六人のヒーローを一つの空に集める、史上初の大型クロスオーバー。テッセラクトを掲げるロキ、ヘリキャリア、そしてマンハッタンの空に開いた門——MCUフェーズ1がここで完結し、シリーズ全体の「集まる映画」という設計図が完成する。
マーベル・スタジオ製作、ディズニー配給。脚本・監督はジョス・ウェドン、製作はケヴィン・ファイギ。上映時間143分。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)第6作にして、フェーズ1の最終作にあたる。先行する5本のソロ作品を一つの物語へ束ね、「複数のソロ映画が合流して大型イベント映画になる」という以後のシリーズ運営の型を確立した記念碑的作品である。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のミッドクレジットでフューリーが取り戻した青く光る立方体テッセラクトと、『マイティ・ソー』で兄ソーに「自分が死んだと思わせた」ロキ——この二つの伏線が、本作冒頭の襲撃で同時に回収される。物語のあとは、ロキはアスガルドへ連行され、テッセラクトもアスガルドの宝物庫へ収められる。地上にはアベンジャーズ・タワー、ヘリキャリア、サノスという三つの新しい主役級の固有名詞が残り、フェーズ2以降の物語の前提を成す。
全世界興収約15.18億ドルは公開当時、映画史上歴代3位(最終的に同年で『タイタニック』に迫る成績)。批評家・観客の支持も高く、Rotten Tomatoesは91%(公開当時)。第85回アカデミー賞では視覚効果賞にノミネートされ、MTVムービー・アワードで最優秀作品賞、サターン賞でファンタジー映画賞などを受賞した。ハルクの再ブランド化、ジョス・ウェドンの群像演出、アラン・シルヴェストリのテーマ曲はとくに称賛された。
冒頭のジョイント・ダーク・エナジー・ミッション施設の崩壊から、コルカタでバナー勧誘、シュトゥットガルトのロキ、ヘリキャリア襲撃、コールソンの死、ニューヨーク上空に開いた門、チタウリ軍団、核ミサイルの方向転換、ハルクの「あわれな神」、そしてミッドクレジットのジ・アザーとサノス、エンドクレジットの黙食シャワルマまでを順に取り扱う。重要なネタバレを前提に構成しているため、視聴後の読み物として推奨する。
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概要
『アベンジャーズ』(Marvel's The Avengers、原題: The Avengers)は、ジョス・ウェドンが脚本・監督を務めたアメリカのスーパーヒーロー映画である。2012年5月4日に米国で公開され、日本では同年8月14日に劇場公開された。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第6作にあたり、シリーズの章立てではフェーズ1の最終作、インフィニティ・サーガの第一幕の幕切れを担う。
原作は、スタン・リーとジャック・カービーが1963年の『The Avengers #1』で立ち上げた、複数のスーパーヒーローが結成する団体「アベンジャーズ」である。本作の翻案では、原作初期メンバーであったハンク・ピムとワスプは登場せず、代わりに先行ソロ作品の主人公六人——アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、ブラック・ウィドウ、ホークアイ——が結集する。「ソロ映画でそれぞれの主人公を準備し、合流させて巨大な一本の映画にする」という、以後のハリウッド大作の地殻変動を引き起こした設計図が、本作で初めて成立した。
本作の企画は、2005年にマーベル・スタジオが独立メリル・リンチ融資で立ち上がった時点ですでに視野に入っていた。先行作品では各作のミッドクレジットやエンドクレジットに必ず本作への伏線——ニック・フューリーの来訪、フィル・コールソンの登場、テッセラクト、ロキ——が配置されてきた。2010年4月にジョス・ウェドンが監督として正式に発表されると、彼はそれまでザック・ペンが書いていた原案を全面的に書き直し、自身の脚本で本作を完成させた。
出来上がった作品は、ニューメキシコ州の砂漠地下にあるジョイント・ダーク・エナジー・ミッション施設、ロシアの倉庫、インド・コルカタのスラム、ドイツ・シュトゥットガルトの夜の街頭、上空3万フィートを飛行する空母ヘリキャリア、ニューヨーク・マンハッタン中心部のスターク・タワーという、地理的にも縦軸でも飛び石を渡るような複合スケールで構成されている。本記事は結末、サノス初登場、シャワルマ・シーンまでを含むネタバレを前提に整理している。物語の驚きを保ちたい読者は、視聴後に戻ってきてほしい。
- 原題
- Marvel's The Avengers
- 監督・脚本
- ジョス・ウェドン
- 原案
- ザック・ペン/ジョス・ウェドン
- 音楽
- アラン・シルヴェストリ
- 撮影
- シェイマス・マクガーヴェイ
- 編集
- ジェフリー・フォード/リサ・ラセック
- 米国公開
- 2012年5月4日
- 日本公開
- 2012年8月14日
- 上映時間
- 143分
- ジャンル
- スーパーヒーロー、SF、アクション
- シリーズ区分
- MCUフェーズ1・第6作/インフィニティ・サーガ
あらすじ
以下は結末、ミッドクレジット、エンドクレジットまでを含む全編のあらすじである。ジョイント・ダーク・エナジー・ミッション施設の崩壊と支配化、フューリーによる六人の招集、シュトゥットガルトのロキ捕縛、ヘリキャリア襲撃とコールソンの死、ニューヨーク決戦、核ミサイルの転送、ロキの拘束とアスガルドへの帰還、ジ・アザーとサノス、シャワルマの黙食までを順に追う。
ジョイント・ダーク・エナジー・ミッションの崩壊
