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マーベル

ドクター・ストレンジ

天才外科医スティーヴン・ストレンジが両手を失い、ネパールのカマー・タージで魔術を学び、ドルマムゥを「無限の交渉」で退ける——MCUに魔術と次元の概念を持ち込み、後年のマルチバース・サーガの礎を築いた起源作。

媒体: 映画(実写) 米国公開: 2016年11月4日 日本公開: 2017年1月27日 監督: スコット・デリクソン
ドクター・ストレンジ 公式ポスター

作品データ

作品
ドクター・ストレンジ
原題
Doctor Strange
媒体
映画(実写)
米国公開
2016年11月4日
日本公開
2017年1月27日
監督
スコット・デリクソン
脚本
ジョン・スペイツ/スコット・デリクソン/C・ロバート・カーギル
原作
マーベル・コミック『ドクター・ストレンジ』(スタン・リー/スティーヴ・ディッコ、1963)
製作
ケヴィン・ファイギ
音楽
マイケル・ジアッキーノ
撮影
ベン・デイヴィス
編集
ワイアット・スミス/サブリナ・プリスコ
美術
チャールズ・ウッド
視覚効果
Industrial Light & Magic/Framestore/Method Studios/Luma Pictures/Lola VFX ほか
製作会社
マーベル・スタジオ
配給
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
上映時間
115分
製作費
約1億6500万ドル
興行収入
全世界 約6億7770万ドル
MCU区分
フェーズ3 第3作/インフィニティ・サーガ
時系列上の前後
シビル・ウォー → 本作 → マイティ・ソー バトルロイヤル
公式予告編は
劇場サイトで確認
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📖 全35章 / 約19K字 🔄 最終更新 2026年5月26日 ✍️ Anna Movies 編集部

ドクター・ストレンジは、2016年公開のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画である。傲慢な天才外科医スティーヴン・ストレンジが交通事故で両手の自由を失い、ネパールのカマー・タージで魔術を学んでヒーローへと変貌する物語を描く。強大な敵ドルマムゥを「無限の交渉」で退ける本作は、MCUに魔術と多次元世界の概念を持ち込み、後年のマルチバース・サーガの礎を築いた起源作である。

00概要

『ドクター・ストレンジ』(Doctor Strange)は、スコット・デリクソンが監督を務めたアメリカのスーパーヒーロー映画である。脚本はジョン・スペイツ、デリクソン、C・ロバート・カーギルが共同で手がけた。製作はマーベル・スタジオ、配給はウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが担った。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)通算14作目にして、フェーズ3の第3作にあたり、『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の間に位置づけられる。米国公開は2016年11月4日、日本での劇場公開は翌2017年1月27日であった。

本作の原作は、1963年7月の『ストレンジ・テールズ』第110号でスタン・リーとスティーヴ・ディッコが生み出した魔術師ヒーロー「ドクター・ストレンジ」である。原作コミックは、1960年代の対抗文化と東洋神秘主義への関心を取り込み、ディッコの幾何学的でサイケデリックな描写によって、米国コミックに「魔術を主題としたヒーロー」というジャンルを根づかせた。映画版が最大の課題としたのは、このディッコ譲りの視覚的遺産を、現代のCG技術と『インセプション』以降の都市変形描写の語彙へと接続することだった。

監督のスコット・デリクソンは、『エミリー・ローズ』『フッテージ』『デリバー・アス・フロム・イービル』を撮ってきたホラー出身の作り手である。本作への起用は、ホラーと幻想美術の双方から、都市の歪みと異次元の手触りをMCUへ持ち込むためのものだった。脚本のジョン・スペイツは『プロメテウス』を手がけ、C・ロバート・カーギルはデリクソンの長年の共作者にあたる。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギは、本作を「魔術の門を開き、フェーズ3後半とフェーズ4以降のマルチバース展開に必要な道具立てを揃える一作」と位置づけた。アガモットの目を、その場面ではすぐにタイム・ストーンと明示せず、後の『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『マルチバース・オブ・マッドネス』へとつなぐ伏線として静かに置く。そんな設計が取られていた。

本記事は、結末に加え、ミッドクレジット・ポストクレジットの計2本の追加場面を含む全編のネタバレを前提に書いている。カエシリウスの強盗、ストレンジの事故、カマー・タージでの修行、サンクタムの陥落、エンシェント・ワンの死、ドルマムゥとの取引、モルドの離反、ソーとの面会、そしてパングボーンの能力剥奪まで、すべての要素に踏み込む。物語の驚きを大切にしたい読者は、まず本編を観てから戻ってきてほしい。

概要

主要データ

原題
Doctor Strange
監督
スコット・デリクソン
脚本
ジョン・スペイツ/スコット・デリクソン/C・ロバート・カーギル
原作
マーベル・コミック『ドクター・ストレンジ』(スタン・リー/スティーヴ・ディッコ、1963)
音楽
マイケル・ジアッキーノ
撮影
ベン・デイヴィス
米国公開
2016年11月4日
上映時間
115分
ジャンル
スーパーヒーロー、ダーク・ファンタジー、神秘主義、サイケデリック

01あらすじ

以下は、結末と二本のクレジット・シーンを含む全編のあらすじである。傲慢な天才外科医スティーヴン・ストレンジが交通事故で両手の自由を失い、ネパールのカマー・タージで魔術を学び、やがて暗黒次元の支配者ドルマムゥから地球を守る魔術師へと生まれ変わる――本作はそんな物語だ。失った手を取り戻すための再生の物語として幕を開け、自分を超えるものを守る献身の物語へと姿を変えて閉じていく。その変容の行方に注目したい。

あらすじ

プロローグ

映画の幕開けは、ネパール・カトマンズにある古い寺院の図書館だ。剃り上げた頭部と、顔の周囲に奇妙な紋様を走らせた男——カエシリウス(マッツ・ミケルセン)が、数人の信奉者を引き連れて図書館へ押し入る。狙いは奥の祭壇に保管された魔導書『カリオストロの書』。その一冊を開こうとしたところで、司書ダニエル・ドラム(マーク・アンソニー・ブライトン)が割って入り、入り口の扉を魔術で封じる。だがカエシリウスは曲刀を抜きざま、ドラムの首を一閃。その身体は床へと崩れ落ちる。

奪われたのはわずか数葉のページにすぎない。しかしそこに記されていたのは、時間と次元の境界を越えるための儀式の手順だった。一同が踵を返したその瞬間、寺院の屋根の縁にエンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)が静かに姿を見せる。剃り上げた頭、灰色の僧衣をまとった長身の老師。性別を超越したその影が、夜のカトマンズの空に浮かび上がる。

逃走に転じるカエシリウスたちを、エンシェント・ワンが追う。彼らが選んだ戦場こそ、本作最大の発明である「ミラー次元」だ。現実と寸分違わぬ姿を写し取りながら、現実世界にはいっさいの物理的影響を残さない、鏡像のごとき別空間である。カトマンズの石畳の街路が、エンシェント・ワンとカエシリウスの手の動きに合わせて折り畳まれ、垂直の壁となり、巻物のように丸まり、噴水のように建物が崩れ落ちる。エッシャーを思わせる多重視点の都市変形のなか、カエシリウスは逃げ切り、ページは失われたまま、エンシェント・ワンだけが現実のカマー・タージへと帰還する。この数分間で、観客は本作の魔術の文法——空間そのものが武器であり、地形でもある——を否応なく体に叩き込まれることになる。

