反乱軍の苦境とルークの修行、そして「私がお前の父だ」の衝撃を描く、シリーズ屈指の評価を得た中編。
ルーカスフィルム製作/20世紀フォックス配給。ルーカスが私財と融資で自己出資した旧三部作の第2作。上映時間124分。
『新たなる希望』の勝利のあと、態勢を立て直した帝国が反乱軍を追い詰める。直後は『ジェダイの帰還』へ直結する。
アカデミー録音賞と視覚効果特別業績賞を受賞。続編映画・映画史上の傑作として繰り返し挙げられ、2010年に米国国立フィルム登録簿へ選定。
オープニング・クロール全文、全編のあらすじ、登場要素、制作、特別篇の差分、舞台裏まで網羅。『私がお前の父だ』を含む重大なネタバレあり。
目次 34項目 開く
概要
『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(Star Wars: Episode V – The Empire Strikes Back)は、アーヴィン・カーシュナーが監督を務め、1980年5月21日に米国で公開されたスペースオペラ映画(宇宙を舞台にした冒険活劇)である。前作『スター・ウォーズ』(のちのエピソード4)の続編にあたり、スカイウォーカー・サーガ旧三部作の第2作を成す重要な一本だ。画面上に「エピソード5」というナンバリングが正式に表示されるようになったのも本作からで、シリーズの歴史を語るうえで外せない節目の作品といえる。
前作でデス・スターを失った銀河帝国は、総力を挙げて反乱同盟軍を追い詰めていく。その一方でルーク・スカイウォーカーは、伝説のジェダイ・マスター、ヨーダのもとで厳しい修行を積む。物語は反乱軍の敗走と離散、ハン・ソロの捕縛、そしてダース・ベイダーがルークに告げる出自の真実——「私がお前の父だ」——という、映画史上もっとも知られた台詞へと一気に収束していく。前作の高揚感から一転、敗北と喪失、衝撃の告白へと突き進む構成は容赦なく、シリーズの空気を一変させた一本だ。
ジョージ・ルーカスは本作の製作費を前作の利益と銀行融資で自ら背負い込み、監督は旧師アーヴィン・カーシュナーに委ねた。脚本は当初リイ・ブラケットが執筆していたが、彼女の死によりローレンス・カスダンが引き継いだ。明るい英雄譚だった前作に対し、本作が描くのは敗北・喪失・誘惑、そして出自の衝撃である。ずっしりと重い中編であり、シリーズ最高傑作と評されることも多い一本だ。
この記事では、結末を含む物語の全体像にまで深く踏み込んでいく。物語の決定的な驚きをまっさらな状態で味わいたい方は、まず本編を鑑賞してから読み進めることをおすすめしたい。
- 原題
- Star Wars: Episode V – The Empire Strikes Back
- 監督
- アーヴィン・カーシュナー
- 脚本
- リイ・ブラケット/ローレンス・カスダン
- 原案・製作総指揮
- ジョージ・ルーカス
- 音楽
- ジョン・ウィリアムズ
- 米国公開
- 1980年5月21日
- 上映時間
- 124分
- ジャンル
- スペースオペラ、SF、冒険、ファンタジー
オープニング・クロール
前作と同じく「**遠い昔、はるか彼方の銀河系で——**」の一文とロゴに続き、あの黄色い文字のオープニング・クロールがゆっくりと流れていく。前作での勝利から状況がどう変わったのか、そして反乱軍が今どれほどの苦境に追い込まれているのか——その経緯がコンパクトに提示される。お馴染みの導入だが、何度観てもゾクッとさせられるオープニングだ。
エピソード5/帝国の逆襲
暗黒の時代——。
反乱軍は最初のデス・スターを破壊したものの、帝国軍の追撃を受けて秘密基地から散り散りに敗走していた。
悪名高きダース・ベイダーは、若きルーク・スカイウォーカーへの執念に取り憑かれ、無数の遠隔偵察機を銀河の各地へ放っている。
反乱軍の指導者レイア・オーガナをはじめとする一団は、辺境の氷の惑星ホスに新たな秘密基地を築き、なおも帝国の手から逃れ続けていた……。
あらすじ
全編のあらすじは以下のとおり。ホスの陥落、ルークのダゴバでの修行、ハンたちのベスピンへの逃避行——この三つの流れが交互に編まれ、やがてクラウド・シティでの対決と、ひとつの告白へと収束していく。
氷の惑星ホス
ヤヴィンの戦いから約3年。帝国軍の執拗な追撃を逃れた反乱同盟軍は、辺境の氷の惑星**ホス**に**エコー基地**を築き、息をひそめていた。物語は、**ダース・ベイダー**が銀河じゅうに放った遠隔偵察機(**プローブ・ドロイド**)の一基がホスへ降り立ち、雪原を探り始める場面から幕を開ける。帝国の探索の手は、すでに反乱軍のすぐそばまで迫っていた。
偵察任務の途中、何かが落下した地点を確かめようとしていた**ルーク・スカイウォーカー**は、雪原に潜む猛獣**ワンパ**に背後から襲われる。殴り倒され、巣穴の天井から逆さ吊りにされてしまうが、やがて意識を取り戻すと、雪に埋もれた**ライトセーバー**をフォースで手元へ引き寄せ、ワンパの腕を斬り落として脱出する。だが装備も乗騎のトーントーンも失い、吹き荒れる猛吹雪のなかで力尽き、雪原に倒れ込んでしまう。朦朧とする視界に、亡き師**オビ=ワン・ケノービ**の霊体が静かに姿を現す。「**ダゴバ星系へ行け。私を導いたジェダイ・マスター、ヨーダに学ぶのだ**」——そう告げると、その姿はかき消えていった。
基地では、ルークの帰還の遅れが問題となる。シールドが落ちる夜間の極寒では生存は絶望的とされるなか、**ハン・ソロ**は制止を振り切り、騎乗動物**トーントーン**にまたがって単身ルークの捜索へ向かう。倒れたルークを見つけた直後、乗ってきたトーントーンが寒さで斃れる。ハンはルークの**ライトセーバー**でその腹を裂き、凍えるルークを内臓の温もりのなかへ収めて一夜をしのがせた。翌朝、二人は救難隊に収容され、ルークは医療ドロイド**2-1B**の処置で回復する。
