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ANNA MOVIESHUNTER×HUNTER

物語 / 漫画各話

No.416「発言」考察・解説

No.416「発言」を原作画像付きで解説。ベンジャミンとカミーラの対面、モスワナの呪い、病死と蘇生能力の疑問、ツェリードニヒの偽装死予告から銃撃までを読み解きます。

No.416「発言」では、ベンジャミンが銃を手に取り、自ら王子たちの部屋へ踏み込む。相手は、殺されることで能力を発動するカミーラと、絶を保ったまま待つツェリードニヒ。圧倒的な軍事力を持つ第1王子が急ぐのは、自分の身体を自由に動かせる時間が、あと10時間しかないためだった。

特殊戒厳令によって、王子同士の対立は密かな暗殺から公然たる制圧へ変わった。しかし、目の前の相手を撃てば勝てるとは限らない。ベンジャミンはカミーラには引き金を引かず、ツェリードニヒには話を続ける暇も与えない。同じ銃を持ちながら、二人へ取る行動は対照的だ。

No.416のあらすじ

No.416「発言」の基本情報
中心人物ベンジャミン、カミーラ、ツェリードニヒ、サルコフ
ベンジャミンの認識発症から死亡まで12時間、最後の2時間は昏睡。自由に動けるのは10時間。
第2王子との対面復活能力を警戒し、病死の殺害者判定を問いかける。モスワナの呪いを受ける。
第4王子との対面ツェリードニヒが事前に偽装死を予告。最後にベンジャミンが発砲する。

船内では、国王軍兵の許可なしに動けば即射殺されると告げられる。ベンジャミンはヒュリコフとウショウヒを伴い、まず第2王子の部屋へ向かった。カミーラの護衛に退くよう迫り、その場で対面する。

カミーラはベンジャミンへ発砲するが、本人は傷を負わない。ベンジャミンも銃を撃つものの、狙ったのはカミーラ本人ではなく周囲の者だった。彼は復活能力の仕組みを知っており、直接殺すことで反撃される事態を避けている。

一方、カミーラ側も何もせずに待ってはいない。モスワナの死をきっかけに、ベンジャミンへ呪いがかかる。その場を離れた第1王子は、今度は1004号室の扉を撃ち破った。そこではツェリードニヒが、サルコフへ自分の死を偽装するための命令を伝えていた。

発症から12時間、自由に動けるのは10時間

自ら銃を持ち、残る行動時間を意識して進むベンジャミン。
自ら銃を持ち、残る行動時間を意識して進むベンジャミン。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

ベンジャミンが考えているのは、TSK-17による死までの時間だ。発症から死亡までは12時間だが、最後の2時間は昏睡状態となり、行動できない。自分の手で決着をつけるために使えるのは、残る10時間になる。

このため彼にとって、敵を倒せるかどうかだけでなく、いつ倒せるかが問題になった。長く閉じ込めて消耗を待つ策では間に合わない。能力の詳細を聞き出し、十分な準備を整えてから攻撃する時間も乏しい。危険を承知で本人が前線へ出るのは、この期限の中で継承戦を終わらせようとしているからだ。

ただし、時間がないからといって無差別に撃っているわけではない。ベンジャミンは、カミーラの迎撃型能力を知ったうえで、相手の死に方を問題にする。第4王子へ向かう際にも、護衛たちへ行動の基準を伝え、王子本人には手を出さず自分に任せるよう命じた。

第1王子の軍事力は、もともとほかの陣営にとって大きな脅威だった。No.416ではそこへ、本人の死期という外からは見えにくい事情が重なる。前話No.415でクラピカが感じた軍の性急さを、今度はベンジャミン自身の内面から読むことができる。

カミーラには銃を撃ち返さない

カミーラが発砲する一方、ベンジャミンは周囲の者へ撃ち返す。
カミーラが発砲する一方、ベンジャミンは周囲の者へ撃ち返す。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

カミーラは、対面したベンジャミンへためらわず銃を撃つ。胸元に弾が当たっても、第1王子は倒れない。その直後に彼が撃ち倒したのは、カミーラの周囲にいた者たちだった。カミーラだけを生かしたまま、反撃できる戦力を削っていく。

ベンジャミンは、彼女の能力が殺害をきっかけに働く迎撃型だと把握している。カミーラの「百万回生きた猫」は、本人を殺した相手から命を奪って蘇生する能力だ。目の前の王子を撃ち殺すことが、そのまま自分の死につながりかねない。