映画はモーガン・フリーマン……ではなく、宇宙の闇を旋回するカメラから始まる。岩塊めいた小惑星の上で、フードを被った異星の使者ジ・アザー(アレクシス・デニソフ)が、玉座にうずくまる紫色の巨人——後にサノスと判明する人物——に向けて、青く光る立方体「テッセラクト」を地球の人類が発見した、そして「我らの王の代理人」たるロキにそれを取り戻させようとしていると報告する。観客はまだその巨人の名を知らないが、本編のラストでもう一度この同盟を確認することになる。
場面は地球、ニューメキシコ州の砂漠地下に隠された米軍・S.H.I.E.L.D.合同の研究施設「ジョイント・ダーク・エナジー・ミッション(プロジェクト・ペガサス)」へ移る。研究主任エリック・セルヴィッグ博士(ステラン・スカルスガルド)は、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のラストでフューリーが氷海から回収した青い立方体テッセラクトを、エネルギー源として研究している。だがテッセラクトは突如、独力で電力を発しはじめ、研究室の奥に青いポータルを開く。そこから現れたのが、ロキ(トム・ヒドルストン)である。
ロキは到着するやS.H.I.E.L.D.の警備兵を倒し、フューリー長官(サミュエル・L・ジャクソン)が制止に駆けつける前に、自分の杖(後にマインド・ストーンを内蔵すると判明するセプター)の青い宝石を兵士たちの胸に当てて支配下に置く。同じ瞬間、施設の警備主任クリント・バートン/ホークアイ(ジェレミー・レナー)と、セルヴィッグも杖の力で精神を奪われる。フューリーはテッセラクトの持ち出しは許さないと言い張るが、ロキは「私はアスガルド王家の血を引く者、地球の自由なる重荷を解いてやりに来た」と告げ、施設ごとの脱出を選ぶ。
脱出はヘリコプターと地下道を介した派手なシークエンスとなる。フューリーの副官マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)も追撃に加わるが、ロキは杖でフューリーを薙ぎ倒し、テッセラクトとともに施設外へ脱出する。直後、地下施設は崩壊して埋没する。フューリーは無線で「ワールド・セキュリティ・カウンシル」に状況を報告しながら、自分の最後の切り札——「アベンジャーズ・イニシアティブ」の再起動を宣言する。
招集——コルカタ、ニューヨーク、ノルウェーへ
コールソン捜査官(クラーク・グレッグ)は、深夜のマリブの邸宅にいるトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)を訪ねる。トニーはペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)とともに、自宅にして本社機能を兼ねたスターク・タワーへ、自社製のアーク・リアクターによる自立した電力網——「クリーン・エネルギーの灯台」——を点灯させたばかりだった。コールソンは予定の夕食をキャンセルさせ、ロキとテッセラクトの資料を渡す。トニーはペッパーから「彼は出ていきたがってる」と背中を押され、参加を決める。
ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)は、ロシア軍の元将官ゲオルギー・ラチコフによって椅子に縛りつけられ、嘘の尋問を受けている。だがそれはロマノフが彼の組織の情報を引き出すための芝居であり、コールソンからの電話で「コールソン、私はちょっと忙しいんだけど」と返した直後、彼女は手錠とハイヒールを武器に部下たちを瞬時に制圧する。出される次の指令は、ブルース・バナー博士(マーク・ラファロ)の確保——インド・コルカタ。
コルカタのスラムで、流行り病の少女を装ったおとりを使って近づくロマノフに対し、バナーは「あなたは私を怒らせに来たのね?」と穏やかに微笑む。窓の外には武装したS.H.I.E.L.D.の包囲網。「君が怒れば、街が一つ消える」というロマノフの恐怖と、「俺はずっと怒っている」と返すバナーの台詞は、後にニューヨークでのハルクの行動原理の前振りになる。
スティーヴ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)は、ブルックリンのジムで70年ぶりの解凍後のリハビリ中である。サンドバッグを片パンチで吹き飛ばし続ける彼を、フューリーが訪ね、テッセラクトのファイルを渡す。スティーヴはかつてシュミット/レッド・スカルが追っていた立方体が再び現れたという事実だけで、復帰を承諾する。
ノルウェー上空のアスガルドではソー(クリス・ヘムズワース)が、本作冒頭以来途絶えていた虹の橋(破壊された)の代わりに、オーディン王の暗黒エネルギーで地球へ送り出される。彼の目的はただ一つ、弟ロキの拘束である。
ヘリキャリア、ロキの捕縛、シュトゥットガルト
六人は、海面下に潜行できる空母ヘリキャリアに集合する。海面から離陸する巨大な空母が、四基のローター・タービンと光学迷彩で雲海の上へ消えていく場面は、本作を象徴する技術的見せ場の一つになった。船内ではバナーが、宇宙物理学者セルヴィッグの不在の代役として、テッセラクトの放射追跡装置を改造する作業に充てられる。バナーは初対面のトニーから「あなたの仕事は素晴らしい」「ガンマ線の研究の権威に会えて光栄だ」と声をかけられ、緊張をわずかに解く。
ロキはドイツ・シュトゥットガルトに姿を現す。ある国際的な美術館で行われていた夜会で、彼は壇上のドイツ人物理学者ハインリヒ・シェーファー博士(ジェリー・ワッセ)の眼球を、虹彩スキャナによる「最後の鍵」として奪い取り、近隣の研究所からセプターの安定化に必要なイリジウムを盗ませる。屋外に逃げ惑う群衆をロキが「跪け」と威圧する場面は、戦時下のヨーロッパで誰もが似たような声に従わされたことの記憶をかすめる。
そこへキャプテン・アメリカが盾を投げ、アイアンマンが空から到着し、AC/DCの「Shoot to Thrill」が流れる。ロキはあっさり投降し、捕縛される。だがクインジェットでヘリキャリアへ戻る途上、雷雲のなかから雷神ソーが降下し、ロキを奪い取って針葉樹林の岩盤に降りる。トニーが追跡し、二人は森のなかで殴り合いに突入する。そこへ盾を投げ込んだスティーヴが割って入り、雷を受けたヴィブラニウム盾が周囲を吹き飛ばすこの三者の初顔合わせは、観客に「やっと揃った」を体感させるシーンになった。