一方、**エコー基地**の管制が、雪原で動く反乱軍の機材ではない反応——例の偵察機——を捉える。すぐに**チューバッカ**が撃破するが、送信は間に合っていた。**ベイダー**は旗艦スーパー・スター・デストロイヤー、**エグゼクター**の艦上でその信号を確認し、「あれが反乱軍だ」と即断する。慎重な部下**ピエット提督**を退け、ベイダーは全軍に**ホス**への進攻を命じた。
ホスの戦い
帝国艦隊が**ホス**上空に到達する。反乱軍基地の上空にはエネルギー・シールドが張られ、軌道上からの砲撃は通らない。帝国軍は地表に部隊を降下させ、地上戦で基地に迫るほかなかった。**レイア・オーガナ**は避難手順を兵たちに指示し、トランスポート船は一隻ずつ、シールドの隙間を縫って脱出していく。その時間を稼ぐのが、防衛線に展開した反乱軍の**スノースピーダー隊**だ。
ヴィアーズ将軍率いる巨大な四足歩行兵器**AT-AT**(オール・テレイン・アーマード・トランスポート)の隊列が、シールド発生装置と基地本体を目指して雪原を進む。正面装甲は厚く、スピーダーの火力ではまるで歯が立たない。そこでルークは**ローグ中隊**を指揮し、AT-ATの脚にトウ・ケーブル(牽引索)を巻きつけて転倒させる接近戦法に切り替える。僚機ダックが撃墜され、ルーク機も被弾して不時着する。それでもルークはグラップリングフックで一体のAT-ATの腹部に取りつき、ライトセーバーで装甲を裂いて手榴弾を投げ込み、内部から撃破する。しかし帝国軍の物量は止まらない。やがてシールド発生装置は破壊され、地上部隊が基地内部へ雪崩れ込んでいく。
レイア、チューバッカ、C-3POはハンとともに**ミレニアム・ファルコン**へ駆け込む。だが老朽船はハイパードライブが起動せず、光速航行に逃げ込めぬまま帝国軍の追撃を受ける羽目になる。ルークはR2-D2を伴い、Xウィングで単身ホスを脱出する。反乱軍本隊との合流点には向かわず、オビ=ワンの言葉に従って**ダゴバ**へ針路を取る。緒戦から反乱軍が為す術なく蹂躙される構図が、明朗だった前作との空気の違いを決定づけている。
小惑星帯の逃走
ハイパードライブを失ったファルコンは、スター・デストロイヤー群と**TIEファイター**の追撃を振り切れぬまま、無謀にも危険な小惑星帯へと突っ込んでいく。「確率を言うな」と苛立つ**ハン**に、悲観的な数字を並べ立てる**C-3PO**。その掛け合いが、張りつめた空気にどこか可笑しみを添える。ハンは巨大な小惑星に口を開けた洞窟へ機を滑り込ませ、追っ手をやり過ごした。ところが洞窟の奥でコウモリに似た生物**ミノック**が船体に取りつき、やがて地面が脈打ちはじめる。そこが小惑星などではなく、宇宙生物**エクソゴース**(スペース・スラッグ)の体内だと悟った一行は、閉じかかる顎を間一髪でくぐり抜け、脱出する。
閉ざされた船内で作業を共にするうち、反発し合っていた**ハン**と**レイア**の距離は少しずつ縮まっていく。手の傷の手当てをきっかけに、口論の末、二人は口づけを交わした。緊張をはらんだ恋の芽生えである。そこへ割って入る**C-3PO**、嫉妬を隠さないルーク不在のなかでのやり取り。戦時下の人間ドラマに、いっそう厚みが加わっていく。
ファルコンを取り逃がした帝国軍に対し、**ベイダー**は複数の賞金稼ぎを召集する。その中には、のちの物語で重要な役割を担うマンダロリアンの賞金稼ぎ**ボバ・フェット**の姿もあった。ベイダーは「**ソロは生きたまま必要だ**」と命じる。
さらにベイダーは自室で皇帝**パルパティーン**の立体通信を受け、跪く。皇帝は「フォースに大きな乱れがある。我々の敵——スカイウォーカーの息子だ。彼を野放しにすればジェダイとなり、我々の脅威になる」と警告する。これにベイダーは「彼はまだ若い。オビ=ワンが鍛えれば手強い。しかし引き入れることができれば、強力な味方になります」と応じた。皇帝から「彼を我々の側に付けられるか」と問われ、「必ず」と誓う。こうして帝国の矛先は、反乱軍全体から**ルーク**個人へと向けられていく。
ダゴバとヨーダの修行
ルークの**Xウィング**は、霧深い沼の惑星**ダゴバ**の湿地に墜落し、機体は泥沼へ半ば沈み込んだ。生命の気配に満ちた不気味な森を進むルークの前に、小柄で奇妙な言葉を操る緑色の生き物が現れる。食料を漁り、**R2-D2**と小競り合いを演じる道化めいたこの生き物こそ、ルークが探し求めていた伝説のジェダイ・マスター、**ヨーダ**にほかならなかった。
ヨーダは当初、ルークを弟子に取ることを渋る。焦り、無謀さ、忍耐の欠如、そして今ここではなくつねに遠くばかりを見て目の前に集中できない性質——その未熟さゆえだ。「**何年も見てきた。冒険、興奮。ジェダイはそのようなものを求めぬ**」。オビ=ワンの霊体が「**彼が最後の希望だ**」と説くと、ヨーダは「**いや、もう一人いる**」と意味深に呟き、修行を始める。
修行は肉体の鍛錬であると同時に、心のあり方そのものを問うものだった。ヨーダはルークに告げる――**「やるか、やらぬかだ。試しなどない(Do or do not. There is no try.)」**。泥沼に沈んだXウィングを前に、ルークは引き上げを試みるが、「大きすぎる」と力尽きてしまう。ヨーダは「大きさなど問題ではない」と諭し、フォースによって機体を軽々と宙へ持ち上げてみせる。常識とサイズに縛られたルークと、その枠を超えたヨーダ。沼地に浮かぶ機体が、両者の隔たりを静かに浮かび上がらせる。
ヨーダに導かれて足を踏み入れた暗い洞窟には、**ダークサイド**の気配が濃く漂っていた。武器を持ち込むなというヨーダの忠告に背き、腰のライトセーバーを手にしたルークの前に、幻の**ダース・ベイダー**が立ちはだかる。激しく斬り結んだ末、ルークはベイダーの首を刎ねる。地に落ちた兜の面甲が割れ、その奥から現れたのは——**ルーク自身の顔**だった。
