オビ=ワン・ケノービは、2022年にディズニープラスで配信されたスター・ウォーズの実写ドラマである。全6話の限定シリーズで、ジェダイが狩られる暗黒時代を舞台に、身を潜めて暮らす元ジェダイ・マスターのオビ=ワン・ケノービを描く。物語はかつての弟子アナキン――ダース・ベイダーとの因縁に再び向き合う内容であり、プリクエル・トリロジーと旧三部作の間の空白を埋める橋渡しとして位置づけられる作品である。
00概要
『オビ=ワン・ケノービ』(Obi-Wan Kenobi)は、ジョビー・ハロルドがヘッドライターを務め、デボラ・チョウが全6話を単独で監督したディズニー+オリジナルの限定実写ドラマ・シリーズである。米国では2022年5月27日にPart I・Part IIが同時配信され、以後は毎週水曜日に1話ずつ追加されて、6月22日のPart VIで完結を迎えた。当初はキャスリーン・ケネディ体制のもとで劇場用スピンオフ映画として企画されていたが、社内の方針転換に加え、ロン・ハワード『ハン・ソロ』の興行不振を経て、連続ドラマへと作り直された経緯がある。
舞台は『シスの復讐』の約10年後、オーダー66から10年が過ぎたジェダイ狩りの時代だ。共和国は銀河帝国に塗り替えられ、生き残ったジェダイは身を潜めて暮らすほかなく、皇帝直属のフォース使い狩り組織〈インクィジトリウス〉が執拗に彼らを追う。タトゥイーンの砂漠の岩穴で、ベン・ケノービと名乗って息をひそめるオビ=ワン・ケノービ。双子の片割れである幼いルーク・スカイウォーカーをラーズ家の遠くから見守る以外には何も為さず、信仰と師弟の絆をともに失った男として、朽ちかけていた。
物語を動かすのは二つの存在である。一つは、アルダーアンに養女として育てられた10歳のレイア・オーガナ。誘拐された彼女を救うため、オビ=ワンはタトゥイーンの隠れ家を出て、星々を渡っていく。もう一つは、みずから手にかけたと信じていた旧弟子――アナキン・スカイウォーカーが、ダース・ベイダーとして変わり果てた姿で生きているという事実だ。本作はこの二つの再会を6話に分けて描き、プリクエル三部作と旧三部作のあいだに横たわってきた感情の空白に、橋を架けていく。
本作の意義は、俳優たちの再集結にもある。イーワン・マクレガー(オビ=ワン)とヘイデン・クリステンセン(アナキン/ベイダー)が、2005年の『シスの復讐』以来17年ぶりに同じ役で同じ作品に立ち、ジェームズ・アール・ジョーンズが(高齢のため過去収録音声と機械合成を組み合わせる形で)ベイダーの声をふたたび務めた。本記事では、配信履歴、全6話のあらすじ(結末まで)、登場要素、主要人物、制作、公開と評価、テーマ、見る順番までを順に追い、この限定シリーズが旧三部作直前の銀河に何を加えたのかを整理していく。
主要データ
- 原題
- Obi-Wan Kenobi
- クリエイター/脚本統括
- ジョビー・ハロルド
- 全話監督
- デボラ・チョウ
- 音楽
- ナタリー・ホルト/ジョン・ウィリアムズ(〈オビ=ワン〉テーマ)
- 主演
- イーワン・マクレガー(オビ=ワン・ケノービ)
- 全話数
- 6話(Part I〜Part VI)
- 配信
- ディズニー+(2022年5月27日〜6月22日)
- ジャンル
- スペースオペラ/SFアクション/西部劇調/ロード・ムービー
配信履歴と章構成
本作は全6話で完結する限定シリーズである。シーズン2の追加製作については、2022年8月の時点で「現状、計画はない」と公式に発表された。だが、その後も主演のイーワン・マクレガーが続編への意欲を語り続けており、可能性が完全に断たれたわけではない。
配信は2022年5月27日、Part IとPart IIが同時に公開された。Part IIIから最終話のPart VIまでは、毎週水曜(米国時間)に1話ずつ追加されている。各話には〈Part〉のローマ数字が付され、章番号と扉文字が映画的な区切りを演出する。上映時間は各話おおむね40〜60分台。初回と最終回が長尺、中盤は短めという、限定シリーズらしい起伏の付け方だ。本ガイドでは、この章番号に沿って物語を追っていく。
02あらすじ
ここから先は、全6話の物語を結末まで時系列で追ったあらすじである。本作は、前日譚(プリクエル)の結末を前提に進む。アナキンの転落、双子の引き離し、共和国から帝国への移行、そして壊滅寸前まで追い詰められたジェダイ――こうした出来事を踏まえて展開するため、まだ観ていないなら、本編を観たあとに読んでほしい。
タトゥイーンの男
冒頭、プリクエル三部作の終局――オーダー66で執行された〈ジェダイの大粛清〉――が、断片的な悪夢として呼び起こされる。ジェダイ・テンプルに突入するクローン部隊。逃げ惑うパダワンとマスターたち。追い詰められる年若いユーリングのカット。そして、眠りから引き剥がされるように目を覚ます一人の男――。物語が現在として幕を開けるのは、双つの太陽が照りつける惑星タトゥイーンだ。岩窟の集落で雑役夫として暮らすその男は、オーダー66から10年を経たオビ=ワン・ケノービ。いまは〈ベン〉と名乗っている。
オビ=ワンの日常は、家畜の解体所での労働、独居の小屋、そしてジョール・エドガートン演じるオーウェン・ラーズの農場を遠くから見守ることの繰り返しである。砂漠の彼方には、亡き親友の血を引く幼いルーク・スカイウォーカーがいる(ここでは家庭で暮らす幼い男の子として遠景に置かれる)。「ルークに会わせてくれ」とオーウェンに接近したオビ=ワンだが、養父は頑として拒む。アナキンの息子をジェダイの世界から遠ざけて守るため、オーウェンは元師の関与をことごとく断ち切ろうとしているのだ。