ヘリキャリアへ収容されたロキは、ハルクの破壊力を想定して設計された巨大ガラスの円筒の独房に放り込まれる。フューリーは「私はあなた方の安全を保証しない」とロキに告げ、ロキは「私はあなた方の安全に興味がない」と返す。だがロキの周囲では既に、彼の支配下にあるバートンが、ヘリキャリアの構造図とアベンジャーズ各員の経歴を分析している。
口論、ロマノフの尋問、コールソンの死
船内の実験室と会議室で、アベンジャーズは早くも分裂しかける。トニーはS.H.I.E.L.D.が秘密裏にテッセラクトを「フェーズ2」の兵器計画に転用しようとしていた事実をハッキングで嗅ぎつけ、フューリーを非難する。スティーヴはS.H.I.E.L.D.の倉庫で旧ヒドラ製のエネルギー兵器の試作品を発見し、二人で同時にフューリーを問い詰める。バナーは「あなたたちは私と私の中の彼を、地球規模の核兵器として呼んだだけだ」と苦笑し、ソーは「人間の支配の論理が、私たちアスガルドの遺物にまで及ぶのか」と眉を顰める。
口論の場にロマノフが入り、独房のロキへ単身尋問に向かう。ロキは彼女の暗殺者時代の罪を執拗にあげつらい、「お前はクリント・バートンの命を償いたいだけだ」と冷笑するが、ロマノフは涙に近い表情を作ったあと、声色を一変させる。「あなたは賢いふりをしている。けれど、あなたの計画はたった今、ハルクを呼び出すことだと教えてくれた」。釣り上げたのは罠だった——ロキの計画の核は、ヘリキャリアにバナーを乗せたままハルクを暴走させ、空母を内部から落とすことだったのである。
結論を伝えに駆け戻る彼女と、テッセラクトの位置を割り出した瞬間のバナーへ、外部から攻撃が走る。バートンが指揮するロキの私兵が、エンジン一基を破壊する。爆風と振動で実験室の床が抜け、バナーは恐怖と苦痛で変身を始める。緊急ジャンプスーツに着替えるヒロイックな描写ではなく、化学的・生物的に体を引き裂かれるおぞましい変身が示される。ハルクはロマノフを追ってヘリキャリアの内部を破壊しながら駆け回る。ソーが応戦するが、ハルクと取っ組み合いのまま空中でジェット機に張りつき、機外へ振り落とされる。
ロキは、別ルートで自分の独房に近づいたソーをガラスの中へ閉じ込め、独房ごと空中投下するスイッチを押す。コールソンが手製のヒドラ製エネルギー砲を構えてロキの背後に立ち、「これが何かわかるか?」と問うが、ロキは別の自分の幻影でコールソンを欺き、本体の杖の刃で背中から胸を貫く。コールソンは砲を発射してロキを壁に叩きつけたあと、ゆっくりと崩れ落ちる。ヘリキャリアの上ではフューリーがコールソンの最期を看取り、ロキを取り逃がしながらも「コールソンは死んだ。彼は我々の理由を信じていた」と、止血しきれない血で汚れたコールソンの『キャプテン・アメリカ』カードを、スティーヴとトニーの前に投げる。
ハルクは大気圏を割って地表へ落ち、放棄された工場の屋根を抜けて停止する。傷だらけの裸でバナーに戻った彼は、独居老人の警備員(ハリー・ディーン・スタントン)に「君は変な人だ。でも変人ばかりが世界を救う」と慰められる。墜落するヘリキャリアの一機ではエンジン外殻にスティーヴとトニーが取りつき、爆風と高熱の中、エンジンを再起動させる。バートンはロマノフに頭部を硬い手すりで強打されてロキの支配から覚醒し、自分の罪悪感と引き換えに反撃に加わる準備を整える。
スターク・タワーと門
ロキ、バートン、セルヴィッグはマンハッタンへ移動する。スターク・タワー最上階のテラスは、独立した自立電源のアーク・リアクターに支えられており、テッセラクトを安定化する装置の電源として最適だった。セルヴィッグは支配下のまま、リアクターの周りに巨大な金属の輪と冷却装置を組み、テッセラクトを中央に据える。
トニーは単独で先行し、スーツなしでロキと最上階で対峙する。「俺の家を出ていけ」と挑発し、酒を奨めるトニーに、ロキは「私は神だ」と返す。トニーは飄々と「お前は今、王と同じくらいピザの注文を聞かれることが多くなる」と切り返し、最後にロキは「貴様らの仲間は私を止められない」と言い放って、トニーの額にセプターを突きつける。だがアーク・リアクターは反応せず、トニーが「タイミングが悪いね、ロキ」と笑う。ロキはトニーを窓から投げ落とす。落下するトニーの背中をアイアンマンのスーツが追尾し、空中で装着——「マーク7」の自己装着フィニッシャーとして、シリーズで最も有名なスーツアップ・カットの一つになった。
テッセラクトが空に青い光線を放ち、マンハッタンの上空に巨大なポータルが開く。次々に降下してくる細身の異星人兵士チタウリと、巨大な鋼鉄の海獣めいた航空生物リヴァイアサンが、市街を蹂躙し始める。地上の警察と市民は逃げ惑い、橋とビルが崩れる。視覚効果のスケールと密度において、当時のスーパーヒーロー映画の上限を一気に書き換える場面である。
ニューヨーク決戦——アベンジャーズ・アッセンブル
クインジェットでマンハッタンへ向かうキャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ホークアイの三人に、思い思いの戦線で奮闘するアイアンマンとソーが合流する。最後にニューヨークへ駆けつけるのが、ボロボロのオートバイで進入してくるブルース・バナーである。「秘密を教えようか、キャプテン……私はいつも怒ってる」——スティーヴに笑い半分で答えながら、バナーは初めて自らの意思でハルクへ変身し、リヴァイアサンの顔面を一撃で粉砕する。
ジョス・ウェドンはここで、グランド・セントラル駅前の交差点にぐるりとカメラを一周させる、六人の集合ショットを置く。下から見上げた六人——ハルクの肩越しに盾と槌、矢と銃と高熱炉——が円陣に並ぶこの一枚絵は、本作とMCU全体を象徴するシンボル・カットとなった。アラン・シルヴェストリのアベンジャーズ主題曲がここで初めて完成形のオーケストレーションで提示される。
