百科事典記事
新世紀エヴァンゲリオン コミックトリビュート
『新世紀エヴァンゲリオン コミックトリビュート』は、GAINAXとカラーを原作、ヤングエース編集部を編者として2010年4月1日に刊行された公式アンソロジーコミックです。KADOKAWAの紹介では、トニーたけざき、大和田秀樹、高河ゆん、吉崎観音をはじめとする漫画家20名が参加し、ギャグとストーリーの両方でエヴァンゲリオンへ挑んだ一冊とされています。B6変形判162頁、ISBN 978-4-04-715419-3。貞本義行漫画版の続巻でも、一人の作者による連続作品でもありません。作家ごとに人物の捉え方、原典からの距離、笑いの作り方が切り替わることを前提に、書誌、参加者、公式試し読み、2004年のアンソロジーとの違い、英語版、正史との境界を整理します。
ネタバレ:収録作の形式と、公式試し読みで公開されているミサト、シンジ、ペンペンの短編の流れに触れます。単行本全編の落ちや未公開部分は詳述しません。






20人が一つの答えを出す本ではない
本書は、20人の作家が一つの長編を分担した合作ではありません。各作家がエヴァンゲリオンの人物、機体、場面、語り口から自分の題材を選び、短い作品として提示するアンソロジーです。同じシンジを扱っても、内面の重さを引き継ぐ作品と、日常の気まずさを誇張して笑いへ変える作品では、人物の見え方が変わります。
題名にある「トリビュート」は、設定を一つに統合する続編という意味ではありません。既存作品へ応答する寄稿を集めた編集本であり、作家ごとの差を消さずに並べます。原典と同じ出来事が起きるかどうかだけを見るより、各作家が何をエヴァらしい要素として選んだかを比較すると、本書の構造が分かります。
- 2010年4月1日発売の全一冊です。
- GAINAXとカラーが原作、ヤングエース編集部が編者です。
- KADOKAWAは参加者を漫画家20名と案内しています。
- ISBNは978-4-04-715419-3、本文は162頁です。
発売日、判型、頁数を公式書誌で固定する
KADOKAWAの商品ページと公式オンラインショップは、発売日を2010年4月1日、判型をB6変形判、総頁数を162、ISBNを9784047154193と記録します。商品寸法は横127ミリ、縦180ミリ、束幅11ミリです。レーベルは角川コミックス・エースで、シリーズ物の第1巻ではなく、一冊で完結するコミックスとして刊行されました。
商品ページの原作者欄にはGAINAXとカラー、編者欄にはヤングエース編集部が並びます。参加漫画家のうち一人だけを本書全体の著者として扱う書誌ではありません。原作権利者、編集者、個々の寄稿者を分けることが、アンソロジーの制作体制を正確に表します。
「コミックトリビュート」という題名の読み方
「コミック」は収録の中心が漫画であることを示し、「トリビュート」は複数の作家が原典へ応答する編集方針を示します。2004年の『エヴァ&エヴァ2アンソロジー』が漫画、イラスト、エッセイを混在させたのに対し、2010年の本書はKADOKAWAが「ギャグ&ストーリー」と説明する漫画作品を前面へ出しています。
英語版の正式題名も『Neon Genesis Evangelion: Comic Tribute』です。単なる便宜的な英訳ではなく、Dark Horse Comicsが同名で公式刊行しています。日本語題名と英語題名を対応させれば、海外版だけを別作品と数える誤りを避けられます。
公式情報から参加者の幅を読む
KADOKAWAは、トニーたけざき、大和田秀樹、高河ゆん、吉崎観音を代表的な参加者として挙げ、全体を20名と案内します。ここで重要なのは、四人だけの合同本ではないことです。商品紹介は知名度の高い名前を入口にしつつ、多数の作家が異なる短編を持ち寄る本だと明示しています。
Dark Horse Comicsの英語版公式ページは、吉崎観音、大和田秀樹、高河ゆん、唐沢なをき、さんりようこ、田中圭一、高遠るい、ASTROGUYII、山田孝太郎、竹村雪秀、阿部潤、トニーたけざき、六道神士を作家として掲げます。これは英語圏の読者へ本の多様性を説明する名簿であり、KADOKAWAが示す20名という総数と競合するものではありません。公式ページが全員を同じ順序で列挙するとは限らないため、掲載名と総数を別々の情報として扱います。
画風も得意な調子も異なる作家が並ぶため、絵柄の変化は作画の不統一ではありません。ある短編の線や人物造形を隣の短編へ求めるのではなく、題名、扉、区切りを手掛かりに作者単位で読む必要があります。アンソロジーでは、切り替わりそのものが編集上の設計です。
