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キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

やせ細った喘息持ちのブルックリンの青年スティーブ・ロジャースが、エルスキン博士のスーパー・ソルジャー計画で超人となり、ナチス内部のテロ組織ハイドラとレッド・スカルに挑む——MCUフェーズ1の前史を担う、第二次世界大戦のレトロ・ヒロイック・アドベンチャー。

媒体: 映画(実写) 米国公開: 2011年7月22日 日本公開: 2011年10月14日 監督: ジョー・ジョンストン
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー 公式ポスター

作品データ

作品
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
原題
Captain America: The First Avenger
媒体
映画(実写)
米国公開
2011年7月22日
日本公開
2011年10月14日
監督
ジョー・ジョンストン
脚本
クリストファー・マルクス/スティーヴン・マクフィーリー
原作
マーベル・コミック『キャプテン・アメリカ』(ジョー・サイモン/ジャック・カービー)
製作
ケヴィン・ファイギ
音楽
アラン・シルヴェストリ(主題歌「Star Spangled Man」アラン・メンケン作曲/デヴィッド・ジッペル作詞)
撮影
シェリー・ジョンソン
編集
ジェフリー・フォード/ロバート・ダルヴァ
美術
リック・ハインリックス
衣装
アンナ・B・シェパード
視覚効果
Industrial Light & Magic/Lola VFX/Whiskytree/Double Negative ほか
製作会社
マーベル・スタジオ
配給
パラマウント・ピクチャーズ(公開当時)/後にウォルト・ディズニー・スタジオ
上映時間
124分
製作費
約1億4000万ドル
興行収入
全世界 約3億7060万ドル
MCU区分
フェーズ1 第5作/インフィニティ・サーガ前段
物語内時系列
1942-1945年(本編)/2011年(プロローグとエピローグ)。『マイティ・ソー』の後、『アベンジャーズ』の直前に位置する
公式予告編は
劇場サイトで確認
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📖 全37章 / 約21K字 🔄 最終更新 2026年5月26日 ✍️ Anna Movies 編集部

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーは、2011年に公開されたアメリカのスーパーヒーロー映画である。喘息持ちで虚弱なブルックリンの青年スティーブ・ロジャースが、エルスキン博士のスーパー・ソルジャー計画によって超人となり、第二次世界大戦下でナチス内部のテロ組織ハイドラとレッド・スカルに挑む姿を描く。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)フェーズ1の前史を担う、レトロ・ヒロイックなアドベンチャー作品である。

00概要

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(Captain America: The First Avenger)は、ジョー・ジョンストン監督によるアメリカのスーパーヒーロー映画である。脚本はクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーが手がけた。製作はマーベル・スタジオ、公開時の配給はパラマウント・ピクチャーズが担った(その後の権利再編により、以降の続編はウォルト・ディズニー・スタジオ配給へと移っている)。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の通算5作目であり、フェーズ1を締めくくる最後の単独作にあたる。

原作のキャプテン・アメリカは、ジョー・サイモンとジャック・カービーが1941年3月の『キャプテン・アメリカ・コミックス』第1号で生み出した、米国コミック史でもっとも古いスーパーヒーローの一人だ。映画版は、コミックが帯びていた戦時下のプロパガンダ的な要素に、ジョー・ジョンストンが1991年に撮った『ロケッティア』のレトロでパルプ的な感触を重ね合わせ、第二次大戦の冒険活劇としての肌触りを徹底して追い求めている。製作のケヴィン・ファイギは、本作を「翌年の『アベンジャーズ』集合篇へとつながる、最後のピース」と位置づけた。

米国公開は2011年7月22日、日本公開は2011年10月14日。製作費は約1億4000万ドル、上映時間は124分、全世界興行収入は約3億7060万ドルを記録した。主要キャストは、クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ)、トミー・リー・ジョーンズ(チェスター・フィリップス大佐)、ヒューゴ・ウィーヴィング(ヨハン・シュミット/レッド・スカル)、ヘイリー・アトウェル(ペギー・カーター)、セバスチャン・スタン(ジェームズ・“バッキー”・バーンズ)、ドミニク・クーパー(ハワード・スターク)、トビー・ジョーンズ(アーニム・ゾラ博士)、スタンリー・トゥッチ(アブラハム・エルスキン博士)。

本記事では、1942年テンスベリで四次元キューブが奪われる冒頭から、ニューヨーク万博、エルスキン博士の暗殺、USOショーでの宣伝キャラクター期、アッツァーノ収容所の単独救出、ハワリング・コマンドーズの結成、アルプスでバッキーが列車から転落する場面、レッド・スカルの最期と四次元キューブの行方、北極へのヴァルキリー墜落、2011年タイムズスクエアでのスティーブ覚醒、そしてポスト・クレジットの『アベンジャーズ』予告までを、すべてネタバレを前提に時系列で整理していく。

概要

主要データ

原題
Captain America: The First Avenger
監督
ジョー・ジョンストン
脚本
クリストファー・マルクス/スティーヴン・マクフィーリー
原作
マーベル・コミック(ジョー・サイモン/ジャック・カービー、1941)
音楽
アラン・シルヴェストリ
撮影
シェリー・ジョンソン
米国公開
2011年7月22日
上映時間
124分
ジャンル
スーパーヒーロー、戦争/戦時下アドベンチャー、レトロ・パルプ

01あらすじ

以下に紹介するのは、結末とポスト・クレジット・シーンまでを含む全編のあらすじである。徴兵を四度にわたって拒まれてきたブルックリン育ちの小柄な青年、スティーブ・ロジャース。彼はエルスキン博士のスーパー・ソルジャー計画によって超人キャプテン・アメリカへと生まれ変わる。やがてナチス内部のテロ組織ハイドラを率いるヨハン・シュミット/レッド・スカルとの対決へと突き進み、最後は北極の氷の中で凍りつく。そして70年後の2011年、目覚めの時を迎える──そこまでを描いた物語である。

あらすじ

・北極の氷塊

映画は2011年、北極の白い空から幕を開ける。氷原に降り立った特殊輸送機を出て、SHIELDの調査チームが分厚い氷の山を掘り進めていく。地中深くに眠っていたのは、第二次世界大戦末期の巨大な金属の翼——通称「ヴァルキリー」と呼ばれた飛行兵器の残骸だ。氷を割って機内に踏み込んだ調査員は、操縦席のすぐ脇に半ば氷漬けのまま埋まった盾を見つける。星条旗の意匠が刻まれた円盤、キャプテン・アメリカの盾だった。指揮官の短い無線——「司令、これを聞きたいか」——を合図に、画面は1942年の北欧へと滑り落ちていく。

本作はそのすべてが、北極の氷の中に埋もれた一人の人間の物語として組み上げられている。観客は冒頭の数分で「彼は氷の中にいる」という結末の手前まですでに告げられており、続く124分は、その氷に行き着くまでの人生を見届けるための時間となる。

・北極の氷塊

・テンスベリ

1942年3月、ナチス・ドイツ占領下のノルウェー。海沿いの古い町テンスベリにある教会堂へ、黒いコートをまとった一団が押し入る。先頭に立つのは、第三帝国の科学部局を独自に率いる「ハイドラ」の総帥ヨハン・シュミットだ。彼はヴァイマル時代、無認可の超人血清実験の被験者となり、歪んだ姿のまま生き延びた男である。ふだんは整った顔の仮面で素顔を覆い、公の場に姿を見せている。

