エヴァンゲリオン百科事典

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ビデオフォーマット版 第21話〜第24話

『新世紀エヴァンゲリオン』のビデオフォーマット版 第21話〜第24話は、1996年のテレビ初回放送後に追加カット、描き直し、編集調整を施した4本の改訂版です。話数表記は21'、22'、23'、24'とされ、放送版と同じ物語をたどりながら、NERV成立史、アスカの心理、レイの素体と使徒侵食、渚カヲルとSEELEの関係を補強します。単なる高画質化や尺の延長ではなく、劇場版『EVANGELION:DEATH』の制作過程で生まれた素材も各話へ戻し、TV終盤と旧劇場版の接続を組み直した映像版です。本記事では、OAフォーマット版との違いを第21話から第24話まで個別に整理し、現在の配信・映像商品でどちらを見ているかを判別する手がかりまで解説します。

ネタバレ:TVシリーズ第21話〜第24話と各ビデオフォーマット版、旧劇場版『DEATH』の構成、加持リョウジの死、アスカの精神崩壊、二代目レイの死、渚カヲルの正体と最期に関する重大なネタバレを含みます。

第弐拾壱話から第弐拾四話を収録する新世紀エヴァンゲリオンSTANDARD EDITION Vol.6
NERV前史からカヲル登場まで、TVシリーズ終盤の四話を収録する公式Blu-ray第6巻。

ビデオフォーマット版とは何か

TV第21話から第24話には、1996年の初回放送で流れたOAフォーマット版と、放送後の映像ソフト向けに改訂されたビデオフォーマット版があります。公式のBlu-ray/DVD商品では両者を区別して収録する例があり、改訂版の話数にはプライム記号を付けた21'、22'、23'、24'という表記が使われます。現在の視聴環境では改訂版だけに触れる場合もあるため、「TVで放送された第21〜24話」と「いま配信される第21〜24話」が完全に同じ映像とは限りません。

4本は、出来事の順序や結末を別の世界線へ変える版ではありません。冬月コウゾウの回想、アスカの孤立、アルミサエルによる侵食、カヲルの行動といった既存の筋を保ち、その前後へ情報と感情の段階を足します。一方、追加された台詞によって新たな疑問が生じた箇所もあり、すべてを説明して矛盾を消した「完全版」と呼ぶと実態を狭めます。改訂は理解を助けると同時に、作品の解釈可能性を増やしています。

最初に押さえたい4点
  • OAフォーマット版は1996年の初回放送形態、ビデオフォーマット版は放送後に改訂された形態である。
  • 改訂対象はTV第21話、第22話、第23話、第24話の4本で、話数の後ろにプライム記号が付く。
  • 追加素材の一部は『EVANGELION:DEATH』の制作と深く関係し、TV終盤と旧劇場版をつなぐ。
  • 現在流通する映像では改訂版が標準的に提示される場合があるが、公式商品には両版を比較できるものもある。

名称とプライム記号―「ディレクターズカット」と同じ意味か

ファンの会話では「ディレクターズカット版」と呼ばれることが多い一方、公式商品情報では「ビデオフォーマット版」や、OAフォーマット版との対比が用いられます。本サイトでは検索時の分かりやすさから一般的な呼称も別名に含めますが、記事名は公式側の表記に合わせています。劇場公開版を監督が後年再編集した一般的なディレクターズカット作品と、まったく同一の制作事情だと決めつけないためです。

21'のような記号は「21話の続編」や「21.5話」を意味しません。同じ話数の改訂版を識別するための表記です。英語サブタイトルも、21'は「He was aware that he was still a child.」、22'は「Don't Be.」、23'は「Rei III」、24'は「The Beginning and the End, or “Knockin' on Heaven's Door”」を継承します。話数と英題が同じでも、プライムの有無によって含まれる映像が異なります。