戦線は分担される。キャプテン・アメリカは交差点で警察に避難指示と防衛ラインを組ませる。ホークアイはビル屋上から弓矢でチタウリを撃ち、敵の進路を読み解く司令塔となる。ブラック・ウィドウはバートンの援護を受けながら、地上の戦闘車両と機動隊と協働する。ソーは雷でリヴァイアサンを撃ち、アイアンマンは敵の航空生物を引き寄せて急降下からの背中爆破でリヴァイアサンを内部破壊する。
そのあいだに、ブラック・ウィドウはスターク・タワーの屋上に侵入する作戦を提案する。セルヴィッグがロキのセプターを唯一の鍵として、テッセラクト装置を停止できることに気づいたためだ。地上のホークアイ、空のアイアンマン、屋上のロマノフ、橋のキャプテン・アメリカ、リヴァイアサン上のソー、そして街を走り回るハルクが、それぞれの持ち場で時間を稼ぐ。
ハルクはスターク・タワー内部に侵入し、ロキを片手で掴むと床へ何度も叩きつける。「あわれな神(puny god)」と吐き捨てて床に投げ捨てられるロキの脱力した姿は、本作のコメディとカタルシスを兼ねる最大の見せ場として記憶されている。
核ミサイルと門の閉鎖
戦線が長引くなか、ヘリキャリアからフューリーへ、ワールド・セキュリティ・カウンシルが「マンハッタンへの核ミサイル一発投下」を命じる。彼らの論理は、街と300万人の命を引き換えに、未知の異星種族の侵入経路を一撃で抹消するというものだ。フューリーは決定に従わず、滑走路から発射しようとした戦闘機を自らバズーカで撃墜し、もう一機を逃すことになるが、その情報を直接アイアンマンに送る。
「マーク」と呼ばれた核ミサイルは、ロング・アイランド側からマンハッタン上空へ向けて発射される。トニーは自分のスーツの推力でその弾頭の尾翼を掴み、進路を90度変えて天空のポータルへ持ち上げる。スーツの電源は赤色警告へ落ち、ジャービスとの最後の通信でトニーは「ペッパーを呼んでくれ」と頼む。彼の意識は、ペッパーへの電話呼び出し音が鳴り続ける時点で途絶える。
ミサイルはポータルを抜けて、向こう側で待機していたチタウリの母船とサノス傘下の艦隊を、巨大な閃光とともに飲み込む。連結されていた敵兵全員が同時に活動を停止する——彼らがハイブ・マインド型のクリーチャーであり、母船の死は全機の死を意味するという、本作の設計上の都合のよい救済装置でもある。
屋上のロマノフは、地上のスティーヴとホークアイ、空のソーの合図を待たず、自分の判断でセプターを装置に差し込み、ポータルを閉じる。閉じる直前、無重力状態で気絶しかけていたトニーが、戻ってくる流線型の閃光のなかから落下する。ハルクが空中でトニーを抱き留め、ビル外壁を引き裂きながら地面に着地させる。アイアンマンのヘルメットを乱暴にこじ開けるハルクの叫び声が、停止していた心拍を呼び戻す。「俺たち、勝ったか?」と上を向くトニーの一言で、緊張は緩む。
拘束、別れ、ジ・アザーとシャワルマ
崩壊したスターク・タワーの屋上のバーで、六人は静かにロキを取り囲む。スティーヴが「降伏しろ」と促し、ロキは「……一杯もらってもいいか」と弱々しく返す。マンハッタンには市街戦の残骸とともに、避難民の生還の安堵が広がる。
セントラル・パークでは、テッセラクトを収めた円筒装置を二人で握り、ソーがロキを連れてアスガルドへ帰還する。ロキは手錠の上に銀色の口枷を嵌められ、ひと言の弁明も許されないまま虹の橋なき帰路へ立つ。アイアンマンはハッピー・ホーガンが運転する車に、ペッパー・ポッツとアントンと——ではなく、自分ひとりで乗り込む。バナーとトニーは互いの研究を交換する約束を交わし、ホークアイとブラック・ウィドウはS.H.I.E.L.D.へ戻る。各員の別れには、ニック・フューリーの「彼らは必ずまた戻ってくる」というモノローグが重ねられる。
ミッドクレジット(一回目の幕間)では、宇宙の小惑星上のジ・アザーが王(サノス)へ報告する。「父よ、地球の人類はまだ我々が思っていたほど従順ではありませんでした。彼らに挑むことは、すなわち死神に挑むことです」。サノス(演じるのはダミオン・プワロ)はゆっくり振り向き、紫色の顔の口角を上げて、不気味な笑みを浮かべる。観客は、何かもっと大きな存在がこの戦いの背後にいたことを、ここで初めて知らされる。彼の名がフルネームで明かされ、彼が物語の真の終着点になるのは、6年後の『インフィニティ・ウォー』である。
エンドクレジット後の追加シーンは、何の説明もなく、戦闘で破壊された中東料理店の半壊した店内で、アベンジャーズ六人がシャワルマを黙々と食べている画である。誰も会話せず、ソーは肉を噛みちぎり、ハルクは席にきつそうに座り、トニーは血だらけで虚ろな目をしている。「人類最大の勝利のあと、ヒーローたちが疲労困憊で外食する」というアンチクライマックスを描いたこの30秒は、本作の人間味と、ジョス・ウェドンの群像コメディとしての署名そのものになった。
登場要素
本作に登場・言及される主要な要素を分類して示す。先行する五本のソロ作品の伏線を一気に回収するため、固有名詞の密度はシリーズでも屈指である。
主要人物
- トニー・スターク/アイアンマン
- スティーヴ・ロジャース/キャプテン・アメリカ
- ソー・オーディンソン
- ブルース・バナー/ハルク
- ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ
- クリント・バートン/ホークアイ
- ニック・フューリー
- フィル・コールソン
- マリア・ヒル
ヴィラン
- ロキ・ラウフェイソン
- ジ・アザー
- サノス(ミッドクレジットで初登場)
- チタウリ歩兵
- リヴァイアサン
- ゲオルギー・ラチコフ(前章の捕縛者)
サポート
- ペッパー・ポッツ
- エリック・セルヴィッグ
- ハインリヒ・シェーファー博士
- ハッピー・ホーガン(言及)
- JARVIS(声)
- 独居老人の警備員(カメオ)
- シャワルマ店の店員
組織・勢力
- S.H.I.E.L.D.