シュミットが探し当てたのは、教会堂の地下深くに代々秘匿されてきた一片の宝物——青い光を放つ立方体、のちに四次元キューブ(テッセラクト)と呼ばれるアーティファクトである。北欧神話の伝承ではオーディンの宝物殿に由来するとも語られ、北欧の王たちを守ってきた品だ。シュミットは護衛の老司祭を冷酷に殺すと、立方体を金属の保管庫に収め、凍てつくノルウェーの夜へと運び去る。

彼の野望は単純だ。神々の道具を兵器に変え、ヒトラーすら従えて帝国の頂点に立つこと。ニュルンベルクの式典を鼻で笑い、ベルリンを焼き払う準備を整える——その燃料が、いま彼の手の中にある。本作の悪が、ナチスの上層部ですらない一個人の野心として描かれる点こそ、ヒーロー映画としての本作の射程を決めている。

・テンスベリ

ブルックリン1942

舞台は同じく1942年、ニューヨークのブルックリン。小柄でやせ細った青年スティーブ・ロジャースが、米陸軍の徴兵事務所で四度目の不適格判定を受ける場面から幕を開ける。喘息に不整脈、視力の弱さ、扁平足——身長5フィート4インチ、体重95ポンドの彼は、書類のうえでは「軍が必要としない種類の市民」でしかない。それでも、看護師だった母を亡くし、父を第一次大戦で失った彼は、銃後に残ることをよしとしない。

そんな彼の唯一の親友が、177連隊への入隊を間近に控えたジェームズ・“バッキー”・バーンズ(セバスチャン・スタン)だ。バッキーは映画館の路地裏で大男に殴られていたスティーブを助け出し、街の灯のもとで「お前は、戦う側じゃない。お前は、戦わなきゃいけない側だ(You're not going to be the kind of guy who runs from a fight.)」と、その性格をひと言で言い当てる。二人は翌日、ニューヨーク万博の会場でデートをする予定だった。

万博会場では、若き発明家ハワード・スターク(ドミニク・クーパー)が、磁力で空中に浮かぶ自家用車のデモンストレーションを派手に披露している。観客の歓声のなか車が落下し、ハワードが「ちょっとした不具合だ」と肩をすくめる。後の息子トニー・スタークの原点が父にあることを、観客に印象づける一場面である。

バッキーに別れを告げたスティーブは、会場の隅の徴兵所で五度目の虚偽申告を試みる。そこで彼の不器用なまでの誠実さに目を留めたひとりの老科学者が、彼を呼び止める。亡命ドイツ人科学者、アブラハム・エルスキン博士(スタンリー・トゥッチ)である。

ブルックリン1942

リバース計画とキャンプ・リーハイ

エルスキンに招かれたスティーブは、ニュージャージーのキャンプ・リーハイで進む「リバース計画(Project Rebirth)」の最終被験者候補として、SSR(戦略科学予備隊)の訓練に送り込まれる。指揮を執るのは辛辣なチェスター・フィリップス大佐(トミー・リー・ジョーンズ)と、英軍出身の有能な士官ペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル)だ。

訓練序盤、フィリップスが模擬手榴弾を投げ込み、新兵たちを散らせて実験台にふさわしい一人を炙り出す場面がある。屈強な兵士たちが我先に身を伏せるなか、スティーブだけが手榴弾の上に飛び込み、仲間を庇おうとする。「諸君、伏せろ」と叫ぶ小柄な青年こそ、エルスキンが探し求めていた唯一の「心の形」だった。彼が選ぶ条件は「強い者ではなく、善い者」——力を持つに値する人間を、まだ力を持たないうちに見極める。この設計が、本作の倫理の中心軸となる。

手術前夜、エルスキンはスティーブの宿舎を訪れ、自らの過去を打ち明ける。ドイツでの初期実験では、ヨハン・シュミットが安全性も確かめないまま血清を注射し、外見は歪み、内に潜む悪意が増幅された——血清とは「中にあるものを増幅する」もの。悪人をさらに悪く、善人をさらに善くする道具にすぎない。エルスキンは「お前が善き人間であり続けることだけが、計画の成功条件だ」と告げ、グラスを片付ける。

リバース計画とキャンプ・リーハイ

ブルックリンの手術

翌朝、ブルックリンのアンティーク・ショップを装った秘密研究所で、リバース計画の最終手術が行われる。立ち会うのはエルスキン、フィリップス大佐、ペギー、ハワード・スターク、そして上院議員ブラント。スティーブは特殊なポッドに収まり、ハワードが製作した「ヴィタ線」の照射装置のなかでエルスキンの血清を注射される。

降り注ぐ光のなか、スティーブが悲鳴を漏らしかける。ペギーが思わず「やめさせて」と叫ぶが、スティーブは「最後までやれ」と返す。やがて装置が止まり、ポッドの扉が開く。観衆の前に立っていたのは、身長6フィート2インチの均整の取れた肉体——スーパー・ソルジャーの完成である。歓声と汗にまみれながら、スティーブが自分の手のひらを驚いたように見つめる。この短いカットこそ、長大なシリーズの物語が始まる出発点だ。

歓喜のさなか、観衆に紛れていた一人の男が拳銃を抜き、エルスキン博士の胸を撃ち抜く。男はハイドラの工作員ハインツ・クルーガー(リチャード・アーミティジ)。息絶えようとするエルスキンは、最後にスティーブの胸を指差す——「お前自身が血清なのだ」と告げて、そのまま事切れる。

スティーブはクルーガーをブルックリンの街路まで追う。新たに得た身体は、逃走する車を徒歩で追い越し、撃ち込まれた銃弾を肉体で受け止め、ついには港でクルーガーの潜水艇の前へと追い詰める。だがクルーガーは捕えられる寸前、口に含んだ青酸カプセルを噛んで自ら命を絶つ。ブルックリンの夕景のなか、初めて自らの力を試したスティーブだが、その手に残ったのはエルスキン博士の死と、二度と再現できない処方が永遠に失われたという、二つの取り返しのつかない損失だった。

ブルックリンの手術

USOショー

リバース計画はエルスキンを失い、血清の処方も失った。残されたのは「もはや量産できない、ただ一人の超人」だ。ブラント上院議員は、その肉体を戦場の兵器としてではなく、後方のプロパガンダの顔として使う決断をくだす。スティーブはニューヨークを皮切りに全米を巡るUSO(米国従軍慰問団)の舞台に立たされ、「キャプテン・アメリカ」と記された星条旗の衣装をまとい、段ボール製の盾を手に、戦時国債の購入を訴える。

舞台では「Star Spangled Man」(作曲アラン・メンケン、作詞デヴィッド・ジッペル)に合わせ、踊り子に囲まれながらヒトラーの紙人形を殴り倒す。その同じ演し物を、彼は百回以上も繰り返す。ニュース映画として映画館にかかる姿は、銃後の市民には希望と映っても、前線の兵士たちの目にはピエロにしか映らない。

1943年11月、イタリア戦線の前線基地。ショーを披露しに来たスティーブは、観客席の兵士たちから露骨な野次を浴び、紙コップを投げつけられる。舞台袖で彼を迎えるのは、たまたまその基地に派遣されていたペギー・カーターだ。そして観客のなかで、彼は「自分の本当の居場所はここではない」と決定的に思い知る。その一夜が訪れる。

USOショー

アッツァーノ単独救出

前線近く、スティーブはバッキーの所属する第107連隊が、アッツァーノ近郊のハイドラ施設に捕虜として囚われていることを知る。だがフィリップス大佐は救援作戦を許可しない。すでに救援部隊は壊滅し、追加で送り込める兵はいない——それが軍事上の判断だった。