修行が進むなか、ルークはフォースを通じて、**ベスピン**で苦しむ**ハン**と**レイア**の未来を幻視する。**ヨーダ**と**オビ=ワン**の霊体は、これは罠であり、修行はいまだ未完だと説く。いま赴けばダークサイドに付け込まれると、二人は強く引き止める。ヨーダは警告する。「今行けば、彼らを救えるかもしれぬ。だが、彼らが戦い苦しんで守ってきたすべてを、お前は破壊することになる」。それでもルークは友を見捨てられない。必ず戻ると約束し、修行を中断してベスピンへと発つ。
クラウド・シティとランド
ハイパードライブが故障したファルコンは、帝国艦隊の追撃をかわすため、ハンの奇策に出る。**スター・デストロイヤー**の艦橋窓の死角に船体を張りつかせ、相手の視界から逃れたのだ。やがて艦隊が廃棄物を投棄し、帰投の準備に入る。ファルコンはそのゴミに紛れて漂い、まんまと追跡を振り切った。 だが、その一部始終は艦に随伴していた**ボバ・フェット**の**スレーヴI**に見られていた。ハンは修理のため、近くのベスピンに浮かぶ空中採掘都市**クラウド・シティ**へと針路をとる。
都市の管理者は、ハンの旧友で賭博師の**ランド・カルリジアン**だった。かつて賭けでファルコンをハンに奪われた間柄であり、再会は皮肉と軽口の応酬から始まる。一行は手厚くもてなされ、つかの間の安息を得た。しかし、フェットに先導されたベイダーは、すでに都市へと到着していた。家族同然の街と数万の住民を人質に取られたランドは、不本意ながら罠の片棒を担がされていたのである。
晩餐の席へと案内され、その扉の向こうで一行を待ち構えていたのは、**ダース・ベイダー**と**ボバ・フェット**だった。ハンは反射的に発砲するが弾き返され、一同はあえなく捕縛される。ベイダーの狙いは反乱軍ではなく、**ルーク・スカイウォーカー**その人だ。フォースを通じて友の危機を感じ取れば、必ずこの地へ駆けつけるはずの若きジェダイ。**クラウド・シティ**全体が、ルークを誘い出すための巨大な罠として動き始めていた。
カーボン凍結
ベイダーは理由も告げぬまま、ハンを拷問にかける。その苦痛の叫びは、フォースを通じて遠くダゴバを発った**ルーク**のもとへ届くよう仕向けられた、いわば罠の呼び鈴であった。だが賞金稼ぎ**フェット**は、生死を問わず賞金首であるハンの身柄が拷問で損なわれることを案じ、犯罪王**ジャバ・ザ・ハット**への引き渡しを要求する。
ベイダーは、ルークを生きたまま皇帝のもとへ運ぶための「カーボン凍結(炭素冷凍)」が人体に安全かを確かめる実験台として、**ハン**を選ぶ。装置の安全性に確信を持てぬベイダーが、ルーク本番の前にまず試そうという冷徹な論理である。凍結室へ連行されるハンに、**レイア**は初めてはっきりと「**愛してる(I love you.)**」と告げる。そして冷凍ユニットへ沈められる直前、ハンが返したのは「**知ってる(I know.)**」——脚本上は説明的な台詞だったものを**ハリソン・フォード**が現場で言い換えたこの短い応答は、シリーズで最も愛される台詞の一つとなった。
ハンは炭素塊に封じられてもなお生命徴候を保ったまま生き延び、ベイダーはその塊を**フェット**へ引き渡す。フェットはハンを自船**スレーヴI**に積み込み、ジャバのもとへ運び去る。一方、自らの裏切りを恥じたランドは、ベイダーが約束を次々に反故にしていく姿——「**取り決めを変える。祈れ、これ以上変えぬことを**」——を目の当たりにする。やがて部下を動かして密かに反乱を起こし、レイア、チューバッカ、ドロイドたちを牢から解放して、脱出させる側へと寝返るのだった。
対決と「私がお前の父だ」
友の危機を幻視した**ルーク**は、**ヨーダ**と**オビ=ワン**の制止を振り切り、単身**クラウド・シティ**へと向かう。脱出を図る**レイア**たちと入れ違いになりながら、罠と知りつつ奥へ足を踏み入れていく。湯気の立ちこめる**カーボン凍結室**では、**ダース・ベイダー**が静かに待ち構えていた。
ベイダーは最初から本気で斬り伏せようとはしない。ルークの技量と精神を試しつつ、怒りと恐怖を煽って暗黒面へと誘い込もうとする。「**お前のフォースの力は弱い。お前はまだジェダイではない**」。ルークは一度はベイダーを凍結室へ追い込むなど健闘するが、戦いの場が反応炉の通気シャフトに架かる狭い足場へ移ると、フォースで投げつけられる機材に翻弄され、じわじわと追い詰められていく。
ついにベイダーの一撃が、ルークの右手をライトセーバーごと斬り落とす。武器も足場も失い、シャフトの突端へ追い詰められたルーク。ベイダーは帝国への加入を迫りながら、衝撃の事実を突きつける。「**オビ=ワンは、お前の父に何が起きたかを話さなかったのだな**」。ルークが「充分に聞いた。あなたが父を殺したと」と返すと、ベイダーは答える。「**違う。私がお前の父だ(No. I am your father.)**」。
「違う……そんなことはない!」。ルークは絶叫し、その言葉を否定する。ベイダーは、フォースで真実を確かめてみろと迫り、父と子で皇帝を倒して二人で銀河に新たな秩序をもたらそうと手を差し伸べる。だがルークはその手を拒んだ。暗黒面に堕ちるくらいならと、自ら足場から手を離し、反応炉の深いシャフトへと身を投げる。
排気路へ吸い出されたルークは、**クラウド・シティ**の底部に突き出た通信用アンテナの先端に、片手一本でかろうじてぶら下がる。右手を失い、信じてきた父の物語は崩れ去った。文字どおり、立つべき足場そのものを失ったのだ。その姿は、本作における精神的などん底そのものである。
救出と続く戦い
力尽きかけた**ルーク**が、誰にも届くはずのない声で、フォースを通じて**レイア**の名を呼ぶ。離脱しかけていたレイアはその呼びかけを感じ取り、**ファルコン**を引き返させた。やがて**ランド**と**チューバッカ**、ドロイドたちが、**クラウド・シティ**の底部に宙づりとなったルークを回収する。
