人物
ナニカ
アルカ=ゾルディックの体内に共存する暗黒大陸の生物。願いを叶える力と拒否がもたらす代償、キルア=ゾルディックとの結び付き、ゴンの救出までの経緯。
ナニカは、アルカ=ゾルディックの体の中に宿る存在で、暗黒大陸の生物と説明される。いつどのような経緯でアルカに取り憑いたのかは判明しておらず、両者は現在も一つの体を分け合って共存している。決められた条件が満たされるとナニカが表に出て、アルカの容貌は一変する。
ナニカの中心にあるのは、人の願いを叶える力である。三つの頼みを聞き入れた相手の望みをそのまま実現させ、ネフェルピトーとの戦いで瀕死となったゴン=フリークスの体さえ元どおりにした。反面、その頼みを拒み続けた者は、本人だけでなく周囲の人間まで巻き込んで命を落としている。キルア=ゾルディックを名前で呼んで慕い、褒められることを何より求める性質が、ナニカの行動を読み解く鍵になる。

ナニカ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

キルアとアルカ

ナニカのおねだりを断った際の結果
基本情報
| 所属・宿主 | アルカ=ゾルディックを宿主とし、その体内で共存する。表に出るのは決められた条件が満たされたときに限られ、身体能力は宿った体のものに従う。 |
|---|---|
| 初登場 | 原作は第322話(回想)、第323話(姿のみ)、第324話(本格登場)。テレビアニメ2011年版は第138話(回想)と第139話(本格登場)。 |
| 状態 | 生存。アルカの体を離れず、キルア=ゾルディックの呼びかけに応じて表へ出る。 |
| 能力 | 願望実現。三つの頼みを聞き入れた相手の願いを叶える一方、頼みを四度拒まれると、拒んだ本人と周囲の人間が同時に死に至る。相手を治すときは直接触れる必要がある。 |
| 関係 | キルア=ゾルディックを名前で呼んで慕い、褒められることを求める。アルカとは感情がつながり、アルカはナニカの心の動きを感じ取れる。 |
| 出自 | 暗黒大陸の生物と説明される。ただし、既知のどの生物に当たるのかを示す決定的な記述は原作になく、作者の発言もない。 |
人物像
ナニカの本来の姿は明らかにされていない。顕現するとアルカの白目と虹彩、そして口が漆黒に染まり、口はひとまわり大きく見える。両者が同じ体を分け合っていた時期は、少なくともアルカが幼い子どもだったころまでさかのぼる。ゾルディック家はナニカの正体をつかめていない。キルア=ゾルディックは一度アルカがナニカへ変わる場面に居合わせ、どうすれば元に戻るのかをナニカ自身に尋ねることで、その力のおおよその性質を知った。
ナニカはアルカと同じくキルアを強く慕い、名前で呼ぶ。人から褒められること、とりわけキルアに褒められることを求めており、そのために願いを叶え、たいていは自分を撫でてほしいと頼む。言葉数は少なく、願いを引き受けるときの返事もごく短い。
キルアからもう二度と出てくるなと命じられたときには、深く傷ついて泣いた。のちにキルアがアルカとナニカの双方を守ると約束し、ナニカが望むときにはいつでも撫でると告げたことで、ナニカはキルアを許している。アルカとの間柄も良好で、アルカはナニカの感情を感じ取れるため、ナニカが悲しんだときにはアルカ自身も強く動揺した。
作中での動向
幼児だったアルカは、ゾルディック家の使用人ミツバに、抱き上げること、階段を上がること、高く持ち上げることという三つの簡単な頼みごとをした。ミツバが言われたとおりにすると、アルカの目と口が突然漆黒に染まった。怯えたミツバが助けを呼び、駆けつけたキルアが「たかいたかい」をしてほしいと頼み、アルカがそれに応じたことで元に戻った。ミツバがすでに両親へ報告していたため、キルアはこの一件のあと、アルカの秘密を親に話さざるを得なくなった。
この出来事から、三つの頼みが聞き入れられるとアルカの目と口が漆黒になり、願いを聞いて叶えたときにだけ元に戻るという仕組みが判明した。母のキキョウ=ゾルディックは力を試すため、どれほど小さな頼みでもすべて断るようミツバに命じた。その結果、ミツバと、そのときアルカのそばにいなかった恋人のハサムが、同時に挽き肉のように押し潰された。キルアは、これが頼みを4度拒んだことの代償だと説明している。