プロローグ

天才外科医スティーヴン・ストレンジ

舞台は数週間後のニューヨーク。マンハッタン・メトロ総合病院、その最上階の手術室では、神経外科医のスティーヴン・ストレンジ博士(ベネディクト・カンバーバッチ)が、銃弾で前頭葉を撃ち抜かれた患者の脳手術にあたっている。流れるBGMはチャック・マンジョーネ。彼は曲名を、秘書のビリー(マイケル・スターバーグ演じるニコデモス・ウェスト博士の同僚)と暗記だけで当て合いながら、淡々とメスを進めていく。天才ならではの余裕と、それを誇示せずにいられない自己愛とが、一つの画面のなかで同時に立ちあらわれる場面だ。

別室では、研修医時代の元恋人で救命救急医のクリスティーン・パーマー(レイチェル・マクアダムス)が、ニコデモス・ウェスト博士の患者から臓器を摘出しようとする動きを止めようと、別件の患者を診てほしいとストレンジに声をかける。脳に銃弾を撃ち込まれて運ばれてきた患者を、ウェストは「すでに脳死だ、臓器を取れ」と判断する。だがストレンジは、銃弾の位置とCT画像から「延髄を撃ち抜いてはいない、まだ救える」と覆し、自ら執刀してその命を救う。腕も判断も本物だが、症例を自分の評判で選り好みする冷たさもまた本物だ。クリスティーンは、彼を「同僚を貶めることでしか自分を保てない人だ」と一言で言い切る。

夜、自分のロフトで時計のコレクションを磨きながら、彼は新たな症例の選別をハンズフリーで部下に指示している。やがてランボルギーニ・ワンチーロのエンジン音を響かせ、雨の州際高速道路を北上していく——別件の講演へ向かう長距離運転だ。後部座席に置いたタブレットを操作し、ハンドルを膝で押さえたその瞬間、対向車線にはみ出した道路工事の警告板を避けようとして、車は崖から雨の渓谷へと転落する。映像は、車体の歪んだ金属に挟まれて彼の手のひらが潰れていく一連のカットを、痛々しいほど克明に映し出す。

天才外科医スティーヴン・ストレンジ

事故からの回復

救出されたストレンジは、クリスティーンが当直する救命救急センターへ運び込まれる。麻酔から覚めて真っ先に確かめたのは、自分の両手だった。神経束は重度に損傷し、骨は十一本の鋼線(K-wire)で固定され、皮膚には長い縫合の痕が連なる。手は震え、コップひとつ持ち上げることもままならない。神経外科医である彼には、「この手は二度とメスを握れない」という診断を、誰よりも正確に自分で下せてしまう。

ストレンジは蓄えのすべてを最先端の実験的治療につぎ込む。神経幹細胞移植、組織移植、坐骨神経の移行——世界中の論文を読み込んだ上で具体的な術式を指定し、ニコデモス・ウェストや旧友の医師たちに「お前が執刀しろ」と迫る。だが、誰もが匙を投げる。クリスティーンは支えようとするが、彼は怒りと自己嫌悪を彼女にぶつけ、ついには二人の関係まで断ち切ってしまう。

蓄えが底をついた頃、ストレンジはリハビリ施設で一人の男と出会う。下半身不随で生涯車椅子のはずだったジョナサン・パングボーン(ベンジャミン・ブラット)が、健常者として歩いているのだ。しかも「歩く方法を、ある場所で教わった」と語る。「カマー・タージ」「ネパール、カトマンズ」「行っても何も得られないかもしれない、だが探す価値はある」。最後の蓄えで航空券を買い、ストレンジはカトマンズへと飛び立つ。

事故からの回復

カマー・タージとエンシェント・ワン

カトマンズの裏路地で道に迷ったストレンジは、強盗に襲われかけたところを一人の魔術師に救われる。屈強な体躯の魔術師バロン・モルド(チウェテル・イジョフォー)は、目立たない木製の扉の前へストレンジを案内する。扉の向こうに広がっていたのは、外見からは想像もつかない広大な石造りの中庭——カマー・タージである。

扉を抜けたストレンジが対面するのは、剃り上げた頭に灰色の僧衣をまとった、性別を越えて静謐な老師——エンシェント・ワンだ。彼女は紅茶を勧めながらストレンジの両手の傷痕を見つめ、「あなたは自分を物質の世界の中心だと思っている。だがあなたが思うほど、それは中心ではない」と告げる。ストレンジは反論する。「私は物質と精神の関係を学んできた医師だ。神経細胞と化学物質、それだけがすべてだ」。

エンシェント・ワンは肯定も否定もせず、ストレンジの胸を指先で軽く突く。次の瞬間、ストレンジの魂は身体から弾き出され、半透明のアストラル体としてカマー・タージの天井近くに浮かび上がる。さらに彼女は彼を量子の海へ、無数のフラクタルな螺旋の中へ、巨大な眼が見つめる暗黒の次元へと、目映いほどの色彩と幾何学の連鎖で送り出していく。意識が肉体に戻った瞬間、ストレンジは床に膝を突き、震える両手で「もう一度——もう一度見せてくれ」と懇願する。本作の主人公が、自らの理解の外側に広がる世界の存在を、肉体で受け入れた一場面である。

カマー・タージとエンシェント・ワン

修行

ストレンジはカマー・タージに住み込み、モルドの指導のもとで魔術師としての訓練を始める。まず手渡されるのは、両手の指関節にはめ込む金属の輪「スリング・リング」。これで空間に円形のポータルを切り開き、地球上のどこへでも瞬時に移動する術を学ぶのだ。当初は両手の震えのせいで火花一つ飛ばせなかった。だが「世界中の医学論文を写真記憶で頭に入れた男」だけに、その暗記能力でサンスクリットと魔術言語の体系を異常な速さで吸収していく。

図書館で彼を迎えるのは、車椅子の司書ウォン(ベネディクト・ウォン)だ。並ぶのは『カリオストロの書』をはじめとする魔導書の数々。ある書架は鎖でつながれ、別の書架には「立入禁止区域」の札が下がる。その立入禁止区域の中央、台座の上には、黄金の枠に納まった緑の宝石——アガモットの目が静かに置かれている。ストレンジは禁じられた書架にこっそり手を伸ばし、複製の書物を借り出しては、夜ごと独学で時間を巻き戻す術と、ミラー次元への入り方を読み込み始める。

モルドは魔術の規律を絶対視する人物として描かれ、「自然の法則」と「禁じられた術」の境界をストレンジに繰り返し説く。一方のエンシェント・ワンが教える内容と禁じる内容は、その境界線そのものに、後から思えば矛盾を抱えている。ストレンジが独学で『カリオストロの書』のページを読み込み、ミラー次元の中で時計の針を巻き戻す練習を始めると、ウォンは「お前が何を読んでいるかは知っている。死にたいなら止めはしないが、私の図書館の本は持っていくな」と冷たく釘を刺す。