スティーブは独断で動く。USOショーの段ボール製の衣装ではなく、ペギーが手配した実用本位のジャケットと拳銃を身につけ、ハワード・スタークの操縦する偵察機で敵地深く、アッツァーノの収容施設へ単身降下する。無線も応援もない。ハイドラの監視兵を一人ずつ無力化しながら、四百名近い捕虜——イギリス軍、米軍、フランス軍、日系米軍と、多国籍の兵士たち——をすべて解放してみせる。

施設の中央棟で、彼は初めてハイドラの本質を目の当たりにする。アーニム・ゾラ博士(トビー・ジョーンズ)が、四次元キューブのエネルギーを兵器化した新型のエネルギー銃と、青く光るタンクを管理していたのだ。さらに奥の部屋では、医学実験の被験台に縛りつけられた捕虜が一人——バッキー・バーンズが、譫言で連隊番号を繰り返している。スティーブは彼を助け起こす。「お前なのか……どうやって……」と問うバッキーに、「大きくなった」とだけ短く返す。この再会の一場面が、シリーズ後半まで尾を引く絆の起点となる。

脱出の途中、シュミットとゾラが本拠地の制御室で対峙する。捕虜を解放した一個人の存在を初めて知ったシュミットは、自らの正体を覆い隠してきた仮面を外す。あらわになった顔は、エルスキンの安全性を欠いた血清の副作用で頭皮を失った、真紅の頭蓋骨——「赤い髑髏」、レッド・スカルだった。シュミットは施設を爆破して証拠を抹消すると、鉤十字の旗と数機の試作機を伴い、自身は奥へと撤退していく。

施設を脱した数百人の捕虜たちが、行進してフィリップス大佐の前線基地へ帰還する。その先頭に立ち一団を率いるのは、星条旗の衣装ではなく、ただの軍服姿のスティーブだ。基地の入口で「規律違反は不問にしてほしい」と謝罪する彼に、フィリップス大佐は短く認める。「処分? まさか、表彰だ(Faith is frowned upon as a military attribute, son.)」。観客が彼に拍手を送る理由が生まれるのは、ここからである。

アッツァーノ単独救出

ハワリング・コマンドーズ結成と欧州遊撃戦

翌日、スティーブはハワード・スタークの工房で新たな装備を選び直す。ハワードがいくつもの試作盾を並べるなか、スティーブは机の隅に転がっていた地味な金属の円盤を手に取る。「これは何だ」「ヴィブラニウム——アフリカの貴重な金属で、振動を完全に吸収する。ハワード曰く、量がほとんどない」。やがてこの円盤に三色の塗装と星が施され、本作以降シリーズ全体を通じてキャプテン・アメリカの代名詞となる星条旗の盾が完成する。新しい衣装はUSOショーの派手な原色を抑え、軍服に近い深い青と茶へと落とし込まれた。

スティーブは、アッツァーノで救い出した者たちの中から六人の戦闘員を選び、独自の特殊作戦小隊「ハワリング・コマンドーズ」を編成する。顔ぶれは、バッキー・バーンズ、ダム・ダム・デューガン(ニール・マクドノー、トレードマークの中折帽)、ガブリエル“ゲイブ”・ジョーンズ(デレク・ルーク、語学に長けた米軍兵)、ジム・モリタ(ケニス・チョイ、日系米軍兵)、ジェームズ・モンゴメリー・フォルスワース(J・J・フェイルド、英軍将校)、ジャック・デルニエ(ブルーノ・リッチ、フランスのレジスタンス兵)の六人だ。多国籍からなるこの小隊はコミック由来の編成をそのまま継承しており、戦時下の米国コミックとしてはきわめて先進的なメンバー構成を取った点が、後年も繰り返し称揚される。

1943年から1944年にかけて、ハワリング・コマンドーズは欧州各地のハイドラ施設を一つずつ叩いて回る。爆破、夜襲、補給線の寸断、捕虜の解放——スティーブとハイドラの遊撃戦が長く続くこの中盤は、第二次大戦の冒険映画としての本作の本領が出る区間であり、シリーズ後半とは違う乾いた爆発音と土の匂いに満ちている。

ハワリング・コマンドーズ結成と欧州遊撃戦

アルプスの列車

1944年、ハワリング・コマンドーズは、アルプスの山中を駆けるハイドラの装甲列車にゾラ博士が乗っていることを突き止める。鉄路を疾走する列車の屋根へ、スティーブ、バッキー、ガブリエルの三人がワイヤーで降下し、車両内に突入する。爆撃を生き延びた特殊兵装の兵士たちとの激しい銃撃戦が始まる。

戦闘の途中、車体の側面にあいた穴のそばで、スティーブが盾でバッキーを庇おうとした矢先、爆風がバッキーをアルプスの絶壁の上に吊られた手すりへと叩きつける。鉄の手すりが歪んでいく。スティーブが手を伸ばし、「掴め、頼む」と叫ぶ。その指先が触れたかどうかという瞬間、バッキーは数百メートル下の雪の渓谷へと落下する。手すりは耐えきれずに外れ、無線も信号弾もないまま、バッキーは闇へ消えていく。スティーブは列車の中で長く呆然と立ち尽くす。

本作の中盤のクライマックスはこの瞬間にある。後の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)以降のすべての展開——バッキーがハイドラに拾われ、冬季工作員として生まれ変わる歴史——は、この一場面を根として伸びていく。本作の段階で観客はまだ知る由もないが、列車の窓の外を落下していくバッキーのまっすぐな軌道こそが、シリーズの長い縦軸の始まりなのだ。

ゾラ博士は捕えられ、フィリップス大佐の尋問のもとで本作最大の情報を吐く。シュミットはニューヨークだけでなく、首都ワシントン、シカゴ、ボストンをも同時に焼く気だという。ヴァルキリーと呼ばれる重爆撃機に、四次元キューブのエネルギーで起動する爆弾を六発積み込み、北米の都市を順番に消し去る——そういう計画だった。次の標的が前線ではなく米本土である以上、もはや遊撃戦に費やす時間は残されていない。

アルプスの列車

アルプス最終決戦

ハイドラの本拠地は、アルプスの絶壁に築かれた要塞地下基地である。スティーブを先頭に、ハワリング・コマンドーズと米軍の連合部隊が要塞へ正面から突撃する。その隙に、スティーブは盾を構え、要塞内部のヴァルキリー発進口へと駆け抜けていく。装甲扉が閉まりきる前に身を投げ込み、滑走路を全力で逃げるレッド・スカルの背を追う——独力で挑む、最後の任務である。

ヴァルキリーが離陸する。広い翼を持つ重爆撃機で、機体の下には六発の核級爆弾が並ぶ。操縦席に座ったシュミットは、自らの最後の野望——神の道具を手に「人間より上に立つ」という夢——を語る。スティーブは操縦席に乗り込み、素手と盾でシュミットに挑む。激しい攻防のさなか、機体の制御室では四次元キューブを納めた保管箱の蓋が緩み、シュミットは思わずキューブそのものに素手で触れてしまう。

青い光が機内を走り抜ける。シュミットの肉体は、キューブが解き放つエネルギーの帯に包まれ、星と銀河の彼方へ吸い上げられるように消え去る——本作の時点では「彼は死んだ」と示されるが、後年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、彼がヴォーミアの地でストーン番として生かされ続けていた事実が明かされる。キューブ本体は機体の床を焼き貫き、雲海の下に広がる太平洋——のちに『マイティ・ソー』へと繋がる海域——へ落ちていく。