- アベンジャーズ・イニシアティブ
- ワールド・セキュリティ・カウンシル
- ジョイント・ダーク・エナジー・ミッション(プロジェクト・ペガサス)
- アスガルド
- チタウリ族
- ニューヨーク市警察
- ヒドラ(旧)
場所
- ジョイント・ダーク・エナジー・ミッション施設(ニューメキシコ)
- コルカタ(インド)
- シュトゥットガルト(ドイツ)
- ヘリキャリア(S.H.I.E.L.D.空母)
- スターク・タワー(ニューヨーク)
- セントラル・パーク
- アスガルド(言及)
- 宇宙の小惑星(ジ・アザーとサノス)
アイテム・テクノロジー
- テッセラクト(後のスペース・ストーン)
- ロキのセプター(マインド・ストーン内蔵)
- アーク・リアクター
- ヴィブラニウム盾
- ムジョルニア
- アイアンマン・マーク6/マーク7
- クインジェット
- ハルクバスター級独房
- ヒドラ製エネルギー砲
- ジ・アザーが捧げる玉座
能力・概念
- スーパー・ソルジャー血清
- ガンマ線とハルク化
- アスガルド魔術
- ライトニング召喚
- 意識支配(セプター)
- 宇宙ポータル
- ナノセコンドのスーツ自動装着
- S.H.I.E.L.D.の「フェーズ2」兵器計画
ポストクレジット要素
- ジ・アザー
- サノス(初登場)
- シャワルマの黙食
- 「彼らに挑むことは死神に挑むことだ」(台詞)
主要登場人物
本作は人物それぞれに、性格・能力・倫理観の違いを露わにする状況を割り当てる。六人をいっぺんに動かす都合上、各員のキャラクター・アークは短いが密度が高い。
トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)
本作のトニーは、私財でスターク・タワーをクリーン・エネルギーの灯台に作り変えた直後の、絶頂期の発明家として登場する。チームプレイには明確に向いておらず、ヘリキャリア内ではキャプテン・アメリカと早々に衝突する。「鎧を脱いだら何が残る?」と問われた彼が「天才、億万長者、プレイボーイ、慈善家」と返すユーモアは、その後、核ミサイルを抱えてポータルへ昇る自己犠牲の選択へ繋がる。
「ヒーローでないと思っていた者がヒーローとして死を選ぶ瞬間」を入れることで、トニーの動機は鎧の自慢から「自分よりも世界を選ぶ」へ書き換えられる。続編『アイアンマン3』冒頭のPTSDの伏線、そして『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』での最終決断は、本作のこのワン・ショットからまっすぐ伸びている。
スティーヴ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)
70年ぶりに氷から起こされたばかりの「迷子の兵士」が、本作で初めて指揮の能力を発揮する。シュトゥットガルト、ヘリキャリア、グランド・セントラル前の交差点——どの場面でも先に手を挙げ、避難動線と戦闘配置を即座に組む役割を担う。
彼の倫理観の硬さは、本作では「S.H.I.E.L.D.の隠し兵器計画」をめぐってフューリーに対する不信を生む。「私は嘘の上で戦争を戦った」という時代錯誤の言葉が、本作の中盤の苦さを救っているのは、それが二作後の『ウィンター・ソルジャー』のS.H.I.E.L.D.崩壊と完全に符合するからである。
ソー(クリス・ヘムズワース)
前作『マイティ・ソー』のラストで虹の橋を破壊し、地球とアスガルドの行き来を絶ったソーは、本作では弟ロキを連れ戻すという家族の責任を引き受ける唯一の存在として登場する。「彼は私の兄弟だ」と繰り返し、ロキの所業をすべて自分の責任に引き受ける態度は、後年の『ラグナロク』で完全に裏切られる前提として効いている。
森のなかでアイアンマンとキャプテン・アメリカと三つ巴になる小ぜり合いは、観客に「神話的存在を、人間の英雄が彼の力量で受け止められる」ことを初めて見せた瞬間でもある。ムジョルニアの落雷を盾で受け止め、衝撃波で森が一掃される構図は、本作のスケールの設計図そのものを示している。
ブルース・バナー/ハルク(マーク・ラファロ)
本作はマーク・ラファロが初めてバナーを演じる作品である。エドワード・ノートンに代えてラファロが起用されたことで、バナーの「諦めと自虐を内側に折りたたんだ柔らかい人」という新しい解釈が定着した。「俺はずっと怒ってる」の台詞は、自分の中の怪物との関係性を、絶望ではなくユーモアの距離で扱う宣言として、シリーズ全体のハルク造形を方向づけた。
ハルクのCG表現も、本作で大きく刷新されている。前作までと違い、モーション・キャプチャーでラファロ本人の演技がそのままハルクの顔と仕草に転写されており、ジョークの笑いも、ロキを叩きつける刹那の苛立ちも、観客に「これはバナーが演じている怪物」だと納得させる。
ブラック・ウィドウとホークアイ(スカーレット・ヨハンソン/ジェレミー・レナー)
前作までは『アイアンマン2』のカメオと、本作冒頭でロキに洗脳されるだけの『マイティ・ソー』のサブ要員だった二人を、本作はチームの戦術中枢に配置する。とりわけブラック・ウィドウのアークは秀逸で、ロキへの単独尋問場面で「私の頭をのぞいたつもりが、私があなたの頭をのぞいた」と切り返す逆転は、本作の伏線回収のうちでも最も鋭い一つに数えられる。
ホークアイは、前半は冷淡な敵側の私兵として描かれ、後半は罪悪感とともに弓を構える司令塔へ立ち直る。ニューヨーク決戦では、地上のチタウリ群と橋上の避難民の動線を、矢の軌道と無線指示で同時に整理する。「神話的な雷神に弓矢で対抗する」という構図の馬鹿馬鹿しさを、戦術の正確さで本物の役割に作り変えた人物として位置づけられる。
ロキ(トム・ヒドルストン)