修行

ニューヨーク・サンクタム襲撃

数ヶ月後、カエシリウスの一団が動きだす。地球を守る三つのサンクタムのうち、ロンドン・サンクタムを襲撃し、その守り手であるソル・ラマ師(オジョ・タピア)を惨殺するのだ。三つのサンクタム——ロンドン、ニューヨーク、香港——は「グローブ」と呼ばれる結界を張り、暗黒次元の侵食から地球を守っている。だが、その一つでも落ちれば、結界には穴が空いてしまう。

次の標的はニューヨーク・サンクタムである。ストレンジが図書館で偶然開いたポータルは、彼を九十番西街と血の通りの交わる丘へと運ぶ。そこに建つのは、歴代のサンクタムを守ってきた魔術師の屋敷だ。入口でカエシリウスの先鋒たちと鉢合わせ、ストレンジは反射的に魔術盾で身を守る。そのとき、屋敷の重そうな赤いマント——「レビテーションのマント」——が独立した意志を持つかのように彼の肩へ飛び乗る。マントは敵を絞め上げ、武器を奪い、ストレンジを引きずるようにして戦いへと駆り立てる。本来は経験の浅い弟子にすぎないストレンジが、マントに半ば操られながら、幾何学的な階段と狭い廊下を縦横に転がりまわる戦闘へと突入していく。

戦いの最中、ストレンジは盾の縁で敵の腹を意図せず深く刺してしまう。床に倒れたその男——ルシアン(スコット・アドキンス)——が血を吐いて事切れる瞬間、ストレンジの顔から血の気が引く。医師として生涯をかけて「人を救う」側に立ってきた男が、自らの意思とは別の力によって「人を殺した」側へと押しやられる。物語の決定的な転回点だ。

戦闘の余波で、ストレンジ自身も致命傷を負う。自らポータルを開き、元の職場である救命救急センターのクリスティーンのもとへと転送される。両手を組み、アストラル体となって自分の手術台の外側に立ったストレンジは、クリスティーンに「電気除細動器の出力を上げろ」と指示し、心停止した自らの肉体を電気で叩き起こす。さらに、もう一人の敵がアストラル体となって彼を追ってきており、霊体同士の格闘戦が病院の処置室の天井で繰り広げられる。医学と魔術の交差点が一場面のうちに立ち上がる、本作屈指の見どころである。

ニューヨーク・サンクタム襲撃

エンシェント・ワンの秘密と死

ニューヨーク・サンクタムを守り抜いたストレンジのもとへ、エンシェント・ワンとモルドが加勢に駆けつける。カエシリウスはサンクタムから逃走するが、その別れ際に決定的な一言を残す——「お前の師、エンシェント・ワンは、何百年も自分のためにダーク・ディメンションのエネルギーを引き出してきた。長寿のためにな」。

ストレンジは図書館の禁書を読み返し、その告発が事実かどうかを確かめる。地球を守りながら、同じ暗黒の力をわが身の延命にも使ってきた——この二重性が、本作最大の倫理的な問いを浮かび上がらせる。正しい目的のためなら危険な手段に手を染めてよいのか。問いは、敬うべき師の像そのものを揺るがしながら立ち上がってくる。

やがてカエシリウスが、ニューヨーク・サンクタムへ再び襲撃を仕掛ける。ストレンジ、モルド、エンシェント・ワンの三人で迎え撃つ場面は、ミラー次元の中でマンハッタンの摩天楼を縦横無尽に折り畳む、本作最大級の戦闘シークエンスだ。地下鉄が垂直に立ち上がり、ビル群がドミノのように倒れ、街路灯が螺旋を描いて回転する。エンシェント・ワンはカエシリウスを追い詰めるが、最後の隙に尖った刃で背中を貫かれ、現実世界のサンクタム前の路上へ放り出される。

クリスティーンの救命救急センターに搬送されたエンシェント・ワンは、手術台の上でわずかな時間だけ自身のアストラル体を雷雲の上に浮かべ、ストレンジと並んで世界の屋根に差す薄明かりを見つめる。「私はずっと、終わりを先延ばしにしてきた。ようやく、終わりを受け入れる」「彼が暗黒次元から長寿を引いてきたとしても、地球は数百年守られた。お前は、私と同じ場所に立つだろう。だが私には越えられなかった一線を、お前は越えなければならない」——穏やかにそう告げて、彼女は事切れる。

モルドは、師の二重性を最後まで受け入れられない。彼にとって魔術とは絶対の規律のもとに行使されるべきものであり、その師が長年規律を破っていたという事実は、彼自身の存在の根を引き抜く打撃だった。やがて彼の心の内に、「魔術師という存在そのもの」への疑念が、静かに芽生え始める。

エンシェント・ワンの秘密と死

ロンドン陥落と香港逆行

カエシリウスは生き残った信奉者を率い、最後のサンクタム——香港——に襲いかかると、世界を守る結界に最後の穴をこじ開ける。穴の向こうからは暗黒次元の支配者ドルマムゥの巨大な貌が地球をのぞき込み、その紫色のエネルギーが香港の街路を侵食し始める。ストレンジとモルドがポータルを抜けて香港に降り立った時、街はすでに半壊していた。ウォンをはじめとする守り手たちは床に倒れ、空には暗黒の渦が広がっている。

ストレンジは、図書館でひそかに学んでおいた最後の禁術を発動する。アガモットの目を開き、時間そのものを巻き戻す術だ。緑色のフラクタルの環が胸の前に浮かぶと、香港の崩壊が逆再生でほどけていく。割れたガラス片は窓へ飛び戻り、倒れた建物は立ち上がり、命を落とした守り手たちが息を吹き返す。モルドは「お前は自然の法則を破っている」と激しく拒むが、ストレンジは構わず時間の流れを逆へと押し進める。

時間が完全に巻き戻り切る前に、ストレンジはただ一人、時間の外側へ——暗黒次元の中心、ドルマムゥの本拠へとポータルを開き、身を投じる。観客はあらかじめ知らされていた。暗黒次元では時間そのものが意味を持たず、ドルマムゥは通常の戦闘では決して倒せない、ということを。

暗黒次元に到着したストレンジは、巨大なドルマムゥの顔の前に降り立ち、両手を組んで告げる。「ドルマムゥ、取引に来た(Dormammu, I've come to bargain.)」。ドルマムゥは咆哮とともに、一撃でストレンジを殺す。次の瞬間、ストレンジは再び同じ岩の上に立ち、同じ言葉を告げる。「ドルマムゥ、取引に来た」。ドルマムゥは再びストレンジを叩き潰す。それでもまたストレンジが現れ、同じ台詞を口にする。