並行して、銀河の別の場所では、皇帝の意を受けたインクィジトリウス(尋問官団)が、身を潜めて生きるジェダイ狩りを続けている。グランド・インクィジターを筆頭に、第三妹(サード・シスター)レヴァ、第五兄弟(フィフス・ブラザー)が登場。地下の街でひっそり営業を続ける貧しい食堂へ踏み込み、店主にまぎれていた元ジェダイのナリを脅して呼び出す。第三妹レヴァは粗暴で野心をむき出しにし、グランド・インクィジターから「ケノービなど死んだ亡霊だ。今は別の獲物がいる」と諭されてもなお、オビ=ワン狩りに執着する。その執着ぶりが、すでに観客に「彼女には個人的な理由がある」と告げている。
もう一つの惑星アルダーアンでは、上院議員ベイル・オーガナ(ジミー・スミッツ)と妻ブレハの養女として、10歳のレイア・オーガナ(ヴィヴィアン・ライラ・ブレア)が育っている。木に登り、退屈な式典を抜け出し、ドロイドのL0-LA59〈ローラ〉を相棒に駆け回る。年齢相応に活発なレイアは、とても王女らしい振る舞いには収まりきらない。だが家族の食卓で従兄からからかわれ、自分が養女であること、「ほかのオーガナ家の人たちとは違う」のだと意識させられる。この場面が、後半の主題への伏線として置かれている。
そのアルダーアンの森で、レイアは何者かに襲われ、誘拐される。ベイルは内密の処理を望んだ。本国の警備や新生帝国に通報するのではなく、二度と頼むまいと誓っていたかつての盟友――ベン・ケノービにホロメッセージで助力を請う。「アナキンの血を引くあの子を守れたあなたなら、彼女も救えるはずだ」。オビ=ワンは当初これを拒み、ナリの「助けてくれ」という嘆願にも応じず、いまの自分はジェダイではないとライトセーバーを岩の下に埋め直す。だが「あの子は私の娘なのだ」というベイルの訴えが、ついに10年の自己幽閉を断ち切らせる。雇った船で大都市惑星ダイユーへ向かうオビ=ワン。Part Iの幕切れ、男はようやくフードを目深に被り直し、再び銀河の流れのなかへ踏み出していく。
ダイユーの追跡
ダイユーは、ネオン管と縦に積み上がったスラム街が広がる都市惑星だ。低重力だが治安は悪い。この街でオビ=ワンが頼るのが、ジェダイになりすましてフォース・ヒーラーや護衛を装い、小銭を稼ぐ詐欺師ハジャ・エストリー(クメイル・ナンジアニ)である。初対面のハジャは「自分こそ生き残りのマスターだ」と嘯くが、オビ=ワンに本物のフォースを使われるや、たちまち化けの皮が剥がれ、誘拐犯の隠れ家を白状する。
誘拐を実行したのは、レヴァの命令で動く下級の賞金稼ぎたちだった。レヴァがレイアをさらわせた理由はただひとつ、「ケノービは必ず娘を取り戻しに来る」というそれだけ――つまりレイアの誘拐は、はじめからオビ=ワンを誘き出すための囮なのである。屋上の追走、そして工場の足場での攻防を経て、オビ=ワンはようやくレイアと対面する。だが、ジェダイを信じる物語のなかで育った10歳の少女は、口数が多く、警戒心が強く、こちらの本性を試そうとしてくる。体の小ささに似合わぬ知性と、意地っ張りな気性。それは後年の元老院議員レイアの原型として描かれている。
夜の屋上で、オビ=ワンとレヴァがはじめて刃を交える。レヴァは粗野で力任せの戦い方だが、その口で「あなたが私を覚えていなくても、私はあなたを覚えている」とほのめかし、やがて決定的な一言を投げつける――「いいや、もう逃げられない。アナキンは生きている」。気を取り直そうとするオビ=ワンの瞳に、観客と同じ衝撃が走る。10年もの間「自分が殺した弟子の幻」だと思い込んできた、その重みを、彼はこの一瞬で失う。レイアを連れて辛うじて逃れ、雇船を求めて港へ走るオビ=ワン。その背中に、Part IIの幕が降りる。
マプーゾの再会
ダイユーで乗り込んだコンテナ船に揺られ、オビ=ワンとレイアは採掘惑星マプーゾへと降り立つ。星を脱出する船を確保するまでのわずか数時間が、本作前半最大の山場である。マプーゾは旧共和国の時代から鉱業に酷使され、疲弊しきった辺境の星だ。住民の多くは、帝国の搾取に静かな憎悪を抱いている。一行に手を差し伸べるのは、表向きは帝国軍士官のタラ・デューリス少佐(インディラ・ヴァルマ)。だがその正体は、元帝国軍人でありながらジェダイの遺児たちを脱出させる地下組織〈ヒドゥン・パス(隠された道)〉に協力する者だ。彼女は本作の精神的な支柱の一人である。かつて悪に手を貸した過去を背負い、いまは人を逃がす側に立つ――その贖罪の物語を担っている。
やがて、ダース・ベイダーがマプーゾに姿を現す。荒野を進むその姿は遠景でとらえられ、住民を一人、また一人と虐殺していく。冷酷きわまるそのやり口は、オビ=ワンを表へ引きずり出すための罠だ。逃走するオビ=ワンに「行ってはだめ、戻って」とタラが叫ぶ。それでも彼はレイアを彼女に託し、単身で旧弟子と対峙する。
プリクエル以来、17年ぶりとなる二人の再対決は、宿命的に短く、そして決定的なまでに屈辱的なものとして組み立てられている。10年のあいだ〈ベン〉として怠惰に身を隠してきたオビ=ワンと、皇帝の代理人として日々その怒りを研ぎ澄ましてきたベイダー。両者の差は歴然だ。オビ=ワンは数合で押し込まれ、武器をはじき飛ばされる。ベイダーは彼を地に倒すと、フォースで近くの焚き火へと引きずり、油だまりに火を放ち、生きたまま炎の海のなかに縛りつける。タラが偽の通信で「囮の作戦に成功しました」と無線で誘導しなければ、オビ=ワンはそこで燃え尽きていただろう。かつてムスタファーで自らが弟子に対して行ったことを、いまは立場を逆にして自らが受ける――激しい因果の構図が、そのまま画面に置かれている。
