エヴァンゲリオン百科事典

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新世紀エヴァンゲリオン(貞本義行漫画版)第9巻

「フィフス・チルドレン」全7話のあらすじ・アスカの精神汚染・カヲルの登場を解説

貞本義行による漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』第9巻「フィフス・チルドレン」は、使徒の精神攻撃で惣流・アスカ・ラングレーの心が暴かれると同時に、五番目の適格者・渚カヲルが登場する巻です。公式内容紹介が「物語は佳境へ!」と告げるとおり、戦いの前線が都市から心の内側へ移ります。STAGE.57〜63の流れ、カヲルの早い登場が作る関係のずれ、TV版対応話数との構成差、次巻への接続を巻単位で整理します。

ネタバレ:貞本義行漫画版第9巻の全7話、アスカへの精神攻撃、カヲルの登場、ロンギヌスの槍に関わる話題を含みます。未読の場合はご注意ください。

制服姿の綾波レイを中心に描いた貞本義行漫画版第9巻の公式書影
漫画版第9巻の表紙。制服姿のレイを中心に据え、物語後半で彼女の内面が前景化する直前を示す。

第9巻は、心を攻撃する使徒と、心に触れてくる少年で、戦いの内側をえぐる巻

公式内容紹介の見出しは、この巻の中身を二つの断片で告げます。「ついにカヲル登場! アスカ精神汚染で窮地!!」。使徒の精神攻撃にさらされるアスカと、突如現れる五番目の適格者・渚カヲル。前巻までの戦いが都市の防衛と機体の攻防だったのに対し、この巻の攻撃は、皮膚の外の装甲を素通りして、記憶と誇りの層へ直接届きます。

同時に、この巻は新人物の到着を迎え入れます。紹介文が「突如現れた5thチルドレン・渚カヲルの狙いは?」と問いの形で掲げるとおり、彼は味方として迎えられると同時に、目的を知らされない存在です。心を開かれるアスカと、心へ触れてくるカヲル。内側へ届く二つの接触が、この巻を物語の佳境へ引き込みます。戦闘の規模ではなく、届く深さで戦いが激しくなる巻です。

2004年刊にSTAGE.57〜63を収録する

KADOKAWA通常版第9巻は2004年4月23日発売、ISBN 978-4-04-713618-2です。作画は貞本義行、原作表記はカラー、レーベルは角川コミックス・エース、B6変形判・180ページ、定価638円(本体580円+税)。限定版が2004年4月14日に発行されました。また本巻は、綾波レイを題材にしたスペシャルBOX版が用意された巻でもあります。掲載は月刊少年エース2003年2月号から2004年2月号にわたり、掲載の間隔が広がる後期連載の落ち着いたリズムに当たります。

本巻の公式書影には綾波レイが配され、スペシャルBOX版も同じくレイを題材にしています。内容紹介の前面に出るのがアスカとカヲルであるのに対し、商品の顔をレイが担う。三人の適格者が、それぞれ別の層でこの巻を支える配置です。巻を本棚に並べたときの見え方と、読み進めるときの重心的な違いは、この巻の性格を表すもう一つの記録といえます。

収録話はSTAGE.57「フィフス・チルドレン」からSTAGE.63「応戦」までの7話です。

STAGE.57フィフス・チルドレン:月刊少年エース2003年2月号。五番目の適格者の到来
STAGE.58拒絶:月刊少年エース2003年4月号。受け入れと拒みが交錯する
STAGE.59プライド:月刊少年エース2003年6月号。誇りが問われる局面
STAGE.60ドール:月刊少年エース2003年9月号。心と人形の境界の題
STAGE.61ロンギヌスの槍:月刊少年エース2003年11月号。伝説の装備が作戦に現れる
STAGE.62distance:月刊少年エース2003年12月号。距離という語が題を担う
STAGE.63応戦:月刊少年エース2004年2月号。攻撃への反撃

精神攻撃は、アスカの誇りと過去の暗闇を同時に開く

公式の案内は「使徒に精神攻撃を受けるアスカ。過去の暗闇を暴かれたアスカの心は!?」と、攻撃の到達点を明示します。これは単なる能力戦の話ではありません。本作のアスカは、周囲より優れていることを証明し続ける姿勢で自分を支えてきた人物であり、その自己評価の根は、母から切り離された生い立ちにまで遡ります。心へ届く攻撃は、彼女が最も堅く守っていた層、過去と誇りを、一度に暴きます。

外部の攻撃が内面を開けるという構造は、防衛の概念を反転させます。装甲の厚さが命を守る通常の戦いに対し、ここで求められるのは、開かれた心を誰が支えるのかという問いです。パイロットとしての完成形を目指してきた少女が、最も見せたくない場所を見られる。第9巻の緊張は、この非対称の上に立ちます。姿の見えない攻撃者と、傷を見せられる被攻撃者。応戦の話題が巻末に置かれるまで、この構図は解けません。