ストレンジは、アガモットの目を使い、自分自身を「無限に死に続けるループ」のなかへ閉じ込めていたのだ。暗黒次元から地球を狙うドルマムゥは、ストレンジを殺すことはできても、彼が再生する一瞬に逃げ込んだ「時間のループ」そのものから抜け出せない。永遠に殺し続ける退屈と苦痛のなか、ドルマムゥはついに叫ぶ。「もうやめろ!」「お前を解放しよう。私は地球を諦める。お前と、お前の信奉者を連れて、二度と戻らない」。ストレンジは涼しい顔でうなずく。本作の決着が、力比べでも血の流れる戦闘でもなく、「死を延々と受け入れる交渉」によって付けられる——MCU全体のクライマックスのなかでも、もっとも特異な勝ち方の一つだ。

現実世界では、香港のすべてが元通りに立ち上がり、ウォンや守り手たちは何事もなかったように呼吸を取り戻している。カエシリウスと信奉者たちは約束どおりドルマムゥに連れ去られ、紫色の渦は空へ吸い込まれて消えていく。

ロンドン陥落と香港逆行

モルドの離反とニューヨーク・サンクタム…

決戦の翌朝、カマー・タージの中庭で息を整えるストレンジの前に、モルドが姿を現す。「お前は、エンシェント・ワンが間違っていたと言うのか。彼女は何度も自然の法則を破った。そしてお前も、時間そのものを巻き戻し、ドルマムゥと取引した。代償はどこへ行く」。ストレンジは答えない。モルドは「私が魔術師を辞める日が来た。世界には、魔術師が多すぎる」とだけ告げると、ポータルも開かず、徒歩で寺院の門をくぐって去っていく。

ストレンジは、レビテーションのマントを羽織り、アガモットの目を首に下げて、ニューヨーク・サンクタムへと赴任する。エンシェント・ワン亡きいま、世界に三つあるサンクタムのひとつを守る正式な魔術師として立つのだ。事故から始まった「失った手を取り戻す物語」は、「自分が立つ場所そのものを取り替える物語」へと完全に姿を変えた。彼はもう、神経外科医には戻らない。

本編は、この静かな就任の一場面で幕を閉じる。ニューヨークの夕景のなか、サンクタムの円形窓越しに、世界の境界線を見つめるストレンジの横顔が映し出される。

モルドの離反とニューヨーク・サンクタム…

ミッド/ポストクレジット

ミッドクレジット・シーンの舞台は、ニューヨーク・サンクタムの応接室。宙に浮かぶティーカップから、ストレンジが紅茶を勧めている。向かいに腰かけるのは雷神ソー(クリス・ヘムズワース)だ。『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』以降、行方を追い続けてきた弟ロキを伴い、父オーディンを探すためアスガルドから地球へ降り立っていた。ストレンジは「お前の父を地球に閉じ込めている弟を、いっしょに連れて帰ってほしい」と告げる。地球に長居する神々を歓迎しない魔術師——その立ち位置を、軽い茶目っ気を交えながら確かなものにする場面である。このやりとりは翌2017年公開の『マイティ・ソー バトルロイヤル』冒頭で再生され、ソーとストレンジによる「ノルウェーの崖でのオーディン探し」へとそのまま接続していく。

ポストクレジット・シーンは、リハビリ施設にジョナサン・パングボーンを訪ねるモルドの場面だ。モルドは無表情のままパングボーンの肩に手を置き、「お前は魔術師ではなく、ただ魔術のエネルギーを盗んで歩いていただけだ」と告げる。そして両手の指を使い、パングボーンの両足から「盗まれた魔法のエネルギー」を引き抜いていく。パングボーンは床に倒れ、ふたたび両足の自由を失う。「世界に、魔術師は多すぎる」——本編で吐かれたあの台詞が、ここで一人の市民の身体の上に具体的な形をとって降りかかる。続編で最大の不穏分子となるモルド像が、ここではじめて画面に提示される。

本作で描かれたモルドの離反路線は、『マルチバース・オブ・マッドネス』で別宇宙のモルドへと引き継がれていく。ポストクレジットがまいた不穏の種は、六年後の劇場で——続編という形で改めて結実するのである。

ここまでが全編のあらすじである。以降は登場要素、人物、舞台、制作背景、公開と興行、批評・舞台裏・テーマを資料として読み解くための章が続く。

登場要素

本作は、MCUに初めて魔術と異次元の概念を持ち込んだ一作である。以降のシリーズで繰り返し語られる用語や道具立てを、ここで一気に確立してみせた。以下、主要な登場人物・組織・舞台・アイテム・能力の概念を整理しておきたい。

  • スティーヴン・ストレンジ博士(ベネディクト・カンバーバッチ)
  • エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)
  • カール・モルド/バロン・モルド(チウェテル・イジョフォー)
  • ウォン(ベネディクト・ウォン)
  • クリスティーン・パーマー(レイチェル・マクアダムス)
  • ニコデモス・ウェスト博士(マイケル・スターバーグ)
  • ジョナサン・パングボーン(ベンジャミン・ブラット)
  • ダニエル・ドラム(マーク・アンソニー・ブライトン)

  • カエシリウス(マッツ・ミケルセン)——本作のヴィラン、元エンシェント・ワンの弟子
  • ルシアン(スコット・アドキンス)——カエシリウスの右腕的なゼロット、ストレンジが初めて意図せず殺した相手
  • ゼロット(カエシリウスの信奉者たち、暗黒次元の側に立つ脱落魔術師)
  • ドルマムゥ(ベネディクト・カンバーバッチ二役、声・モーション)——暗黒次元の支配者、本作の真の上位敵

  • ソー(クリス・ヘムズワース、ミッドクレジット出演)
  • アガモットの目(後にタイム・ストーンと判明する道具)
  • 三つのサンクタムの守護者たち(ニューヨーク・ロンドン・香港)

  • カマー・タージ——ネパールに本拠を置く魔術師の修練場
  • 三つのサンクタム・サンクトラム(ニューヨーク・ロンドン・香港)——地球を暗黒次元から守る結界グローブを構築する三拠点
  • マンハッタン・メトロ総合病院(ストレンジが神経外科医として勤めていた病院)

  • ニューヨーク・マンハッタン(メトロ総合病院、ストレンジのロフト、ニューヨーク・サンクタム)
  • ネパール・カトマンズ(カマー・タージ、図書館)
  • ロンドン・サンクタム
  • 香港・サンクタム
  • ミラー次元(鏡像の都市変形空間)
  • ダーク・ディメンション/暗黒次元(ドルマムゥの本拠、時間が成立しない次元)
  • アストラル次元(魂のみが入る次元)
  • 量子の海(修行のためにエンシェント・ワンが見せた幻視)

  • スリング・リング——両手の指関節にはめ込んで空間にポータルを開く道具
  • アガモットの目(後にタイム・ストーンの容器と判明)
  • レビテーションのマント(赤い意志を持つマント、ニューヨーク・サンクタムの守護物)
  • 『カリオストロの書』(時間と暗黒次元の儀式を記した魔導書)
  • 魔術師の防具・魔術盾・エルドリッチ・ホイップ(鞭状の武装エネルギー)
  • ヴィシャンティの書、アガモットのオーブ等の補助アーティファクト

