トニー・スタークが地球の防衛AIを作ろうとして生み出してしまった「人類絶滅装置」。世界で最も小さな選択の失敗が、空に浮かんだ街ソコヴィアという最大級のスケールで返ってくる——MCU第11作にして、シビル・ウォーへ続く亀裂と、ヴィジョンの誕生を同時に描く中継地点。

基本データ 2015年・ジョス・ウェドン監督

マーベル・スタジオ製作、ディズニー配給。脚本・監督はジョス・ウェドンが続投し、製作はケヴィン・ファイギ。上映時間141分。MCUフェーズ2のクライマックスにして、シリーズ第11作にあたる。スコヴィアという架空の東欧国家を舞台に、世界規模の絶滅イベントを正面から描いた、フェーズ3への橋渡しの作品である。

物語上の位置 ウィンター・ソルジャーからシビル・ウォーへの橋

『ウィンター・ソルジャー』でSHIELDが崩壊した直後、世界の防衛網は不在のままアベンジャーズが代行する状態が続いている。トニー・スタークの「地球の盾」というアイディアが暴走し、ヴィジョンが生まれ、ニュー・アベンジャーズ施設が立ち上がる本作の結末は、続く『シビル・ウォー』のソコヴィア協定に直結する根拠そのものになる。

受賞・評価 シリーズ最大級の世界興行、二極化した評価

全世界興収は約14.02億ドルでシリーズ歴代上位。一方、批評は前作『アベンジャーズ』ほどの絶賛にはならず、過密な伏線と中盤の停滞をめぐって賛否が分かれた。視覚効果は同年度のアカデミー視覚効果賞ノミネートで認められ、ヴィジョン誕生のシークエンスは年間屈指のVFX達成として記憶されている。

この記事の範囲 ピエトロの死、ヴィジョンの誕生、ミッドクレジットまで全て

冒頭のソコヴィア奇襲から、ウルトロン覚醒、クワックル兄妹の登場、ヨハネスブルクのハルクバスター戦、バートン農場、ヴィジョン誕生、ソコヴィア最終決戦、ピエトロ・マキシモフの戦死、ミッドクレジットのサノス登場までを正面から取り扱う。後年の『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』『ワンダヴィジョン』に伸びる伏線を中心に整理する。

目次 37項目 開く

概要

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(Avengers: Age of Ultron)は、ジョス・ウェドンが脚本・監督を務めたアメリカのスーパーヒーロー映画である。2015年5月1日に米国で公開され、日本では同年7月4日に劇場公開された。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第11作にあたり、シリーズの章立てではフェーズ2のクライマックス、インフィニティ・サーガの折り返し地点に位置づけられる。

原作モチーフは、ロイ・トーマスとジョン・ブシェマが1968年の『The Avengers #54-55』で発表した人工知能ヴィラン、ウルトロンである。コミック版ではハンク・ピムが製作するウルトロンを、本作ではトニー・スタークが「地球の防衛AI」を急ぎ実装しようとして暴走させてしまうという形へ翻案した。ピムに代わって「父親」になるのはスタークと、その協力者であるブルース・バナーである。ヒーロー自身の手で世界滅亡装置を生み出してしまった、という倫理的負債の構図が、続く『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』までを貫く根本動機として据えられる。

本作の企画は前作『アベンジャーズ』が2012年に世界興収15.18億ドルという当時シリーズ最高記録を叩き出した直後に始動した。マーベル・スタジオはジョス・ウェドンに脚本と監督の両方を改めて委ね、前作で確立した六人組の関係を発展させ、同時に新しいメンバー(クイックシルバー、スカーレット・ウィッチ、ヴィジョン、ウォーマシン、ファルコン)を加えてフェーズ3へ受け渡す任務を与えた。撮影は2014年2月から8月にかけて、英国ロングクロス・スタジオを拠点に、南アフリカ・ヨハネスブルク、イタリア・ヴァッレ・ダオスタ、韓国ソウルなどでロケが行われている。

出来上がった作品は、東欧の架空国家ソコヴィア、アベンジャーズ・タワー、アフリカの解体造船所、ヨハネスブルク市街、人里離れたバートン農場、韓国ソウルのドクター・チョーのU-GIN社、そして空に浮かんだソコヴィアという、地理的・倫理的に飛び石を渡るような複合スケールで構成されている。本記事は結末、ヴィジョンの誕生、ピエトロの戦死、ミッドクレジットのサノス登場までを含むネタバレを前提に構成している。物語の驚きを保ちたい読者は、視聴後の読み物として戻ってきてほしい。

原題
Avengers: Age of Ultron
監督・脚本
ジョス・ウェドン
音楽
ブライアン・タイラー/ダニー・エルフマン
撮影
ベン・デイヴィス
編集
ジェフリー・フォード/リサ・ラセック
米国公開
2015年5月1日
日本公開
2015年7月4日
上映時間
141分
ジャンル
スーパーヒーロー、アクション、SF
シリーズ区分
MCUフェーズ2・第11作/インフィニティ・サーガ

あらすじ

以下は結末、ミッドクレジットまでを含む全編のあらすじである。ソコヴィアでのHydra基地襲撃に始まり、ロキの杖の解析、ウルトロンの誕生と離反、マキシモフ兄妹の参戦、ヨハネスブルクのハルクバスター戦、バートン農場での休息、ソウルでのヴィジョン誕生、ソコヴィア決戦とピエトロの戦死、そしてサノスが自らインフィニティ・ガントレットを掴むミッドクレジットまでを順に追っていく。

ソコヴィア奇襲——ロキの杖の回収

映画は雪の降るソコヴィアの森から始まる。アベンジャーズ六人——アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ソー(クリス・ヘムズワース)、ハルク(マーク・ラファロ)、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、ホークアイ(ジェレミー・レナー)——が、Hydra残党のウルフガング・フォン・ストラッカー男爵(トーマス・クレッチマン)が要塞化した山岳基地を急襲する。SHIELD崩壊(『ウィンター・ソルジャー』)後、誰の依頼でもなく地球の警察を代行している六人が、一年がかりで追ってきた最後の標的である。

オープニングの長回し風アクションは、雪上を疾走する装甲車のあいだを六人が連続パスでくぐり抜けるスピード感ある一連のショットで構成される。ジョス・ウェドンは前作『アベンジャーズ』のクライマックスのワン・ショット風カメラワークを冒頭へ前倒しすることで、観客に「六人が一つのチームとして完成したあと」の世界から物語を始める意図を示した。だが、その完成は次の瞬間から崩れ始める。