操縦不能に陥りかけたヴァルキリーで、スティーブはただ一人、操縦桿を握る。爆弾を解除できないまま、ニューヨークへ突き進む機体を、北の方角へと反らしていく——「これは命令だ、聞いてくれ、ペギー」。基地の通信室でペギーが応答する。「降下して着水しろ、私たちが探す」と告げるが、機体の高度はもう降りられるものではない。スティーブは操縦席から氷の海原を見つめ、「俺たちは踊れなかったね」「土曜の夜、ストーク・クラブ、8時、必ず」「君のステップに、まだついていける自信はないんだ……」と短い約束を交わす。やがて、無線が途切れる。

ヴァルキリーは、北極の白い氷盤へまっすぐに落ちていく。本作の冒頭でSHIELDの発掘隊が掘り当てた、あの場所——そこへ今、スティーブが沈んでいく。

アルプス最終決戦

・タイムズスクエア

場面は一転、1940年代の病室へ。ベッドに横たわるスティーブが、ラジオから流れる野球中継の声で目を覚ます。壁に貼られた地図、机に置かれたラジオ、そして看護師の制服をまとった若い女性。何ひとつ不審な点のない、穏やかな朝に見える——だがスティーブはすぐに違和感を覚える。流れているのは、彼が現地で観戦して覚えている1942年5月の試合、ロザー・ブラントン投手の登板だ。同じ試合が二度、生中継されるはずがない。

看護師を押しのけ、廊下へ走り出る。やがて壁を蹴破り、そのまま外へ転がり出たスティーブの目に飛び込んできたのは、見慣れぬ五十年後のタイムズスクエアだった。夜を彩るネオン、何百という巨大スクリーン、飛び交う世界中の言語、見たこともない車種の渋滞——二十一世紀のニューヨークである。SHIELDの黒服の捜査員たちが彼を取り囲み、最後に歩み寄るのが、ニック・フューリー長官(サミュエル・L・ジャクソン)だ。

「すまない、スティーブ。君に伝えなければならないことがある」「何だ」「君は……眠っていた、キャップ。70年近く、氷の中で」。「7、70年」「ああ。だがピンと来ていないようだから言うが、その前に俺たちには君に任せたい仕事がある」。スティーブは何も応えず、ただニューヨークの夜空を見上げる。土曜の夜8時、ストーク・クラブの予約は、ついに果たされることはなかった。

本編はこの沈黙のショットで幕を閉じる。直後のポスト・クレジット・シーンでは、SHIELDの訓練施設でサンドバッグを殴り続けるスティーブのもとへフューリーが歩み寄り、「世界を救う任務がある」と告げる短い場面が描かれる。続いて、翌2012年公開の『アベンジャーズ』初の正式予告編が流れ出す。MCUの集合篇へと向かう助走線が、ここで初めて画面に姿を現すのだ。

・タイムズスクエア
ここまでが全編のあらすじである。以降は登場要素、人物、舞台、制作背景、公開と興行、批評・舞台裏・テーマを資料として読み解くための章が続く。

登場要素

本作は第二次大戦を舞台にした冒険活劇であり、コミック・ヒーローの伝統的な小道具、多国籍の戦友たち、レトロな兵器、そして後にMCUへと連なる神話的アイテムを一本に凝縮している。以下、主要な人物・場所・組織・道具を整理しておきたい。

  • スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)
  • ペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル)
  • ジェームズ・“バッキー”・バーンズ(セバスチャン・スタン)
  • チェスター・フィリップス大佐(トミー・リー・ジョーンズ)
  • アブラハム・エルスキン博士(スタンリー・トゥッチ)
  • ハワード・スターク(ドミニク・クーパー)
  • ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン、最終盤のみ)

  • ヨハン・シュミット/レッド・スカル(ヒューゴ・ウィーヴィング)——本作の真の敵、ハイドラ総帥
  • アーニム・ゾラ博士(トビー・ジョーンズ)——ハイドラの主任科学者、後の『ウィンター・ソルジャー』に再登場
  • ハインツ・クルーガー(リチャード・アーミティジ)——エルスキン暗殺の実行犯

  • ジェームズ・“バッキー”・バーンズ
  • ダム・ダム・デューガン(ニール・マクドノー)
  • ガブリエル“ゲイブ”・ジョーンズ(デレク・ルーク)
  • ジム・モリタ(ケニス・チョイ)
  • ジェームズ・モンゴメリー・フォルスワース(J・J・フェイルド)
  • ジャック・デルニエ(ブルーノ・リッチ)

  • 米陸軍 戦略科学予備隊(SSR)——後のSHIELDの直接の前身
  • ハイドラ(Hydra)——ナチス・ドイツ科学部局から独立したテロ組織
  • 米陸軍 第107歩兵連隊
  • USO(米国従軍慰問団)
  • SHIELD(2011年プロローグとエピローグでのみ存在を示唆)

  • ニューヨーク・ブルックリン(スティーブの故郷)
  • ニューヨーク万国博覧会会場
  • ニュージャージー州キャンプ・リーハイ
  • ブルックリンのアンティーク・ショップ偽装研究所
  • ノルウェー・テンスベリの古い教会堂
  • イタリア戦線アッツァーノ近郊のハイドラ施設
  • アルプス山中のハイドラ要塞地下基地
  • アルプス山岳鉄道の装甲列車
  • 北極の氷盤(プロローグおよび墜落地点)
  • 2011年のタイムズスクエア

  • 四次元キューブ(テッセラクト/コズミック・キューブ)——オーディンの宝物殿に由来する神々の道具、後にスペース・ストーンの容器として再定義
  • キャプテン・アメリカの星条旗の盾(ヴィブラニウム製、ハワード・スターク鍛造)
  • USOショー用の段ボール製盾と原色衣装
  • リバース計画のヴィタ線照射ポッド
  • エルスキンのスーパー・ソルジャー血清
  • ハイドラのエネルギー銃と動力スーツ
  • ヴァルキリー(ハイドラの重爆撃機)
  • ヴァルキリー搭載の四次元キューブ動力爆弾
  • ハワード・スタークの磁力浮上自家用車(万博デモ)

  • スーパー・ソルジャー血清による身体能力の倍加(速度・筋力・代謝・治癒)
  • ヴィブラニウムによる衝撃完全吸収(盾の核心特性)
  • 四次元キューブのエネルギー放出と空間転送現象(シュミットの消失)
  • ハイドラの独立指揮系統とプロパガンダ機構
  • USOショーによる戦時国債プロモーションと銃後の士気管理

  • SHIELD訓練施設でサンドバッグを殴り続けるスティーブ
  • ニック・フューリーが告げる「世界を救う任務がある」
  • 翌2012年公開の『アベンジャーズ』正式予告編

14主要登場人物

本作の人物配置は、スティーブ・ロジャースの内面の成長を縦軸に据え、彼を見出した恩師エルスキン、彼を奮い立たせるペギー、最古の親友バッキー、そして対極に置かれるシュミット——という古典的な四点ダイヤモンドの構図を成している。以下、それぞれの位置づけを整理していこう。

スティーブ・ロジャース/キャプテン・ア…

クリス・エヴァンスは『ファンタスティック・フォー』(2005/2007)のジョニー・ストーム役で知られていたが、本作のオファーは当初三度断っている。最終的にロバート・ダウニー・Jr.の説得を受けて出演を決めたと伝えられる。役作りのため約11kgの増量に取り組み、肉体の面からもキャプテン・アメリカの「均整」を作り上げた。