脱出を阻むため、ベイダーはあらかじめ**ファルコン**のハイパードライブを無効化させていた。ベイダー自身のスター・デストロイヤーが眼前に迫り、まさに絶体絶命。そのとき、艦隊から締め出されて機外に取り残されていた**R2-D2**が回路を修復する。**ファルコン**は間一髪で光速へ跳び、追撃を振り切った。ベイダーは無言で、その姿を見送るほかなかった。
反乱軍の医療フリゲート艦内で、ルークは失った右手に精巧な**義手**を装着される。感覚までも再現する、緻密なものだ。窓の外には、再建の途上にある反乱軍艦隊と、果てしない宇宙の闇が広がっていた。ハンは**ボバ・フェット**に連れ去られたまま、その奪還は次作へと持ち越される。**ランド**はハン救出のため、**チューバッカ**とともに**ミレニアム・ファルコン**に乗り込み、**ジャバ**のもとへと向かうのだった。
決定的な勝利は、どこにもない。父の正体という重荷を背負った**ルーク**、囚われたままの**ハン**、敗走から立て直しを図る反乱軍——すべてが未解決のまま、**ルーク**と**レイア**が並んで宇宙を見つめる静かな画で物語は幕を閉じる。明快なカタルシスは訪れない。三部作の「中編」ならではの、次章へと続く余韻を残した結末である。
登場要素
本作に登場し、また言及される主な要素を分類して紹介しよう。固有名詞はシリーズを読み解く手がかりとなるが、初見ですべてを覚える必要はない。
キャラクター
- ルーク・スカイウォーカー
- レイア・オーガナ
- ハン・ソロ
- ダース・ベイダー
- ヨーダ
- ランド・カルリジアン
- チューバッカ
- C-3PO
- R2-D2
- オビ=ワン・ケノービ(霊体)
- 皇帝パルパティーン(立体通信)
- ボバ・フェット
- ランカー・ニーダ艦長
- ピエット提督
- ヴィアーズ将軍
- リーケン将軍
- ローボット
- デンガーら賞金稼ぎ
種族
- 人間
- ウーキー
- ヨーダの種族
- ボサン(言及なし)
- ウガノート(クラウド・シティ作業員)
- 各種エイリアン
ドロイド
- R2-D2
- C-3PO
- 帝国遠隔偵察機(プローブ・ドロイド)
- 2-1B 医療ドロイド
- FX-7
- クラウド・シティの各種ドロイド
- IG-88(賞金稼ぎドロイド)
クリーチャー
- ワンパ
- トーントーン
- エクソゴース(スペース・スラッグ)
- ミノック
- ダゴバの沼の生物
場所
- ホス(エコー基地)
- ダゴバ
- ベスピン(クラウド・シティ)
- 小惑星帯
- 反乱軍医療フリゲート
- スター・デストロイヤー エグゼクター艦内
組織・称号
- 銀河帝国
- 反乱同盟軍
- 帝国宇宙艦隊
- シス
- ジェダイ・マスター
- 賞金稼ぎギルド
乗り物・宇宙船
- ミレニアム・ファルコン
- Xウィング
- スノースピーダー(T-47)
- AT-AT
- AT-ST
- TIEファイター
- スレーヴI(ボバ・フェット機)
- スーパー・スター・デストロイヤー エグゼクター
- トランスポート船
- トーントーン
テクノロジー・武器
- ライトセーバー
- ブラスター
- カーボン凍結装置
- トウ・ケーブル
- ハイパードライブ
- ベイダーの瞑想室
- 義手
- 立体通信
- シールド発生装置
フォースと概念
- フォース
- ダークサイド
- ジェダイの修行
- フォース・ゴースト(霊体)
- フォースによる念力(テレキネシス)
- フォースの幻視
- ダゴバの洞窟
- 「やるか、やらぬか」
主要登場人物
本作は登場人物のひとりひとりに、敗北と選択を突きつける。前作で芽生えたばかりの関係が容赦なく試され、ルークの出自という縦軸が、シリーズ全体を貫く重みを一気に獲得していく。ここでようやく、「サーガ」と呼ぶにふさわしい奥行きが立ち上がってくる。
ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)
前作でデス・スターを撃破し、英雄となったルーク。だが、その栄光の裏に潜んでいた未熟さが、本作では一気に前面へと押し出される。**フォースの素質**は確かに本物だ。しかし忍耐が足りず、目の前の感情にあっさりと流されてしまう。ヨーダが繰り返し指摘するのも、技術ではなく性格の問題である——「いつも遠くばかり見て、今やっていることに心がない」。この一言が、ルークという若者の本質を鋭く突いている。
修行を中断し、友を救いに向かう選択。それは優しさの表れであると同時に、ヨーダとオビ=ワンが繰り返し警告していた**罠への直行ルート**でもある。結果としてルークはハンを救えず、ベイダーに右手を斬り落とされ、さらには信じてきた父の物語そのものが根底から崩れ落ちる。英雄譚を一度徹底的に**挫折**させるこの構成によって、ルークは「才能ある若者」から「痛みを知る者」へと作り替えられていく。次作で見せるあの落ち着いた成熟ぶりは、この敗北なしには決して成立しない。
レイア・オーガナとハン・ソロ(キャリー・フィッシャー/ハリソン・フォード)
レイアは前作以上に反乱軍の中核として描かれる。ホスの避難指揮から逃避行の判断まで、つねに状況を自らの手で動かそうとする女性だ。一方のハンは責任を嫌う自由人のはずが、危機が訪れるたびに身を挺して仲間のもとへ向かう。氷上でルークを救い、レイアを守り、そして最後は自らが囮の実験台にされてしまう。責任から逃げていたはずの男が、仲間のために一歩ずつ踏み込んでいく。その流れに胸を打たれる。
閉ざされたファルコンの船内、最初はぶつかり合ってばかりだった二人が、口論を重ねながら少しずつ距離を縮めていく。決定打となるのが、カーボン凍結を目前にした「愛してる」「知ってる(I know.)」のやり取りだ。説明を一切削ぎ落としたわずか二語が、二人の関係と互いへの理解の深さを、ひと息で言い切ってしまう。本シリーズ屈指の名場面である。
