・グレイス(少女期のキャロル)が決定した。

撮影とロケ地

主要撮影は2018年1月22日にロサンゼルスで開始され、2018年7月にクランクアップした。地球パートのロケ地はカリフォルニア州ロサンゼルス(ダウンタウンとフラートン)、ルイジアナ州バトン・ルージュ、ロサンゼルス国際空港、エドワーズ空軍基地など。1995年6月のロサンゼルスのストリート再現には、当時実在したブロックバスター・ビデオ、レコード店、ファーストフード店の看板と建物のファサードが、現地スタッフによって細かく復元された。

ハラとトロスの宇宙パートは、ロサンゼルスのソニー・ピクチャーズ・スタジオに組まれた大型セットと、ブルー/グリーン・スクリーンの組み合わせで撮影された。マル=ヴェルの軌道宇宙ステーションの内部、クリー艦隊のブリッジ、スプリーム・インテリジェンスとの対峙シーンの大判クロマキー空間も同所内で構築された。

撮影監督ベン・デイヴィスは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ドクター・ストレンジ』『エターナルズ』のMCU諸作で起用された経験を持ち、本作では、ハラの青灰色と1995年地球の鮮やかなアンバー+ネオン色の二系統のカラー・パレットを、フィルムストックの違いを連想させる質感差で塗り分けている。本作のキャロルが宇宙から地球に降りた瞬間、画面の色温度が一段落ち着く——この変化が、ヴァースがキャロルに戻っていく物語の感覚的な根拠を支えている。

視覚効果とディエイジング

視覚効果はIndustrial Light & Magic(ILM)、Lola VFX、Animal Logic、Trixter、Framestore、Luma Pictures、Scanline VFXほか多数のスタジオが分担した。中心はLola VFXによる、サミュエル・L・ジャクソンとクラーク・グレッグのフェイシャル・ディエイジング処理である。手法は、現役の俳優の演技フレームの上に、それぞれの1990年代当時の出演作の顔写真と動画を参照しながら、皮膚の張りと骨格の輪郭を一フレームずつ調整するデジタル・リタッチで、本作はその処理を長尺パートで違和感なく成立させた代表例として、業界の参照点になった。

キャプテン・マーベルのフォトン・ブラスト・エフェクトはILMが中心に担当し、本作後半でキャロルが本来の出力を解放した瞬間に、青色から金色+燃え立つ赤の混色へ変化するエフェクトが新規開発された。終盤の大気圏外でのキャロル単独のミサイル撃破シーン、スプリーム・インテリジェンスの檻が破壊される多層レイヤーのインターフェース、グースが大量の触手を口から伸ばしてクリー兵を呑み込む長回しのカット——本作で最も視覚的な遊びが集中したのもこの最終盤である。

スクラル人のクリーチャー造形は、Legacy Effectsの特殊メイクとILMのCG拡張の混合方式。ベン・メンデルソーンが演じるタロスの本来の姿は、緑色のシリコン・プロステーシスと耳のCG拡張を組み合わせており、表情筋の動きの大部分はメンデルソーン自身の演技のフレームを残す方針で組まれた。

音楽と音響

音楽はパイナー・トプラク。トルコ出身の女性作曲家で、本作はMCU長編単独作のメインスコアを女性作曲家が担当した初の例となった。トプラクは本作以前にも『The Lightkeepers』などの長編、複数のテレビ作品でスコアを手がけており、ハンス・ジマー門下のメンターから推薦を受けてマーベル・スタジオに採用されたと自身のインタビューで語っている。本作のキャロルのテーマは、低音域から立ち上がるブラスと金属打楽器の四音動機で、後年の『マーベルズ』のスコアでも変奏が引用されている。

劇中歌の選曲は、本作の1995年というレトロな設定の中心装置である。ノー・ダウト「Just a Girl」(バトル・シーンで使用、グウェン・ステファニーが「私はただの女の子よ」と歌う皮肉と本作の主題のリンクが特に注目された)、ガービッジ「Only Happy When It Rains」、ホール「Celebrity Skin」、TLC「Waterfalls」、エルヴィス・コステロ「(What's So Funny 'Bout) Peace, Love and Understanding」、サルト=ン・ペパ「Whatta Man」など、1990年代前半〜中期のヒット曲が場面ごとに丁寧に配置されている。

本作の音楽選曲の方針は、単に懐古的な曲を当時の場面に貼るのではなく、歌詞と本作の主題(女性が自分の物語を取り戻す)の重なり合いを基準に選び抜く、というものだった。ノー・ダウトの起用は、トロスでヴァースが本来の力を解放する直前に流れることで、「お前はただの女の子だ」と他者から定義され続けてきた人物が、その定義を内側から砕いて立ち上がる場面と完全に同期している。