やせ細った前半のスティーブは、エヴァンスの顔に他俳優の小柄な身体を合成する、Lola VFXの大規模な「ボディ・リダクション」処理によって生み出されている。前半90分のあいだ、観客が見つめるのは、ニューヨークの街路で殴られても立ち上がる、痩せた青年の眼差しだ。エヴァンスの演技の核は肉体ではなく顔の意志に置かれている。その置きどころこそが、のちの『アベンジャーズ』『ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』『エンドゲーム』へと続く長いキャリアの、最初の一手を決定づけた。

スティーブは、強くなった瞬間に別人へと変わったわけではない。エルスキンの言葉どおり、彼は「中にあったものが、増幅されただけ」の人間として描かれる。USOショーの幕間、舞台袖でペギーの言葉を受け取り、独断でアッツァーノへ向かう決断を下す——その瞬間にこそ、本物のキャプテン・アメリカが生まれている。

スティーブ・ロジャース/キャプテン・ア…

ペギー・カーター

ヘイリー・アトウェルが演じるのは、英軍出身の有能な士官だ。SSRの計画運営に深く関わり、男社会の最後の砦であった1940年代の米陸軍にあって、訓練兵を殴り倒し、判定を下し、任務を仕切る。一人の指揮官として、最後まで揺るがぬ強さを保ちつづける。クリス・エヴァンスとアトウェルの掛け合いは本作の感情の核であり、シリーズを通じて幾度も立ち返られることになる。

彼女が本作で下す最大の決断は、フィリップス大佐がアッツァーノ救援を却下した直後に訪れる。独断で偵察機と装備を整え、スティーブを敵地の奥深くへと送り出すのだ。規律と決断のあいだに引かれた一線を、明確な責任のもとで踏み越えていく。その身ぶりこそが、本作の倫理を支えている。

本作のあと、ペギーは『マーベル・ワンショット:エージェント・カーター』(2013)、ABCドラマ『エージェント・カーター』(2015-2016)、さらに『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ホワット・イフ…?』へと長く再登場し、MCUにおける女性主導の物語の出発点を築いていく。物語終盤、北極墜落の直前に交わされる無線越しの会話「土曜の8時、ストーク・クラブで」は、のちに『エンドゲーム』のラストで実際に果たされることになる。

ペギー・カーター

ジェームズ・“バッキー”・バーンズ

スティーブの最古の友人で、第107歩兵連隊の軍曹。ブルックリンの路地裏でスティーブを庇い続けた幼馴染は、本作ではいち早く軍服に身を包んで前線に立つ。やがてアッツァーノで捕えられ、最後にはアルプスを走る列車から渓谷へと落下する。

セバスチャン・スタンの本作での演技は、後の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)で再登場する「冬季工作員ウィンター・ソルジャー」と直接対比される、人間としてのバッキーの記録になっている。本作のバッキーは礼儀正しく、機知に富み、女性には紳士的に接する。戦友として信頼に足る男であることが、画面ににじみ出ている。

本作の終盤、列車から落下するバッキーの表情は、シリーズ全体を通じて最も多く引用される場面である。氷の渓谷に落ちた彼の身体はハイドラに拾われ、やがて自らの意思を奪われたまま冬季工作員として再起動される。その地獄の二十二の独房が描かれるのは、本作の段階ではまだ先のこと。だが、すべてはここから伸びていく。

ジェームズ・“バッキー”・バーンズ

アブラハム・エルスキン博士

亡命してきたドイツ人科学者であり、リバース計画の主任研究者。スタンリー・トゥッチの抑制された演技が、本作の倫理の中心軸を担う。彼はかつてドイツ時代、ヨハン・シュミットに血清を強制的に使われた罪を背負っている。その苦い経験から、計画には「強い者ではなく、善い者を選ぶ」という条件を組み込んだ。

手術前夜、宿舎で交わされる短い会話——「強い者は、自分の力をしばしば失ってしまう。だが善い者は、それを大切にする」——は、シリーズ全体の倫理の引用元として、後の作品でも繰り返し参照されることになる。彼は手術の直後、ハイドラ工作員の銃弾に倒れる。そのため彼の倫理は計画書ではなく、スティーブ・ロジャースという一個人の肉体の内側だけに残された。

エルスキンが息絶える瞬間、スティーブの胸を指差したその所作は、本作の主題そのもの——「お前自身が血清である」——をたった一動作で言い切ってみせる。シリーズ屈指の名演出だ。

アブラハム・エルスキン博士

ヨハン・シュミット/レッド・スカル

ハイドラ総帥にして本作の悪役。エージェント・スミス(『マトリックス』)、エルロンド(『ロード・オブ・ザ・リング』)で知られるオーストラリア系イギリス人俳優ヒューゴ・ウィーヴィングが、ドイツ語訛りの英語で重厚な独裁者像を作り上げた。

シュミットは、ナチスの上層部すら超えて「神々の道具を手にする一個人」たらんとする野心家として描かれる。ヒトラーを「軍服を着た占い師」と呼んで嘲り、ニュルンベルクの式典を一笑に付す。ナチスの上に立とうとしたこの独立性こそ、後年シリーズ内で「ハイドラはナチスではない」と区別される論拠の起源となった。

彼の真の敗北は、北極の海ではなくアルプスの操縦席で訪れる。自らの手で四次元キューブに触れた、その瞬間だ。神の道具を兵器に変えようとして、逆に神の道具に飲み込まれる——本作最大の皮肉である。後の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、姿を消した彼が惑星ヴォーミアの「ソウル・ストーンの番人」として生き延びていたことが明かされる。

ヨハン・シュミット/レッド・スカル

ハワード・スターク

若き発明家にして、後のスターク・インダストリーズ創業者。トニー・スタークの父である。本作で描かれるハワードは、口元に細い髭をたくわえ、磁力で浮上する自家用車のデモンストレーションで観客を沸かせる、ハワード・ヒューズの面影を宿したプレイボーイの天才だ。

スティーブの肉体改造計画ではヴィタ線照射装置を設計し、戦闘服のデザインも手がける。さらにヴィブラニウム製の円盤を盾として与え、終盤ではペギーとともに偵察機を操縦する。本作の彼こそ、のちに『アイアンマン2』『アベンジャーズ/エンドゲーム』で描かれる「ハワード・スターク」像のすべての出発点であり、息子トニーへと連なる父系の最初の肖像である。

本作の終盤、彼はスティーブと盾、そして機体の残骸を求めて北極を捜索し、生涯をその探索に費やすことになる。彼が見つけられなかった氷塊を、息子の世代のSHIELDが2011年の冒頭で掘り当てる——このシリーズをまたぐ縦軸が、本作の冒頭と末尾を内側で結びつけている。

ハワード・スターク

チェスター・フィリップス大佐

米陸軍の辛口な指揮官にして、戦略科学予備軍(SSR)の実務を取り仕切る人物。トミー・リー・ジョーンズ特有の渋面と切れ味鋭い皮肉が、本作のSSR周辺の空気を形づくっている。フィリップスは当初、スティーブのような小柄な志願兵を「軍には不要な体格」と一蹴する。だが手榴弾の実験を機に、彼が選び抜こうとする相手は別の兵士からスティーブへと移っていく。

キャラクターとしては典型的な「皮肉屋の軍人」だが、判断の核ではスティーブの行動を一貫して信頼している。アッツァーノでの単独救出のあと、「Faith is frowned upon as a military attribute, son.(信頼は軍人の徳目には数えられない、まあ気にするな)」と告げる場面は、彼が本作の倫理を物資の面から支える人物であることを言外に物語る。

本作のあと、フィリップスはハワードとともにS.H.I.E.L.D.の前身組織を内側から立ち上げる役回りを担う。その姿は、のちのドラマ『エージェント・カーター』で描かれることになる。