ハン・ソロがボバ・フェットに連れ去られたまま物語は幕を閉じる。二人の関係も反乱軍の戦いも、宙づりのまま残されるのだ。この未解決のまま終わる衝撃こそが、次作『ジェダイの帰還』冒頭の救出劇へと観る者を引きずり込む、強烈なフックとして機能している。終わったのに、終わっていない。むしろ「ここからどうなるのか」という飢餓感だけが残る。続編への期待を最大限に高める、見事な幕引きだ。
ヨーダ
辺境の惑星ダゴバの沼地に、ひっそりと隠棲する伝説の**ジェダイ・マスター**。初登場の場面では、物欲しげで口やかましい小さな生き物にしか見えない。だが、その道化めいた振る舞いそのものが、外見や常識で本質を測ってはならないというルークへの試しになっている。見た目に惑わされてはならない——シリーズ屈指の教訓が、ここに凝縮されているのだ。最初は「この小さな者がマスターなのか」と肩透かしを食らうが、それこそが**ヨーダ流の試練**の入り口にほかならない。観た瞬間にぞくりとさせる、巧みな登場演出である。
ヨーダの教えは終始一貫して、力や技ではなく**心のあり方**を問い続ける。「やるか、やらぬかだ。試しなどない」「大きさなど問題ではない。私を見ろ」「お前は学んだことを捨てねばならない」——この三つの言葉は、本作の主題そのものでありながら、現実世界でも繰り返し引用される箴言(しんげん:戒めとなる言葉)として定着した。極めつけは、沼に沈んだXウィングをヨーダが軽々と引き上げてみせる名場面だ。**信じることの限界を決めているのは自分自身である**という思想を、台詞ではなく映像そのもので叩きつけてくる。理屈ではなく、見せて分からせる。この一点に圧倒される。
スチュアート・フリーボーンらの造形と、フランク・オズの人形遣い兼声優としての演技により、ヨーダは登場人物としても映画技術史の達成としても不朽の存在となった。
ダース・ベイダーとランド・カルリジアン(D・プラウズ/J・E・ジョーンズ/ビリー・ディー・ウィリアムズ)
ベイダーの存在感は、前作とはまるで別物である。あの不気味な処刑人だった男が、本作では物語の中心にどっしりと腰を据える。皇帝の命令に従ってルークを亡き者にするのではなく、生かしたまま自陣へ引き入れることに、異様なまでに執着していく。その狂気じみた執念の正体が、まさかの「父と息子」という関係に根ざしていた——結末で明かされるこの真実が、観る者に衝撃を与える。部下を次々とフォース(劇中の超常的な力)で処刑していく冷酷さと、息子へ向けた屈折した呼びかけ。相容れないはずの二つが、同じ一人の人物の内に同居している。この複雑な造形こそが、ベイダーをシリーズ最大の**悲劇的人物**へと押し上げているのだ。
ランド・カルリジアンは、ハンの旧友にしてギャンブラー、さらにクラウド・シティの管理者と、いくつもの顔を持つ新キャラクターである。数万の市民と都市を人質に取られ、一度はベイダー側の罠に加担させられてしまう。だが、約束を次々と反故にしていくベイダーの姿を目の当たりにし、やがて良心に従って反乱軍側へと寝返る。**善か悪かでは割り切れない選択**を引き受けるこの人物像が、前作までの分かりやすい構図に絶妙な陰影を加えている。
賞金稼ぎ**ボバ・フェット**は、台詞をほとんど発しない。しかし、寡黙にクールに仕事をこなすその佇まいが、強烈な印象を残す。語らないからこそ滲み出る凄み、とでも言うべきものだ。本作以降、シリーズを象徴する人気キャラクターの一人として愛され続けているのも納得できる。出番の少なさに反比例するように、ファンの間で伝説的な存在へとのぼりつめていった。
舞台と用語
舞台となるのは、性格のまるで異なる三つの惑星だ。それぞれが物語の精神状態をそのまま体現している。極寒で白一色のホスは、敗走と剥き出しの**生存**そのもの。霧深く生命に満ちた沼地のダゴバは、**内省と修行**の場である。雲海に浮かぶ優美なクラウド・シティは、歓待を装った**罠**——美しいものほど危うい、という反転として機能する。場所ごとに色調も光も音楽もがらりと変わるため、わざわざ説明されずとも、物語の感情の起伏が自然と体に入ってくる。
用語の面では、**ライトセーバー**、**フォースの修行**、**フォース・ゴースト**(霊体としてのオビ=ワン)、**カーボン凍結**、**ハイパードライブ**、**トラクター・ビーム**あたりが鍵になる。なかでも特筆すべきは「**ダークサイド**」の描き方だ。本作で初めて、漠然とした抽象的な悪ではなく、怒り・恐れ・近道という具体的な誘惑として立ち上がってくる。これがルークの選択、そしてベイダーの正体に直結する中心概念へと深まっていく。こうした用語は、頭で暗記するよりも、その場面で登場人物が何を選び取ったかを通して掴むほうが、ずっと自然に腹落ちするはずだ。
制作
前作の大ヒットを受け、ルーカスはさらに大きなリスクを個人で背負い込む形で本作の製作に踏み切った。スタジオに委ねず、自ら出資して続編を手がけるという決断は、当時としてもきわめて異例である。ここからは、企画段階から特撮(SFX:視覚効果)に至るまでの主要な経緯を、順を追って整理していきたい。
企画と脚本の変遷
ジョージ・ルーカスは、スタジオの干渉を受けない自由を勝ち取るため、続編の製作費を前作で得た莫大な利益と銀行融資でまるごと自ら背負い込んだ。途方もない財務的賭けである。だが結果として、スタジオの管理から離れた半・自主製作に近い体制を実現してみせた。だからこそ、明朗な勧善懲悪からあえて踏み外した、暗く内省的な物語を描くことができた。あのルーカスの覚悟がなければ、シリーズがこれほど深い陰影をまとうことはなかっただろう。
脚本の歩みもまた、この作品の物語に劣らずドラマチックだ。最初に初稿を手がけたのは、SF・探偵小説の名手であり古典ハリウッドの脚本家でもあったリイ・ブラケット。長年培ってきた語りの技術を惜しみなく注ぎ込んだが、彼女は初稿を書き上げた直後、癌でこの世を去ってしまう。残されたルーカス自身が物語の骨格を一から練り直し、そのあとを引き継いだのが、前作の最終仕上げで絶大な信頼を勝ち取っていた若手のローレンス・カスダンである。台詞の切れ味、人物の機微、そのひとつひとつを丁寧に磨き上げていった。あの「私がお前の父だ」へと観る者を導く緻密な構成、そしてハンとレイアのウィットに富んだ会話劇の絶妙な間合い。すべては、この度重なる改稿という地道な積み重ねから生まれた奇跡なのだ。