  • スリング・リングによる空間ポータル
  • ミラー次元への侵入と都市変形
  • アストラル投射(肉体から魂を切り離す技術)
  • アガモットの目による時間操作(巻き戻し・ループ生成)
  • ダーク・ディメンションからのエネルギー摂取(エンシェント・ワンの延命の秘密)
  • 魔術を「信仰」ではなく「物理現象」として扱うMCUの設定
  • サンクタム・グローブによる地球の結界防御

  • ミッドクレジット:ストレンジとソーの面会(『マイティ・ソー バトルロイヤル』冒頭へ直結)
  • ポストクレジット:モルドがパングボーンの両足から魔術エネルギーを剥奪——「世界に魔術師は多すぎる」
  • アガモットの目がタイム・ストーンであることが、後年『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で正式に確定する

13主要登場人物

本作の人物配置は、傲慢な天才外科医スティーヴン・ストレンジを中心に据え、その周囲を四人が囲む五角形の構図になっている。ストレンジを肯定も否定もせず、ただ鏡のように映し出す老師エンシェント・ワン。彼の対極にありながら影の部分をも体現するモルド。荒みゆく彼の人間性をかろうじてつなぎとめるクリスティーン。そして魔術のもうひとつの顔を突きつける対称軸として立ちはだかる敵役カエシリウス。以下、それぞれの立ち位置を整理していく。

スティーヴン・ストレンジ

BBC『SHERLOCK/シャーロック』のホームズ、『イミテーション・ゲーム』のアラン・チューリング役で世界的な評価を確立したベネディクト・カンバーバッチが、マーベル・スタジオと長期契約を結んで臨んだ第一作である。オファーから撮影開始までの過密なスケジュールから、本作の撮影日程は彼の舞台『ハムレット』との両立をはかるため、一度組み替えられた。

ストレンジの人物像は、コミックの「医師から魔術師へ転じた天才」という骨格を受け継ぎつつ、その傲慢さと自己愛をMCU風に現代化したものだ。冒頭の手術室で見せる余裕、症例を選り好みする冷たさ、リハビリ施設での自暴自棄、カマー・タージでの戸惑い、レビテーションのマント(意思を持つ浮遊の外套)に振り回される滑稽さ、そしてドルマムゥとの永遠の死を引き受ける覚悟——一人の男が115分のうちに幾度も違う顔を見せ、その全てがカンバーバッチの抑えた声と眼差しの中で一本につながっていく。

本作のあと、彼は『マイティ・ソー バトルロイヤル』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『マルチバース・オブ・マッドネス』へと続けて登場し、MCUにおける「魔術と多次元」の中心人物として定着していく。後の『インフィニティ・ウォー』でタイム・ストーンを差し出してサノスに屈する場面、『エンドゲーム』で勝率1400万分の1のうちただ一つの勝ち筋を示す指の所作——その源流が、本作のドルマムゥとの取引で観客に示された「死を恐れず延々と取引を続ける戦法」にあることは、シリーズを通して観た者には明らかだろう。

スティーヴン・ストレンジ

エンシェント・ワン

ティルダ・スウィントンが演じるのは、カマー・タージを束ねる最高位の魔術師「エンシェント・ワン」だ。剃り上げた頭に灰色の僧衣をまとい、性別も民族も判然としない静謐な造形は、原作コミックの「アジア系の老師」というイメージから大きく踏み出した解釈で、公開当時から賛否を呼んだ。脚本・監督・スタジオがこの判断に至ったのは、コミックの「東洋の老師」という古典的な造形が、現代では「マジカル・アジアン」のステレオタイプに踏み込みかねないと考えたためである。そこで性別と民族を取り払い、ケルト系の女性俳優を起用した。もっとも後年、監督のスコット・デリクソン自身が「結果として中国市場への配慮による白人化だと批判を招いた。別の解決もあり得たはずだ」と公の場で反省を述べている。

人物像は、慈愛と冷酷、規律と逸脱、永遠と諦観が一人のうちに同居する老師として描かれる。長年ダーク・ディメンション(暗黒次元)から延命のエネルギーを引いてきたという事実は、「正しい目的のためなら危うい手段も許されるのか」という本作の倫理的な問いの核を担っている。手術台の上、雷雲の上空にアストラル体を浮かべながら、自らの終わりを静かに受け入れる場面は、シリーズ全体でも屈指の名シーンとして語り継がれている。

スウィントンは本作のあとも『アベンジャーズ/エンドゲーム』に再登場する。2012年のニューヨーク決戦の時間軸で、アガモットの目をブルース・バナーに手渡す役どころだ。

エンシェント・ワン

カール・モルド/バロン・モルド

アカデミー主演男優賞にノミネートされた『それでも夜は明ける』で知られるチウェテル・イジョフォーが演じるのは、カマー・タージに古くから仕える魔術師モルドだ。原作コミックでは初代の宿敵にあたる人物だが、本作ではまずストレンジの導き手であり、友であり、戦友として配置される。そしてラストで「未来の宿敵」へと反転する。そんな構成が取られた。

モルドの内面を貫くのは、規律と秩序への絶対的な信頼である。エンシェント・ワンが長年にわたって破ってきた自然の法則、ストレンジが終盤で巻き戻した時間、ドルマムゥとの取引——彼にとってそのすべてが、信じてきた魔術師の倫理を裏切る行為だった。だからこそ、彼の離反は単純な「闇落ち」ではない。信じていた秩序が崩れていく痛みから、ある種の純粋主義へと退いていく。そう描かれている点に注目したい。

ポストクレジット・シーンで彼が告げる「世界には、魔術師が多すぎる」という台詞は、続編やTVドラマへの伏線として長く残された。やがて『マルチバース・オブ・マッドネス』で別の宇宙のモルドが登場し、本作で描かれたキャラクター造形は、また違ったかたちで結実することになる。

カール・モルド/バロン・モルド

ウォン

ベネディクト・ウォンが演じる、カマー・タージ図書館の司書。原作コミックの「ストレンジの東洋人召使い」というステレオタイプから大幅に書き換えられた人物で、本作では知識と実戦能力を併せ持つ古参魔術師のひとりとして登場する。図書館でストレンジに釘を刺す場面、香港の路上で重傷を負って倒れる場面、結界が解かれて立ち上がる場面——画面に映る時間こそ短いが、シリーズ後半へと続く彼の存在感は、この一作ですべて築かれている。

本作のあと、ウォンは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『シー・ハルク:ザ・アトーニー』『マルチバース・オブ・マッドネス』『デッドプール&ウルヴァリン』と出演を重ねる。エンシェント・ワン亡きあとはソーサラー・スプリーム(最高魔術師)の座を引き継ぎ、MCUの魔術師世界における事実上の中心人物として定着していった。

ウォン

クリスティーン・パーマー

レイチェル・マクアダムスが演じるのは、ストレンジのかつての恋人であり、救命救急医のクリスティーン。原作コミックの「ナイト・ナース」系の人物像をもとに、現代ニューヨークの救命救急医として描かれる。傲慢なストレンジに対し、地に足のついた対極の存在として配置された女性だ。事故後の彼を支えようとするが、自己嫌悪の矛先を一身に受け止めるうち、やがて距離を置かざるをえなくなる。