辛くも救い出されたオビ=ワンは、ヒドゥン・パスの隠れ家へと運ばれる。心も身体も焼かれた男に、レイアが問う。「いつかまた、あんな人に勝てるの」。彼は「私はもう、あの頃のオビ=ワン・ケノービではない」とだけ答える。Part IIIの幕は、彼が炎に焼かれた事実そのものよりも、〈アナキンと戦って勝てるだけの自分は、もうここにはいない〉という認識を彼自身に突きつけて閉じる。
フォートレス・インクィジトリウス
ヒドゥン・パスの拠点で目覚めたオビ=ワンは、致命傷から驚異的な速さで回復していく。だが、ベイダーが捕らえているのはもはやレイアだった。彼女は海洋惑星ヌア(Nur)の海底要塞〈フォートレス・インクィジトリウス〉へ連行されていた。ここはオーダー66以後にインクィジトリウスが本部として用いる場所であり、捕らえたジェダイの生死を分かつ尋問拘禁施設である。
本作中盤の山場として組まれるPart IVは、純粋にハイスト(救出作戦)映画の文法に従う。元士官のタラ・デューリスは制服と通行コードを使って施設へ潜入し、水中スーツに身を包んだオビ=ワンを導いていく。タラは廊下の警備兵を撃たず、できる限り殴り倒して先へ進む。一方、尋問室のレイアは恐怖と痛みに耐えながら、自分はベイル・オーガナの娘であり、ヒドゥン・パスのことなど何も知らないと頑なに口を閉ざす。少女レイアの強さは、戦闘能力ではなく、こうした〈口を割らない〉場面で繰り返し示される。
床のグレーチング越しに彼女を見つけたオビ=ワンが、暗証のために「ある合言葉」を声に出す——声で生き延びるこの演出こそ、Part IVを象徴する場面だ。脱出は警報の発令と並走し、わずか数歩の遅れで一行はガンシップへ駆け込む。タラは負傷しながらも生き延び、オビ=ワンに〈ナリの遺品〉である小さなホロクロンと、ヒドゥン・パスの次の中継地ジャビイムの座標を渡す。レイアの救出は成功する。だが、ベイダーの追跡者にとっては〈大きな魚をジャビイムへ追い込む〉ことに成功した——勝利の裏返しという構造で、章は静かに閉じる。
レヴァの真実
Part Vは、本作で最大の脚本上の転回を担う一篇だ。舞台はジャビイムの隠れ家。ヒドゥン・パス(帝国の追跡を逃れるための地下脱出網)を通って星を離れようと、元ジェダイ、家族連れ、フォース感受性の子どもたちが集まり、ガレージのような倉庫に肩を寄せ合っている。オビ=ワンは彼らを安全に逃がし、自分は最後に脱出するつもりでいる。
そこへ、ベイダーの艦隊と帝国軍歩兵を率いるレヴァが急襲をかける。脚本はここに二重の構造を仕込んでいる。ジャビイムへの追跡そのものはベイダーが意図して仕掛けた罠であり、レヴァが「ここを潰したあと、ベイダーを背後から討つ」と密かに目論んでいることを、ベイダーは初めから見抜いているのだ。
倉庫での籠城戦のさなか、オビ=ワンはレヴァに対話を試みる。本作最大の真相が明かされるのはこの場面だ。断片的に挿入されるフラッシュバックが示すのは、レヴァがオーダー66の夜、ジェダイ・テンプルに居合わせたユーリング(ジェダイの幼い修練者)の一人だったという事実である。倒れた仲間たちのなかに身を潜めて生き延びた彼女が、その血の海に立つ姿を目にした――すでにベイダーへと変わり始めた〈アナキン・スカイウォーカー〉を。育てられたのではなく〈見過ごされて〉生き延びた子どもが、その後の人生のすべてを〈ベイダーへの復讐〉に費やしてきた。それがレヴァだ。彼女が常軌を逸してオビ=ワン狩りに執着していたのも、〈昇進してベイダーに近づき、油断させ、背後から斬る〉という、長年ただ一人で温めてきた作戦のためだった。
倉庫の戦闘は、レヴァの内部からの裏切りによって帝国軍がいったん引き、オビ=ワンの一団はレイアと隠れ家の主要メンバーを連れて辛うじて星を脱出する。やがてレヴァは、ベイダーが自分の艦に降り立った隙を突き、背後からダブルブレードのライトセーバーで斬りかかる。だが、ベイダーは初めから彼女の刃を読んでいた。逆にフォースで武器を奪われ、剣で貫かれて昇降機の床に倒れ伏す。Part Vの引きは、敗れて横たわるレヴァを冷然と見下ろすベイダーが、僚艦へ通信を入れる場面だ――「ケノービの船を追え。そこに〈ベイル・オーガナの娘〉がいる」。ベイダーがレイアの正体を最終話で知るかもしれない――観客はここで初めて、その可能性を突きつけられる。
再会と決別
最終話は、二つの物語が交互に編まれていく。一つはオビ=ワンとベイダーの最後の対決。もう一つは満身創痍のレヴァが、ベイダーから盗み聞いた情報を頼りにタトゥイーンのラーズ農場へ向かい、幼いルーク・スカイウォーカーの命を狙う線である。
ヒドゥン・パスを乗せた船から逃れたオビ=ワンは、追ってくるベイダーの艦から仲間とレイアを逃がすため、自分だけ小型艇で荒涼たる無人衛星へと降り立つ。やがてベイダーもその地に降り、二人は最後の決闘へと入っていく。Part IIIで炎のなかに味わった屈辱とは違い、ここでのオビ=ワンは、隠遁の10年で失っていたフォースとの繋がりを取り戻している。道中でジェダイたちを逃がしてきたこと、レイアを守るために身を捧げた決意、そしてアナキンが生きているという事実を受け止めた覚悟――それらが、彼を再びジェダイ・マスターへと立ち返らせていた。