しばらく後、別の女性の使用人ヤスハが二つの願いを叶えたうえで、頼まれるままアルカをおんぶし、願いを叶える状態を引き起こした。そのときのヤスハは欲に負け、億万長者にしてほしいと願った。ナニカが承諾すると、上空の飛行船から大量の紙幣が降り注いだ。のちに現金輸送船が突然行方不明になり、発見されたときには積んでいた金がすべて消えており、船長と乗組員は要領を得ない返答を繰り返すばかりだったと報じられた。
イルミ=ゾルディックはこの力に関心を持ち、次にアルカの世話を任される使用人カスガを自分のやり方で扱う許可をシルバ=ゾルディックに求めた。イルミはカスガに対し、家の外の相手との恋愛関係を黙認する見返りとして、アルカの頼みを聞くよう伝えた。ところがアルカはカスガに肝臓をくれと言い出し、怖くなったカスガはこれを断った。続けて十二指腸、脊椎、脳を求められ、いずれも断ったため、カスガ自身を含む合わせて67人が同時に命を落とした。
飛行船の一件の後には、6組の夫婦、合わせて12人がナニカの力によって命を落としている。2人はキキョウを納得させるため、2人は規則を確かめるため、残る2人はミルキ=ゾルディックが安価な玩具と引き換えに観光客を犠牲にした結果だった。別の大きな事件では13人が死亡しており、これもミルキがナニカに標的の殺害を頼んだことによる。ミルキは観光客のムーナに、アルカの頼みをただ無視するよう言い含めて代償を負わせた。より近い時期には、当時最新のコンピュータを手に入れるためにナニカを使っている。
ゴンの救出をめぐる経緯
キルアは、ネフェルピトーを倒すために自らの命を差し出したゴン=フリークスを救う手段として、ナニカの力に頼ることを決めた。シルバの許可を得たキルアは、アルカが暮らす金庫室に入る。そこはぬいぐるみや玩具で埋め尽くされた隔離部屋だった。再会したアルカは、キルアに死んでほしい、しりとりをする、頭を撫でるという三つの頼みを口にし、その様子を家族が監視カメラ越しに見守っていた。
最後の頼みが果たされると、キルアはアルカを抱き上げ、カメラから顔を隠した。ナニカが相手を治すには直接触れる必要があるうえ、アルカがナニカに変わっておらず、頼みごとをしていたのがアルカ自身だったことを家族に知られないためである。シルバはアルカを部屋の外へ連れ出すことを禁じた。そこでキルアは命令によってナニカを呼び起こし、30分以内にククルーマウンテンを出られなければ母を殺すこと、出られたなら自分の頬にキスすることを命じた。
キルアとアルカには、ゴトー、カナリア、アマネ、ツボネが護衛として付いた。出発の直前、ナニカはツボネに小指の爪を求め、ツボネは笑ってこれに応じた。そのうえでツボネは、キルアを牽制するために姿を消した。ナニカが誰にも頼みごとをできなくなれば、残る二つの要求をツボネが満たすまで願いを叶えられないからである。
ツボネが戻ったのは翌晩、イルミと針人間がキルアとアルカを追い詰めた後だった。姿を見たナニカは中指と薬指の爪を求める。キルアはその願いをイルミを殺すためには使わず、ツボネの指を治すよう頼んだ。ナニカは自分から執事の手を握り、失われた爪を生やし直した。キルアに褒められたナニカは、治療で消耗して眠りについた。
アルカはゴンのベッドの前、キルアの隣で目を覚ました。キルアはナニカを出してほしいと頼み、ゴンの体を元に戻すよう命じる。これを最後の願いにして、ナニカが二度とアルカに取って代わらないようにするという意図は、その場では伏せられていた。ナニカはゴンの手を握らせてほしいと求め、変わり果てたゴンの姿にキルアは涙をこぼす。ナニカが触れると両者は光に包まれ、途方もない量のオーラが放たれてゴンは癒えた。
キルアとの決別と和解
その後キルアは、ナニカを膝に乗せて病院でイルミを待った。イルミは、キルアには通常の規則が当てはまらないと見抜いており、二人を操ってナニカの力を家のために使わせるつもりだと明かす。キルアはナニカに命じ、イルミをゾルディック家の屋敷へ送り返した。
ナニカは撫でてほしいと頼んだが、キルアはもう出てくるなと告げる。ナニカはキルアが好きだと何度も繰り返し、それでも命令が重ねられると、涙を流しながら従った。ナニカはアルカの中で泣き続け、それを感じ取ったアルカは、自分にとって良い兄でいたいならナニカにも同じようにしろとキルアに激しく訴えた。