ニューヨーク・サンクタムの襲撃で致命傷を負ったストレンジが、自らポータルを開いて彼女の処置室へと運び込まれる場面。ここは医学と魔術が交わる、本作でもっとも鋭い一場面である。彼女は電気除細動器で彼の身体を叩き起こす医師として、宙に浮かぶアストラル体を視界にとらえながら、なお淡々と職務をまっとうする。

本作の後、クリスティーンは『マルチバース・オブ・マッドネス』で再び姿を見せる。Earth-616では別の同僚との結婚式に花嫁として臨み、Earth-838ではイルミナティ側の科学者として登場する。本作でレイチェル・マクアダムスが見せた控えめな造形は、続編での二役にもそのまま受け継がれている。

クリスティーン・パーマー

カエシリウス

本作の悪役を演じるのは、デンマーク出身のマッツ・ミケルセン。元はエンシェント・ワンが最も信頼を寄せた高弟の一人だったが、妻と息子を失った悲しみから「死そのものの廃絶」を求め、ダーク・ディメンションへと近づいていった――そんな過去を背負う人物だ。彼にとってドルマムゥとの契約は、人類を支配するためのものではない。死と時間の束縛から人類を解き放つ「救済」なのである。

抑えた発声と、静かに澄んだ眼差し。ミケルセンの演技は、この悪役を「狂気に駆られた破壊者」ではなく「信念を抱いた、誤れる救済者」へと押し上げている。「お前は今、世界で最初の秩序を握っているのだ――時間という残酷な暴君を、我々は打ち倒そうとしている」。そう語る彼の主張は、ストレンジが終盤に手にする「時間を巻き戻す術」と表裏一体をなし、倫理の鏡像となって観る者に迫る。

カエシリウスと、彼に従う信奉者ゼロット。彼らは結末で約束どおりドルマムゥに連れ去られ、暗黒次元のなかで永遠の苦痛を負う側へと組み込まれていく。彼が願った「死からの解放」が、最後には「生からの解放」として与えられる。本作のこの幕切れは、MCUが描いてきた数多の悪役のなかでも、とりわけ苦い結末の一つである。

カエシリウス

舞台と用語

舞台は2016年から2017年の現代ニューヨークを軸に、ネパール・カトマンズのカマー・タージ、ロンドン、香港、そしてミラー次元、暗黒次元、アストラル次元へと広がる。いずれもMCUに新たに導入された複数の異次元空間だ。中心となる用語は七つに整理できる。「魔術/神秘の術」「スリング・リング」「ミラー次元」「ダーク・ディメンション」「アガモットの目/タイム・ストーン」「サンクタム・サンクトラム」「ソーサラー・スプリーム」である。

本作で魔術は、「信仰」でも「超自然」でもなく、「多元宇宙からエネルギーを引き出して物理的に整形する物理現象」として再定義される。スリング・リングはそのエネルギーをポータルとして放つ装置、ミラー次元は現実に影響を残さず戦うための鏡像空間、ダーク・ディメンションは時間そのものが成立しない一段上の高次元、アストラル次元は魂のみが入る別レイヤー——。こうした階層の整理が、本作で初めて画面上に確定する。

アガモットの目は、本作の段階ではエンシェント・ワン以来「使用を禁じられた強力な道具」として登場し、ストレンジが時間を巻き戻すために独学で用いる。終盤に至ってもこの宝石が何であるかは明かされないが、後年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で「タイム・ストーン」を内包する容器だと正式に確定する。MCUのインフィニティ・ストーンを、出自を伏せたまま静かに導入する——ファイギ流の長期戦略を象徴する一例である。

サンクタム・サンクトラムは、ニューヨーク、ロンドン、香港の三都市に置かれた魔術師の防御拠点だ。三つを頂点に結ぶ結界グローブが、地球全体を暗黒次元の侵食から守っている。ソーサラー・スプリームは三つのサンクタムを束ねる最高魔術師の称号で、本作中はエンシェント・ワンが、本作の後は事実上ウォンがその座を引き継ぐ。ストレンジは『マルチバース・オブ・マッドネス』の時点でもまだ正式な就任には至らない——そうした構造になっている。

舞台と用語

21制作

本作は、これまでMCUが踏み込んでこなかった「魔術」という領域を物語に持ち込み、フェーズ3後半から続くマルチバース・サーガの語彙を一気に整える役割を担った。マーベル・スタジオは、ケヴィン・ファイギの判断のもと、ホラー畑出身のスコット・デリクソンを監督に起用。視覚効果には莫大な予算と時間を惜しみなく注ぐ方針をとった。

制作

企画と脚本

マーベル・スタジオが『ドクター・ストレンジ』の単独作を構想し始めたのは2010年代初頭で、2013年6月にプロジェクトが正式に発表された。当初はギレルモ・デル・トロ、ニール・ブロムカンプ、マーク・アンドリュースらの名が監督候補として取り沙汰されたが、最終的に2014年6月、スコット・デリクソンが起用される。脚本はまずジョン・スペイツが初稿を手がけ、それをデリクソンと長年の共作者C・ロバート・カーギルが大幅に書き直して最終形へと仕上げた。

脚本上の最大の決断は、原作コミックに根づく東洋神秘主義のステレオタイプをそのままなぞらず、エンシェント・ワンから性別と民族の設定を取り払い、魔術を「物理現象」として捉え直したことである。スペイツとデリクソンはインタビューで、本作の精神的な拠りどころとして三つを挙げている。原作者スティーヴ・ディッコによるサイケデリックな見開き、クリストファー・ノーラン監督『インセプション』の都市が折り畳まれていく映像、そしてマーベル・スタジオ社内でジョス・ウェドンが叩き台としていた「事故ですべてを失った男が、まったく別の生き方を学んでいく」という再生の物語。その骨格が下敷きになっている。

クライマックスのドルマムゥとの「無限の取引」は、脚本陣が最後まで模索し続けた末にたどり着いた決着だ。派手な戦闘でもなければ、魔法のビームを撃ち合う対決でもない。ストレンジの知性そのものが勝敗を決する終わり方を、彼らはとことん探した。ファイギも当初は通常のクライマックスを想定していたというが、デリクソンとカーギルが提示したこの案を最終的に採用したと、後年語っている。

企画と脚本

キャスティング

ストレンジ役の最終決定が下されたのは2014年10月。ベネディクト・カンバーバッチは舞台『ハムレット』への出演と重なり、当初はスケジュールの都合で起用は不可能とされていた。だがマーベル・スタジオは本作の主要撮影を半年以上も後ろ倒しにするという異例の決断を下し、彼の出演をつなぎとめた。

エンシェント・ワン役は、まず女性に置き換えることが先に決まり、ティルダ・スウィントンの起用が2015年4月に発表された。モルド役のチウェテル・イジョフォー、ウォン役のベネディクト・ウォンも同じ時期に決まっている。クリスティーン・パーマー役は当初エイミー・アダムスらの名が取り沙汰されたが、最終的にレイチェル・マクアダムスの起用が2015年8月に正式発表された。