激闘の果てに、オビ=ワンはベイダーのヘルメットの片側を斬り裂く。割れた面甲の奥から覗くのは、焼け爛れたアナキン・スカイウォーカーの顔だ。ここで本作のもっとも有名な台詞のやり取りが置かれる。「アナキン……すまない、本当にすまなかった」と詫びるオビ=ワン。対するベイダーの傷ついた口は、機械音声と素の声が交じりあう奇妙な二重音で答える――「ベン、お前の友人〈アナキン〉は私が殺した。お前が殺したのは彼ではない」。罪の意識を背負い続けてきたオビ=ワンに、ベイダー自身が〈アナキンはもうここにいない〉と告げて解き放つ。この場面こそ、シリーズ全体のクライマックスとして組まれたものだ。オビ=ワンは涙を流しながら、もう一度〈さらば〉とだけ告げてその場を去る。倒れたベイダーは、息を整え、自らの手でヘルメットの面甲を起こす。
一方タトゥイーンでは、ラーズ農場へ侵入したレヴァが、隠れて逃げる幼いルークを追い詰めていく。オーウェンとベルーは、敵わぬ相手と知りつつ少年の前に立ち塞がる。ベイダーへの復讐をルーク殺しで遂げようとしたレヴァだったが、震える刃を子どもに突き立てる寸前で動きを止める。自分が殺そうとしている存在が、〈オーダー66の夜の自分自身〉と重なることに気づいたのだ。意識を失ったルークを抱いて農場へ届けたレヴァは、駆けつけたオビ=ワンに問う。「私もあの子と同じになるのか」。オビ=ワンは答える。「ならない。お前はあの子を選んだ」――そして、彼女のなかにまだ残っていた〈レヴァではない名前の少女〉へと手を伸ばす。
決着のあと、オビ=ワンはアルダーアンへレイアを送り届ける。ベイルとブレハの前で、養女として育てられるレイアの本当の名と血筋に触れる――ただし、その真実を本人に告げるかどうかはオーガナ夫妻の判断に委ねられる。この場面で、本作と『新たなる希望』冒頭のホログラム「あなたが最後の希望です」とのあいだに、細い一本の線が引かれる。
幕切れはタトゥイーンの夕暮れだ。ラーズ農場を訪れたオビ=ワンは、オーウェンに短く詫びる。「離れて見守るだけにする。だが、お前の言うとおりだった、私の罪をルークに負わせるべきではなかった」。そして扉から顔を出した幼いルークに、初めて〈ベン〉として挨拶を交わす――この三秒ほどのカットが、シリーズ全体の感情の重心を担っている。砂丘の岩陰へと歩き去るオビ=ワンの前に、若々しい笑い声とともに、古い友人のフォース・ゴーストが姿を見せる。リーアム・ニーソン演じるクワイ=ガン・ジンの「ようやく見えるようになったか、私の昔の弟子よ」という台詞で、本作は幕を閉じる。続く『新たなる希望』冒頭でオビ=ワンがフォースを操り、ベイダーに討たれてフォース・ゴーストとなる――その旅路の最初の一歩を、観客はここで見届けるのだ。
登場要素
本作に登場し、また言及される主な要素を分類して紹介する。固有名詞の数々はシリーズ全体をつなぐ結び目だが、初見ですべて覚え込む必要はない。まずは登場人物が、それぞれの場面で何を選び取っていくのかを追う。そうした見方こそ自然だろう。
- オビ=ワン・ケノービ/ベン・ケノービ
- ダース・ベイダー/アナキン・スカイウォーカー
- レイア・オーガナ
- ルーク・スカイウォーカー
- ベイル・オーガナ
- ブレハ・オーガナ
- オーウェン・ラーズ
- ベルー・ホワイトサン・ラーズ
- タラ・デューリス少佐
- ハジャ・エストリー
- ローケン
- サリー・スターロス
- ナリ
- クォミ
- クワイ=ガン・ジン(フォース・ゴースト)
- 皇帝パルパティーン(ホログラム)
- グランド・インクィジター
- 第三妹レヴァ・セヴァンダー
- 第四姉妹
- 第五兄弟
- 皇帝パルパティーン
- プリン・フォルテンナ(賞金稼ぎ)
- ヴェクト(賞金稼ぎ)
- ストーム・トルーパー
- パートルーパー(特殊部隊)
- 人間
- イーワッキ
- ロディアン
- サリン
- アクアリッシュ
- ジャワ
- タスケン・レイダー
- アムバライン(マプーゾ住民)
- NED-B(ヒドゥン・パスの貨役ドロイド)
- L0-LA59〈ローラ〉(レイアの相棒)
- プローブ・ドロイド(インクィジトリウス)
- 尋問ドロイド
- ナリの偵察機
- バンサ
- タトゥイーンの家畜
- ダイユーの蛇状ペット
- マプーゾの坑道で働く家畜
- タトゥイーン(モス・アイズリー、アンカーヘッド、ラーズ農場、ジャンドランドの荒野)
- アルダーアン(オーガナ家宮殿、王宮の森)
- ダイユー
- マプーゾ
- ジャビイム(ヒドゥン・パス安全な家)
- ヌア(フォートレス・インクィジトリウス)
- ジェダイ・テンプル(フラッシュバック)
- 銀河帝国
- インクィジトリウス(尋問官団)
- ヒドゥン・パス(隠された道)
- アルダーアン王家
- 賞金稼ぎギルド
- 帝国宇宙艦隊
- シス・ロード
- ジェダイ・マスター(過去の称号)
- インクィジトリウス・トランスポート(爪型船)
- TIEファイター
- 帝国スター・デストロイヤー
- アクアリッシュ製コンテナ船
- ヒドゥン・パス貨物船
- サンドクローラー
- イオパイ・スターハッパー(雇船)
- オビ=ワンの旧アイウィング型機
- ライトセーバー(オビ=ワン/アナキン/レヴァ/グランド・インクィジター/第四・第五)
- ダブルブレード型インクィジター・セーバー
- ブラスター・ライフル
- ベイダーのフェイス・マスクと生命維持装置
- バクタ・タンク
- ホロクロン