なぜ第21話〜第24話だけが改訂されたのか

TVシリーズ後半、とりわけ第21話以降は、NERVの過去、パイロットの崩壊、レイとカヲルの正体、SEELEとゲンドウの計画が一気に表面化する区間です。初回放送の尺では、人物が現在の判断へ至るまでの過程や、旧劇場版へ渡す設定をすべて置く余裕がありませんでした。放送終了後に制作された『EVANGELION:DEATH』では、TV第1話から第24話を人物と主題の反復によって再構成するため、新作映像が用意されます。

ビデオフォーマット版は、その新作素材を単純に劇場総集編から切り出したものではありません。各話の時間軸へ合うよう再編集し、TVの物語として読める配置へ戻しながら、追加の作画や修正も行います。そのため『DEATH』を見れば21'〜24'のすべてを見たことになるわけでも、反対に改訂4話だけで『DEATH』固有の編集体験を代替できるわけでもありません。素材は重なりますが、作品単位の構成目的が異なります。

第21'話「ネルフ、誕生」―組織史を災害と家族の時間へ戻す

第21話は、SEELEに拘束された冬月コウゾウの回想から、六分儀ゲンドウと碇ユイの出会い、セカンドインパクト、人工進化研究所とゲヒルン、MAGI完成、NERVへの改組をたどります。21'では南極で行われた実験、災害後に船上で医療へ関わる冬月、人工進化研究所での再会、芦ノ湖畔のユイと幼いシンジなどが加わり、組織の年表を生身の人間が通過した歴史へ変えます。

特に重要なのは、セカンドインパクトを機密資料の一行だけで終わらせない点です。SEELEやゲンドウにとっては計画の一段階でも、冬月が目にするのは医療、避難、荒れた海、失われた生活です。世界規模の抽象的な目的と、個々人が払った代償が同じ回想内で並びます。後にNERVへ協力する冬月も、最初から計画を信奉したのではなく、告発しようと調査した人物だったことが明瞭になります。

ユイと幼いシンジを補う場面は、初号機接触実験を設定説明だけにしません。ユイが未来へ残そうとしたもの、彼女の消失後にゲンドウが選んだ方法、父から離されたシンジの現在が一本の線になります。21'は情報量が増えた版である以上に、現在のNERVを死者と家族の選択から組み立て直す版です。

第22'話「せめて、人間らしく」―アスカの崩壊を日常から積み上げる

第22話では、同期率を失い始めた惣流・アスカ・ラングレーが第15使徒アラエルの精神攻撃を受けます。22'は、艦上で加持へ迫る幼いアスカ、駅でシンジとレイを目にする現在のアスカ、浴室での孤立などを補います。戦闘開始前から、加持に大人として見てもらえない焦り、シンジに追い越される恐怖、レイへの反発、ミサトへの複雑な感情が一つずつ積み上がります。

これによりアラエルの攻撃は、強固だった人格を突然破壊する便利な能力ではなくなります。自立した大人として認められたいという願いと、捨てられる子供であることへの恐怖がすでに衝突しており、使徒はその裂け目を強制的に開きます。精神世界の追加・再編集も、母キョウコ、加持、シンジ、レイに向けた言葉を重ね、アスカが一人の相手だけでなくあらゆる関係から敗北を感じている状態を可視化します。

また、衛星軌道のアラエルを倒すため、ゲンドウが零号機へロンギヌスの槍を回収させる流れも補強されます。槍の使用は使徒撃破に成功する一方、回収不能となって補完計画の配置を変えます。アスカ個人の敗北と、ゲンドウがSEELEの予定から離れる組織的な転換が、同じ一話で進むことが分かりやすくなります。

第23'話「涙」―使徒侵食とレイの交換可能性を可視化する

第23話は、第16使徒アルミサエルが零号機と綾波レイへ侵入し、レイがシンジを守るため自爆する物語です。23'では侵食表現が大きく拡張され、零号機から過去の使徒を思わせる形態や、多数の人型を含む肉塊が膨張します。外部から機体を壊す戦闘ではなく、使徒、エヴァ、パイロットの身体的な境界が混ざる恐怖が前景化します。