カエシリウス役のマッツ・ミケルセンが発表されたのは2015年6月。本作のため、彼はデンマークから米英にまたがる長期撮影に加わった。ジョナサン・パングボーン役のベンジャミン・ブラット、ニコデモス・ウェスト役のマイケル・スターバーグといった脇役陣も、2015年夏までに順次発表されている。

キャスティング

撮影とロケ地

主要撮影は2015年11月4日、ネパールのカトマンズで始まった。カマー・タージの外景には、カトマンズの古い王宮広場とパシュパティナート寺院の周辺が使われ、街路の昼夜の場面は実際の路地で撮影された。MCUとしては初の本格的なネパール現地ロケである。市場の雑踏とリキシャの群れを縫ってベネディクト・カンバーバッチが歩く一連のカットは、街路の本物の質感をそのまま画面に流し込んでいる。

主要セットは英国のシェパートン・スタジオとロングクロス・スタジオに組まれた。ニューヨーク・サンクタムの巨大セット、カマー・タージの図書館、暗黒次元の岩盤などが、ここで築かれている。ニューヨークの街路と病院は、ニューヨーク市とロンドンの双方で撮った実景にCGを合成するハイブリッドで仕上げられた。クライマックスの香港は、中環地区の実景に大規模なCGを組み込み、ロンドン・サンクタムの外観もまた、ロンドンの路地の実景に合成されている。

撮影監督は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』のベン・デイヴィスが務めた。デイヴィスは本作で、ミラー次元の都市が変形していく場面を撮るため、複数台のカメラを多軸の電動雲台に乗せ、CGと整合させる撮影法を確立した。

撮影とロケ地

視覚効果

視覚効果は、インダストリアル・ライト&マジック(ILM)、Framestore、Method Studios、Luma Pictures、Lola VFX、Crafty Apes、Rise FXなど、多数のスタジオが分担した。中心を担ったFramestoreはカマー・タージとカトマンズの街路が変形する場面を、ILMはニューヨークのサンクタムが襲撃されるミラー次元の場面を手がけている。万華鏡のように都市が折り畳まれていく描写には、フラクタル数学に基づく生成アルゴリズムを独自に開発し、約3億ポリゴンを動的に変形させる処理が用いられた。

暗黒次元のドルマムゥは、ベネディクト・カンバーバッチがモーションキャプチャと声を演じた(顔はクレジット非公表)。ドルマムゥの本体は粒子状のフラクタル雲として設計され、Method Studiosが約1年をかけて作り上げている。本作の最終的なVFXショット数は約1450に達し、第89回アカデミー視覚効果賞にノミネートされた(受賞は『ジャングル・ブック』)。

「ボディ・リダクション」をはじめとするデジタルな肉体改変技術は本作では使われていない。ストレンジの両手の傷と震えは、Lola VFXによるフレーム単位の合成と、カンバーバッチ自身の演技という二段構えで作り出されている。

視覚効果

音楽

音楽を手がけたのはマイケル・ジアッキーノ。J・J・エイブラムスのテレビ・映画作品(『LOST』『M:i:III』『スター・ウォーズ』)や、ピクサーの『カールじいさんと空飛ぶ家』『インサイド・ヘッド』、後の『スパイダーマン:ホームカミング』『ジュラシック・ワールド』などで知られる作曲家である。MCU本編への参加は、本作が初めてとなった。

本作のメインテーマは、ハープシコードと弦楽の絡みにシタールと声の合唱を重ね、古典的なクラシックと東洋の音色を融合させて書かれている。コンサート用の組曲では「The Master of the Mystic End Credits」として、エンドロールを彩る長い旋律を完全な形で聴くことができる。このテーマは、後の『マルチバース・オブ・マッドネス』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『シー・ハルク』など、ストレンジが登場する作品で何度も引用された。MCUにおける「魔術師の主題」として確立した旋律だ。

音楽

編集と公開準備

編集はワイアット・スミスとサブリナ・プリスコが担当した。本作はミラー次元、暗黒次元、アストラル次元、そして現実世界という複数の空間が頻繁に切り替わる構造をとる。そのため編集作業は、長期に及ぶVFXショットの作業と並行して進められた。サンクタム襲撃のシーンは、当初の脚本では別の構成だったが、編集段階で組み替えられ、レビテーションのマント、そしてストレンジの「不本意な戦闘」を際立たせる方向へとまとめ直されている。

本作のミッドクレジットとポストクレジット、計2本の追加シーンは本編とは別に撮影された。なかでもミッドクレジットのソー登場場面は、『マイティ・ソー バトルロイヤル』本編の冒頭部にそのまま転用することを前提に設計されている。これは『マイティ・ソー バトルロイヤル』を手がけるタイカ・ワイティティと、本作のスコット・デリクソンが共同で打ち合わせを重ねたうえで撮影したもので、MCU初の「ポストクレジット直通」の事例である。

編集と公開準備

28公開と興行

米国公開は2016年11月4日。日本では翌2017年1月27日に劇場公開された。米国初週末の興行収入は約8500万ドルにのぼり、フェーズ3の単独作の初登場としては『シビル・ウォー』に次ぐ堅実な滑り出しを記録した。最終的な米国内興収は約2億3260万ドル、全世界興行収入は約6億7770万ドルに達し、製作費約1億6500万ドルに対して興行的にも明確な成功を収めた。

批評家からの評価も高い。Rotten Tomatoesの批評家支持率は89%、メタスコアは72点、CinemaScoreはAを獲得した。多くの批評家がカンバーバッチの造形、ミラー次元の映像表現、そしてドルマムゥとの取引による異色のクライマックスを高く評価した。一方で、エンシェント・ワンを白人俳優が演じたことへの文化的な批判や、序盤の「天才医師が事故に遭い再起する」というプロットの定型性を指摘する声も少なくなかった。

第89回アカデミー賞では視覚効果賞にノミネートされた(受賞は『ジャングル・ブック』)。第43回サターン賞ではファンタジー映画賞にノミネートされたほか、ベネディクト・カンバーバッチの主演男優賞、ティルダ・スウィントンの助演女優賞、視覚効果賞などでもノミネートを果たした。

公開と興行

29批評・評価・文化的影響

本作最大の功績は、MCUに「魔術」という新たなジャンルを持ち込み、その視覚言語をわずか一作で確立してみせたことにある。ミラー次元で都市が折り重なり変形していく描写は、クリストファー・ノーラン『インセプション』のパリ折り畳みを意識的に受け継ぎながら、フラクタルと鏡像の幾何学にまで踏み込んでいる。ノーラン以後、最も影響力のある「都市が武器と化す場面」の一つとして記憶された。後年の『マルチバース・オブ・マッドネス』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『シー・ハルク』『デッドプール&ウルヴァリン』が、魔術師の所作を当然のように画面で扱えるのは、本作がその語彙を築いたからにほかならない。