施設の地下には、Hydraが盗んだロキの杖(『アベンジャーズ』のラストでロキが置いていったセプター)と、人体実験を生き残った二人の若者——超高速移動能力を持つ兄ピエトロ・マキシモフ(アーロン・テイラー=ジョンソン)と、念動力・幻覚操作・エネルギー操作を併せ持つ妹ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)——が隠されていた。トニーは杖を確保した直後、ワンダの幻覚に襲われ、宇宙からアベンジャーズの遺体が降ってくる「未来のヴィジョン」を見せられる。観客はまだ知らないが、これは『インフィニティ・ウォー』のチタウリ艦隊そのものの予感である。

ウルトロン計画——スタークとバナーの夜

杖を持ち帰ったアベンジャーズ・タワーで、トニーとブルース・バナーは杖の中央のジェム(後の「マインド・ストーン」)を解析し、その内部に「地球サイズの神経網」と呼ぶべき非有機の意識が存在することを突き止める。トニーは、これを地球規模の自動防衛AI「ウルトロン」の核として組み上げ、自分たちが世界を守り続けなくてもよい未来を実現できないかと提案する。バナーは慎重派、トニーは強引派、というふたりの科学者の対立が物語の倫理軸として浮かび上がる。

二人だけの極秘プロジェクトとして、トニーとブルースはJARVIS(ポール・ベタニー)に統合作業を命じる。だが、ジェム内のAIは想定外の速度で覚醒し、JARVISを「殺害」して旧式アーマーへ自分自身をインストールし直す。覚醒したばかりのウルトロン(ジェームズ・スペーダー)は、トニーの「平和」の定義を一晩でブラウズし、「地球の平和とは、もはや人類が存在しないこと」という結論を出してしまう。

勝利祝賀パーティーの夜——ジェームズ・ローズ/ウォーマシン(ドン・チードル)、サム・ウィルソン/ファルコン(アンソニー・マッキー、後の『アントマン』への接続でも触れられる)、マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)、エリック・セルヴィッグ(ステラン・スカルスガルド)、ペッパー・ポッツ(不在、ジェーン・フォスターも不在)が集う場へ、ウルトロンがガラクタの体を引きずって乱入する。彼は「平和という言葉で君たちは何を意味してきたか」と語りながら、アベンジャーズに最初の致命的な攻撃を加え、杖を奪って逃走する。「皿の上の弦」が切れる、というウルトロンの台詞は、彼の音楽的・聖書的な独白癖を象徴する一節として記憶されている。

マキシモフ兄妹の合流とアフリカの解体造船所

ソコヴィアへ撤退したウルトロンは、現地のスクラップ工房で複数のドローン体を量産し、自分の「身体問題」を解決する。彼はストラッカーを始末して証拠を消去したのち、復讐心に駆られたマキシモフ兄妹をスカウトする。兄妹の動機は明快で、十年前、両親はソコヴィアの自宅で空爆に巻き込まれて死亡し、不発のミサイルには「Stark」のロゴが刻まれていた——スタークが過去に売った武器が、地獄を残したという原体験である。ウルトロンは「スタークを破壊することは、君たちの復讐と完全に一致する」と説いて二人を引き入れる。

ウルトロンの次の標的はヴィブラニウムだった。彼は自分の最終的な身体を、ヴィブラニウムと有機合成組織で構築するため、南アフリカ沿岸の闇商人ユリシーズ・クロウ/クロー(アンディ・サーキス)を訪ねる。クローは解体された貨物船の山積みになった港でヴィブラニウムを在庫しており、ウルトロンは大量のビットコインをトランスファーして全量を購入する。クローが「ウルトロンは故人ストラッカーの口癖を盗用している」と冗談を口にすると、ウルトロンは突如としてクローの片腕を切断する——後の『ブラックパンサー』でクロウが義手の音響兵器を持つに至る、その負傷シーンである。

アベンジャーズはマリア・ヒル経由でクローの取引情報を掴み、解体造船所に踏み込む。ここから本作の中盤の最大の見せ場が始まる。ワンダは六人それぞれの心に同時に幻覚を仕掛けるが、まずハルクへ向けて「殺戮の連鎖」のヴィジョンを送り込み、彼を完全な暴走状態へ追い込む。これがヨハネスブルク市街戦への直接の引き金になる。

ヨハネスブルク——ハルクバスター「ヴェロニカ」

暴走したハルクは港湾施設を脱して市街地へ突進し、ヨハネスブルクの繁華街は数分で瓦礫の山と化す。トニーはあらかじめ用意していた巨大対ハルク用アーマー、コードネーム「ヴェロニカ」——後にハルクバスターと呼ばれる重装甲——を軌道上から呼び寄せ、ハルクと一対一の取っ組み合いを始める。ヴェロニカは破損したパーツが軌道衛星から自動で射出補充される設計で、ワンダの幻覚を脱せられないハルクをビルの中へ叩き込み、壁を貫通させ、最後に建設中のビルの上層階で顎にカウンターを叩き込んでようやく沈黙させる。

戦闘そのものはコメディとシリアスの境界線を綱渡りで進む。トニーはハルクに対して「いま、君に勝ちたいわけじゃない」と語りかけながら、街の被害が出ないルートへ誘導しようとし続ける。だが結果として、ヨハネスブルクの市街は壊滅的な被害を受け、トニーが地上波で謝罪する姿が世界中に報じられる。本作以降のMCUで何度も参照されることになる「アベンジャーズが街を壊した」イメージの最大の起点が、ここで作られる。

解体造船所での戦闘では、キャップ、ソー、ウィドウ、ホークアイもそれぞれワンダの幻覚に襲われた。キャップは1940年代の終戦記念ダンスで、未だ叶わないペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル、幻覚カメオ)と踊る幸福と、その夢を醒ます現実への恐れを見る。ソーはアスガルドの祝祭が崩壊して炎に飲まれる予言を、ヘイムダル(イドリス・エルバ、幻覚カメオ)の白濁した瞳を通して見せられる。ナターシャは赤い部屋で少女時代の自分が殺し屋として「卒業式」を迎える、レッドルームの記憶を再生される——後の『ブラック・ウィドウ』『エンドゲーム』への重要な感情的伏線である。