編集とポストプロダクション

編集はデブラ・ニール=フィッシャーとエリオット・グレアム。本作の編集上の最大の判断は、断片的なフラッシュバック群を物語の前半に分散して配置し、観客を主人公と同じ「自分が誰だったか分からない」状態に保ち続けたあと、ペガサス基地での書類発見と、ルイジアナでのマリア再会、終盤のスプリーム・インテリジェンス・シーンの三段階で、観客と主人公の認識を同時に上書きしていく構成である。

ハラのオープニングとロサンゼルスのブロックバスター・ビデオ墜落の間のクロスフェードは、本作で最も大胆な転換点であり、観客に「これは1995年の地球の話だ」と一切の説明文字なしで悟らせるための短いカットで処理されている。Marvel Studiosロゴ自体も、本作のオープニングでは2018年10月に逝去した原作者スタン・リーへの追悼として、彼の歴代出演シーンのモンタージュへ全面的に置き換えられた。これは本作公開時の劇場での観客から強い反響を呼んだ。

二つのポスト・クレジット・シーンの配置は、本作の中で最も慎重に編集されたパートである。第一のミッドクレジット・シーン(2018年現代パートとの接続)は、翌月公開の『エンドゲーム』への直接の橋渡しとして、観客がエンドロールを見送る間の期待を維持するための「導火線」として置かれた。第二のポスト・クレジット(グースがテッセラクトを吐き戻す)は、緊張を解いて観客を笑顔で劇場から送り出す「綴じ」として配置されている。

公開と興行

米国公開は2019年3月8日(国際女性デー)、日本公開は2019年3月15日。北米初週末興収は約1億5340万ドル、最終的な北米興収は約4億2670万ドル、海外興収は約7億140万ドル、全世界興収は約11億2820万ドルを記録した。製作費約1億5200万〜1億7500万ドルに照らして、シリーズの中でも明確な大ヒットの部類に入る数字で、女性単独主演の実写映画として初めて全世界興収10億ドルの大台を突破した記録としても残る。

批評面では、ロッテン・トマトの批評家評は約79%、メタスコアは64点、CinemaScoreはA。批評家は、ブリー・ラーソンの演技、サミュエル・L・ジャクソンとの掛け合い、1995年の細部、ベン・メンデルソーンのタロス像、グースの遊び心を繰り返し称賛した一方で、前半の編集テンポと一部のクリー世界の駆け足の説明には賛否があった。

公開直前の数週間、ロッテン・トマト上のユーザー評価欄に、公開前の作品にもかかわらず大量の星一つ評価が組織的に投じられる「レビュー・ボムビング」現象が発生し、ロッテン・トマトは本作の公開を機にユーザー評価ページの仕様を変更(公開後にしか評価できないように制限)した。公開後の一般観客の実評価は批評家評と近い水準に落ち着いている。

本作の興行は、翌月の『アベンジャーズ/エンドゲーム』への前売り需要を一気に押し上げる役割も果たした。同年4月公開のエンドゲームは、本作の興行を上回る全世界27億9700万ドルを記録し、本作からの「キャロル登場の予告編」が観客の期待を直接的に煽る装置として機能した。

批評・評価・文化的影響

本作の文化的影響は、二つの層に分かれている。第一は、MCUフェーズ3の集大成『エンドゲーム』への直接の前史として、シリーズ全体の物語上の重要装置を一気に画面化した点である。テッセラクトの所在の説明、若きフューリーの「アベンジャーズ・イニシアチブ」の命名、ポケベルの存在、マル=ヴェルとマリア・ランボーから続く血脈の起点、フューリーの片目の傷の真相——これら、フェーズ1〜3の遡及的な辻褄合わせが、本作で完結した。

第二は、女性キャラクターの単独主演作としての歴史的意義である。MCUの過去20本以上の作品で、女性キャラクターを単独タイトルの主人公に据えた前例はなかった。本作の興行成功と批評の安定は、後の『ブラック・ウィドウ』(2021)、『マ・ベル』(2023)、Disney+ドラマ『ワンダヴィジョン』『シー・ハルク』など、フェーズ4以降の女性中心作品群への扉を開いた。

第三に、本作はマル=ヴェルとマリア・ランボーから続く三世代の女性パイロット/ヒーローの血脈——マル=ヴェル(マー=ヴェル)、キャロル・ダンヴァース、マリア・ランボー、その娘モニカ・ランボー——という長期構造の起点を画面化した記録としても、シリーズ内で長く参照される。続編『マーベルズ』(2023)でその三代の物語が結ばれる。

本作公開時の最大の話題の一つは、Marvel Studiosロゴが本作冒頭で全面的にスタン・リー追悼版に差し替えられたことだった。2018年11月に逝去したスタン・リーへの公式追悼として、彼の歴代カメオ出演の映像が短くモンタージュされ、最後に「Thank you, Stan」の一言が添えられた。劇場での観客の拍手は、本作の公開週末の文化的記憶の一部となっている。

