エヴァンゲリオン百科事典

百科事典記事

新世紀エヴァンゲリオン(貞本義行漫画版)第2巻

「ナイフと少年」全6話のあらすじ・トウジとケンスケ・命令違反と離脱を解説

貞本義行による漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』第2巻「ナイフと少年」は、初戦を終えた碇シンジの生活に、学校、同居、訓練という日常が流れ込み、使徒の再戦と命令違反、そしてNERVからの離脱までを一巻で運ぶ巻です。妹の負傷を理由にシンジを殴った鈴原トウジが操縦席で仕事の内側を目撃し、相田ケンスケの好奇心が戦場の危険を共有します。STAGE.7〜12の流れ、ミサトとのすれ違い、離脱の描き方の違い、巻題の意味を巻単位で整理します。

ネタバレ:貞本義行漫画版第2巻の全6話、第4使徒との戦闘、エントリープラグへの三人収容、命令違反とNERVからの離脱を含みます。未読の場合はご注意ください。

貞本義行漫画版新世紀エヴァンゲリオン第2巻のKADOKAWA公式書影
1996年3月5日発売の漫画版第2巻。STAGE.7からSTAGE.12を収録し、使徒戦を見たトウジとケンスケがシンジの苦痛を知る転換を描きます。

第2巻は、戦闘の勝利を日常が受け止められない巻

第1巻で第3使徒は倒れ、第3新東京市は守られました。しかし第2巻は、その勝利が少年の生活を安定させるところから始まりません。同居と学校と訓練が始まると、シンジは再び反応を小さくし、教室では初戦の被害を背負った同級生と出会い、NERVでは命令に従う適格者として扱われます。どこへ移っても、他者が先に役割を決める日々です。

その日常を破るのが第4使徒の襲撃です。避難所へ逃げ込んだケンスケを巻き込み、次いで避難区域に残ったトウジまでが戦闘に飲み込まれ、シンジはエントリープラグへ三人を収容したまま戦います。命令違反で敵を倒したあと、称賛の代わりに再発防止の注意が待っている。第2巻は、勝利の意味が周囲と一致しない少年を、NERVの外へまで運ぶ巻です。

1996年刊・172頁にSTAGE.7〜12を収録する

KADOKAWA通常版第2巻は1996年3月5日発売、B6変形判172頁、ISBN 978-4-04-713132-3です。著者は貞本義行、原作表記はカラー、レーベルは角川コミックス・エース。資料上の発行日は1996年3月12日とされます。前巻から約半年で刊行され、第1巻と同じ間隔の月刊ペースを保った時期の巻です。

収録話はSTAGE.7「閉じゆく心」、8「シンジご機嫌ななめ」、9「マニアの受難」、10「ナイフと少年」、11「さまよえるサード・チルドレン」、12「やさしさの輪郭(かたち)」の6話です。すべて月刊少年エース1995年8月号から1996年2月号に連載され、単行本化にあたる話数の統合はありません。

STAGE.7閉じゆく心:月刊少年エース1995年8月号。同居と学校の日常が始まり、感情が再び閉じる
STAGE.8シンジご機嫌ななめ:月刊少年エース1995年10月号。トウジの拳と、ミサトへの不信
STAGE.9マニアの受難:月刊少年エース1995年11月号。非常招集と、避難所のケンスケの好奇心
STAGE.10ナイフと少年:月刊少年エース1995年12月号。プラグに三人、トウジが仕事の内側を見る
STAGE.11さまよえるサード・チルドレン:月刊少年エース1996年1月号。命令違反とミサトの問い
STAGE.12やさしさの輪郭(かたち):月刊少年エース1996年2月号。NERVからの離脱と第三者の橋渡し

STAGE.7「閉じゆく心」で、日常が感情を再び閉じさせる

第1巻の最後でシンジは涙を流しました。しかし第2巻の冒頭は、その一度の感情表出を成長の完成とは扱いません。同居、学校、訓練という日常が始まると、彼は再び自分を守るために反応を小さくしていきます。戦場から離れれば安全になるように見えて、学校では初戦の被害を背負ったトウジが待っています。

この話が示すのは、シンジを囲む場所ごとに役割が先に決まっていることです。NERVでは命令に従う適格者、教室では好奇の対象、伯父の家からは連絡のない子ども。自分の感情を見せないことが唯一の防御になります。第1巻の涙が忘れられた瞬間はここです。涙を出せる関係がまだ周囲にない、という状況の確認がSTAGE.7です。

STAGE.8「シンジご機嫌ななめ」で、善意が監督の記録として届く

学校でパイロットであることが知れ渡り、妹が負傷したトウジはシンジを殴ります。感情を見せず訓練を続けるシンジの姿を、ミサトは心配します。しかし、その心配が組織の監督記録という形で少年へ届いた時、意味はすれ違います。