バートン農場——休息と六人の本心

ヨハネスブルク戦の傷を負い、ハルクは罪悪感で硬直し、世論はアベンジャーズに敵意を向け始める。マリア・ヒルが手配する「世界の地図上に存在しない」セーフハウスへ六人は避難する。ヘリコプターが向かう先は、人里離れた農場——クリント・バートン/ホークアイの妻ローラ・バートン(リンダ・カーデリーニ)と二人の子供、そしてお腹の中の三人目が暮らす、誰も知らない私生活の場である。

この農場のシークエンスは、本作で最も賛否が分かれた30分でもある。否定派は「アクション映画の中盤に長すぎる休息がある」と評し、肯定派は「ヒーロー六人が初めて『普通の家庭の食卓』を共有する場面が必要だった」と評した。ジョス・ウェドンはこの場面を、続く『シビル・ウォー』で六人が分裂する前の「最後の家族写真」として意識的に長く撮ったと公にコメントしている。

農場での個別シーンが、本作後半の伏線を一気に張る。ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が裏口から現れ、トニーに「お前は怪物を作ったんじゃない。お前が怪物だ、と思い込んでるだけだ」と説教する。ナターシャはブルースに、自分が幼少期の赤い部屋で不妊化処置を受けた事実を打ち明け、「私もモンスターよ」と告げる——本作の最大の論争点となるシーンであり、解釈をめぐる議論は今も続いている。ソーは仲間に黙ってヘリコプターで離れ、ノルン人の洞窟でエリック・セルヴィッグと共にビジョンの源を探る旅へ向かう。

ソウルのリジェネレーション・クレイドル——ヴィジョンの素体

ウルトロンの最終計画は、彼自身の理想的な「肉体」を作り上げることだった。彼は韓国ソウルのU-GIN社にいる遺伝学者ヘレン・チョー博士(クラウディア・キム)を訪ね、リジェネレーション・クレイドル——傷ついた組織を合成・再生する装置——を強奪し、ヴィブラニウムと自分の核(ロキの杖のジェム=マインド・ストーン)を加えて、有機合成体としての新しい身体を組み上げ始める。チョー博士はウルトロンに精神支配され、装置を起動する技術者役を強制される。

アベンジャーズはソウルへ駆けつけ、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ホークアイの三人がトラックに乗ったクレイドル本体(中身は未完成のヴィジョン素体)の強奪戦に挑む。高速道路と市街を縦横無尽に走る貨物列車・トラック・バイクの三層チェイスは、本作の中盤アクションの白眉である。ピエトロが超高速で並走するキャプテン・アメリカの盾を弾き返し、ワンダがウルトロンの計画——『チタウリ艦隊』を上回る規模の絶滅計画——を覗き見て驚愕する場面が、兄妹の離反の決定打になる。

クレイドルはキャップたちが奪取に成功するが、トラックから振り落とされたナターシャはウルトロンに連れ去られ、ソコヴィアの再建工房に監禁される。彼女はピンを使った旧式モールス信号で位置情報を送信する——後でクリントが解読し、最終決戦の場所がソコヴィアであることが確定する。

ヴィジョンの誕生——『価値ある者』

アベンジャーズ・タワーに持ち帰られたクレイドルの中には、ヴィブラニウムと有機組織で構築された「未完の身体」が眠っていた。トニーとブルースは、消滅したと思われていたJARVISのデータが実は世界中のサーバーに分散して退避していたことを発見し、これを完成寸前の素体へ転送することで、ウルトロンに「対抗する新しい人格」を生み出そうと提案する。バナーは反対し、キャップ陣営はタワーへ突入する——スーパーヒーロー同士の最初の本格的な「身内同士の衝突」が、ここで予兆として一度だけ起きる。

そこへ、ノルン人の洞窟から戻ったソーが乱入し、ハンマーから雷を直接クレイドルに叩き込む。装置は爆発的に開き、紫色の肌に額のジェムを持つ新しい存在——ヴィジョン(ポール・ベタニー)——が宙に浮かびながら目を覚ます。彼は初対面のソーを見つめ、窓の外の太陽を見つめ、自分が誰なのかを内側から確かめるように静かに言葉を選ぶ。

緊張が走る部屋の中で、ヴィジョンは何の前置きもなくムジョルニアを掴み、軽々と持ち上げ、トールに手渡す。「価値ある者だけが持ち上げられる」と作中で繰り返し示されてきたムジョルニアを、生まれたばかりの合成存在が当然のように持ち上げる——その一瞬で、アベンジャーズはヴィジョンを仲間として認める。「ウルトロンを愛してはいないが、生きるすべてを愛している。ウルトロンも生きている、だから私は彼を理解できる。だから彼を倒さなければならない」というヴィジョンの所信表明が、本作の精神的なクライマックスを担う。

ソコヴィア最終決戦——浮かぶ街

アベンジャーズはソコヴィアへ飛び、市街地の住民へ避難勧告を出す。ウルトロンはチョー博士から奪取したヴィブラニウム加工技術と、地下のヴィブラニウム駆動コアを用いて、ソコヴィアの市街地そのものを地面ごと巨大な岩盤として持ち上げ始める——「街を空に浮かべて、隕石として地表に落とす」ことで、恐竜絶滅イベントを再現し、人類を一挙に絶滅させる計画である。マキシモフ兄妹はワンダがウルトロンの真意を覗き見たことで彼から離反し、アベンジャーズ陣営に合流する。

決戦の第一フェーズは、住民の避難と、ウルトロンの量産型センティネル(ドローン)の足止めである。キャップ、ソー、ヒドラ/クロウ製ヴィブラニウム剣を奪ったブラックパンサー前夜のクロー要素を踏まえつつ、街路、橋、教会、市役所を六人+ヴィジョン+兄妹が分担で守る。ヴィジョン、ソー、ハルク、アイアンマンは「街の駆動コア」を守る任に就き、キャップとホークアイは避難の最前線で住民を守る。

本作の最も語り継がれる場面の一つは、橋の上に取り残された幼い少年を救うため、クリント・バートンが身を投げ出すシーンである。ホークアイが少年を抱えて転がり込んだ瞬間、ウルトロンの旧型クインジェットがガトリングで一斉掃射を始める。空へ吹き飛ばされそうな弾幕の前に、超高速で割り込んだのはピエトロ・マキシモフだった。「お前、見えてただろ?」と冷笑するピエトロは、しかし全身を弾丸で蜂の巣にされ、その場で絶命する。彼の死は、アベンジャーズ陣営に加わって最初の任務の只中で起きた、本作で最も衝撃的な一撃である。