本作のロキは、トリックスター神としての本領を発揮する。ジ・アザーから「失敗すれば、お前は痛みの新しい意味を知ることになる」と脅されていることが冒頭で示され、彼の不安と虚勢が表裏一体で描かれる。観客に「ヴィラン視点の苦境」を一行も説明せずに、目線と呼吸だけで伝えるトム・ヒドルストンの演技は、本作以降ロキというキャラクターをシリーズ最大の人気ヴィラン兼アンチ・ヒーローへ押し上げた。
「神」を自称しながら、ハルクには子供のように叩きつけられ、フューリーには罠を見破られ、ナターシャには手の内をのぞかれ、最後はスティーヴに静かに「降伏しろ」と促されて、グラスを差し出されて口を開ける。屈辱の積み重ねを丁寧に演じきった結果、観客はロキを憎みきれず、後の『ラグナロク』『ロキ』へ向かう余白が生まれた。
ニック・フューリーとフィル・コールソン(サミュエル・L・ジャクソン/クラーク・グレッグ)
フューリーは本作で初めて、長官として現場で銃を構える一兵卒の側面を見せる。ワールド・セキュリティ・カウンシルとの対立、コールソンを盾に使ってチームの士気を取り戻す情報操作、戦闘機の自分撃墜——「私は法の上に立たない、しかしときに法の外に立つ」という人物像が、後の『ウィンター・ソルジャー』までの伏線として配置される。
コールソンは『アイアンマン』から五本通しで登場してきた「視点人物」であり、観客にとって最も親しいS.H.I.E.L.D.の顔だった。彼の死は、観客とアベンジャーズ双方に共通の喪失を一瞬で作るための、脚本上きわめて機能的かつ酷薄な選択である。なお、コールソンは後にTVシリーズ『エージェント・オブ・シールド』で復活するが、その物語は本作の劇場版MCU本流とは別の系統として扱われている。
舞台と用語
本作の舞台は、現代の地球各地と、宇宙の小惑星上の玉座という、二つの全く異なるスケールを並べる。ジョイント・ダーク・エナジー・ミッション施設の地下、コルカタの雨季のスラム、シュトゥットガルトの夜の中世建築、ヘリキャリアの近未来的な内装、スターク・タワーのアール・デコめいたペントハウス、最後にマンハッタンの摩天楼——色温度・照明・カメラの動きをそれぞれ大きく変えることで、観客は説明されなくても物語の地点を体で受け取る。
用語面では、テッセラクト(後のスペース・ストーン)、ロキのセプター(後のマインド・ストーン)、ヴィブラニウム盾、アーク・リアクター、ヘリキャリアが鍵となる。とりわけテッセラクトは、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『キャプテン・マーベル』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ロキ』に跨る通し主題のひとつであり、本作はその最初の正面衝突として位置づけられる。これらの語は事前に暗記するより、本作で人物がどう振る舞うかを通じて自然に習得する方が記憶に残る。
制作
本作はマーベル・スタジオが2005年にメリル・リンチからの自主資金で発足した時点ですでに視野に入っていた長期計画の到達点である。以下、企画から特撮までの主要な経緯を整理する。
企画と脚本
本作の脚本作業は、2010年4月にジョス・ウェドンが監督として正式に発表されるまで、ザック・ペンが進めていた。ウェドンが就任すると、彼はペンの原案をベースに自分の物語へほぼ全面的に書き直した。テレビシリーズ『バフィー〜恋する十字架〜』『エンジェル』『ファイヤーフライ 宇宙大戦争』で群像コメディと長期伏線を両立させてきた彼の作風は、五人〜六人の主役を一つの空間に押し込んだ本作の脚本要件に合致した。
ウェドンが特に時間をかけたのは、ヘリキャリア内の会議室と研究室のシークエンスである。彼は『俺たちはこうしてチームになる』のではなく、『俺たちが一度バラバラになる』を中盤の核に置いた。コールソンの死をめぐる演出的選択も、観客と各員に「同じ一人を失う」共通体験を作ることで、ニューヨーク決戦のチームの結束を倫理的に支える設計である。
監督・脚本のジョス・ウェドンは、本作以後MCUにおける「群像物の作法」のテンプレートを定義する位置に立った。続編『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』も彼が引き続き脚本・監督を務めることになる。
キャスティング
六人のキャストのうち、五人は先行ソロ作品から続投した。ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・エヴァンス、クリス・ヘムズワース、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ、グウィネス・パルトロウ、ステラン・スカルスガルドはすでに観客に紹介されたキャラクターを引き継いだ。スカーレット・ヨハンソンとジェレミー・レナーは、それぞれ『アイアンマン2』『マイティ・ソー』のサブ要員から本作で本格的なチームメンバーへ昇格した。
本作で最大の交代となったのが、ブルース・バナー役である。前作『インクレディブル・ハルク』のエドワード・ノートンとマーベル・スタジオの間で創作上の合意が得られず、新たにマーク・ラファロが起用された。ラファロは本人がモーション・キャプチャーでハルクの動きと顔を演じる方式に切り替え、これがシリーズのハルク造形を完全に書き換える契機になった。
ロキ役のトム・ヒドルストンは、本作で「シリーズ最大のヴィラン兼最人気キャラクター」の地位を確立した。サノス役のダミオン・プワロは本作のミッドクレジットで顔を見せ、後年の『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』ではジョシュ・ブローリンに引き継がれることになる。
撮影とロケ地
本作の主要撮影は2011年4月から9月にかけて、米国ニューメキシコ州アルバカーキ郊外と、オハイオ州クリーヴランドのダウンタウン、そして同州サンダスキー市の中心部で行われた。クリーヴランドのイースト9番街と、サンダスキーの東42号線を含む大通りが、ニューヨーク・マンハッタン中心部のセットとして使われている。爆破される高層ビルやチタウリが上から落ちてくる広場は、これらの中西部都市の街路にCGで摩天楼を重ねたものである。