ミサトはシンジを自宅へ迎え、普段通り明るく接します。それでもシンジには、自分が家族として受け入れられているのか、仕事として観察されているのか分からなくなります。閉じていた感情は消えず、皮肉と反抗へ形を変えて外へ出る。大人の善意が届いた瞬間に生まれるずれを、この話は丁寧に描きます。

STAGE.9「マニアの受難」で、好奇心が戦場の危険を共有する

非常招集を受けたシンジは、学校で孤立し、ミサトへの不信を抱えたまま、初号機へ乗って第4使徒を迎撃します。出撃を拒める余裕は、彼にはありません。

避難所のケンスケにとって、エヴァ戦は規制された映像の向こうにある秘密であり、軍事知識を実地に確かめる機会です。二人の立場は正反対ですが、ケンスケが避難所を出たことで、同じ危険を共有することになります。題名の受難は、好奇心の代償だけでなく、他者の無謀まで背負わされるシンジの苦境にもかかっています。

注目したいのは、この招集がシンジの心の状態と無関係に発令される点です。学校で孤立し、同居するミサトへの不信を抱えたまま、緊急時には出撃が求められます。日常と任務が切り離されたまま並存する非情さが、STAGE.9の土台です。少年の気分が整うのを待たないシステムの側を描くことで、後の巻々で問われる「なぜ乗るのか」という問いに、摩擦を蓄えておく役割もこの話が担っています。

STAGE.10「ナイフと少年」で、トウジが仕事の内側へ入る

初号機は第4使徒の攻撃を受け、戦闘区域には避難所を抜け出したトウジとケンスケが残されています。シンジは敵だけを見て戦えず、二人を見捨ててもいられません。エントリープラグへ二人を収容し、同じ狭い操縦席に三人が入ったまま戦闘を続けます。

この配置により、トウジは初めてシンジの仕事を内側から見ます。学校では、初号機が妹を負傷させた結果だけを知り、シンジを殴りました。しかし操縦席では、機体の損傷が少年へ苦痛として返り、撤退すれば都市が危険にさらされ、戦えば自分が傷つく。戦闘の勝敗より、責任を外から裁いていた人物が当事者の苦痛に触れることが、巻題となるこの話の中心です。

STAGE.11「さまよえるサード・チルドレン」で、勝利の意味が一致しない

シンジは退却命令に従わず第4使徒を倒し、都市は守られ、二人も生き残ります。しかしSTAGE.11は戦果を称える場面から始まりません。ミサトは、命令違反が三人の死へつながり得たことを問題にし、二度と同じ判断をしないよう求めます。

シンジには、傷つきながら敵を倒したのに認められないという感覚があります。ミサトには、結果が良かったからこそ、次の無謀を止めなければならない責任があります。どちらも相手を完全に無視しているわけではないのに、勝利の意味が一致しないため、作戦上の対話は家庭内の拒絶へ変わってしまいます。

STAGE.12「やさしさの輪郭」で、第三者が関係を橋渡しする

シンジは、エヴァへ乗る理由を自分の希望として語れず、周囲の要求へ応えるしかないと答えます。ミサトは、その曖昧な状態で再搭乗させるより、NERVから離す判断を取ります。本人へ選ばせるための突き放しですが、シンジには再び不要とされた経験として届きます。

距離を置くことだけでは相手を守れない。この話が示すのはその限界です。ミサトは会わずに送り出そうとし、シンジも引き止めてほしいとは言いません。二人の間を動かすのは、戦闘を内側から見たトウジとケンスケです。直接話せなかった二人へ、第三者が関係の輪郭を見せる。第2巻の締めくくりが、喧騒ではなくこの静かな仲介である点が重要です。

トウジとケンスケは、同級生の側から物語に入る

第2巻の重要な登場人物は、パイロットでもNERV職員でもない二人の同級生です。鈴原トウジは、初戦で負傷した妹の存在によって、エヴァンゲリオンを身近な危害として受け止めている側の少年です。相田ケンスケは、規制された映像の向こうの秘密に対して、軍事知識を武器に好奇心を向ける側の少年です。

この二人は同じ第4使徒戦で、正反対の動機から同じ場所へ足を踏み入れます。トウジは妹を心配して避難区域へ入り、ケンスケは戦場を自分の目で見るために動きます。シンジの判断で二人はプラグへ収容され、戻ってからは、戦闘を内側から知る同級生としてシンジの周囲に定着します。以後の巻々でミサトやゲンドウが担えない距離の近さを、この二人が担当していく起点が第2巻です。