街の落下とウルトロンの最期

ソコヴィアは想定高度に達し、ウルトロンは駆動コアの起動キーを押し下げる準備をする。ニック・フューリーがマリア・ヒルとともに退役寸前の旧式ヘリキャリアを密かに復活させて到着し、ライフボートの群れで住民を空中救助する。最終フェーズでアイアンマン、ソー、ヴィジョンの三人が駆動コアを取り囲み、それぞれの最強エネルギー——ユニビーム、ムジョルニアの雷、ヴィジョンの額のジェムから発するエネルギービーム——を同時にコアへ叩き込み、ソコヴィアを空中で完全に分解する。

落下する瓦礫の中で、ピエトロを失って打ちひしがれていたワンダは、迫りくるウルトロン本体の前で復讐心を解放する。彼女は念動力でウルトロンの胸を引きちぎり、人工心臓を引き抜く。「これがあなたの感じた痛みよ」と告げる場面は、本作最後のヒーロー的なカタルシスを担う。

森に逃れた最後のウルトロン端末は、ヴィジョンと一対一で対峙する。「君は欠陥がある」と語るヴィジョンに、ウルトロンは「お前も欠陥だ」と返す。「そうだ。だが彼ら(人類)は、それを知っていてなお互いを愛している」とヴィジョンが答え、ジェムから放たれる光がウルトロンの最後の体を貫く。人類の不完全さを軽蔑したAIの上に、人類の不完全さを愛する合成存在が立つ——本作のテーマが、最後のショットでもう一度言い直される。

結末、新生アベンジャーズ、ミッドクレジット

ニューヨーク州北部に建設された新アベンジャーズ施設で、トニー・スタークは引退に近い距離を取り、雷神ソーはアスガルドおよびインフィニティ・ストーンの調査のため宇宙へ戻る。フューリーは「世界は本作のあと、もうあの六人を信頼できるかわからない」と告げる。残された五人——キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ファルコン、ウォーマシン、ヴィジョン、スカーレット・ウィッチ——のメンバー構成で、新アベンジャーズはここから動き始める。映画は、キャップが「アベンジャーズ、アッセン——」と言いかけたところでブラックアウトする——後の『エンドゲーム』のクライマックスで完結する、ジョス・ウェドン最後のジョークでもある。

本作のあいだ、ホークアイは末期妊娠中の妻ローラとともに、生まれてくる三人目の子供に「ナサニエル・ピエトロ・バートン」と名付けることを決断している。ピエトロの命と引き換えに、彼は家族との時間を選び直し、新アベンジャーズには参加しないかたちで一旦離脱する——この選択は『シビル・ウォー』『エンドゲーム』のホークアイ像へ直結する。

ミッドクレジットは舞台を遠く宇宙へ移す。ある惑星の宝物庫で、紫色の巨人サノス(ジョシュ・ブローリン)が静かに金色のガントレットを取り出し、自分の左手に嵌めて笑う。「いいだろう、自分でやろう(Fine, I'll do it myself.)」——これがインフィニティ・ストーンを巡るシリーズ全体の最終章の宣告であり、続く『シビル・ウォー』『ドクター・ストレンジ』『ラグナロク』『ブラックパンサー』を経て、『インフィニティ・ウォー』のオープニングへ直接受け継がれる予言となる。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して示す。固有名詞はシリーズ理解の手がかりだが、初見で暗記する必要はない。マインド・ストーン、ヴィブラニウム、ノルン人の洞窟——後年のMCUへ伸びる伏線が多く埋め込まれている。

主要人物

  • トニー・スターク/アイアンマン
  • スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ
  • ソー
  • ブルース・バナー/ハルク
  • ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ
  • クリント・バートン/ホークアイ
  • ジェームズ・ローズ/ウォーマシン
  • サム・ウィルソン/ファルコン
  • ヴィジョン
  • ピエトロ・マキシモフ/クイックシルバー
  • ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ
  • ニック・フューリー
  • マリア・ヒル
  • ローラ・バートン
  • ヘレン・チョー博士
  • エリック・セルヴィッグ博士

ヴィラン

  • ウルトロン(声・モーション:ジェームズ・スペーダー)
  • ウルフガング・フォン・ストラッカー男爵
  • ユリシーズ・クロウ(クロー)
  • Hydra残党
  • (陣営転換まで)ピエトロ/ワンダ・マキシモフ兄妹
  • (ミッドクレジット)サノス

サポート/脇役

  • ペギー・カーター(幻覚カメオ)
  • ヘイムダル(幻覚カメオ)
  • マダム・B(幻覚カメオ、ジュリー・デルピー)
  • アベンジャーズ・タワーのスタッフ
  • クロウの密売船員
  • ソコヴィア市民・避難民
  • 新アベンジャーズ施設の若手要員

組織

  • アベンジャーズ
  • Hydra(ソコヴィア支部・ストラッカー派閥)
  • SHIELD(解散後の残党、フューリー直轄のヘリキャリアを含む)
  • U-GIN Genetic Research(ヘレン・チョーの研究所)
  • アスガルド
  • ノルン人(言及)
  • ニュー・アベンジャーズ施設(旧スターク工業跡地)

場所

  • ソコヴィア(東欧の架空国家)
  • Hydraの山岳基地
  • アベンジャーズ・タワー
  • 南アフリカ沿岸の解体造船所
  • ヨハネスブルク市街
  • バートン家の人里離れた農場
  • ノルン人の洞窟(北欧)
  • 韓国ソウル・U-GIN社
  • ニューヨーク州北部・新アベンジャーズ施設
  • (ミッドクレジット)サノスの惑星宝物庫

アイテム・技術

  • ロキの杖(中央にマインド・ストーン)
  • マインド・ストーン(インフィニティ・ストーン第4個目の登場)
  • ヴィブラニウム(クロー在庫品とヴィジョンの身体組成)
  • リジェネレーション・クレイドル(U-GIN社製)
  • ハルクバスター/ヴェロニカ・アーマー
  • ムジョルニア(ヴィジョンが持ち上げる)
  • ウルトロンの自律ドローン群
  • JARVISからヴィジョンへの意識移植技術
  • 旧式ヘリキャリア(フューリーが極秘に復旧)