チェスター・フィリップス大佐

舞台と用語

舞台となるのは1942-1945年、第二次世界大戦下の欧米だ。ブルックリンの裏路地、ニューヨーク万博、ニュージャージーの訓練基地、ノルウェーの古い教会堂、イタリア戦線、アルプスの山岳、北極の氷盤——物語はこれらの地を渡り歩き、やがて2011年のタイムズスクエアへとたどり着く。鍵を握る用語は、「スーパー・ソルジャー血清」「四次元キューブ」「ヴィブラニウム」「ハイドラ」「SSR」の五つに整理できる。

スーパー・ソルジャー血清は、エルスキン博士が開発した一度きりの処方であり、本作で実際に投与されたのはスティーブ・ロジャースただ一人である。投与の同じ夜にエルスキン本人と試料がともに失われ、量産の道は断たれた。後年のシリーズでは、この一本の処方を再現しようとする試みが、『インクレディブル・ハルク』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ブレイブ・ニュー・ワールド』など、数多くの作品の起点となっていく。

四次元キューブ(テッセラクト)は、本作で初めてスクリーンに現れるMCU最古層のアイテムであり、北欧の伝承ではオーディンの宝物殿に由来する。後の作品では、これが「スペース・ストーン」と呼ばれる6個の無限の宝石、その一つを収める器であることが明かされる。ハイドラの兵器に始まり、SHIELDのエネルギー研究、ロキの侵略、ヴォーミアの番人問題、そして最終的に『エンドゲーム』の時間泥棒へと、長きにわたって物語を貫いていく。

ヴィブラニウムは、キャプテン・アメリカの盾の材料として本作で初めて描かれる架空の金属である。後の『ブラックパンサー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『ワカンダ・フォーエヴァー』へと連なる「ヴィブラニウム神話」も、その出発点は本作のハワード・スタークの机の隅にある。

ハイドラは、ナチス・ドイツの科学部局から独立したテロ組織であり、本作の悪の中心に据えられている。後の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)では、ハイドラが戦後70年にわたってSHIELDの内部に潜伏していた事実が明かされ、シリーズ全体を貫く長期的な悪役構造がここで完成する。SSRは戦略科学予備隊の略称で、本作の終盤からドラマ『エージェント・カーター』を経て、SHIELDの直接の前身として確立されていく。

舞台と用語

23制作

本作の制作は、翌2012年の『アベンジャーズ』集合篇へ向かう最後のピースとして、シリーズの古層を一気に整える役割を担った。マーベル・スタジオはケヴィン・ファイギの判断のもと、現代を舞台にする道をあえて捨て、第二次世界大戦に至る前史を真正面から描く方針を選んだ。監督に迎えたのは、『ロケッティア』『ジュマンジ』のジョー・ジョンストンである。

制作

企画と脚本

マーベル・スタジオは2005年前後から『キャプテン・アメリカ』単独作の企画を温めていた。本格的に動き出すのは、2008年の『アイアンマン』が成功を収めてからである。ケヴィン・ファイギが主導し、開発は一気に加速した。脚本を託されたのは、『ナルニア国物語』シリーズで知られるクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーの二人組。本作がマーベル・スタジオへの初参戦となり、以降は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』へと、シリーズの中心を担う脚本陣となっていく。

脚本上の最大の決断は、物語の九割を1942年から1945年に置き、現代パートを冒頭の北極での発掘と終盤のタイムズスクエアだけに絞り込んだことだ。原作コミックの『キャプテン・アメリカ』は、戦後の現代アメリカを舞台にする時間が長い。だが映画版は「氷の中から70年ぶりに目覚めるヒーロー」というMCU全体の設計に従い、まずは戦時下の前史をきちんと描き切る道を選んだ。

脚本陣はインタビューで、本作の精神的な参照軸を明かしている。スティーヴン・スピルバーグ『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、ジョー・ジョンストン自身の『ロケッティア』、そして1940年代のフランク・キャプラ的な「小さき市民の活劇」だ。スティーブを最後まで「やせた青年の眼差しを保ったまま、体だけが大きくなった人物」として描き続けた構成にも、その意識がはっきりと表れている。

キャスティング

スティーブ・ロジャース役の最終決定は2010年3月のことだ。クリス・エヴァンスは当初オファーを三度断っており、最終的に短期契約での出演を条件に承諾した。エヴァンスはすでに『ファンタスティック・フォー』(2005/2007)でジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチを演じており、別のマーベル・ヒーローを引き受けることにはためらいがあったという。決断の後押しとなったのは、ロバート・ダウニー・Jr.による私的な説得だったと、後に本人が語っている。

ペギー・カーター役には、ケヴィン・コスナーの娘のサウンダーズをはじめ、数名の英国系若手女優が最終候補に残っていた。そのなかから2010年4月にヘイリー・アトウェルが選ばれている。ジェームズ・“バッキー”・バーンズ役は同年3月にセバスチャン・スタンの起用が発表された。スタンはこのとき、『ウィンター・ソルジャー』で再起動される役回りまでを含む長期契約を結んでいる。

レッド・スカル役のヒューゴ・ウィーヴィングが発表されたのは2010年6月。スタンリー・トゥッチ、トミー・リー・ジョーンズ、トビー・ジョーンズ、ドミニク・クーパー、ニール・マクドノー、デレク・ルーク、ケニス・チョイ、リチャード・アーミティジといった脇役陣も、2010年4月から6月にかけて順次決まっていった。サミュエル・L・ジャクソンはニック・フューリー役として、本作の最終盤に登場する短い出番のみ、既存の長期契約の一環で参加している。

撮影とロケ地

主要撮影は2010年6月28日、英国のシェパートン・スタジオで始まり、同年11月12日にクランクアップした。ロケ地は英国のロンドン、マンチェスター、リヴァプール、ウェールズ、さらに米ロサンゼルスにまたがる。1942年のニューヨーク・ブルックリンは、マンチェスター北西部の街路に大がかりな美術を施して再現した。リヴァプールのスタンレー・ドック地区は、ノルウェーのテンスベリ港に見立てて撮影された。

アルプスのハイドラ要塞地下基地と装甲列車の戦闘場面は、シェパートン・スタジオに組んだ巨大セットで撮影し、切り立ったアルプスの絶壁はミニチュアとマット・ペインティングを組み合わせて作り上げた。北極の氷盤と海域は、英国スタジオでのブルー・スクリーン撮影に大量のCG合成を重ねて表現している。

美術監督リック・ハインリックスは、本作の世界観を「コミックの色彩を現実に持ち込んだレトロな第二次大戦」と要約する。衣装デザイナーのアンナ・B・シェパードは、キャプテン・アメリカの戦闘服を原作の星条旗を思わせる派手な原色から離し、軍服に近い深い青と茶のトーンへと落とし込んだ最終案で確定させた。アッツァーノでの単独救出の場面に登場するハイドラ兵の動力スーツは、コミックのHYDRA歩兵の意匠を受け継ぎつつ、第二次大戦の実機兵装の質感に寄せて作り直されている。

視覚効果

視覚効果は、Industrial Light & Magic(ILM)、Lola VFX、Whiskytree、Double Negativeをはじめ多数のスタジオが分担した。中心となったのは、クリス・エヴァンスを「やせ細った前半のスティーブ・ロジャース」に作り替えるボディ・リダクション処理で、これをLola VFXが手がけた。従来型の「顔置換」、すなわちエヴァンスの顔に小柄な別の俳優の身体を合成する手法ではない。エヴァンスの実写映像から頭部以外の領域を取り出し、骨格の幅や筋肉の厚みをフレーム単位で縮めていくCGリタッチである。