第2巻が終えることと、第3巻へ渡すことを分ける

第2巻の到達点
  • 同居、学校、訓練の日常が始まり、シンジの感情が再び閉じます。
  • 妹の負傷をめぐり、トウジがシンジを殴ります。
  • 第4使徒との戦闘で、プラグに三人が収容されたまま戦います。
  • シンジは退却命令に従わず敵を倒し、ミサトとすれ違います。
  • ミサトの判断でシンジはNERVから離されます。
  • トウジとケンスケが、二人の関係の橋渡し役になります。

第2巻が次巻へ渡すのは、パイロットとしての自信を積んだ少年ではありません。離脱を経て関係を見直した少年です。第3巻「白い傷跡」では、綾波レイの内面へ視点が深まり、シンジとレイの関係が本格的に動き始めます。

離脱の主体を、逃げ出す少年から突き放す大人へ替える

トウジの拳、ケンスケの同行、三人のプラグ。第2巻が扱う要素はTV版の初期エピソードと共通しています。ただし並べ方と帰結が違います。最大の差は離脱の主体です。TV版ではシンジの側から逃げ出す形でNERVとの距離が生まれますが、漫画版ではミサトが本人に選ばせるために突き放す判断を取ります。

この替えにより、離脱の意味が変わります。TV版の離脱が少年の逃走として描かれるのに対し、漫画版の離脱は大人側の責任ある判断として置かれ、シンジの傷は「選ばれなかった」という感覚へ向かいます。連続性比較の解説でも整理しているとおり、同じ出来事の型でも、誰が動くかが変われば人物の意味も変わります。漫画版の出来事をTV版の展開で補わず、ページ上の流れとして追ってください。

巻題「ナイフと少年」は、兵器と子どもの近さを一つの絵に圧縮する

プログレッシブナイフは、エヴァンゲリオンが使徒を殺すために持つ刃です。その刃と子どもを並べた巻題は、この作品の根幹にある異常を、説明抜きで一つの絵に圧縮しています。小学生の子どもが、大人の兵器の内側へ乗せられる。この一対の並びは、14巻を貫く主題の最短の要約として機能します。

第2巻の中で、この近さは物理的な距離としても描かれます。操縦席に三人が入る場面では、トウジとケンスケという「戦わない子ども」が、兵器の内側へ直接入ります。外側から見ていた子どもが内側へ入ることで、ナイフと少年の距離が、象徴から現実へ変わる巻でもあります。

初読では、シンジを取り巻く三つの場所を意識する

第2巻は、シンジの位置が家、学校、NERVの三つの場所の間で揺れ続けます。初読では、各話がどの場所を舞台にしているかを意識すると、感情の起伏が読み取りやすくなります。STAGE.7と8は家と学校、STAGE.9と10は戦場、STAGE.11と12は家とNERVです。

もう一つの道標が、トウジとケンスケの変化です。二人は教室でシンジを役割で決めつけた側ですが、STAGE.10で兵器の内側に入り、STAGE.12では関係の橋渡し役へ変わります。同級生がどう動いたかを追うだけで、この巻の構成の丁寧さが見えてきます。

第2巻は、仲間の存在が責任の重さを変えることを示す

一人で戦う第1巻に対し、第2巻は操縦席へ他者を迎えます。トウジとケンスケがプラグに入ったことで、シンジの戦闘は自分の命の問題から、他人の命を同席させる問題へ変わります。命令違反が敵を倒した結果だけを見れば善ですが、三人が死ぬ可能性も含めて見れば、ミサトの注意は過剰ではありません。

つまり第2巻は、正しい行動が人を裁く言葉を奪い合う場面として描かれます。仲間の存在が責任の重さを変え、そして仲間の存在だけが、すれ違った関係を修復できる。この二重の役割を、同級生二人に担わせた構成が第2巻の設計です。

第2巻についてよくある質問

漫画版第2巻には何話が収録されていますか?

STAGE.7「閉じゆく心」からSTAGE.12「やさしさの輪郭(かたち)」までの6話です。すべて月刊少年エース1995年8月号から1996年2月号に掲載され、単行本化の際の話数統合はありません。

第2巻でトウジはシンジを殴りますか?

殴ります。初戦で負傷した妹をめぐり、教室でシンジを殴ります。その後、第4使徒との戦闘でエントリープラグへ収容されたトウジは、シンジの仕事を内側から目撃することになります。外側から裁いていた側が当事者の苦痛に触れるまでの距離が、第2巻の重要な流れです。

漫画版第2巻でもシンジはNERVを離れますか?

離れます。ただし、TV版でシンジが自ら逃げ出すのに対し、漫画版ではミサトが本人に選ばせるためにNERVから離す判断を取ります。離脱の主体が大人側にあるのが漫画版の違いです。

第2巻のあとはどの巻から読めばよいですか?

第3巻「白い傷跡」へ続きます。第3巻はSTAGE.13〜19を収録し、綾波レイの内面と、シンジとレイの関係の深まりを描きます。