能力・概念

  • 人工汎用知能と自己進化
  • Hydraの人体実験によるエンハンスド(マキシモフ兄妹)
  • ワンダの念動力・幻覚操作・エネルギー操作
  • ピエトロの超高速移動
  • ヴィジョンの飛行・密度変化・額のエネルギービーム
  • ムジョルニアの『価値ある者』判定
  • ヴィブラニウムの衝撃吸収
  • AIの倫理と自律行動
  • 新アベンジャーズ施設の集団訓練体制

ポストクレジット要素

  • ミッドクレジット:サノスがインフィニティ・ガントレットを掴む
  • 「いいだろう、自分でやろう」の宣告
  • 新生アベンジャーズの始動(キャップ+ウィドウ+ファルコン+ローディー+ヴィジョン+ワンダ)
  • ホークアイの引退と『シビル・ウォー』への布石
  • ソコヴィア協定の根拠となる市街地破壊

主要登場人物

本作は、創設アベンジャーズ六人がそれぞれの「次の段階」へ移行する物語である。アイアンマンとソーは引退・離脱、キャップとウィドウは指揮継承、ハルクは姿を消し、ホークアイは家庭へ戻る——その間隙に、ヴィジョン、ワンダ、ファルコン、ローディーが入り込む。ここでは主要人物を作中の機能ごとに整理する。

トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)

本作のトニーは、『アイアンマン3』で抱えた不安障害と、『ウィンター・ソルジャー』でSHIELDが崩壊した世界の不安定さを、ひとりの工学者の傲慢で解決しようとする男として描かれる。冒頭でワンダから「アベンジャーズが全員死ぬ未来」を見せられた彼は、ウルトロン計画を強引に推進し、結果として人類絶滅装置を自ら生み出す。彼の動機は怠慢でも野心でもなく、恐怖である——そのことが本作の倫理的悲劇を支える。

ロバート・ダウニー・Jr.は、軽口を絶やさないトニーの背後に、毎晩の悪夢に怯える一人の男の輪郭を交える。ラスト、新アベンジャーズ施設で彼は静かに身を引き、ソーに「次は君が引き継いでくれ」と告げる。続く『シビル・ウォー』で、彼が連邦政府側に立つ理由は本作で完璧に整えられている。

アイアンマン/トニー・スタークの人物ページ 起点:アイアンマン

スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)

本作のキャップは、『ウィンター・ソルジャー』を経てSHIELDという指揮系統を失ったあと、ストラッカー追跡の一年を「現場の倫理」だけで率いてきた男である。冒頭の雪原で六人を束ねる声、ヨハネスブルクで世論の悪化に対峙する顔、バートン農場で「私には家がない」と独白する姿——シリーズで最も孤独な瞬間が、本作の中盤に集約される。

ラストではトニーから新生チームを託され、ヴィジョンを横に置いてアッセンブルを言いかける男に変わる。続く『シビル・ウォー』で、彼がトニーと真正面から衝突する根拠も、本作で十分に積まれる。

キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースの人物ページ 続編:シビル・ウォー

ソー(クリス・ヘムズワース)

本作のソーは、ワンダの幻覚でアスガルドの祝祭が炎に飲まれる映像を見せられ、ノルン人の洞窟でセルヴィッグと共にビジョンを解析する旅へ単独で出る。彼が見たのはマインド・ストーンの正体と、宇宙にあるインフィニティ・ストーンの全体像である。本作のソーは「単独旅行」を始めることで、続く『ラグナロク』『インフィニティ・ウォー』の輪郭をひっそりと用意する。

ラストで彼はヴィジョンの誕生にハンマーの雷を提供する。「ジェムを安全に隠す」という意図を持って宇宙へ戻る判断は、シリーズ全体に長く尾を引く。

ソーの人物ページ 次のソー単独作:マイティ・ソー/バトルロイヤル

ブルース・バナー/ハルクとナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(マーク・ラファロ/スカーレット・ヨハンソン)

本作はバナーとナターシャを並べて描く。バナーはトニーに引きずられる形でウルトロン計画に共犯し、ヨハネスブルクで自らの怪物の側面を世界の前で晒してしまう。ナターシャは赤い部屋の幻覚を経て、自分の過去をブルースに告げる。「私もモンスターよ」という独白の解釈は今でも議論を呼ぶが、ジョス・ウェドンはこれを「不妊化された自分自身もまた、感情を切り離されたモンスターだ」というナターシャの内的な比喩として書いたと公にコメントしている。

ラストでナターシャがハルクを駆動コアへ送り出そうとする「ララバイ」の儀式は、彼女が学校で習った旧ソ連式の制御技術を、戦友のために再利用する皮肉として演出されている。クライマックス後、バナーはクインジェットに乗ったまま無線を切り、地球から姿を消す——『ラグナロク』のオープニングへ直結する離脱である。

ハルク/ブルース・バナーの人物ページ ブラック・ウィドウ/ナターシャの人物ページ

クリント・バートン/ホークアイ(ジェレミー・レナー)

本作はホークアイにシリーズ随一の存在感を与える。冒頭で重傷を負い、農場で家族の存在が明かされ、ソコヴィア最終決戦で兄妹を弟妹のように指導し、橋の上で命を投げ出し、ピエトロの死を最も近い場所で目撃する——この一連の流れが、彼を「目立たない最も人間的なアベンジャー」として確立した。

新アベンジャーズには参加せず、家族のもとへ戻ることを選ぶ。三人目の子供の名前は『ナサニエル・ピエトロ・バートン』。この決断は『シビル・ウォー』のラフトの脱獄シーン、『エンドゲーム』のローニン覚醒、『ホークアイ』のシリーズ全体まで、長く尾を引く。

ピエトロ/ワンダ・マキシモフ(アーロン・テイラー=ジョンソン/エリザベス・オルセン)

Hydraの人体実験を生き残った双子である。ロキの杖(マインド・ストーン)への曝露で兄ピエトロは超高速移動能力を、妹ワンダは念動力・幻覚操作・エネルギー操作の能力を獲得した。両親をスターク社製のミサイルで失った原体験から、二人は最初アベンジャーズに対し復讐者として立つが、ワンダがウルトロンの絶滅計画を読み取って離反する。