カヲルの登場は、TV版より早く、反発から始まる関係として置かれる

渚カヲルは、TV版では物語の最終盤に集中する人物です。漫画版は彼の登場を早め、碇シンジたちと過ごす時間を長く取ります。案内文が「突如現れた5thチルドレン・渚カヲルの狙いは?」と狙いを伏せたまま迎え入れるとおり、彼は仲間としての顔と、読めない目的という二つの面を同時に見せます。この時間差こそ、漫画版のカヲルの造形の核心です。

だからこそ漫画版の関係は、一目での絶対的な肯定から始まりません。シンジは彼の理解できない言動に反発し、警戒しながら接します。距離の詰め方が映像版と違うため、二人の接近は長い過程になり、後の巻での対決と別れの重さが、ここから積み上げられていきます。この巻のうちに彼が見せた顔の記録は、後の巻で振り返るときの基準線になります。登場の早さは演出の変更というより、関係の設計そのものの変更です。

巻題「フィフス・チルドレン」は、迎え入れられる存在の疑問を告げる

適格者という呼び名は、パイロットの資格を番号で管理する組織の言葉です。この巻の題は、その組織の言葉をそのまま巻の顔に据え、五番目として数えられる人間の到来を告げます。題自体は彼の名を言いません。名より先に番号が来る。この扱いが、彼が一人の人間として迎え入れられる前に、まず戦力として数えられる存在であることを、題の段階で示します。

紹介文の「狙いは?」という問いと併せて読むと、題の意味は明確です。組織の番号を与えられた少年が、何のためにここへ来たのか。読者はこの問いを巻全体で抱えたまま、彼の言動を一つ一つ追うことになります。答えが読者に渡されるのは、この巻ではまだ先です。疑問を巻題として置き、開示を後の巻へ送る。シリーズ後半の引きの設計が、ここで効いています。

五番目という番号は、子どもたちの並びに加わることを告げる

この巻の題「フィフス・チルドレン」は、番号の呼び名そのものです。本作では、パイロットの少年少女が組織の言葉で番号を与えられてきました。シンジがサード・チルドレンと呼ばれたことは、連載初期のSTAGE.11「さまよえるサード・チルドレン」の題からも確認できます。五番目の到来は、その並びに新しい座が加わること。適格者という管理の言葉が、子ども一人一人を戦力の単位として数える世界の異様さを、この巻は題の段階で静かに示します。

番号で呼ばれることは、当事者の名前を覆い隠します。迎える側の大人たちにとって五番目は戦力であり、読者にとっては、名前も目的も知らされない到着者です。商品紹介が「渚カヲルの狙いは?」と名前を明かしつつ目的を伏せる順序は、この管理の視線と、個人の謎の間に置かれています。番号が先で、名前が続き、狙いは最後まで開かれない。この三段の遅れが、後の巻での開示への長い助走になります。

「ドール」の題は、心を持たない操り人形という問いを置く

STAGE.60「ドール」の題は、心と人形の境界の問いを、この戦いの渦中に置きます。本作が積み上げてきた人物の像と結びつけて読むと、この題の重みが分かります。綾波レイは命令へ従う代替可能なパイロットとして出発し、アスカは自己の価値を性能に預けてきました。人形のように扱われることと、人形のように振る舞うことを自ら選ぶこと。二人の少女を囲むこの問いは、心を暴かれる使徒の攻撃と同系統の光を放ちます。

題だけから話の内容を断定するのは控えるべきですが、この巻の話題の並びが、人形の問いを戦いの文脈へ置いていること自体は明確です。心の攻撃、誇り、人形、距離。内面の語が並ぶ中に装備の題が挟まり、反撃で締められる。この7話の並びを見るだけでも、戦いの記録が心の記録へ連続していることが伝わります。

ロンギヌスの槍と応戦の話題で、戦いは反撃の局面へ進む

STAGE.61「ロンギヌスの槍」の題は、作戦の手段が変わることを示します。ロンギヌスの槍は、本作において特別な性質を持つ伝説の装備であり、その投入は通常の兵装では届かない相手への対応を意味します。姿の見えない攻撃者に対し、人類側が用意した最後の手段が作戦に現れる。防戦一辺倒だった局面から、反撃の選択肢が手元へ戻る転換点です。

巻末の「応戦」は、攻撃への応答を題とする話です。この題が示すのは、勝利の宣言でも終戦の報告でもなく、まだ応え続ける段階にある戦いです。前巻で家族の真実に触れた物語が、ここで再び前線の緊張へ戻る。ただし、この戦いが心の層にまで攻撃を届けられた以上、反撃が元の戦争へ戻すものではないことも、読者には分かります。応戦の題で巻を閉じる設計は、次巻へ戦いの残響をそのまま渡します。