ゲンドウと冬月が二代目レイの死を処理する場面も加わり、病室に現れた三代目レイを単なる奇跡の生還だと受け取りにくくします。シンジにとっては代わりのいない相手の死でも、NERVの計画では用意された身体へ役割を移せる。ビデオフォーマット版はこの冷たさを明示し、後半の素体群とダミープラグの公開へつなぎます。

ただし、ビデオソフト化の過程にはさらに細かな修正段階があります。初期版で使われた一部の写真・スケッチと、後年のリニューアル版で整理された映像が同一でない場合があるため、「放送版かビデオ版か」という二分だけで全履歴を説明し切れません。少なくとも初回OA版と、現在標準的に流通する23'を区別することが、人物・設定記事の基準になります。

第24'話「最後のシ者」―カヲルとSEELEの情報を増やし、謎も増やす

第24話は、フィフスチルドレンの渚カヲルがシンジへ好意を伝えながら、第17使徒タブリスとしてターミナルドグマへ進み、最後に人類の生存を選んで死を委ねる物語です。24'では、アスカが加持の死を知った経緯、湖畔でのカヲルとSEELEの対話、レイとカヲルの会話、ゲンドウの掌にあるアダム胚などが加わります。

追加場面により、カヲルが偶然NERVへ紛れ込んだのではなく、SEELEの意図を背負って送り込まれたことが明確になります。同時に、彼がゲンドウのアダムとターミナルドグマの巨人をどう認識していたのか、リリスを見てなぜ驚いたのかという解釈問題は複雑になります。説明台詞が増えたからすべての行動が一義的になるのではなく、カヲルの知識と自由意志を考える材料が増えます。

アスカの浴槽場面を含む映像も調整され、前話までの崩壊とカヲル登場の因果が強くなります。NERVは一人の子供を回復させる前に次のパイロットを受け入れ、シンジはレイ、アスカ、加持を失った直後に、無条件に近い好意を示す相手と出会います。24'は設定補足だけでなく、シンジがカヲルを拒めなかった感情的な空白を拡張する版です。

4話の変更点をどう読み分けるか

各話で補強される中心
  • 21':セカンドインパクト後の社会、冬月の調査、ユイと家族、NERV成立以前の時間。
  • 22':アスカの日常的な孤立、母と加持への執着、精神攻撃へ至る心理の蓄積。
  • 23':アルミサエルの侵食、二代目レイの死、三代目と素体群を運用する組織の冷たさ。
  • 24':カヲルとSEELE、アダムとリリス、アスカ喪失後のシンジ、カヲルの選択をめぐる情報。

4話の改訂には共通した方向があります。表面上の使徒戦を長くするより、その戦闘を選ぶ組織と、戦場へ送られる人物が何を背負っているかを増やします。21'は大人たちの制度、22'はアスカの傷、23'はレイの身体、24'はカヲルの使命を補い、TV終盤を「突然難解になった物語」ではなく、過去から蓄積した関係が崩れる過程として見せます。

尺が長いだけではない―作画・編集・情報の役割

ビデオフォーマット版の価値を追加分数だけで測ると、改訂の性質を見誤ります。新規場面は前後のカットと結び直され、既存場面にも描き直しやタイミングの調整があります。同じ台詞でも、直前に置かれた表情や過去の記憶が変われば意味が変わります。追加映像だけを抜粋して見るより、各話を最初から通して見る方が編集上の効果を確認できます。

一方で、初回放送版の短さを単なる未完成と片づけることもできません。情報を限定した結果、加持の死、アスカの敗北、レイの再出現、カヲルの正体が説明の少ない衝撃として届きます。OA版とビデオ版は、正解と誤りではなく、同じ終盤を異なる密度で経験させる二つの提示です。比較視聴では、何が足されたかだけでなく、追加によって元の余白がどう変わったかを見る必要があります。

『EVANGELION:DEATH』との関係

『EVANGELION:DEATH』はTV第1話から第24話を、単純な放送順ではなく、シンジ、アスカ、レイ、カヲルと弦楽四重奏の構成を軸に再編集した作品です。第21'〜24'と共有する新作素材があるため、両者は密接に関係します。しかし『DEATH』は使徒戦や設定説明を省略し、人物の視線、言葉、手、音楽を反復する独立した編集作品です。