- ホログラム通信
- ベスカール装甲(言及/背景)
- フォース
- ダークサイド
- オーダー66(命令66)
- 大ジェダイ・パージ
- フォース・ヒーリング(治癒)
- フォース・チョーク
- フォース・ゴースト(クワイ=ガン)
- シャッターポイント(精神的破断)
- 贖罪と赦し
10主要登場人物
本作の登場人物は、誰もが〈10年前に何を失ったか〉を出発点として動きだす。その喪失とどれだけ距離を置いているか――遠いのか、近いのか、それともまだ手の届くところに残っているのか。その違いが、それぞれの選択を決定づけていく。
オビ=ワン・ケノービ/ベン
プリクエル三部作で快活な〈交渉人〉として描かれたオビ=ワンは、本作では〈生き残ってしまった者〉へと姿を変えている。ジェダイ・マスターの規範を捨てたわけではない。だがそれを誰のために振るうこともできず、ライトセーバーを岩に埋め、雇われの屠殺工として日銭を稼ぐ。その姿は、彼が自らに科した懲罰のように映る。
彼を再び突き動かすのは、戦いそのものへの欲ではない。アナキンの娘を救い、アナキンの息子を守り、ジェダイの遺児たちを逃がす——守るべき具体的な〈他者〉である。物語が進むにつれてフォースとの繋がりが戻り、Part VIで再びマスターとしての存在感を取り戻す。本作は彼を強くする物語ではない。〈もう一度ジェダイになる〉ことを許す物語として組まれている。
イーワン・マクレガーは2005年の『シスの復讐』以来、17年ぶりに同じ役を演じた。年齢を重ねた声と身体の重みが、当時の若々しい演技と、『新たなる希望』のアレック・ギネスが湛えた静謐さの間を埋めていく。
関連リンク
ダース・ベイダー/アナキン
本作のベイダーは、皇帝の道具としてではなく、〈オビ=ワンへの個人的な復讐〉に取り憑かれた存在として描かれる。タトゥイーンで別れて以来10年、ムスタファーの溶岩に身体と心の両方を焼かれ、捻じ曲げられたまま、いまなお師の存在を許せずにいる。Part III/Part VIの二度の決闘が映し出すのは、銀河の覇権を賭けた戦いではない。私的な怨恨と、行き場を失った自己嫌悪とがぶつかり合う、きわめて個人的な対決である。
ヘイデン・クリステンセンはスーツの中で立ち姿と挙動を演じ、Part VIで割れた面甲の奥に焼け爛れた顔をのぞかせる場面では、プリクエル時代の素顔を蘇らせた。声を担ったのは晩年のジェームズ・アール・ジョーンズで、過去の収録音声と機械学習による合成(プロジェクト〈Respeecher〉)を組み合わせている。本人公認のもと、彼自身の声色がそのまま受け継がれた。
レイア・オーガナ
本作のレイアは10歳の少女だ。アルダーアン王宮の庭を駆け回り、退屈な式典を抜け出しては機械いじりに熱中する。自分より大柄な相手にも、口で立ち向かう。後年に元老院議員となるレイアの原型——その知性、頑なさ、議論で相手を打ち負かす気質は、すでにこの幼い全身に宿っている。
ヴィヴィアン・ライラ・ブレアは年齢を感じさせない演技で〈大人を試す子ども〉という難しいニュアンスを体現し、オビ=ワンとの旅を二人芝居のロード・ムービーへと引き上げた。後の『新たなる希望』冒頭で、レイアがデータカートを託す相手として〈ベン・ケノービ〉の名を口にする——その自然さは、この旅をともに越えたからこそ生まれたものだ。
関連リンク
第三妹レヴァ・セヴァンダー
レヴァは本作のために生み出された新キャラクターで、暗黒の異端審問官たち(インクィジトリウス)のなかでも第三妹(サード・シスター)の階級にある。登場時こそ、粗暴で野心をむき出しにした追っ手として描かれるにすぎない。だがPart Vで、オーダー66の夜にジェダイ聖堂(ジェダイ・テンプル)を生き延びた一人のユーリングだったという過去が明かされる。すると彼女のすべての行動――ベイダーに近づくための昇進への執着も、ケノービへの異常なまでの固執も――が、唯一の標的であるアナキン/ベイダーへの長年にわたる復讐計画として、まったく違う意味を帯びて立ち現れる。
Part VIで満身創痍の彼女が幼いルークに刃を向けながらも殺すことができず、「自分がいま手にかけようとしているのは、オーダー66の夜のあの日の自分自身だ」と気づいて刃を下ろす。この場面は、本作のテーマである〈赦し〉を映し返す鏡として機能する。なお、モーゼス・イングラムは本作公開後、人種差別的なオンライン・ハラスメントの標的にされた。これに対し、マクレガーやルーカスフィルム公式が声明を発表し、ファンコミュニティに向けて毅然と抗議したことも記録に残っている。
タラ・デューリスとヒドゥン・パスの仲間…
タラ・デューリス少佐(インディラ・ヴァルマ)は、本作の道徳的な軸の一つを担う人物だ。かつては帝国軍の士官として制服を着て、ジェダイの遺児を狩る側にいた。その過去の罪を抱えながら、いまは彼らを逃がす側に立っている。Part III/IVでマプーゾとフォートレス・インクィジトリウスへの潜入で見せる胆力、そして本作後半で見せる自己犠牲。それは〈罪を犯した者にも、次の選択がある〉という主題をそのまま体現している。
ヒドゥン・パスは、本作の協力者ネットワークを成す地下組織である。ローケン(オシェイ・ジャクソン・Jr.)、サリー・スターロス(マヤ・アースキン)、荷役ドロイドのNED-B、そしてフォース感受性を持つ子どもや元ジェダイたちが顔をそろえる。商売人を装う詐欺師ハジャ・エストリー(クメイル・ナンジアニ)は、当初は小悪党にすぎなかったが、やがて成長を遂げ、終盤ではレイアの故郷へ向かう貨物船の手配に手を貸すことになる。