TV版の第弐拾弐話と第弐拾四話の領域を、漫画は登場の順序ごと組み替える

アスカへの精神攻撃とロンギヌスの槍は、TV版では第弐拾弐話「せめて、人間らしく」が担う領域です。カヲルの登場は第弐拾四話「最後のシ者」の核心です。漫画版はこの二つの領域を、カヲルの登場を早めることで同じ巻へ織り込みました。出来事の有無を比べるだけでは、この組み替えの意味は見えません。

登場の順序を動かすと、人物の意味が動きます。映像版で最終盤に一挙に現れた人物が、漫画ではアスカの危機の渦中に到着する。彼は少女の崩れゆく誇りを、外部から見る位置に置かれます。連続性比較の解説でも整理しているとおり、漫画版の差分は刺激の調整ではなく、関係の再配置です。誰がいつ誰の危機に隣に立つか。その設計の違いが、この巻の一番の比較点になります。

第9巻が終えることと、第10巻へ渡すことを分ける

第9巻の到達点
  • 使徒の精神攻撃が、アスカの過去と誇りを暴きます。
  • 五番目の適格者・渚カヲルが登場し、その狙いは伏せられたままです。
  • シンジとカヲルの関係は、理解できない言動への反発から始まります。
  • ロンギヌスの槍が作戦に現れ、反撃の局面へ進みます。
  • 「ドール」の題が、心と人形の境界の問いを置きます。
  • 巻は「応戦」の題で締められ、戦いの緊張が次巻へ渡されます。

第9巻が次巻へ渡すのは、応え続ける戦いと、揺れ続ける心です。第10巻「涙」へ続きます。

初読では、カヲルの「狙い」を早く決めつけない

公式案内が狙いを問いのまま掲げるように、この巻のカヲルは、読者が答えを持てないまま観察する相手です。既に別の作品系列でカヲルを知っている読者ほど、彼の言動を先回りして解釈しがちです。しかし漫画版の彼は、登場の位置からして別の設計です。この巻では、彼が何をしたかを追い、何者かを確定させない読み方が、後の巻の開示の重さを守ります。

アスカの側も、精神攻撃の場面を能力の優劣の話として読み飛ばさないでください。暴かれる過去は、以後の彼女の行動の読み方を根ごと変える場所です。ここで描かれた暗闇を記録しておくと、次巻以降の彼女の一挙一動が、防御の記述として読めるようになります。読み直すときは、攻撃が届いた層と届かなかった層を分けておくと、この巻が後半で果たす役割がはっきりします。

第9巻は、守られるはずの心が戦場になる転換点

都市を守る壁、機体の装甲、避難のサイレン。本作が積み上げてきた防衛の記述は、攻撃が外側から来る前提に立っていました。第9巻はこの前提を外します。攻撃は心に届き、防御の設備は機能しない。同時に、新しい仲間の到着という防衛の強化の出来事が、目的を知らされない不安と同梱で届く。守る仕組みが揺らぐ巻であると同時に、守られる側の内面が初めて正面の戦場になる巻です。

この転換がシリーズ全体で担う役割は、大きいです。以後の物語は、使徒という外部の敵と、人間同士の信頼の崩れという内部の裂け目を、同じ速度で進めていきます。第9巻はその二線が一本に撚り合う始点です。心を攻撃する使徒を撃退しても、開かれた心は元に戻りません。応戦の題が示す継続する戦いは、外部との戦争であると同時に、開かれてしまった心との長い付き合いの始まりを意味します。

第9巻についてよくある質問

漫画版第9巻には何話が収録されていますか?

STAGE.57「フィフス・チルドレン」からSTAGE.63「応戦」までの7話です。月刊少年エース2003年2月号から2004年2月号に掲載された話を収録しています。

第9巻でアスカに何が起きますか?

使徒の精神攻撃を受け、過去の暗闇を暴かれます。公式内容紹介が「アスカ精神汚染で窮地!!」と告げるとおり、彼女の誇りと生い立ちに関わる層へ攻撃が届き、以後の物語の重要な基盤になります。

漫画版でカヲルが登場するのは第9巻からですか?

五番目の適格者・渚カヲルとしての登場は、公式内容紹介が告知するとおりこの巻です。TV版では最終盤に集中する人物ですが、漫画版では登場が早められ、シンジたちと過ごす時間と関係の積み上げが大きく異なります。

第9巻のあとはどの巻から読めばよいですか?

第10巻「涙」へ続きます。応戦の題で閉じられた戦いと、揺れた心の行方が、次巻以降で引き取られます。