前半のおよそ40分、観客が目にするブルックリンのスティーブは、すべてこの処理を施したフレームだ。本作はMCUにおける「肉体改変VFX」の歴史的な到達点の一つであり、のちの『アントマン』『シビル・ウォー』『エンドゲーム』で用いられるディエイジングの先駆けとなった。

四次元キューブの青い光、ヴァルキリーの離陸、シュミットの肉体が宇宙へ吸い上げられて消えていく場面、北極の氷盤への墜落、そしてハイドラ要塞の地下基地の爆発——これらはすべてILMとDouble Negativeが分担した。終盤、北極を捉えたロング・ショットには、ジョー・ジョンストン自身の監督作『ロケッティア』のラスト・シーンへのレトロな敬意が、画面構成として滑り込んでいる。

視覚効果

音楽と音響

音楽を手がけたのはアラン・シルヴェストリ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ』『プレデター』など、20世紀末ハリウッドの王道ヒーロー映画と情感豊かなドラマの双方を支えてきた作曲家である。本作のスコアは、あえてレトロな金管中心のヒロイックな主題で組み立てられた。スティーブのテーマは、低い弦から立ち上がる金管の四音の動機からなる。シルヴェストリはこの主題の一部を引き継ぎ、翌2012年公開の『アベンジャーズ』のメイン・テーマの土台としても用いた。

劇中歌「Star Spangled Man(With a Plan)」は、アラン・メンケンが作曲、デヴィッド・ジッペルが作詞を手がけたオリジナル楽曲で、USOショーの場面で踊り子や合唱とともに披露される。1940年代のレヴュー・ナンバーを完全な新曲として一から再現するという贅沢な試みであり、本作のレトロな空気感を支える中心的な仕掛けとなった。メンケンはディズニー・アニメ『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』を手がけた作曲家で、その起用はマーベル・スタジオ作品としては異例といえる。

音響デザインでは、仮面の下からのぞくレッド・スカルの素顔の発声、四次元キューブの低くうねる響き、ヴァルキリーの六基の巨大エンジン音、北極の風雪が、レトロな質感と現代的な低音域の重みを両立させる形で作り込まれている。

編集とポストプロダクション

編集はジェフリー・フォードとロバート・ダルヴァ。フォードはマーベル・スタジオ作品として本作が初参加。以降『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』とシリーズ屈指の編集者として中枢を担っていく。

本作の編集における最大の判断は、USOショーのモンタージュとアッツァーノ単独救出のあいだに、観客の感情をどう滑り込ませるかだ。ショーで野次を浴びるスティーブの孤立感、舞台袖でペギーの言葉を受け取る短いカット、その直後に敵地深くへ飛ぶ偵察機の場面を切り返す。フォードは、スティーブの決断を一秒も説明せず、肉体だけで観客に分からせる構成を選んだ。

終盤、北極墜落のシーンとタイムズスクエア覚醒のシーンは、ごく短いブラックアウトだけで繋がれている。70年の歳月を秒単位で跨ぐこの切り替えが、本作のMCU全体への伏線回収を一手に担う。編集が冴えわたる名場面だ。

30公開と興行

全米公開は2011年7月22日、日本公開は2011年10月14日。北米初週末の興行収入は約6512万ドル、最終的な北米興収は約1億7670万ドル、海外興収は約1億9390万ドル、全世界興収は約3億7060万ドルを記録した。製作費約1億4000万ドルと照らせば、シリーズの中堅クラスといえる黒字だ。興行面ではフェーズ1で先行した『アイアンマン』『マイティ・ソー』ほどの突出はないものの、翌2012年の集合篇『アベンジャーズ』へ橋渡しするには十分な数字を残した。

批評面では、ロッテン・トマトの批評家支持率は約80%、メタスコアは66点、CinemaScoreはA−と高い評価を得た。批評家はジョー・ジョンストンが第二次世界大戦のパルプ感を全力で再現した王道の前日譚として本作を歓迎し、クリス・エヴァンスの演技、ヒューゴ・ウィーヴィング演じるレッド・スカル、ヘイリー・アトウェルのペギー・カーター、そしてアラン・シルヴェストリの音楽を繰り返し称賛した。

日本公開にあたっては、当初『キャプテン・アメリカ』という題名が国内市場に馴染まないと判断され、副題を前面に押し出した『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』として展開された。ポスターでも「Marvel Studios」の社名と「ザ・ファースト・アベンジャー」の文字が大きく扱われている。

公開と興行

31批評・評価・文化的影響

本作の文化的な影響は、シリーズの内部に色濃く残った。まず注目すべきは、MCUフェーズ1を締めくくる単独作として、翌2012年の集合篇『アベンジャーズ』へと至る前史を完成させた点である。氷の眠りから目覚めたスティーブ・ロジャースが2011年のニューヨークに立ち尽くす――そのラストショットは、そのまま翌作のアベンジャーズ初顔合わせへと接続し、シリーズ最大の伏線回収の出発点となった。

第二に、本作は「やせ細った青年がスーパー・ソルジャーへと変貌する」というコミックの神話を、現代の映画技術と現代的な感情の機微で語り直し、シリーズの倫理的な基準点となった。エルスキン博士が口にする「強い者ではなく、善い者を選ぶ」という条件は、のちの『シビル・ウォー』『エンドゲーム』『ブレイブ・ニュー・ワールド』に至るまで、シリーズが描くキャプテン・アメリカ像の正典として、繰り返し参照されていく。

第三に、四次元キューブ/テッセラクトの初登場、ヴィブラニウムの初登場、ハワード・スタークの本格的な映像化、ハイドラの起源、そしてSSRからSHIELDへと続く組織の連続性――MCUの最も古い地層をなす「神話的なアイテムと組織の出発点」が、本作で一気に画面へ出そろった。これらの装置はやがて『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』『ウィンター・ソルジャー』『エイジ・オブ・ウルトロン』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』へと受け継がれ、長くその効力を保ち続ける。

第四に、本作はその後に枝分かれしていくスピンオフの系譜――『マーベル・ワンショット:エージェント・カーター』(2013)、ABCドラマ『エージェント・カーター』(2015-2016)、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021)、『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』(2025)――そのすべての起点として、シリーズ全体に長い尾を引いている。

批評・評価・文化的影響

舞台裏とトリビア

クリス・エヴァンスは三度のオファーを断ったうえで、最終的に本作への出演を受諾した。説得には、当時すでにトニー・スタークを演じていたロバート・ダウニー・Jr.が私的に関わったと伝えられる。本作を機にエヴァンスは契約上「キャプテン・アメリカ」役で6本のMCU出演を約束し、そのほとんどを2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』までに演じきった。

前半に登場するやせ細ったスティーブ・ロジャースは、Lola VFXによる「ボディ・リダクション」処理の産物である。クリス・エヴァンス自身の頭部と、レアンダー・デニーら小柄な俳優の身体を組み合わせて作り上げた。シーンごとに複数の俳優を組み合わせる案が試され、最終的にはエヴァンスの頭部とデニーの身体を中心に据える方式へ落ち着いた。

USOショーで披露されるナンバー「Star Spangled Man」は、アラン・メンケンとデヴィッド・ジッペルが手がけた完全な書き下ろしである。1940年代のレヴュー・ナンバーを忠実によみがえらせる贅沢な試みであり、本作のレトロな味わいを支える中心装置となっている。