オーウェンとベルー、そしてベイル・オー…
オーウェン・ラーズ(ジョエル・エドガートン)は、本作で〈ジェダイに最も近い場所にいながら、ジェダイを拒む人物〉として描かれる。プリクエル三部作の二つの場面でアナキンと顔を合わせていた彼は、ジェダイがアナキンに何をしたかを当事者として知る数少ない人間だ。だからこそ、その血を引くルークを〈もう一人のジェダイ〉にしないために、オビ=ワンの接近を執拗に拒む。ベルー・ラーズ(ボニー・ピース)は、Part VIで侵入してきたレヴァの前にショットガンを構えて立ちはだかり、〈母としての強さ〉を一切の台詞なしで示してみせる。
ベイル・オーガナ(ジミー・スミッツ)は、プリクエルと『新たなる希望』をつなぐ唯一の上院議員として久々に画面へ戻る。養女レイアの誘拐を私事として扱う父の顔と、双子の片方をベイダーに渡すまいとする政治家の顔。その二つを、彼は同時に背負っている。
舞台と用語
舞台は章ごとに大きく質感を変える。双陽が照りつける砂漠の惑星タトゥイーン、緑あふれる王宮の惑星アルダーアン、ネオンと階層スラムが入り組む都市ダイユー、採掘の煤に染まったマプーゾ、ヒドゥン・パスの隠れ家を抱えるジャビイム、水と巨大なコンクリートが圧しかかる海中要塞ヌア、そして最終決戦の舞台となる岩石衛星――。場所の違いは、そのまま登場人物の心理段階に対応している。乾いた孤立に始まり、人混みの混沌、共犯と裏切り、密室での尋問、共同体の崩壊、そして無人の地での対決へと至るのだ。
用語の面では、オーダー66、大ジェダイ・パージ、フォース・ヒーリング、ホロクロン、インクィジトリウス、フォース・ゴースト、シャッターポイント(精神的な弱点であり、断裂点でもある)、そして本作で初めて広く描かれたヒドゥン・パスが鍵を握る。インクィジトリウスは、アニメ『反乱者たち』や小説で先に紹介されていた組織である。それが本作で実写作品として大きく扱われたことにより、後の『アソーカ』『ボバ・フェット/ザ・ブック』などへとつながる世界観の柱が補強された。
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18制作
本作の制作は、企画の変更や監督交代未遂を含む紆余曲折をたどった。完成した作品が持つ特徴の多くは、その過程と直接結びついている。以下では、企画、脚本、キャスト、撮影、視覚効果、音楽、編集という主要な経緯を順に整理していく。
企画と脚本
本作の原型は、2017年頃にスチュアート・ビーティーが脚本を手がけ、スティーヴン・ダルドリーが監督する予定だった劇場用スピンオフ映画だ。だが2018年に公開された『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の興行不振、そしてディズニー+の立ち上げを優先する社内方針の転換を受け、企画はディズニー+の限定シリーズへと姿を変える。ヘッドライターはジョビー・ハロルドが引き継ぎ、シリーズ全体の脚本を一から練り直した。
脚本面でもっとも重要な判断は、オビ=ワンの動機を私的な少女救出に絞り込み、そこから旧弟子との再会へとつなげる二段構えにあった。最初期の構想では、アナキン/ベイダーの出番はもっと小さく、物語の中心はインクィジトリウスとの戦いに置かれる予定だったとも伝えられる。だがイーワン・マクレガーとヘイデン・クリステンセンの再共演が決まったことで、ベイダーの比重は大きく引き上げられ、Part VIの〈割れた兜〉と〈アナキンを殺したのは私だ〉のやり取りを最大の決着点に据える構造へと書き直された。
監督と演出体制
当初は複数監督による分担演出が予定され、デボラ・チョウが一部を、残りを別の監督が手がける構想だった。だが最終的に、全6話をチョウが一人で演出する形へと改められた。スター・ウォーズの実写シリーズでは初の女性単独監督であり、その背景には、『マンダロリアン』のシーズン1・2で手がけた名エピソード〈赤いコンテナの逃走劇〉などで築いた評価がある。
演出面では、対決と感情の場面でショットを長く保ち、〈表情と呼吸〉を軸に据える方針が全編で一貫している。Part VIのオビ=ワン対ベイダー戦も、アクションそのものより、間合い、息遣い、岩肌を吹き抜ける風の音、そして機械音声と素声が二重に響く不気味さで成り立っている。デボラ・チョウの演出方針が最もよく表れた章といえる。
キャスティング
主演にはイーワン・マクレガーが座り、製作総指揮にも名を連ねた。プリクエル時代に酷評されたヘイデン・クリステンセンを再びベイダー/アナキンに戻したことは、本人へのある種の復権としても受け止められた。レヴァ役のモーゼス・イングラムは『クイーンズ・ギャンビット』で注目を集めた俳優で、本作で大規模なフランチャイズに本格的に加わった。
ヴィヴィアン・ライラ・ブレア(レイア)はオーディションを経て選ばれ、年齢からは想像しがたい台詞さばきを見せる。インディラ・ヴァルマ(タラ・デューリス)、ジョエル・エドガートン(オーウェン)、ボニー・ピース(ベルー)、ジミー・スミッツ(ベイル)、ルパート・フレンド(グランド・インクィジター)、サン・カン(フィフス・ブラザー)、リーア・ハリス(フォースに敏感な逃走中の少女)。知名度のある俳優陣がそれぞれの章を支えた。最終話のフォース・ゴーストの場面には、リーアム・ニーソンがクワイ=ガン・ジン役として特別出演している。