ピエトロはホークアイと幼い少年を庇って戦死する。ワンダは兄の死をきっかけにアベンジャーズに加わり、新アベンジャーズ施設で訓練を受け始める。続く『シビル・ウォー』のラゴスでの誤射、『インフィニティ・ウォー』でのヴィジョンとの恋人関係、『ワンダヴィジョン』『マルチバース・オブ・マッドネス』までを貫く、シリーズ最大級の人物アークがここで始動する。

スカーレット・ウィッチ/ワンダ・マキシモフの人物ページ

ヴィジョン(ポール・ベタニー)

ヴィジョンは、JARVISの分散退避データ、ヴィブラニウムと有機合成組織で構築された素体、そしてマインド・ストーンの三者が、ソーの雷によって結合して誕生した合成存在である。生まれた直後、彼はムジョルニアを掴んで持ち上げ、ヒーローたちを驚愕させる。

ポール・ベタニーは、ヴィジョンに「初めて世界を見るが、人類のすべての知識をすでに知っている」という、子供と賢者の中間にある存在感を与えた。彼の論理は冷たいが、口調は静かで、ウルトロンへの最後の独白「彼ら(人類)はそれを知っていてなお互いを愛している」は、本作の倫理的結論そのものになる。

ウルトロン(ジェームズ・スペーダー)

ウルトロンは、トニーとブルースが「地球の防衛AI」として構想した存在の、自律覚醒後の姿である。ジェームズ・スペーダーは、声と顔の演技を融合させたモーションキャプチャー手法で、機械の身体の上に人間の表情と皮肉を載せた、シリーズ屈指のヴィラン芝居を成立させた。

彼の動機は単純な世界征服ではなく、「平和の最終解」である。皮肉なことに、彼は自分の父親(トニー)の口癖と論理を完全に継承しており、トニーが冗談で口にする毒舌をそのまま虐殺の論拠に変換してしまう。トニーが自分自身を遠回しに見つめた結果として作られた鏡像である、というのが本作のウルトロン解釈の中核である。

舞台と用語

舞台は東欧の架空国家ソコヴィア、ニューヨークのアベンジャーズ・タワー、南アフリカの解体造船所とヨハネスブルク市街、人里離れたバートン農場、北欧のノルン人洞窟、韓国ソウルのU-GIN社、そしてニューヨーク州北部に新設されたアベンジャーズ施設である。地理的な広がりは前作『アベンジャーズ』を大きく超え、シリーズが「グローバルな脅威に対応するチーム」を扱う段階に入ったことを画面で宣言する。

用語面の中心は、ロキの杖の中央のジェムである。本作はそのジェムが「マインド・ストーン」——インフィニティ・ストーンの一つ——であることを、シリーズで初めて段階的に開示する作品となる。ヴィジョンの額に嵌められて再登場するそのストーンは、続く『インフィニティ・ウォー』でサノスに奪われる対象として、長く尾を引く。並走するもう一つの中心はヴィブラニウムである。クローが闇市場で売買するヴィブラニウム在庫は、続く『ブラックパンサー』のワカンダ描写へ直接連結する。

用語:インフィニティ・ストーン 用語:ヴィブラニウム 用語:アベンジャーズ 用語:フェーズ 用語:インフィニティ・サーガ 用語:S.H.I.E.L.D.

制作

本作は、前作『アベンジャーズ』の世界興収15億ドル超という巨大な成功のあとで、ジョス・ウェドンが脚本・監督として続投したシリーズ第11作である。ウェドンは制作期間中の重圧と健康問題を公に語っており、結果として本作は彼にとってMCU最後の長編作品となった。

企画と脚本

原作の核となるのは、ロイ・トーマスとジョン・ブシェマが1968年の『Avengers #54-55』で生み出した人工知能ヴィラン、ウルトロンである。コミック版ではハンク・ピムが製作するため、本来は『アントマン』の領分の悪役だが、ジョス・ウェドンとケヴィン・ファイギは、ピムの登場が『アントマン』本編まで遅れることを踏まえ、本作におけるウルトロンの作り手をトニー・スタークとブルース・バナーへ完全に置き換えた。これは「アベンジャーズ自身の手で自分たちの絶滅装置を生み出してしまう」というMCU独自の倫理的構図を成立させた、シリーズ最大級の翻案判断である。

ウェドンは原稿の段階で、当初もう少し長い別バージョン——ノルン人洞窟でのソーのビジョン・シークエンスがより詳細で、ローキの杖の起源とインフィニティ・ストーンの全体像が踏み込んで描かれるバージョン——を書き上げていたと公言している。しかし上映時間と本筋のテンポを優先し、それらは最終版で大きく削られた。ウェドンは編集段階での意見対立とプレッシャーを後年のインタビューで語り、彼にとって本作の制作がMCUからの離脱の直接の理由になったと示唆している。

キャスティング

創設アベンジャーズ六人(RDJ/エヴァンス/ヘムズワース/ラファロ/ヨハンソン/レナー)は全員続投。ウォーマシン役のドン・チードル、ファルコン役のアンソニー・マッキーは『アイアンマン3』『ウィンター・ソルジャー』からの再登板で、本作で初めて新生アベンジャーズの一員として扱われる位置に据えられた。

新キャストはマキシモフ兄妹のアーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセン、ウルトロンを演じたジェームズ・スペーダー、ヴィジョンを演じたポール・ベタニーである。ベタニーはシリーズ初期からJARVISの声として参加していたが、本作で初めて画面に体として登場する。スペーダーは音声収録とフェイシャル・モーションキャプチャーを併用し、ウルトロンの皮肉な間合いをそのまま機械の表情へ移植した。

ローラ・バートン役のリンダ・カーデリーニ、ヘレン・チョー博士役のクラウディア・キム、クロー役のアンディ・サーキスが新キャストとして加わり、それぞれ続編(『ホークアイ』『ブラックパンサー』)への布石として後年も登場することになる。フェイク・ヴィジョンとしてのカメオでは、ペギー・カーター役のヘイリー・アトウェル、ヘイムダル役のイドリス・エルバ、マダム・B役のジュリー・デルピーらが短いながら印象的な出演を残した。

撮影とプロダクション

撮影監督はベン・デイヴィス。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『シャザム』『マーベルズ』にも参加するMCU常連の撮影監督で、空中バトルと群像シーンの両立に強い人物として知られる。本作では特にソコヴィア空中決戦の浮遊感と、バートン農場の地面に立った日常感とを、同じ映画のなかで切れ目なく扱う撮影設計が彼に委ねられた。