ハワリング・コマンドーズの編成は、米軍、英軍、フランス・レジスタンス、日系米軍を含む多国籍の小隊で、コミック原作の顔ぶれをほぼそのまま受け継いでいる。1941年のキャプテン・アメリカ・コミックスの時点で多国籍編成を採っていたことは、当時の米国コミックとしては先進的だった。ジム・モリタ(ケニス・チョイ)が演じる日系米軍兵は、のちの第442連隊戦闘団の歴史へとつながる寓意としても評価が高い。

レッド・スカルの素顔の特殊メイクは、ヒューゴ・ウィーヴィングの顔に半面のシリコン製パーツを乗せ、残りをCGで補う複合方式で作られた。完成した素顔は、ウィーヴィングの実演技にLola VFXのフェイシャル・トラッキングを重ね合わせた成果である。

ハワード・スターク役のドミニク・クーパーは、のちの『マーベル・ワンショット:エージェント・カーター』(2013)やドラマ『エージェント・カーター』(2015-2016)でも同役を続投し、若き日のハワードを長く演じ続けた。

ポスト・クレジット・シーンとして流れた『アベンジャーズ』の正式予告編は、本作の北米公開と同じ2011年7月22日にYouTube上でも公開された。来たるシリーズ集合篇への期待を一気に高める役割を果たしたのである。

本作の公開時の配給はパラマウント・ピクチャーズだった。これは2005年から2008年にかけて結ばれたマーベル・スタジオとパラマウントの旧配給契約の名残である。2013年以降のシリーズはウォルト・ディズニー・スタジオが配給を引き継いだため、本作と『アイアンマン』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』『インクレディブル・ハルク』といった初期作のパッケージ表記は、版によってロゴが異なることで知られている。

33テーマと解釈

本作が貫く中心の主題は「力の前にある人格」である。冒頭の三十分でエルスキン博士がくり返す「中にあるものを増幅するだけだ。良い人は良くなり、悪い人は悪くなる」という言葉は、スーパーヒーロー映画の倫理を、肉体ではなく内面の側へ決定的に置き直すものだ。スティーブ・ロジャースは、強くなった瞬間にキャプテン・アメリカになったのではない。強くなる前から、彼はすでに弱い者の味方に立つ人格を備えていた。本作はそれを四度の徴兵拒否で丁寧に確かめたうえで、彼に肉体を与え、世界へ解き放っていく。

もう一つの軸は「制度と個人」である。スティーブは米軍に四度拒まれ、エルスキン個人に拾われ、USOショーでは国家のプロパガンダの顔として消費され、最後はフィリップス大佐の許可を得ぬまま独断でアッツァーノへ向かう。彼の英雄譚は、国家機構の内側で完結したのではない。むしろ機構の外側へ一度はみ出した瞬間に完結したのだ。この軸は、後の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)や『シビル・ウォー』(2016)の中心軸——制度の腐敗と協定への拒否——へとそのまま受け継がれていく。

三つ目の軸は「神々の道具と人の手」である。レッド・スカルが四次元キューブを奪い、そのエネルギーを兵器化しようとした挙げ句、最後はキューブ自身に吸い上げられて消える。この展開こそ本作最大の皮肉だ。神の道具を私物化しようとした者が、神の道具に飲み込まれる。この主題は、後年の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のサノス論にまで、長く尾を引いていく。

視覚面では、本作は1940年代を「セピア+赤+青」の三色で組み立て、それを意図的に過剰なほど押し出している。現代パートにあたる2011年タイムズスクエアの極彩色と対比させることで、70年という時間の長さを一目で観客に伝えるのだ。最後のタイムズスクエアのショットでは、星条旗の盾を抱えたスティーブの顔だけが、一人取り残されている。本作の幕切れの意味は、その一枚に集約されているといってよい。

テーマと解釈

視聴順ガイド

本作はMCUフェーズ1の第5作であり、翌年に控えた『アベンジャーズ』集結篇への最後の橋渡しとなる一本だ。初めて触れるなら、まずは公開順がおすすめだ。『アイアンマン』(2008)、『インクレディブル・ハルク』(2008)、『アイアンマン2』(2010)、『マイティ・ソー』(2011)と追い、その先に本作を置きたい。フェーズ1に散らばった小さなピースが順に組み上がっていく、その最終段にあたる。四次元キューブとハイドラの古い因縁を過去から拾い直す、いわば土台づくりの役割を本作は担っている。

時系列順で楽しみたいなら、本編の舞台となる1942年から1945年が最も古い。続くのが『キャプテン・マーベル』(1995年)、さらに『アイアンマン』(2010年)だ。終盤に描かれる2011年のタイムズスクエアの場面は、ちょうど『マイティ・ソー』(2011年)と同じ現代の時間軸にあたる。両作の出来事は同じ年のものとして、きれいに噛み合う。

本作のすぐ後に観るべきは『アベンジャーズ』(2012)だ。さらに『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』(2016)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)と続ければ、スティーブ・ロジャースの長い物語を一気に追える。「キャップ三部作」として味わいたいなら、『ザ・ファースト・アベンジャー』『ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』の順で観るのが基本だ。

視聴順ガイド

35よくある質問

「あらすじだけ知りたい」という人は、おおよそ次の流れを押さえておけばいい。1942年、テンスベリで四次元キューブが奪われる。舞台はブルックリンに移り、小柄なスティーブが四度にわたり徴兵を拒否される。だがエルスキン博士のリバース計画に選ばれ、キャプテン・アメリカへと変身する。やがてエルスキンが暗殺され、計画は一回限りのものとなる。スティーブはUSOショーの宣伝キャラクターとして消費される日々を送るが、アッツァーノで400名を単独救出し、ここで本物のキャプテンとなる。さらにハワリング・コマンドーズを結成して欧州で遊撃戦を展開。アルプスを走る列車でバッキーが転落し、レッド・スカルとの最終決戦ではヴァルキリーを北極へ墜落させる。そして2011年、氷の中から目覚め、タイムズスクエアでフューリーと出会う。ここまで追えれば十分だ。

「結末・ネタバレを知りたい」人にとって核となるのは、次の点だ。レッド・スカルことヨハン・シュミットが四次元キューブに素手で触れ、宇宙へと吸い上げられて姿を消す(後年のシリーズで、ヴォーミアの番人として生存していたことが判明する)。キューブ本体は太平洋へ落下する(これが後の『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』へと繋がっていく)。スティーブはヴァルキリーを北極へ墜落させ、70年間を氷漬けのまま過ごす。2011年、SHIELDが彼を発掘し、タイムズスクエアで目覚めさせる。そしてポスト・クレジットでは『アベンジャーズ』の正式予告編が流れる。

「評価を知りたい」場合は、批評家支持率約80%、全世界興行収入約3億7060万ドルと整理できる。フェーズ1の最後を飾る単独作として、翌年の『アベンジャーズ』の前提を完成させた重要な一本である。「見る順番」で言えば、『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』『アイアンマン2』『マイティ・ソー』を観てから本作へ進み、続いて『アベンジャーズ』『ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー』『エンドゲーム』へと向かうのが、最もスムーズな視聴順となる。

36参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行成績、配信状況、外部からの評価は今後変動する可能性があるため、視聴前に公式サイトや各データベースの最新情報を確認されたい。なお本記事の本文は、各種の公開情報をもとに、Anna Movies独自の日本語記事として構成したものである。

参考資料・出典 (5件)
  1. Marvel公式 キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
  2. IMDb: Captain America: The First Avenger (2011)
  3. Marvel Cinematic Universe Wiki: Captain America: The First Avenger
  4. Box Office Mojo: Captain America: The First Avenger (2011)
  5. Rotten Tomatoes: Captain America: The First Avenger