ダース・ベイダーの声は、ジェームズ・アール・ジョーンズが過去の収録音源と〈Respeecher〉社による声紋合成を組み合わせて担当した。ジョーンズ本人の承認のもと、晩年の声の衰えを補いつつ、彼の声色そのものを残す。そんな折衷案である。
撮影とロケ
撮影は2021年4月から2021年9月にかけて、米国ロサンゼルス周辺と、ルーカスフィルムが運用するLEDヴォリューム〈StageCraft〉スタジオで行われた。『マンダロリアン』で確立された仮想プロダクション技術をふたたび大規模に投入し、タトゥイーン、アルダーアンの森、マプーゾの荒野、ジャビイムの隠れ家といった複数の惑星を舞台にしながら、移動の少ない一括ステージで撮影した。
海中の要塞フォートレス・インクィジトリウス(Part IV)は、巨大セットの一部と仮想ステージを合成して作り上げ、青みがかったコンクリートの質感をあえて冷たく設計した。Part VIの最終決戦の舞台となる岩石衛星では、瓦礫の質量感を出すために実際のセットと地表の特殊メイクを優先し、CGの比率を一定以下に抑える方針がとられた。
視覚効果
視覚効果の中核を担ったのはILM(インダストリアル・ライト&マジック)だ。StageCraftによる背景投影と従来型のポストプロセスCGを、場面ごとに巧みに使い分けている。とりわけベイダーの黒い装甲と赤いライトセーバーの輝きは、StageCraft環境がもたらす反射光を活かすことで合成感を抑え、説得力のある黒い表面として画面に焼きつけることに成功した。
Part VIで割れた面甲の奥にのぞく、焼け爛れたアナキンの顔。ヘイデン・クリステンセンの素顔に特殊メイクとCGを接ぎ合わせたハイブリッド・ショットで、シリーズ屈指の見どころとなる視覚効果に仕上がった。本作はプライムタイム・エミー賞の視覚効果部門にもノミネートされている。
音楽
メインスコアを手がけたのはナタリー・ホルト。スター・ウォーズの実写本編作品で、女性作曲家がメインの作曲を務めた初めての例となった。ホルトは弦と低音による独自のモチーフでインクィジトリウスやレヴァの主題を立ち上げ、過去のジョン・ウィリアムズのモチーフを慎重に引用しつつ、本作ならではの色合いを新たに加えている。
ジョン・ウィリアムズはタイトル曲〈オビ=ワン〉のメインテーマを書き下ろし、これがオープニング・タイトルと感情の頂点で繰り返される。Part VIの終盤、フォース・ゴーストのクワイ=ガンが姿を見せる場面では、〈オビ=ワン〉と〈デュエル・オブ・ザ・フェイト〉系のモチーフが融合してクライマックスを築く。ナタリー・ホルトとジョン・ウィリアムズの協働を象徴する場面と言ってよいだろう。
編集と公開準備
編集は、章ごとの起伏と作品全体の感情曲線を同時に成立させることを狙い、章ごとに構成の型を変える方針が取られた。Part IVは純粋なヒースト(強奪劇)構造、Part Vは反転構造、そしてPart VIは長尺の決闘と、それに並走するルーク救出劇という具合である。Part IIIの〈炎の中の屈辱〉とPart VIの〈割れた兜〉を対照させるため、両場面の長さ、編集の間隔、音響の密度は、最終仕上げの段階で意図的に対比的に整えられた。
公開直前まで、ヘイデン・クリステンセンが実写でアナキンとして再登場すること、そしてリーアム・ニーソンがクワイ=ガンとして特別出演することは秘匿され、Part VIの放映時に最大の話題をさらった。
26公開と興行
ディズニープラス独占配信のため劇場興行収入は発生しないが、Part IとPart IIを同時に配信した2022年5月27日には、ディズニープラスのオリジナルシリーズとして当時の歴代最高クラスの初日視聴記録を打ち立てたと公式に発表された。新規加入者の獲得と解約の引き留めに大きく貢献した作品と位置づけられている。
プライムタイム・エミー賞では、ベイダーの声を担当した俳優ジェームズ・アール・ジョーンズの音声を音声合成技術〈Respeecher〉で再現した試みが音響部門で議論を呼んだ。さらに視覚効果、音楽(ナタリー・ホルト)、衣裳といった技術部門でも複数のノミネートを獲得している。批評の面では、Part IIIとPart VIの完成度が高く支持された一方で、限定シリーズとしてのテンポやインクィジトリウス(暗黒面に堕ちたジェダイを狩る尋問官たち)の人物造形には賛否が分かれ、評価は割れた。だが、その分裂こそ、本作が単純な勝利の物語ではなく〈傷ついた者たちの物語〉として作られたことの裏返しでもある。
27批評・評価・文化的影響
本作が残した最大の文化的影響は、〈プリクエルから旧三部作へと至る感情的な空白〉を実写で埋めた点にある。Part VIで、ベイダーがオビ=ワンに「お前の友人〈アナキン〉は私が殺した」と告げる場面。それは『新たなる希望』の冒頭、アレック・ギネス演じるオビ=ワンが「ダース・ベイダーは……かつて私の弟子だった。だが彼はもうそこにいない」と語る台詞の、長く失われていた感情的な裏側として、シリーズ全体に組み込まれた。
さらに本作は、レヴァというキャラクターの起源――オーダー66の夜、ジェダイ・テンプルで生き残った一人のユーリング――を物語の中心に据える。スター・ウォーズがこれまで正面から描いてこなかった主題、すなわち〈虐殺を生き延びた者の長きにわたる心の彷徨〉へと道を開いたのだ。Part Vのフラッシュバックは、後の派生作品がオーダー66の記憶を描く際の参照点ともなっている。