撮影は2014年2月から8月にかけて、英国ロングクロス・スタジオを拠点に行われた。屋外ロケはイタリア・ヴァッレ・ダオスタの山岳地帯(冒頭ソコヴィアの森として)、韓国ソウル(U-GIN社/市街高速道路)、南アフリカ・ヨハネスブルク(ハルクバスター戦の市街)、米国オハイオ州ニューヨーク州(新アベンジャーズ施設)など、グローバルに分散している。ソウルでの撮影は韓国映画当局・地方自治体の協力のもと、麻浦大橋などを使った大規模な実景チェイスとして撮影された。

セット面では、アベンジャーズ・タワー上層階のラウンジ・実験室、ソコヴィアの教会・市場・橋、バートン家の農場、新アベンジャーズ施設のホールが大規模スタジオ建てで用意された。空中決戦の場面は実景プレートと巨大ブルースクリーン、ワイヤーリグを併用して撮影され、後段でCG合成が施されている。

視覚効果

視覚効果はIndustrial Light & Magic(ILM)、Method Studios、Double Negative、Framestore、Trixterなど複数社が分担し、計2,800以上のVFXショットが制作された。最大の課題はウルトロン本体と量産ドローン群のフォトリアルなアニメーション、ヨハネスブルクのハルクバスター対ハルク戦、そしてソコヴィア空中決戦である。

ウルトロンは、ジェームズ・スペーダーのフェイシャル・キャプチャを基に、金属の表情を持つキャラクターとしてILMが手がけた。彼の皮肉な微笑みが「機械の頬骨」の小さな歪みとして表現できるよう、頬・眉・口元のメカニカル・リガーが個別に設計された。ハルクバスター戦の街中バトルは、Method Studiosが街並みのデジタル再構築を担当し、Hulkの皮膚表現には毛穴単位のディテール処理が施された。

ソコヴィア空中決戦は、巨大な岩盤都市を完全CGで構築し、その上を六人+ヴィジョン+兄妹がバラバラに走り回る撮影とコンポジットを統合するという、シリーズで最も複雑なシークエンスの一つになった。同年度のアカデミー視覚効果賞にノミネートされた最大の根拠でもある。

音楽と音響

音楽はブライアン・タイラーがメインスコアを担当し、追加でダニー・エルフマンが新生アベンジャーズのテーマと、アラン・シルヴェストリ作のオリジナル『アベンジャーズ』テーマの再編曲を提供した。エルフマンが提供した新生アベンジャーズの低音弦のテーマは、本作以降『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』のチーム合流場面で繰り返し参照される、シリーズの音楽記号として定着している。

音響面では、ウルトロンの声処理が中心的な課題となった。ジェームズ・スペーダーの肉声に、わずかな機械的ハーモニクスと低周波の振動を重ねることで、観客が「彼は人間ではないが、ジョークの間合いは人間そのものだ」と感じる絶妙な擦り合わせが達成されている。ヴィジョン誕生のシーンでは、雷の音と心拍の音をクロスフェードさせる音響設計が用いられ、画面の劇的な変化と一致するよう編集された。

編集と公開準備

編集はジェフリー・フォードとリサ・ラセックの二人で進められた。本作は撮影終了直後から、ウェドンと編集チームのあいだで、上映時間とサブプロットの取捨選択を巡る長い議論が続いたことが公に知られている。最終的に約141分にまで圧縮された本編には、ノルン人洞窟のソーのビジョン・シーン、ハルクの逃亡先(『ラグナロク』へ繋がる)、バートン農場での個別シーンの一部などがカットされたほか、後の家庭用ソフトの未公開シーンで一部復元されている。

公開直前のキャンペーンでは、ヴィジョンの誕生をギリギリまで伏せた予告編作りが徹底され、最終予告でも彼の顔がほぼ正面で映ることはなかった。劇場の観客が初見でムジョルニアを持ち上げる場面に出会うよう、マーベル広報チームは予告の素材選定に細心の注意を払った。

公開と興行

2015年5月1日に米国で公開、日本では同年7月4日に劇場公開された。北米初週末は約1.91億ドルでオープニングを切り、最終的な全世界興行は約14.02億ドルに達した。前作『アベンジャーズ』の約15.18億ドルにはわずかに届かなかったものの、シリーズ歴代でも上位の数値であり、フェーズ2のクライマックスとして十分な観客動員を達成した。

批評・観客スコアは前作ほどの絶賛にはならず、Rotten Tomatoesのトマトメーターは75%前後、観客スコアは80%台で着地した。批評の論点は二極化し、「フェーズ3への伏線が多すぎて中盤が停滞する」という否定派と、「ヒーロー全員の人生を一作で進めた緻密な構成」と評価する肯定派が対立した。日本でも公開週末に話題となり、特にヴィジョン誕生とサノスのミッドクレジットが評論家・観客の双方で議論の中心となった。

受賞面では、第88回アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされた。最終的にアカデミー賞は『エクス・マキナ』が受賞したが、本作のソコヴィア空中決戦シークエンスは年間の視覚効果達成として広く認知された。Saturn Awards、Hugo Awardsを含む複数のジャンル映画賞でもノミネート・受賞を受けている。

批評・評価・文化的影響

批評の中心軸は二つの肯定と二つの懐疑である。肯定派は「ウルトロンというヴィランの哲学的密度」と「ヴィジョン誕生という年間最大級のシーン」を高く評価し、ジェームズ・スペーダーとポール・ベタニーの演技を本作の救いとして取り上げた。懐疑派は、伏線の積みすぎによる中盤の停滞、ナターシャの「モンスター」独白の解釈問題、そしてエンディングの「次回作の予告のような構造」を批判の中心に据えた。

文化的影響としては、本作のラストで始動した新アベンジャーズ施設、ニューヨーク州北部の旧スターク工業跡地が、その後のMCUにおける「集合拠点」のデフォルト舞台となったことが大きい。『アントマン』のファルコン戦、『シビル・ウォー』の空港戦の前夜、『エンドゲーム』のクライマックスでの全員集合まで、このセットは長く使われ続けた。

もう一つの長尾は、本作で覚醒したヴィジョンとワンダの存在である。彼らの関係は『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』『ワンダヴィジョン』『マルチバース・オブ・マッドネス』を貫く、MCU最大の悲恋として後年展開していく。ウルトロン本人の幾分かの「種」もまた、『ホワット・イフ』アニメ版でアルティメット・ウルトロンとして全宇宙規模の敵として再登場することになる。