スター・ウォーズ第2作目の監督に抜擢されたのは、アーヴィン・カーシュナー。実はルーカスの南カリフォルニア大学映画学校時代の恩師である。派手なスペクタクルよりも、俳優の芝居と感情の機微を何より大切にする——そんなカーシュナーの演出方針があったからこそ、本作は単なるSF大作を超えた重厚な人間ドラマとしての深みを獲得した。ルーカス自身は監督の座を譲り、製作総指揮(エグゼクティブ・プロデューサー)として全体を統括する立場へ回る。この大胆な座組の組み替えこそ、シリーズの転換点だった。
キャスティング
マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、ピーター・メイヒュー(チューバッカ)、アンソニー・ダニエルズ(C-3PO)、ケニー・ベイカー(R2-D2)と、主要キャストがそのまま続投している。あの面々がふたたび顔をそろえる安心感は、ファンにとってまず大きな魅力だろう。興味深いトリビアもある。ハミルは本作の撮影前に自動車事故で顔に怪我を負っており、物語冒頭の**ワンパ(氷の惑星ホスに棲む獣)の襲撃シーン**で顔に傷を負う設定は、その事故をうまく取り込んだものだとする見方もあるのだ。現実と虚構が絶妙に重なり合う、忘れがたいエピソードである。
本作からハン・ソロの旧友ランド・カルリジアン役として加わったのが、ビリー・ディー・ウィリアムズ。**洗練と両義性**を併せ持つ、味わい深いキャラクター像をシリーズにもたらした。ダース・ベイダーは引き続きデイヴィッド・プラウズがスーツのなかで身体を演じ、声はジェームズ・アール・ジョーンズが担当する盤石の布陣だ。皇帝の立体通信(ホログラム)は、当初は別の俳優の映像にクライヴ・レヴィルの声を当てて作られていた。後年の改訂版で差し替えられることになるが、オリジナル版を観た者にとっては、これもまた忘れがたい味わいである。
ヨーダの創造
本作最大の発明、それはヨーダである。脚本上は重要なジェダイ・マスターでありながら、企画初期には小柄な男優や猿に演じさせる案まで検討されていたというから驚きだ。最終的に採用されたのは、メイクアップ・アーティストのスチュアート・フリーボーンらが——一説にはアルバート・アインシュタインの風貌まで参照しながら——設計した精巧なパペットだった。そしてジム・ヘンソンの推薦を受けたフランク・オズが、人形遣い兼声優として演じることに落ち着く。この絶妙な座組みこそ、ヨーダという唯一無二のキャラクターを生み出した立役者にほかならない。
オズは指と手の細やかな動きで表情と感情を巧みに操り、あの独特の倒置した語法と相まって、ヨーダを単なる仕掛け人形ではなく、主役級の存在感を放つキャラクターへと昇華させた。泥沼に沈んだ機体を念力で持ち上げる老師の姿に、本気で胸を打たれる──この一点こそ、特撮キャラクターが物語の核を担い得ることを証明した瞬間だった。そして後年のクリーチャー演出における、ひとつの揺るぎない基準を打ち立てたのである。
撮影とロケ地
氷の惑星**ホス**の外景は、ノルウェーのフィンセ周辺、ハダンゲルヨークレン氷河で撮影された。ところが撮影隊を待っていたのは、数十年に一度という記録的な寒波と猛吹雪である。スタッフはホテルから一歩も出られず、ハミルらに至っては玄関から数歩進んだ極寒の屋外でカットを拾うしかなかったと伝えられている。だが、その過酷さこそが、かえって惑星ホスの容赦ない説得力へと転化していった。雪の重み、息を呑むような寒気、画面ににじむ張り詰めた空気。スタジオセットでは絶対に出せない**本物の極限**が、そこにある。
ダゴバの沼地、エコー基地、クラウド・シティ、カーボン凍結室といった巨大セットは、英国ロンドン近郊のEMIエルストリー撮影所に組み上げられた。なかでも沼地のセットは生き物の気配がそこかしこに漂う緻密な作り込みで、ヨーダのパペット演技に欠かせない**床下の操演スペース**まできっちり設計されていた。スケジュールも予算も大幅に超過し、自己出資のルーカスは深刻な資金圧力を抱え込むことになる。それでも現場はクオリティを一切妥協せず、作品を最後まで磨き上げて完成させた。
視覚効果
ILM(インダストリアル・ライト&マジック)は、前作で確立した技術をさらにその先へと推し進めた。雪原を進撃するAT-ATの巨体に命を吹き込んだのは、ミニチュアを一コマずつ動かして撮影するストップモーション・アニメーション(人形を少しずつ動かして連続撮影する手法)である。あの重量感あふれる歩みこそ、本作を象徴する映像となった。小惑星帯の手に汗握る追走劇、見上げるほど巨大なスーパー・スター・デストロイヤー、そして雲海に浮かぶ幻想的なクラウド・シティ。その規模感と合成処理の複雑さは、前作をはるかに凌駕していた。
これらの成果により、本作はアカデミー視覚効果特別業績賞を受賞した。ILM(インダストリアル・ライト&マジック、ルーカスが立ち上げた特撮工房)は、ここで磨き上げた技術とチームを、以後の映画産業全体における視覚効果開発の中核として受け継いでいく。一本の映画のために集められた職人集団が、そのままハリウッドVFX史の本流となっていったのだ。その歩みにこそ注目したい。
音楽と音響
ジョン・ウィリアムズは本作で、ロンドン交響楽団とともにシリーズ屈指の重要テーマを生み出した。帝国軍とダース・ベイダーの威圧感を一音で叩きつける重厚な行進曲、**「インペリアル・マーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」**。そして神秘性と慈愛が静かに溶け合う**「ヨーダのテーマ」**。この対照的な二曲が同じ一作から同時に生まれたという事実は、改めて考えると驚くべきことである。