ビデオフォーマット版は、素材を各話の因果と時間軸へ戻します。たとえばアスカの追加記憶は第22'話と第24'話の崩壊過程へ、NERV前史は第21'話の冬月証言へ置かれます。したがって、旧劇場版へ進む際は、TV改訂4話で物語上の位置を確認し、『DEATH』でその素材が主題別にどう再編集されたかを見ると違いが分かります。どちらか一方が他方の短縮版ではありません。

正史上の扱い―別世界線ではなく同一系列の改訂

21'〜24'は、TV版・旧劇場版系列の内部にある映像差です。貞本義行漫画版や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の出来事を上書きするものではなく、反対にそれらの系列を説明する資料でもありません。漫画版では人物の経歴や死の結果が異なり、新劇場版では式波・アスカ・ラングレーやマリ、ネブカドネザルの鍵など別の要素が組み込まれます。

TV系列の中では、改訂版で増えた場面を後続作品の理解に使えますが、「OA版の出来事が無かった」と考える必要はありません。同じ主要事件を別の編集密度で提示したものだからです。本サイトの人物・用語記事では、初回放送時点で示された情報か、21'〜24'で補われた情報かを可能な限り区別し、後年のゲームや資料集による補足も同じ層へ混ぜません。

いま見ている版を判別する方法

最も確実なのは、再生画面や商品収録表で話数にプライム記号が付いているか、OAフォーマット版/ビデオフォーマット版の記載があるかを確認することです。公式DVD第7巻のように第23話・第24話の両版を分けて収録する商品もあります。パッケージに「全26話」とだけ書かれている場合、総話数からは版を判別できません。

映像内容からの目安としては、21話の災害後の冬月とユイの追加場面、22話の艦上の幼いアスカと拡張された精神世界、23話の零号機から膨張する複雑な肉塊、24話のカヲルとSEELEの湖畔の対話が分かりやすい指標です。ただし商品・配信サービスごとに画質や字幕、音声仕様も異なるため、場面の有無とリマスター仕様を同じ問題にしないことが大切です。

作品史上の意義―放送終了後も組み替えられたTV終盤

ビデオフォーマット版は、TV放送を固定された最終形とせず、劇場作品と映像ソフトを通じて再編集した例です。第21話から第24話は旧劇場版直前の情報を担うため、追加は単独エピソードの品質改善に留まりません。TVシリーズ、総集編、劇場版という異なる上映・収録形態が互いの素材を受け渡し、観客がどの版から入るかによって理解の順序も変わります。

この複数形こそ、版を記録する理由です。現在の改訂版だけを唯一の記憶として扱うと、1996年の視聴者が何を知らないまま最終2話へ進んだかを見失います。反対にOA版だけを基準にすると、後の公式流通で定着した人物描写と設定補強を取りこぼします。作品本文を一つに決めるより、いつ、どの媒体で、どの編集が提示されたかを分けることが、TV版・旧劇場版系列を正確に読む近道です。

まとめ

第21'話から第24'話は、NERV誕生、アスカの崩壊、レイの死と交換可能な身体、カヲルの使命と選択を補強する4本の改訂版です。追加場面は旧劇場版への設定を渡すだけでなく、人物が極端な判断へ至る前の時間を回復します。同時に、カヲルの知識のように、説明が増えたことで新たな問いが生まれる箇所もあります。

見るべきなのは「どちらが本物か」という勝敗ではなく、OA版の限られた情報が生む衝撃と、ビデオ版の追加された因果が生む理解の差です。商品や配信の表記、プライム記号、代表的な追加場面を確認すれば、視聴した版を特定できます。そのうえで各話記事と『シト新生』『REVIVAL OF EVANGELION』を往復すると、TV終盤が放送後の編集でどう旧劇場版へ接続されたかを立体的に追えます。