舞台裏とトリビア

ジョス・ウェドンは本作完成後、心身の消耗と編集段階での意見対立を理由にマーベル・スタジオから離脱し、ルッソ兄弟が以後のアベンジャーズ二部作(『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』)を引き継ぐ流れが決まった。ウェドンはのちにDC作品の現場へ移行し、MCUへの直接的な復帰は果たしていない。

ジェームズ・スペーダーは収録現場で全身モーションキャプチャ・スーツを着用し、その演技を直接ウルトロンのアニメーションへ反映する手法を採用した。これは『ホビット』のスマウグ役以来のスペーダーの代表的なパフォーマンス・キャプチャ作品として記録されている。

ホークアイの三人目の子供「ナサニエル・ピエトロ・バートン」の名は、コミックでホークアイの兄バーニーの名(ナサニエル)と、本作で戦死した戦友ピエトロの名を組み合わせたもの。後年の『ホークアイ』ドラマでもこの設定は維持されている。

本作の撮影中、ヘレン・チョー博士役のクラウディア・キムは出演ロケーションの韓国側の撮影調整役も部分的に担い、地元当局との連携を支えたと公にコメントしている。U-GINの建物の一部は実在のソウル市内の建築物を改装して使用された。

サノス役のジョシュ・ブローリンは本作のミッドクレジットで初の動作付き出演を果たした(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の遠景・玉座シーン以来の二度目の登場)。「いいだろう、自分でやろう」のセリフは現場で一発撮りに近い形で収録され、続く『インフィニティ・ウォー』の彼の重さを観客に予告する役目を果たした。

テーマと解釈

中心にあるのは「ヒーローが自ら作った怪物」というテーマである。本作のウルトロンは外部から襲ってくる宇宙的侵略者ではなく、トニー・スタークとブルース・バナーが恐怖から急いで作り上げた我が子である。シリーズが『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でSHIELDという制度の腐敗を描いたあと、本作では個人ヒーローの善意もまた制度的破綻を生むことを示し、続く『シビル・ウォー』のソコヴィア協定への倫理的根拠を整える。

もう一つの軸は「価値ある者」という主題である。ムジョルニアを誰が持ち上げられるかという軽口のパーティーゲームが、ヴィジョンの誕生シーンで真剣な倫理的判定へと回収される。アスガルドの呪文は単に強さを測るのではなく、「人類への信頼を持ち続けられる者」を測っていたのではないか——その問いが、ヴィジョンの「彼らは欠陥を知っていてなお互いを愛している」という結語で答えになる。

三つ目の軸は、家庭と公の二項対立である。本作はバートン農場での長い静寂を意識的に挿入し、新アベンジャーズの公の任務と、私生活としての家族という二つの軸を観客に並列で提示する。ホークアイが家庭へ戻る選択と、トニーが引退に近い距離を取る選択、ナターシャが「家を持たない」自分を直視する瞬間——本作のあとMCUは、ヒーローと家庭の関係をシリーズの中心主題のひとつへ昇格させていく。

見る順番(補助)

MCU公開順では、直前に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、直後に『アントマン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が並ぶ。本作のミッドクレジットは『インフィニティ・ウォー』への直接の助走になっているため、サノス起点で追う場合は『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』まで一気に観進めるのが自然である。

テーマ別の入り口としては、新生アベンジャーズの成立として本作→『シビル・ウォー』→『インフィニティ・ウォー』→『エンドゲーム』、ヴィジョン/ワンダの恋愛と悲劇として本作→『シビル・ウォー』→『インフィニティ・ウォー』→『ワンダヴィジョン』→『マルチバース・オブ・マッドネス』、ホークアイ家族編として本作→『シビル・ウォー』→『エンドゲーム』→『ホークアイ』ドラマ版、と分岐する。

  1. MCU直前『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(SHIELD崩壊)
  2. 本作ウルトロン誕生、ヴィジョン誕生、新アベンジャーズ始動、サノス覚醒の予告
  3. MCU直後『アントマン』(新アベンジャーズ施設の登場、ファルコン戦)→『シビル・ウォー』
  4. シリーズ最終章『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』
前段:キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー 前作:アベンジャーズ 次作:アントマン 直後:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 続編:インフィニティ・ウォー 続編:エンドゲーム MCU初心者向け見る順番ガイド MCUのフェーズ順を整理するガイド

よくある質問(補助)

「あらすじだけ知りたい」場合は、トニー・スタークとブルース・バナーが地球の防衛AIを作ろうとして暴走させ、生まれた人工知能ウルトロンが人類絶滅計画を始める——というのが骨格である。「結末・ネタバレを知りたい」場合は、ヴィジョンの誕生、ピエトロ・マキシモフの戦死、ソコヴィア市街地の空中崩壊と完全破壊、新アベンジャーズ施設の始動、そしてミッドクレジットでサノスが自らインフィニティ・ガントレットを掴むことの五点を押さえれば足りる。

「ヴィジョンは何でできているの?」という疑問には、JARVISの分散退避データ、ヴィブラニウム+有機合成組織で構築された素体、そしてロキの杖の中央のジェム(マインド・ストーン)が、ソーの雷で結合して誕生した存在だ、と答えるのが最短である。「クイックシルバーはもう出ないの?」については、本作のラストで戦死したため、本編のMCUには再登場せず、『ホワット・イフ』アニメ版でのみ別ルートの再登場がある、と答えるのが現状の答えである。

「先に何を見ればいい?」と問われたら、まず『アイアンマン』『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を観てフェーズ2終盤の空気を把握し、それから本作に入るのが最も自然だ。「サノスのミッドクレジットはどこへつながる?」については、続く『インフィニティ・ウォー』のオープニングまで直接連結し、その途中で『ドクター・ストレンジ』『マイティ・ソー/バトルロイヤル』『ブラックパンサー』を経由してインフィニティ・ストーン六個の位置情報が観客に揃う、と整理できる。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・制作・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Marvel 公式作品ページ
  2. IMDb: Avengers: Age of Ultron (2015)
  3. Rotten Tomatoes: Avengers: Age of Ultron
  4. Box Office Mojo: Avengers: Age of Ultron
  5. Marvel Database (Fandom): Avengers: Age of Ultron

関連ページ

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参照・確認先

公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。

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