撮影監督シェイマス・マクガーヴェイは、IMAXフィルムカメラとARRI Alexaを組み合わせて、屋外大規模シーンと屋内クロースの両立を図った。ヘリキャリアの艦橋とラボのセットは、アルバカーキ郊外の専用倉庫に組まれた。クインジェットとロキの独房は、可動式のセットとして個別に建てられた。
シュトゥットガルトの夜の場面は、実際のドイツでのロケではなく、サンダスキーの劇場街と教会前広場を改装して撮影された。古いヨーロッパらしい石畳と街灯のテクスチャは、徹底した美術部とロケ・スカウトの工夫によって作り出されている。
視覚効果
本作の視覚効果は、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)を主担当に、Weta Digital、Scanline VFX、Hydraulx、Luma Pictures、Trixter ほか複数のスタジオが分担した。主な負荷はニューヨーク決戦のシークエンスで、マンハッタン中心部の摩天楼、チタウリ歩兵、リヴァイアサン、テッセラクトの上空ポータル、アイアンマンとリヴァイアサンの空中戦などをデジタルで構築している。
ハルクは前作『インクレディブル・ハルク』までと違い、ILMがマーク・ラファロのモーション・キャプチャー演技を全身に転写する形で再構築した。ラファロの顔の筋肉の動きをそのままハルクの顔に転写することで、笑い、苛立ち、当惑などの細かい感情がCGの肉体に乗るようになり、観客はハルクを「ラファロが演じているもう一人の自分」として受け取れるようになった。
これらの成果により、本作は第85回アカデミー視覚効果賞にノミネートされた(受賞は『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』)。ILMはここで磨いた技術を、続く『パシフィック・リム』や、自身が引き受けたMCUの後続作品群へ受け継いでいくことになる。
音楽と音響
音楽はアラン・シルヴェストリが担当した。彼は前作『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を手掛けたばかりで、その作品の英雄的主題を本作のチーム主題のなかへ巧みに引き継いだ。本作のメインテーマは、低音のホルンと打楽器が刻む3和音の上昇形に、弦と金管が大きく重なる構造を持ち、ニューヨーク決戦の360°集合カットで初めて完全形で提示される。
「アベンジャーズ・テーマ」と呼ばれることになるこの旋律は、以後シリーズ全体のチーム結集のシグネチャーとして機能する。『エイジ・オブ・ウルトロン』のブライアン・タイラーによる変奏、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のアラン・シルヴェストリ自身による再帰の編曲は、いずれも本作のテーマからの引用と展開である。
音響デザインも、テッセラクトの稼働音、セプターの宝石の冷たい共鳴、ハルクの肉体的な唸り、リヴァイアサンの低周波の咆哮など、固有名詞ごとの音を緻密に作り分けている。
編集と公開準備
編集はジェフリー・フォードとリサ・ラセックが担当した。本作の最大の難所は、六人のヒーローが同時に動くニューヨーク決戦のシーケンスで、各員の戦線を観客が見失わないように交互配置することだった。グランド・セントラル前の360°集合カットを起点に、五つの戦線(地上、屋上、空、橋、ハルクの単独行動)を呼吸の合うリズムで切り替える編集は、本作の最大の達成のひとつとされる。
公開直前のテスト試写では、シャワルマの黙食シーンが反響を呼び、ウェドンが急遽追加撮影を行って完成度を上げたという経緯がある。エンドクレジット後の追加シーンが「観客を席に留めて静かなオチを見せる」という運用は、本作以降のMCU文法として完全に定着した。
公開と興行
2012年4月11日にロサンゼルスのエル・キャピタン劇場でワールド・プレミアが開催され、米国では5月4日に劇場公開された。日本では同年8月14日に『アベンジャーズ』の邦題で公開されている。
本作の興行成績は当時のあらゆる予想を超えた。米国オープニング週末は約2.07億ドル、最終的に米国内で約6.23億ドル、世界興収は約15.18億ドルを記録した。これは公開当時の映画史上歴代3位(『アバター』『タイタニック』に次ぐ)で、スーパーヒーロー映画としてはそれまでの最高記録を二倍近く更新した。マーベル・スタジオは本作の成功によって、フェーズ2以降の長期計画への投資判断を一気に固めることになる。
第85回アカデミー賞では視覚効果賞にノミネートされた。サターン賞ではファンタジー映画賞、編集賞、メイクアップ賞、特殊効果賞、コスチューム賞、最優秀男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、最優秀脚本賞(ジョス・ウェドン)など複数を受賞している。MTVムービー・アワードでは最優秀作品賞ほか、ピープルズ・チョイス・アワードでは最優秀作品賞、最優秀ヒーロー賞(ロバート・ダウニー・Jr.)などを獲得した。
批評・評価・文化的影響
本作の批評は概ね高評価で、Rotten Tomatoesでは91%(公開当時)、Metacriticでも69点と、群像エンタテイメントとしては破格の支持を得た。批評家の多くが評価したのは、群像群を捌くジョス・ウェドンの会話劇の作法、ヒドルストンとラファロの新解釈、シルヴェストリの音楽、そしてマンハッタン決戦の純粋な映画的快楽の高さである。
産業面での影響はさらに大きい。「複数のソロ映画で主人公を準備し、合流させて巨大な一本を作る」という、本作で初めて成立した設計図は、以後ハリウッドのみならず世界中のフランチャイズ運営に影響を与えた。DC映画、トランスフォーマー、モンスターヴァース、ダーク・ユニバース構想など、本作のあとに乱立したクロスオーバー試行のほとんどは、本作の成功への直接の反応である。マーベル・スタジオ自身も以降、フェーズ2、フェーズ3、サーガ、マルチバース・サーガと、本作の方法論を延長線として継続することになる。