とりわけ**インペリアル・マーチ**は、登場人物や勢力に固有の旋律を割り当て、場面の意味そのものを音楽が先回りして語るライトモティーフ手法(特定のキャラクターや状況に専用の主題を結びつける作曲技法)の、ひとつの完成形を示した。ベイダーが画面に姿を見せる前から、音楽がその脅威を告げる。あの旋律は現実世界でも、権力や抑圧、じわじわと迫る危機の代名詞として広く引用されるようになった。前作で確立された音響デザインも健在で、AT-ATの駆動音やカーボン凍結装置の重い作動音といったディテールが、世界の手触りをしっかりと支えている。
編集と公開準備
編集も見事だ。人間ドラマと三つの舞台——ホス、ダゴバ、ベスピン——で並行して進む物語を、緊張を切らさず最後まで追わせる構成は実に緻密に組み立てられている。とりわけクラウド・シティの対決では、剣戟そのものを派手に見せるのではなく、ルークが心理的にじわじわと追い詰められ、ついには衝撃の真実に直面していく——その過程を丁寧に積み上げる編集に明らかに重心が置かれている。この呼吸こそが、本作を単なるアクション続編に終わらせなかった要だといえる。
「私がお前の父だ」——この衝撃の真相は、脚本・撮影・編集の全工程を通じて徹底的に伏せられていた。決定的なあの台詞は、最終段階になってからジェームズ・アール・ジョーンズの声に差し替えられたという。公開直前まで関係者の多くが真相を知らされていなかったというのだから、その徹底ぶりには驚かされる。だからこそ公開時の衝撃は極限まで高められた。情報管理の徹底が、映画史に残る名シーンを生み出したのである。
公開と興行
1980年5月21日に全米公開された本作は、前作が巻き起こした熱狂を追い風に、世界中で記録的な大ヒットを飛ばし、その年の興行を席巻した。前作の利益をそっくり再投資し、自己出資という大勝負に打って出ていたルーカスにとって、これは単なるヒットにとどまらない。**ルーカスフィルムの財務的独立を盤石にする決定的な勝利**だった。その後も再公開を重ね、1997年には映像や音響をデジタル技術で改訂した**特別篇**として、再び劇場のスクリーンへと舞い戻った。
ただし公開当初の評価は、必ずしも一枚岩ではなかった。物語のトーンは終始**暗く**、主人公は決定的な**敗北**を喫し、明快なカタルシスを得られないまま続編へ宿題を残して幕を閉じる。この構成が、一部の批評家には「未完で陰鬱」と受け取られた面もあった。ところが時の経過とともに評価は逆転していき、いまや**続編映画として、スペースオペラとして、そして映画史全体を通しての傑作**として広く認知される一本となっている。
第53回アカデミー賞では**録音賞**を受賞し、視覚効果には特別業績賞という名誉まで贈られた(美術賞や作曲賞などにもノミネートされている)。そして2010年には、米国議会図書館の**国立フィルム登録簿**(文化的・歴史的・芸術的に重要な映画を永久保存する制度)に選定されるという快挙を達成。後世に残すべき宝として、国家のお墨付きを得たことになる。アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI/米国映画協会)をはじめ、各種の映画史ランキングでも本作はシリーズ中の最上位に挙げられることが多く、その評価は今なお揺るぎない。
特別篇とバージョン違い
本作もまた、改訂に改訂を重ねてきた一本である。1997年の特別篇では、ワンパの姿をよりはっきりと見せる新撮カットが加わり、クラウド・シティの窓や通路も拡張された。さらにベイダーの乗艦が旗艦エグゼクターへ着艦する新規ショットまで盛り込まれ、細部に至るまで手が入っている。当時のファンを唸らせた仕上がりであり、オリジナルと見比べる楽しさが一気に増した版でもある。
2004年のDVD版では、皇帝の立体通信のシーンが撮り直されている。後の前日譚3部作で皇帝役を務めたイアン・マクダーミドの映像と新しいセリフに差し替えられ、ボバ・フェットの声も別の俳優による吹き替えに変更された。これがなかなか重要で、どの版で観るかによって皇帝とベイダーの関係性の見え方が大きく変わってくる。それだけに、いま観ているのがオリジナル版なのか2004年DVD版なのか、意識しておきたいところだ。
批評・評価・文化的影響
本作は、「続編は前作を超えられない」という映画界の長年のジンクスを真っ向から打ち砕いた、最も有名な一例として今なお語り継がれている。明るく爽快なヒーローの冒険譚だった前作に対し、こちらは敗北、喪失、誘惑、そして出自にまつわる衝撃の真実といった重いテーマを正面から描く。主人公に決定的な挫折を背負わせるという大胆な構成だ。これがスター・ウォーズというサーガに神話的な奥行きを与え、何度観返しても新たな発見がある深みを生んだ。多くの批評家や映画作家が、本作をシリーズ最高傑作、いや映画史上屈指の続編・エンタテインメント作品として真っ先に挙げる。それも決して大げさではない。
「私がお前の父だ」というあの一節は、もはや衝撃の真相・どんでん返しの代名詞として大衆文化に**完全に定着**している。あまりに有名になりすぎて、しばしば「ルーク、私がお前の父だ(Luke, I am your father.)」と誤って引用されるほどだ。実は本編にはないセリフだが、それほど人々の記憶に深く刻まれている証しといえる。**インペリアル・マーチ**(帝国軍のテーマ曲)の重々しい旋律とともに、本作が打ち立てたイメージは映画というジャンルの枠を軽々と飛び越え、世代を超えた共通の記憶となった。物語の構造という点でも功績は大きい。後年のシリーズや数多くのフランチャイズが、「**暗い第2作で主人公を徹底的に打ちのめす**」という型を律儀に踏襲している。続編づくりに悩むつくり手にとって、本作はいまだに一つの基準点であり続けている。そう言い切ってよい一本だ。
舞台裏とトリビア