カミーラも、その知識を逆手に取る。撃てないのなら、戒厳令を盾に収監し、飢え死にを待つくらいしかできないのではないかと挑発した。ベンジャミンは、飲まず食わずで耐えられる期間を考えるが、カミーラは内心、自分なら代謝を極端に下げて冬眠状態となり、3か月耐えられると見込んでいる。

ベンジャミンの残り時間を読者が知っているため、同じ「待つ」という言葉が、両者にとってまったく違う意味になる。カミーラには長期の根比べを選べるという自信がある。第1王子には、その勝負に付き合う時間がない。直接射殺も長期拘束も選びにくいことが、次に持ち出す病気の話へつながる。

モスワナの死とベンジャミンへの呪い

モスワナの死をきっかけに、ベンジャミンへ呪いがかかる。
モスワナの死をきっかけに、ベンジャミンへ呪いがかかる。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

ベンジャミンを待ち受けていたモスワナは、自ら首元を傷付けて倒れる。直後、黒い影のような念が第1王子を包み、瞳にも異様な印が現れた。カミーラは、モスワナが10数年思い続けてきた呪いが、標的の目の前で完成したと告げる。彼女の見立てでは、ベンジャミンは半日も持たないという。

これはカミーラの私設兵側の呪殺であり、ビヨンドの詛贄者と同じ計画ではない。前話で明かされたヒュリコフの出生時の呪いとは、仕込んだ者も標的への働きかけ方も分けて考える必要がある。死後の念を使うという共通点だけで、モスワナをビヨンドの配下にはできない。

カミーラにとって、これは第1王子を焦らせる切り札だった。自分を殺せば猫が反撃し、殺さずに待てばモスワナの呪いが迫る。しかしベンジャミンは、呪いを受けても計画を投げ出さない。もともと病気による死を覚悟して動いており、死を突き付ければ即座に従う相手ではなかった。

この時点では、呪いの効果が完了してベンジャミンが死んだわけではない。半日という時間も、カミーラの予想である。実際に何がどの順序で彼の命を奪うかは残されており、彼はその最中でも次の王子へ向かう。

病気で死んだら、猫は誰を殺すのか

病気で死んだ場合に誰が蘇生の犠牲になるのか、カミーラへ問うベンジャミン。
病気で死んだ場合に誰が蘇生の犠牲になるのか、カミーラへ問うベンジャミン。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。
カミーラをめぐる死因と時間の読み合い
手段作中で示された問題
直接の殺害ベンジャミンは迎撃型の復活能力を知っており、本人へは撃ち返さない。
飢餓を待つ拘束第1王子は長期間待てず、カミーラは自分なら冬眠状態で3か月耐えられると考える。
病気による死殺害者が病原体になるか、病気をうつした者になるかをベンジャミンが問う。No.416では猫の実際の判定は未検証。

ベンジャミンは、もし自分が治療不能の病気をカミーラへうつしたら、彼女を殺したのは自分なのか、それとも病気なのかと問いかける。病原体が殺害者に当たるなら、カミーラを蘇生させるだけのオーラをそこから得られるのか。自分が殺害者に当たるとしても、同じ病気で先に死んでいたら、能力は誰を殺すのか。

問いの中心は、カミーラの防御力を上回る強い攻撃ではない。殺した相手から命を奪うという条件に、相手がすでに死んでいる状況をぶつけようとしている。自分の死期が早いという不利を、逆に復活を妨げる条件として使う発想だ。

会話の中には、ベンジャミンの足元を強調するコマも挟まる。ただしNo.416では、接触による感染の仕組みや、カミーラの感染結果を診断して説明する場面までは描かれない。ここで明示されたのは、病気を使った殺害を本人が示唆し、猫が反撃する対象の問題を突き付けたことだ。

ベンジャミンが去ったあと、カミーラは言葉を失ったように見送る。先ほどまでの銃撃では顔色を変えなかったのに、死後の復活そのものを疑わせる問いには返答していない。能力に守られた自信が、敵からの一つの問いで揺らぐ場面になっている。

病死した場合の判定は、この対面では試されていない。第1王子の推論がそのまま能力の確定ルールになったわけではなく、彼が持ち込んだ疑問によって心理的な優位が変わった、と読むのがこの話の段階に合っている。