主演陣の17年ぶりの再共演は、プリクエル世代の観客にとって象徴的な〈帰還〉となった。ヘイデン・クリステンセンの実写復帰はやがて『アソーカ』のフォース・ゴーストの場面へとつながり、シリーズの実写ラインに過去との接続を取り戻す。一方、Reva役のモーゼス・イングラムが受けた人種差別的なハラスメントに対し、マクレガー本人と公式が公開声明で抗議した経緯も、本作をめぐる社会的文脈として記録に刻まれている。
舞台裏とトリビア
もともとは2017年頃に劇場用映画として企画された作品だ。当初はスティーヴン・ダルドリー監督、スチュアート・ビーティー脚本という座組で動き出したが、2018年の『ハン・ソロ』が興行的に振るわなかったのを受け、ディズニー+のシリーズへと路線を変更した。その後、脚本は全面的に書き直され、ヘッドライターもジョビー・ハロルドに交代。こうして現行の全6話構成が固まった。
全話の監督を務めたデボラ・チョウは、スター・ウォーズの実写本編で単独監督を担った初の女性監督である。本作以前にも『マンダロリアン』のシーズン1、シーズン2でいくつもの章を演出しており、その実績からルーカスフィルムは本作のすべてを彼女に託した。
ジェームズ・アール・ジョーンズは本作のあと、ダース・ベイダーの声の権利を〈Respeecher〉と協働する形でルーカスフィルムへ譲渡した。自身の声色をそのまま保ち、将来の作品でも使えるようにするという取り決めである。本作は、その合意が本格的に運用された最初の例となった。
Part VIで描かれる〈オビ=ワンが見送るルーク〉は、『新たなる希望』冒頭の幼いルークと矛盾しないよう細部まで調整されており、シャツの色やラーズ農場の小道具にまで目配せが効いている。さらにリーアム・ニーソンがクワイ=ガン・ジンとして特別出演し、『ファントム・メナス』から続く長い円環をシリーズ全体で締めくくる役割を担った。
29テーマと解釈
中心にあるテーマは〈赦し〉と〈罪との距離の取り方〉だ。オビ=ワンはアナキンを殺せなかった罪を10年間抱え続け、ベイダーは師であるオビ=ワンに見捨てられたという怨恨を抱える。レヴァが背負うのは、オーダー66の夜に自分を救えなかったこと――倒れた自分を見過ごして去ったベイダーへの復讐心である。三者はそれぞれの罪との〈立つ距離〉が異なり、終盤でその距離の取り直しを迫られる。
オビ=ワンはPart VIで、ベイダー本人から「お前が殺したのはアナキンではない、アナキンは私が殺した」と告げられる。そうして、背負ってきた罪のうち〈本来は自分のものでなかった部分〉を返される。レヴァは子どもへ振り上げた刃を下ろし、ベイダーになりかけていた自分自身から距離を取る。アナキン/ベイダーはヘルメットを直し、皇帝の声に応える――自ら選んだ罪へと歩いて戻っていく。三つの異なる応答が、同じ章のなかに並べられるのだ。
もう一つの軸は〈師弟と養親〉である。本作にはオビ=ワンとアナキン、オビ=ワンとレイア、オーウェン/ベルーとルーク、ベイル/ブレハとレイア、そしてレヴァとかつてのジェダイ・マスターたち――〈血縁によらない親子関係〉がいくつも並んでいる。誰が誰を育て、誰を見送り、誰を捨てなかったのか。その選択の積み重ねが、シリーズ全体を貫くテーマである〈選んで作る家族〉の核を補強している。
おすすめの視聴順
本作の感情を余すところなく味わうには、最低でも『シスの復讐』だけは先に観ておきたい。アナキンが何を失い、何を選び、なぜベイダーとなったのか——その経緯を直前に通っていれば、Part III/Part VIの再会が放つ重みはまるで違ってくる。
できればプリクエル三部作(エピソード1〜3)をひと通り追ったうえで本作に臨み、その後『新たなる希望』へ進むのが、最も収まりがよい。旧三部作だけを先に観てきた観客も、本作のあとにエピソード1〜3へ遡れば、ここで告げられた〈アナキンを殺したのは私だ〉という台詞が、やがて二重の意味を帯び始める。
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31よくある質問
最も多い質問が「シーズン2はあるのか」だ。公式には2022年8月の時点で「現状、計画はない」と発表された。しかしその後もユアン・マクレガーは続編への意欲を語っており、可能性が完全に閉ざされたわけではない。最新の動向は、ルーカスフィルムやディズニーの公式発表で確認したい。
「本作を観ずに『新たなる希望』へ進んでいいのか」という問いには、結論からいえば〈問題ない〉。旧三部作だけでも物語は完結している。ただ、Part VIでの「アナキンを殺したのは私だ」という告白を聞いたあとに『新たなる希望』のオビ=ワン対ベイダーを観返すと、台詞の意味も、あの場所で二人が何を交わしているのかも、まるで違って見えてくる。
「ベイダーの声は本物のジェームズ・アール・ジョーンズなのか」という疑問もたびたび挙がる。答えは〈本人の承認のもと、本人の過去の声と機械学習による合成を組み合わせている〉。本人の声色を保つことを優先した折衷案である。
32参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や配信状況、受賞歴、声優のクレジット仕様などは変動する場合があるため、鑑賞前に公式情報および各データベースの最新の表示を確認してほしい。本記事の本文は、各種の公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語記事として構成したものである。