「私がお前の父だ」の真相は、撮影現場でも徹底的に伏せられていた。スーツアクターのデイヴィッド・プラウズには、趣旨として「オビ=ワンがお前の父を殺した」という偽の台詞を演じさせる念の入れようで、真実を知らされたのは撮影直前のマーク・ハミルただ一人だったと伝えられる。決定的なあの台詞は、最終的にジェームズ・アール・ジョーンズが後から吹き込んだものだ。出演者や制作陣の多くですら、完成披露まで真相を知らなかったというから驚かされる。この徹底した情報管理こそ、公開時の伝説的な衝撃を最大化した立役者だった。
ちなみに、劇中の実際の台詞は「いいや、私がお前の父だ(No, I am your father.)」である。世間に広く流通している「ルーク、私がお前の父だ」は、実は誤引用だ。作品そのものよりも引用のほうが有名になってしまった珍しいケースとして、映画ファンの間でもしばしば話題にのぼる一節である。
レイアの「愛してる」に対するハンの「知ってる(I know.)」は、脚本では本来もっと説明的な台詞だった。それをハリソン・フォードが現場でアドリブ的に言い換え、監督のカーシュナーがそのまま採用したことで、映画史に残る名台詞が生まれた。ヨーダにも面白い裏話がある。企画初期には、なんと猿に演じさせる案まで検討されていたという。最終的にはパペットとフランク・オズの演技に落ち着き、これが大正解だったのは言うまでもない。そして何より、自己出資という大きな賭けに勝った本作の成功こそが、ルーカスフィルムの創作上・財務上の独立を確立させた決定打だった。以後のシリーズ運営の前提を作り上げた、まさに転換点の一作である。
テーマと解釈
本作の核にあるのは、敗北と成長だ。登場人物は誰一人として、完全な勝利を手にしない。ルークは右手を失い、さらに信じてきた父の物語そのものまで失う。ハンは凍結されて連れ去られ、反乱軍は基地を追われて離散する。徹底した喪失、それも極端なまでの喪失である。だが、この容赦ない打ちのめされ方こそが、次作での成熟への布石になっている。勝利を焦るあまり修行を途中で投げ出したルークは、まんまと罠に落ちていく。この構図は、忍耐と「今ここ」への集中を説くヨーダの教え(フォースの師としての導き)と、見事に表裏一体をなす。物語そのものが一つの教訓として精密に組み上げられている。そこに本作の凄みがある。
もう一つの軸は、誘惑と継承だ。本作の暗黒面は抽象的な悪としてではなく、怒り・恐れ・喪失・近道といった、誰の心にもある弱さとして具体的に差し出される。ヨーダの「やるか、やらぬかだ」、そしてXウィングを持ち上げてみせるあの名シーン。あれは力の問題ではなく、信じる心の問題としてフォースを描き直している。だからこそ、フォースという概念が一気に身近で、生々しいものに感じられる。単なる超能力バトルではなく、内面の試練の物語として響いてくるのだ。
そして「私がお前の父だ」というあの一言。倒すべき敵が外部の他者ではなく、まさかの自らの血縁だったという衝撃的な反転によって、明快な善悪二元論は内面の葛藤へと作り替えられた。これこそがシリーズ全体の主題——赦し、血の宿命、選択による自己定義——の起点だと言っていい。技ではなく心を問うヨーダの教え、決定的な勝利を与えない「中編」という構造、寒色と陰影に満ちた映像、脅威を先取りするような音楽、そのすべてがこの内省的な主題に奉仕している。本作がこれほど長く愛されているのは、単なる爽快感ではなく、痛みを通じて人が変わっていく過程を誠実に描き切ったからにほかならない。
見る順番(補助)
初めて観るなら、まず『新たなる希望』に続けて本作、そして『ジェダイの帰還』へと進む公開順がいちばん分かりやすい。**出自の真実**という衝撃の展開は、前作を観たうえでこそ最大限に効いてくるからだ。だからこそ、いきなり本作から入るのはおすすめしにくい。あの名シーンの破壊力を存分に味わうなら、観る順番を大切にしたい。
プリクエル三部作(エピソード1〜3、アナキン時代を描いた前日譚シリーズ)を先に観ておくと、アナキンの転落を踏まえたうえでベイダーの告白を受け止めることになり、あのシーンの重みが一変する。ただ、初見ならやはり旧三部作を公開順で通すのがおすすめだ。情報が小出しに開示されていく構成そのものを味わえるため、衝撃の出方を素直に楽しめる。
- 前作『新たなる希望』でデス・スターが破壊される
- 本作帝国の反撃、ルークの修行、出自の真実
- 次作『ジェダイの帰還』でハン奪還と決着へ
よくある質問(補助)
「あらすじだけ知りたい」という方は、**ホスの陥落**、**ルークのダゴバ修行**、**ハンの捕縛**、そして**クラウド・シティの対決**——この4つの流れを押さえておけば十分ですよ。一方で「結末・ネタバレまで知りたい」となると、話は別。あの伝説の『**私がお前の父だ**』の告白、それを受けたルークの拒絶と落下、そしてハンが連れ去られていくラスト——ここまでが物語の核なんですよね。短いあらすじでも語れる映画ですが、本当に語りたくなるのは、やっぱりこの“衝撃の核”の部分。
「評価を知りたい」と思った時は、まず**敗北を描く中編**という構造を理解の鍵にするのがおすすめなんですよ。スカッとした明快な爽快感は薄め。でも、シリーズに圧倒的な深みを与えたという点で**最高傑作**と評されることが本当に多い一作です。「見る順番」については、本作だけを単独で先に観てしまうのは避けたいところ。必ず前作のあとに置く流れが、いちばん安定しますよね。
参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行成績、制作・配信状況、外部評価といった情報は変動する可能性があるため、視聴前には**公式サイトおよび各データベースの最新表示**を必ず確認してほしい。本記事の本文は、各種公開情報をもとに、**Anna Movies独自の日本語記事**として構成したものである。
参照・確認先
公式画像、作品名、キャラクター名、権利は各権利者に帰属する。公開年、配信状況、外部評価は変わる場合があるため、視聴前に公式・配信元・作品データベースで確認したい。