表紙の初号機は深刻さを崩している
日本語版と英語版の表紙は、頭身を下げた初号機を中心に置きます。背景には非常表示を思わせる赤い六角形が並びますが、初号機は緊迫した戦闘姿勢ではなく、手に持った物と大きく開いた口によって滑稽な動作を見せます。原典の警告色と機体意匠を残しながら、身体の比率と小道具で調子を変えています。
この表紙は、内容を一つの事件へ要約した場面ではありません。本書が原典の象徴を保ったまま、別の文脈へ移すアンソロジーであることを示す看板です。英語版では題字と編集・原作表記が英語へ置き換わりますが、中央の初号機図像は共通しており、同じ本の別言語版だと視覚的にも確認できます。
公式試し読みで実際の短編形式を確認する
Dark Horse Comicsは英語版の商品ページで、49頁から52頁までの4頁を公式試し読みとして公開しています。短編題名は「A Man's Tassel」。ミサト、シンジ、ペンペンが食卓を挟む場面から始まり、小さな誤解と物の奪い合いを連続させ、最後の一コマで騒動を閉じます。単行本の外観だけでなく、実際のコマ割りと人物の使い方を確認できる資料です。
4頁は一つの短編として連続しているため、同じ画像を水増ししたものではありません。49頁は状況提示、50頁は対立の拡大、51頁はペンペンを巻き込む混乱、52頁は三者へ落ちを返す終幕です。ページごとの役割を追うと、短い尺の中で導入、加速、頂点、落ちを作るアンソロジー漫画の技術が見えます。
ミサトの部屋が戦場ではない騒動を生む
試し読みの舞台は発令所でも使徒戦でもなく、ミサトとシンジが暮らす部屋です。食卓、飲み物、小瓶という日用品を置き、二人の距離の近さと気まずさを笑いの材料にします。葛城ミサトは作戦指揮官としてではなく、勢いでシンジを巻き込む同居人として動き、シンジは状況に押されながら抵抗します。
TV作品にも、戦闘の外でミサト、シンジ、ペンペンが生活を共有する場面があります。短編はその関係を借りつつ、本編で起きた出来事を補完するのではなく、日用品から別の騒動を作ります。人物の基本的な配置を認識の足場にし、出来事は独立したギャグへ置き換える方法です。
反復と大きな表情が4頁の速度を作る
試し読みでは、小瓶へ手を伸ばす動作、ミサトとシンジの押し引き、背景の反復文字が、静かな食卓を急速に騒がしくします。状況説明を長い文章へ預けず、手の動きと表情の変化を重ねることで、読者は二人の力関係を一目で追えます。
ペンペンは傍観者として画面の端にいるだけではありません。人間二人の騒動へ動物ならではの反応を返し、最後には落ちを引き受けます。原典で確立された同居人三者の配置を知っていれば笑いは速く届きますが、試し読みだけでも誰が騒動を起こし、誰が巻き込まれたかは読める構成です。
公式説明の「ギャグ&ストーリー」を狭くしない
KADOKAWAは本書を「ギャグ&ストーリー」と説明します。これは全作品が同じ四コマ形式だという意味でも、全作品が一つの筋へつながるという意味でもありません。笑いを主軸にした短編と、人物や状況を別の角度から組み立てる物語作品を、一冊の中で切り替えて読むことを示します。
公式試し読みはギャグ側の具体例です。ただし、公開4頁だけを根拠に全162頁を同じ調子だと断定することはできません。表紙と試し読みは本の入口を示し、公式紹介の「ストーリー」は収録範囲がそれより広いことを示します。見える頁と商品全体の説明を区別して扱う必要があります。
ヤングエース編集部が一冊へ束ねる
編者はヤングエース編集部です。個々の漫画家が原典へ応答するだけでなく、編集部が寄稿を選び、順序を組み、単行本として一つの入口を与えます。参加者の画風を均一にするのではなく、変化が読みづらくならないよう作品単位の区切りを作ることが、編集本では重要です。
2010年4月という刊行時期は、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』公開後に当たりますが、本書を新劇場版だけの外伝と決める根拠にはなりません。題名は『新世紀エヴァンゲリオン』を掲げ、公式説明もエヴァ全体への挑戦として案内します。刊行時期と作品系列を混同せず、各短編が参照する要素を個別に読むべきです。
2004年の『エヴァ&エヴァ2アンソロジー』とは別の本
『エヴァ&エヴァ2アンソロジー』は2004年4月27日発売、少年エース編集部編、172頁、ISBN 978-4-04-713623-6です。漫画だけでなくイラストとエッセイを含み、題名にゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』を明記します。