ドルマムゥとの「無限の取引」によるクライマックスは、MCUのなかでも特異な決着として広く論じられてきた。後年には「殴り合いではなく知性による勝利」の象徴的な事例として、シリーズ全体の脚本論で繰り返し引用される位置に立った。『インフィニティ・ウォー』でストレンジが指を立て、サノスに「唯一の勝ち筋」を示す所作、『エンドゲーム』で時間と引き換えにトニーへ勝利の合図を送る所作——その源流はすべて、本作のドルマムゥ取引の一場面にある。

一方で、エンシェント・ワンの白人化問題は本作最大の批判点として残った。監督のスコット・デリクソン自身も後年、「他の解決があり得た」と公の場で反省を述べている。原作コミックの東洋神秘主義をいかに現代化するか——マーベル・スタジオが抱えたこの課題は、本作の試みと躓きを経て、後の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』へとアプローチを更新していくことになる。

批評・評価・文化的影響

舞台裏とトリビア

「ドルマムゥ、取引に来た(Dormammu, I've come to bargain.)」というこの台詞は、公開後に英語圏のミーム文化で爆発的に広まった。終わりのないループに囚われる状況のパロディとして、繰り返し引用されるようになったのだ。日本語圏でも「無限ループ」を言い表す比喩として定着し、本作を観ていない層にまでタイトルだけが知れ渡るという現象が起きた。

レビテーションのマント(宙に浮く魔法のマント)は、実物の赤い布をワイヤーで操る実写演出と、Framestoreによる全身CGの演出を併用して生み出された。意志を持つ「キャラクター」としてのマントの造形は、その多くが撮影現場でのカンバーバッチと相方役のマントとの即興芝居から生まれている。ストレンジに敵を絞めさせる動き、彼の頬を撫でる動き、ストレンジが立ち止まると同じ方向へ振り返る動き——そのいずれもが、現場で「半ば独立した相棒」として形づくられていった。

ベネディクト・カンバーバッチは本作のため、カリフォルニア神秘研究所(CIIS)と、ロサンゼルスの神経外科専門医のもとで、瞑想と外科手術の双方の所作を約半年かけて学んだ。冒頭の脳手術シーンに見られる手の動きは、現役の神経外科医の指導に基づく、ほぼ正確な所作になっている。

ベネディクト・ウォンとベネディクト・カンバーバッチによる「ダブル・ベネディクト」の共演は、本作の現場で長く語り草となった。後年の『シー・ハルク』の法廷シーンに至るまで、複数の作品で楽屋落ちのギャグとして引用されることになる。スタン・リーのカメオは、ニューヨークの市バスの車内で『オルダス・ハクスリーの知覚の扉』を読みながら笑い転げる一場面で確認できる。

舞台裏とトリビア

31テーマと解釈

物語の核にあるのは「傲慢からの転落と、別の生き方の受容」だ。冒頭のストレンジは、自らの手と知性だけで人生を切り開いてきた男である。その手を失った瞬間、彼は世界そのものから放り出される。前半90分は、失われた手を取り戻そうと奔走する再生の物語として進む。だが終盤、彼が下す決断はもはや「手を取り戻す」ことではない。「自分を超えるものを守るために、終わらない苦痛と死を引き受ける」——そう方向を転じるのだ。本作が描くのは肉体の回復ではなく、自我の使い道そのものの組み替えである。

二つ目の軸は「規律と逸脱の倫理」である。エンシェント・ワンは、地球を守るために長年規律を破ってきた。モルドはその規律を絶対のものとし、師の二重性を受け入れられずに離反する。一方ストレンジは終盤、時間そのものを巻き戻し、ドルマムゥと永遠の取引を交わす——いずれも本来は禁じられた行為だ。本作の倫理は「規律を守れば正しい」のでも「目的のためなら何でもよい」のでもない。「規律を破る代償を、自分一人の肩で背負える者にしか、その破り方は許されない」。そんな灰色の領域に、この物語は据えられている。

三つ目の軸は「時間と死の受容」である。カエシリウスは「死そのものの撤廃」を求めて闇に堕ち、エンシェント・ワンは長年の延命の果てに静かに死を受け入れる。そしてストレンジは、無限の死のループを自ら引き受けて世界を守る。三者三様の「死との向き合い方」が、本作の哲学的な背骨をかたちづくっている。永遠の命を求める者は飲み込まれ、終わりを受け入れる者だけが先へ進める——古典的なテーゼをMCUの語彙で精密に描き直した一作として、本作は長く参照されていくはずだ。

テーマと解釈

32見る順番

初めて観るなら、フェーズ3の流れに沿った公開順がいちばん分かりやすい。『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』(2016)の次に本作を置き、続けて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『スパイダーマン:ホームカミング』『マイティ・ソー バトルロイヤル』へと進む。本作のミッドクレジットに登場するソーが、そのまま『バトルロイヤル』の冒頭へと接続する。本作とラグナロクは続けて観る価値が大きい。

ストレンジを軸に作品系列を集中して追いたいなら、本作 → 『インフィニティ・ウォー』 → 『エンドゲーム』 → 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 → 『マルチバース・オブ・マッドネス』の順がいい。魔術師としての成長と、多元宇宙へ踏み込んでいく道のりを一直線に追える。

見る順番

33よくある質問

あらすじだけを手早く知りたいなら、四段の流れを押さえれば十分だ。傲慢な外科医が事故で両手を失い、ネパールのカマー・タージで魔術を学ぶ。やがてカエシリウスとドルマムゥの脅威から地球を守り、最後にニューヨーク・サンクタムの守護者となる――この道筋である。結末やネタバレまで知りたい場合は、エンシェント・ワンの死、時間の巻き戻し、ドルマムゥとの無限の取引、モルドの離反、そしてポストクレジットで描かれるパングボーンの能力剥奪までが核心となる。

作品評価の中心にあるのは、MCUに魔術という新たなジャンルを持ち込み、ドルマムゥとの取引という異色のクライマックスを成立させた点だ。一方で、エンシェント・ワンを白人として描いたことへの批判も根強い。功罪の両面を踏まえて読むのが落ち着くところだろう。観る順番については、本作だけを先に観るよりも、『シビル・ウォー』の後に本作を、続けて『マイティ・ソー バトルロイヤル』へと進むのが最も分かりやすい。

「アガモットの目はインフィニティ・ストーンなのか」という問いに対しては、本作の段階では明示されない、というのが正確な答えだ。その正体は後年の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、タイム・ストーンを内に秘めた容器であることが確定する。本作は出自を伏せたまま、この伏線を静かに置いているのである。

34参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行成績、制作・配信の状況、外部からの評価は時とともに変わりうるため、視聴前に公式サイトや各データベースの最新の表示を確認されたい。なお本記事の本文は、各種の公開情報をもとに、Anna Movies独自の日本語記事として構成したものである。

参考資料・出典 (5件)
  1. Marvel公式 ドクター・ストレンジ作品ページ
  2. IMDb: Doctor Strange (2016)
  3. Rotten Tomatoes: Doctor Strange (2016)
  4. Box Office Mojo: Doctor Strange
  5. Marvel Cinematic Universe Wiki: Doctor Strange (film)