イルミの影響がまだ自分に残っていると気づいたキルアは、ナニカを呼び出して謝った。兄が怖かったこと、ナニカが二度と出てこなければアルカが自由になると考えていたことを打ち明け、これからは守り、ずっとそばにいると約束する。他人の願いを叶えるのはやめてよいこと、望むときにはいつでも褒めることも伝えた。改めて呼びかけると、ナニカは泣きながらキルアを許し、抱きついた。
キルアがゴンと再会した後、三人は一本の世界樹が生える街を訪れた。ゴンが父ジン=フリークスに会うためである。その途中、キルアはゴンとアルカを路地へ連れ込み、自分を救った相手に会わせようとナニカを呼び出した。
能力・特徴・関係
ナニカは他の生き物に取り憑いてその体内で共存し、条件が満たされたときに体の主導権を握る。身体能力は宿っている体に依存するため、アルカの体にいる現在は普通の子どもと変わらない力しかない。アルカとは感情のつながりがあり、アルカはナニカの心の動きを感じ取れる。
最も際立つのは願望実現の力で、ゾルディック家はその及ぶ範囲を際限のないものと見ている。ただし、キルアが他人の願いを叶えるのはやめるよう告げた後も、この力が保たれているのかは分かっていない。願望実現が念によるものかどうかも明らかではない。ゴンを治した際には莫大なオーラが放出され、イルミや十二支んの一部を強く感嘆させたが、そのオーラがナニカのものだったのか、ゴンのものだったのかは確かめられていない。
頼みを拒まれたときの代償は積み重なる。直前に叶えた願いが大きいものであるほど、次の要求を拒んだときの結果は重くなる。大きな願いを叶えた後は、次に出される頼みそのものが格段に実行しにくいものになることも分かっている。
名称をめぐる考察と他作品への言及
暗黒大陸の生物という位置づけは語られてきたが、ナニカが暗黒大陸の既知の生物のひとつだという決定的な証拠は原作になく、作者の冨樫 義博による明言もない。この見方は、5大厄災のひとつであるアイの説明と、ゾルディック家のジッグ=ゾルディックがアイザック=ネテロ会長とともに暗黒大陸を探索したという事実から生まれたもので、単行本第33巻ではいずれも暗黒大陸に由来することが明かされた。
頼みを拒まれた際の犠牲者は、押し潰されるか、ねじり切られるようにして死ぬ。この死に方は、5大厄災の犠牲者として確認されている例の一部と重なる。『新世界紀行』にはその死にざまが記されている一方で、遺体はいずれも暗黒大陸ではなく既知の世界で見つかっており、殺戮は今も続いていると述べられた。ジン=フリークスは、アイと、同じく厄災に数えられる Pap の犠牲者が既知の世界で発見されたと明言し、可能性をさらに絞り込んでいる。
原語のナニカは、承諾するときの「はい」を「あい」と発音する独特の言い方をする。片仮名で「アイ」と書けば5大厄災のひとつアイの名であり、その特徴的な鳴き声でもある。ナニカはアイと同じ深い黒の目を持ち、付録の描き下ろしでは、憑かれている間のアルカの肌がアイと同じ技法で黒く塗られている。アルカに取り憑いていること、人を喜ばせたいという願い、キルアへの献身は、アイが「欲望の共依存」と説明されている点と結び付けて読むこともできる。
願いを叶えるという性質は、ランプの精や魔神といった古くからの類型に通じる。最初に能力が説明される場面では、何でもできると述べられるコマに「ですのーと」と表紙に書かれた本のような物が描かれ、大場つぐみの『DEATH NOTE』に登場するノートを踏まえたものとみられる。願いを叶える条件に、願われる相手がその場にいて見えること、その人物の名前を知っていることが含まれる点も、名前と顔を必要とするそのノートと重なる。同じ場面では、本のような物を猫のような存在が腹のポケットから取り出しており、四次元ポケットから道具を出す『ドラえもん』を思わせる。
外見の面では、ナニカがアルカの体を完全に支配したときの姿は、日本の怪談に登場する怨霊に近い。とりわけ『呪怨』の佐伯俊雄と、それよりは薄いものの『リング』の山村貞子という二つの有名な造形に似ている。他作品からの言及もあり、『僕とロボコ』第241話では、マドカがカラオケを歌う最中に一瞬ナニカの顔になる。同作ではロボコがマドカをナニカとして扱い、ゴリラ型の登場人物を家へ帰らせる場面も描かれた。