本書は2010年4月1日発売、ヤングエース編集部編、162頁、ISBN 978-4-04-715419-3で、漫画家20名によるギャグとストーリーを前面へ出します。どちらも複数作家の公式編集本ですが、発売年、編者、頁数、ISBN、収録形式が異なります。中古書店で「エヴァ アンソロジー」とだけ表示されている場合は、表紙とISBNを確認すれば取り違えを防げます。
トニーたけざきの寄稿と後の単著を分ける
参加者の一人であるトニーたけざきは、後に『トニーたけざきのエヴァンゲリオン』という単著を刊行しました。Dark Horse Comicsも、その英語版紹介で『Comic Tribute』への参加を前歴として挙げています。二冊をつなぐのは作家とパロディ表現ですが、書誌上は別作品です。
本書の中の寄稿だけを読む場合、20人の一人として全体の流れに置かれます。単著では一人の作家の手法をまとまった頁数で追えます。同じ作者の作品が含まれていても、本書全体をトニーたけざきの単行本と呼んだり、後の単著を本書の第2巻と数えたりしてはいけません。
英語版は2013年刊、168頁
Dark Horse Comicsは英語版を2013年2月20日に刊行しました。公式書誌はモノクロ168頁、判型5と8分の1インチ×7と4分の1インチ、ISBN 978-1-61655-114-8と記録します。日本語版の162頁とは頁数が異なるため、頁番号を使って作品を指す場合は、どちらの版かを併記する必要があります。
頁数差だけから、漫画の追加や削除を推測することはできません。奥付、扉、広告、翻訳用の組版など、版ごとの構成要素が頁数へ影響し得ます。本記事では公式書誌が示す数値を記録し、内容差は公式試し読みで確認できる範囲に限定します。英語版の4頁試し読みは49頁から52頁で、日本語版と同じ頁番号になるとは限りません。
二つの表紙は中央の初号機図像を共有しますが、題字とクレジット表記は各言語向けに組み直されています。英語版表紙には、ヤングエース編集部が編集し、カラーとGAINAXが原作であることが英語で示されます。装丁を見るだけでも、海外で無許諾に作られた同人誌ではなく、正式に展開された翻訳版であることを確認できます。
公式アンソロジーでも本編正史ではない
GAINAXとカラーが原作表記に並ぶ公式刊行物であることと、全短編の出来事がTV作品の正史へ追加されることは同義ではありません。アンソロジー作家は人物関係や視覚記号を借り、誇張、置換、省略によって独自の短編を作ります。試し読みの食卓騒動を、TV本編の画面外で実際に起きた事件として年表へ足すことはできません。
また、20作品前後の解釈を一つの連続世界へ統合する必要もありません。作家が変われば、人物の調子や前提も変わり得ます。作品系列比較では、本書を漫画派生作品のアンソロジーとして扱い、TV版、貞本義行漫画版、新劇場版の出来事とは別の層に置きます。
短編の境界を意識して読む
最初から順に読むと、編集部が組んだ調子の変化を味わえます。参加作家から選んで読む場合は、扉と目次で作者を確かめ、隣の短編へ設定を持ち越さないことが重要です。ギャグ作品の誇張を次の物語作品の事実として読むと、人物像が不必要に混線します。
原典との関係を見るときは、どの人物や場面を残したか、何を日常へ移したか、どこで絵柄や台詞の速度を変えたかを観察します。公式試し読みの4頁なら、ミサト、シンジ、ペンペンという既知の同居関係を残し、使徒戦を使わずに小さな騒動を作る点が核です。原典の再現度だけではなく、変形の方法を読む本です。
日本語版と英語版を見分ける
日本語版は角川コミックス・エース、2010年4月1日発売、162頁、ISBN 978-4-04-715419-3です。英語版はDark Horse Comics、2013年2月20日刊、168頁、ISBN 978-1-61655-114-8です。表紙の初号機図像は共通するため、題字、裏表紙のISBN、出版社表示を合わせて確認します。
『エヴァ&エヴァ2アンソロジー』や『エヴァンゲリオン四コマ全集』、トニーたけざきの単著とは、書名の一般語だけでなくISBNで区別できます。全一冊なので「コミックトリビュート第2巻」はありません。海外版を含めても巻数が増えたのではなく、同じ作品の言語版が増えたと考えます。
- 漫画・出版物索引では、ほかの派生漫画と編集本を探せます。
- エヴァ&エヴァ2アンソロジーでは、2004年刊の先行編集本との違いを確認できます。
- トニーたけざきのエヴァンゲリオンでは、参加作家の後の単著を確認できます。
- 作品系列比較では、アンソロジーと本編正史の境界を確認できます。