舞台裏とトリビア

ブリー・ラーソンは本作の撮影前に9ヶ月の身体トレーニングを行い、押し車(プッシュ・スレッド)を素手で引く動画が公開当時SNSで話題になった。ラーソンはトレーニング期間中、ヒップスラスト400ポンド、デッドリフト225ポンドを達成したと公表している。

若きニック・フューリーのディエイジング処理は、本作で約124分のうち約100分近くに及び、MCUの長尺ディエイジングの先行ケースとなった。続く『アベンジャーズ/エンドゲーム』のヤング・サノス、『シビル・ウォー』のヤング・トニー・スタークと並んで、本作のフューリーは業界の参照点として頻繁に挙げられる。

猫グース(実はフラーケン)の撮影には4匹の生身の猫——Lupita、Reggie、Archie、Riso——が動員され、Lupitaが主要な顔のクローズアップを担当した。サミュエル・L・ジャクソンが猫アレルギーを公言していたため、撮影現場での接触は最小限に抑えられ、抱きあげる手の至近カットはほとんど吹替の手と合成だったと制作インタビューで明かされている。

本作の冒頭のMarvel Studiosロゴは、スタン・リーへの追悼として2018年12月に新規制作された特別版に差し替えられた。歴代の彼のカメオ・シーンのモンタージュと「Thank you, Stan」の一文が、ロゴの締めに添えられている。本作のスタン・リー自身のカメオ出演は、ロサンゼルスの地下鉄でケヴィン・スミス『マルウキー・モール』の脚本を読むサラリーマンの姿として撮影された。

ヴァースのスーパースーツの色——緑・銀+青系——は、終盤のキャロル覚醒後の赤・青・金へと、画面内で切り替わる。配色の最終案は、本作公開時の11歳モニカ・ランボーのアイデアとして物語内で提案される構造を取っており、視聴者は色の変化と人物の自我の変化を一直線に追える設計になっている。

ニック・フューリーのコードネーム「フューリー」の意味、彼が机に向かって「アベンジャーズ・イニシアチブ」とタイプする場面、フューリーの左目の傷の起源——フェーズ1以降の観客が前提として知っていた要素のすべてに、本作が「実は」の物語を遡及的に追加した。シリーズの集合篇に向かう前史として、本作の真の達成は、観客がすでに知っていたつもりの記号に、もう一段の感情的な根拠を後から差し込んだ点にある。

本作には、コミックでチューイと呼ばれていたフラーケン個体名を、フューリーの当時の愛好作『トップガン』(1986)の登場人物名から「グース」へ改名する形で出した。コミックの「チューイ」は『スター・ウォーズ』のチューバッカに由来する名前だったため、本作の改名は『スター・ウォーズ』のオマージュを意図的に外す形で行われた、と脚本陣がインタビューで述べている。

テーマと解釈

中心の主題は「自分の物語を、他者の物語から取り戻す」ことである。本作のキャロル・ダンヴァースは、最初の二十分の間ずっと、自分が何者なのかを他者(クリー帝国、ヨン・ロッグ、スプリーム・インテリジェンス)の定義に依存して生きている。怒るな、感情を抑えろ、お前の力はわれわれが貸し与えたものだ。クライマックスで彼女が解放するのは、肉体の出力ではなく、その他者依存の自画像そのものである。本作のスーパーヒーロー化のドラマは、能力の獲得ではなく、定義権の取り戻しの物語として組まれている。

もう一つの軸は「悪のレッテルと難民」である。本作のスクラル人は、クリーの公式見解では銀河を侵略する変身者として描かれるが、その実体は迫害される難民集団だった、という反転は、本作のもっとも政治的な主題でもある。前半のヴァースは、クリーから教え込まれた「スクラル=悪」の前提で動く。中盤のタロスとの対話を経て、彼女はその前提自体を捨て、難民の側へ立ち位置を変える。「敵」とされた相手の物語を、もう一度本人の口から聞き直すという作業を、本作は120分のなかで丁寧に実行する。

三つ目の軸は「立ち上がる」である。映画の最終盤、スプリーム・インテリジェンスの檻の中で、キャロルが自分の少女時代から空軍時代までの転倒と再起の連続をフラッシュバックで見せられる場面——ゴーカートで転んだ少女が立ち上がる、空軍学校でいじめに屈さずに立ち上がる、ロケット墜落の煙の中から立ち上がる——のすべては、本作のテーマを一つの動作に凝縮している。本作で繰り返される台詞「立ち上がれ(Higher, further, faster)」は、コミック版キャロル・ダンヴァースの長期にわたるキャッチフレーズで、本作の主題そのものでもある。