「アベンジャーズ・アッセンブル」「あわれな神」「天才、億万長者、プレイボーイ、慈善家」といった台詞、ハルクがロキを床に叩きつけるカット、360°のチーム集合ショット、シャワルマ・シーンは、いずれも公開以後の大衆文化の共有言語として広く引用され続けている。
舞台裏とトリビア
サノスの初登場(ミッドクレジット)は、当初の脚本にはなかった。ジョス・ウェドンの友人であり、本作の編集を務めた一人ジェフリー・フォードがアイディアを提案し、ウェドンが採用したと伝えられる。サノスを演じたのは舞台俳優のダミオン・プワロで、衣装と顔面メイクの上に最小限のCGを重ねる方式で撮影された。
シャワルマ・シーンは、ロサンゼルス・プレミアのあと、ロバート・ダウニー・Jr.が劇中の「シャワルマを食べたい」のアドリブを気に入って、急遽追加撮影された場面である。撮影時、すでに公開ポスターと宣伝資材は仕上がっていたため、エンドクレジット後の30秒間だけが、本作の最終本編で唯一プレミア後に追加された画になっている。
ハルクがロキを床に何度も叩きつけて「あわれな神」と吐き捨てるカットは、台本では一行(Hulk smashes Loki repeatedly. と書かれただけ)しか記述がなかった。マーク・ラファロのモーション・キャプチャー演技と、ILMの編集が組み合わさった現場での発見である。
コールソンの『キャプテン・アメリカ』カードを血に染めて見せるフューリーの所作は、実際にはコールソンのロッカーに置きっぱなしだったカードを後付けで取り出した、フューリーの「嘘」だと、本作の制作陣は折に触れて認めている。観客と各員に「共通の喪失」を作るための小道具として、フューリー自身が用意した小芝居であった。
テーマと解釈
本作の中心テーマは「個人としての英雄が、チームとして共同体になることの困難」である。各員はそれぞれの倫理観、過去、嗜好を持ち、ヘリキャリア内では露骨にぶつかる。彼らをチームへと変えるのは、勝利の高揚ではなく、コールソンという同じ仲間を一人喪う経験である。本作が「集まる映画」の祖型として機能するのは、群像物語に必要な「共通の喪失」をきちんと劇中に置いたからにほかならない。
もう一つの軸は、力と責任の問題である。S.H.I.E.L.D.が秘匿していた「フェーズ2」のヒドラ製エネルギー兵器、ワールド・セキュリティ・カウンシルの核ミサイル発射命令、フューリーの自軍機撃墜——本作は、「世界を守る組織が世界を脅かす力を保有する」という二重性を、ヒーローたちの不信の理由として正面に置く。この主題は、続く『ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』へとそのまま接続する伏線である。
そして最後の軸は、敵の規模の拡張である。ロキは本作のヴィランだが、彼の背後にはジ・アザーとサノスがいる。地球の英雄たちが宇宙レベルの敵に対抗できることを示したうえで、その奥にもう一段大きい敵がいることを観客に予告して幕を下ろす。本作の幕切れは「勝った」ではなく「勝った、けれども」と聞こえるよう設計されており、それがシリーズ全体への持続的な牽引力を生んだ。
見る順番(補助)
初見であれば、本作は『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の五本を観たあとに鑑賞するのが最も自然である。先行ソロ作品の伏線、人物、固有名詞が一気に回収される構成のため、いきなり本作から始めると人物関係の理解が薄くなる。
本作のあとは『アイアンマン3』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を経て、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』へ進むのが、フェーズ2の標準的な見方である。
- 前作(公開順の直前)『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でテッセラクト確保
- 本作ロキ来襲、ニューヨーク決戦、アベンジャーズ結成
- 次作(公開順の直後)『アイアンマン3』で本作のPTSDを引き継ぐ
よくある質問(補助)
「あらすじだけ知りたい」場合は、ロキがテッセラクトを奪う冒頭、六人の招集、ヘリキャリアでの内紛とコールソンの死、ニューヨークの門と核ミサイル、ロキ拘束、ジ・アザーとサノス、というおおまかな七段で十分である。「結末を知りたい」場合は、アイアンマンが核ミサイルをポータルに送り込み、戻ってきたところをハルクが受け止め、ロキは口枷を付けられてアスガルドへ連行される——という三つを押さえれば物語の決着は把握できる。
「サノスはこの作品で何をした?」という質問は多いが、本作のサノスはミッドクレジットで一度笑うだけで、行動はしていない。彼が本格的に物語の主役級ヴィランとして動き出すのは、本作の6年後に公開される『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』である。「テッセラクトとは何?」という質問には、後にスペース・ストーン(六つのインフィニティ・ストーンのひとつ)であることが『キャプテン・マーベル』以降に明示される、と答えるのが正確である。
参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・制作・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。
参照・確認先
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