視覚的には、ヴァース時代の青灰色のクリーのスーツが、終盤のキャロル覚醒後に赤・青・金の三色へ塗り替わる変化が、本作の主題を一目で観客に届ける。色の選択権そのものが、彼女の自己決定の最後のジェスチャーとして提示されている。最終ショットで彼女が宇宙へ出る場面では、フォトン・ブラストの色も青から金へ完全に変化し、本作の130分が一つの色変えの物語だったことが、画面の側から確認される構造になっている。

見る順番(補助)

本作はMCUフェーズ3の第6作にして、翌月公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』への直接の橋渡しである。初見のおすすめは、公開順で『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)を観た直後の状態で本作に入ること——フューリーが灰になる前に押したポケベルの受信者が誰だったのかを、本作が答える形になる。続けて『エンドゲーム』(2019)に進めば、本作の終盤の「22年ぶりに地球へ戻ったキャロル」が、そのまま集合篇へ合流する流れを途切れずに追える。

時系列順で観たい場合、本作の本編(1995年)は『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(1942-1945年)の次、『アイアンマン』(2010年)の前に位置する。物語内ではフューリーの「アベンジャーズ・イニシアチブ」命名の出発点が本作になるため、時系列順では本作→『アイアンマン』のポスト・クレジット→以降のフェーズ1作品、という流れが最も整合する。

キャプテン・マーベル個人の続編としては、Disney+ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021)でモニカ・ランボー(成人版)が登場し、続く『マーベルズ』(2023)で本作のキャロル、マリア=モニカの血脈、スクラル難民の続編が一気に結ばれる。本作の旅立ち場面から23年の時間が、最終的にこの続編で回収される。

  1. 前史『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(1942-1945年)
  2. 本作1995年・地球と銀河を跨ぐキャロルの覚醒
  3. 直後の現代本作の終盤2018年現代パートは『インフィニティ・ウォー』直後と接続
  4. 直後の作品『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でキャロル集合篇へ合流
  5. 後継作品Disney+『ワンダヴィジョン』(2021)→ 続編『マーベルズ』(2023)
前史:ザ・ファースト・アベンジャー ポケベル発信元:インフィニティ・ウォー 直後の集合篇:エンドゲーム 続編:マーベルズ MCU公開順ガイド MCU時系列順ガイド MCU初心者向けガイド アベンジャーズ視聴順ガイド MCU人物別視聴ガイド

よくある質問(補助)

「あらすじだけ知りたい」場合は、1995年・クリー帝国のスターフォース所属の戦士ヴァースが、トロスでスクラルに捕獲され記憶を覗かれる→地球C-53へ墜落して若きフューリーと出会う→自分の正体が6年前に死んだとされる空軍パイロット、キャロル・ダンヴァースだったと判明→マル=ヴェルの軌道ステーションのスクラル難民を救うため、スプリーム・インテリジェンスの抑制を破り、本来のフォトン・ブラストを解放→ロナンのクリー艦隊を単独撃退→ヨン・ロッグを地球から追放してハラへ送り返す→タロスたちと共に新しい安住の星へ銀河を旅立つ、という流れを押さえれば十分である。

「結末・ネタバレを知りたい」場合は、ヴァースの本名はキャロル・ダンヴァースで、6年前のロケット墜落でマル=ヴェル=ローソン博士のライト・スピード・エンジン(中身はテッセラクト)を破壊した爆発のエネルギーが本当の能力源、スクラルは難民でクリーが侵略者の側、キャロルはスプリーム・インテリジェンスの抑制装置を破って覚醒、ロナン艦隊を撃退、グース(フラーケン)がテッセラクトを呑み込んで保管、フューリーの片目はグースの爪で失った、フューリーは机で「アベンジャーズ・イニシアチブ」と命名、ポスト・クレジット第一は2018年現代パートでアベンジャーズ施設にキャロルが22年ぶりに帰還、第二はグースがフューリーの机にテッセラクトを吐き戻す、が核となる。

「評価を知りたい」場合は、批評家評約79%・全世界興収約11億2820万ドル(女性単独主演実写映画初の10億ドル超え)、MCU初の女性単独主演作にしてフェーズ3とエンドゲームへの最終橋渡し、女性作曲家パイナー・トプラクのMCU長編単独作初登板、と整理できる。「見る順番」では、『インフィニティ・ウォー』を観てから本作、続けて『エンドゲーム』へ進むのが最もスムーズな視聴順となる。続編『マーベルズ』(2023)を観る場合は、本作と『ワンダヴィジョン』『ミズ・マーベル』をセットで履修するのが推奨される。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Marvel公式 キャプテン・マーベル
  2. IMDb: Captain Marvel (2019)
  3. Marvel Cinematic Universe Wiki: Captain Marvel
  4. Box Office Mojo: Captain Marvel (2019)
  5. Rotten Tomatoes: Captain Marvel

関連ページ

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参照・確認先

公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。

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