緊急放送の中でも絶を保つツェリードニヒ

緊急放送の最中も絶を保ち、サルコフへ銃を要求するツェリードニヒ。
緊急放送の最中も絶を保ち、サルコフへ銃を要求するツェリードニヒ。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

1004号室では、ツェリードニヒが緊急放送にも動じず、目を閉じて絶を続けていた。サルコフは、その精神状態に驚く。軍が踏み込む非常事態の最中で、念の防御を閉じる姿勢を崩していない。

ツェリードニヒはサルコフの拳銃を要求し、自分が使うと告げる。サルコフは第1王子に使うのかと驚くが、ここで銃の用途の全容が説明されるわけではない。続いて、自分の死をめぐる命令が伝えられる。

サルコフは、王子が絶の速さにこだわってきたことから、絶をきっかけに発動する能力なのではないかと考える。テータが体験した不可解な現象も念頭にあった。しかし、本人の口から未来視の秒数や、その後の行動がどう他者に見えるかまで説明されたわけではない。サルコフは秘密をすべて共有された協力者ではなく、まだ能力を探ろうとしている立場だ。

彼は第1王子との対決に立ち会えば、分析の機会が得られると考える。そして、テータのためにその能力を暴いてみせると決意した。表向きは命令を聞く従者だが、内面では別の目的を持っている。ツェリードニヒが「見たまま」を報告する役を任せる相手にも、本人の意志があった。

サルコフへ命じた偽装死と遺体の収容

偽装死を予告し、見たままの報告と遺体の収容をサルコフへ命じるツェリードニヒ。
偽装死を予告し、見たままの報告と遺体の収容をサルコフへ命じるツェリードニヒ。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

ツェリードニヒは、これから自分はここで死ぬが、その死は偽だとサルコフへ告げる。そのうえで、ほかの者には見たままを伝えること、遺体をすぐに収容して誰にも見せないこと、能力については口外しないことを命じた。

この指示から、王子が単に攻撃を避けて生き残ろうとしているだけではないことがわかる。周囲に死んだと認識させ、その状態を保つための処置まで用意していた。能力による見え方だけでなく、報告と遺体の扱いも作戦に組み込もうとしている。

ただし、サルコフが実際に遺体を収容した場面はNo.416にはない。偽の遺体を新たに作れると説明されたわけでもない。誰にも見せずに収容しろという命令が、どのような状態のものを想定しているのかは、銃撃後の展開を見る必要がある。

サルコフにとっても、簡単な命令ではなかった。目撃したことを報告しながら、それが偽だという情報は隠さなければならない。さらに軍が踏み込んでいる中で、収容と秘密保持を両立させる必要がある。ツェリードニヒの自信と、その後始末を担う者の緊張が、短い会話の中で対照をなしている。

1004号室で念講習の受講者を連行

ベンジャミンは応答のない1004号室の扉を撃ち破り、自分より後方で動いた者は即座に撃つよう護衛へ命じる。室内では、王子の護衛らが壁際にひざまずき、両手を上げていた。特殊戒厳令の権限と銃口によって、その場の行動を封じていく。

その途中、ベンジャミンは1014号室の念講習を受けた者を見つけ、中央司法省へ連行するよう命じた。これは、ベンジャミンが1014号室で講習を見学した場面ではない。1004号室にいる受講者の様子から、クラピカの指導の成果に触れたのである。

ベンジャミンは、念を知らない状態からこの水準へ導いたのなら、クラピカを軍の講師に迎える必要があると考える。敵対しうる陣営の人材でも、技能には価値を認める。一方、目の前の受講者を自由にするわけではなく、事情を聞くために連行する。この二つの反応が、武力だけでなく念の知識も軍へ集めようとする姿勢を示している。

ツェリードニヒの「発言」を遮る銃撃

ツェリードニヒの発言を遮って撃つベンジャミン。No.416の最後の場面。
ツェリードニヒの発言を遮って撃つベンジャミン。No.416の最後の場面。 『HUNTER×HUNTER』冨樫義博/集英社。

奥の部屋でツェリードニヒを見たベンジャミンは、絶を使っていることに気付き、念を習得していたのかと驚く。第4王子は手合わせをしてみるかと持ちかけるが、第1王子は応じない。至近距離から胴体へ銃撃を加え、会話を断ち切った。

ベンジャミンは、発言を許可した覚えはなく、相手に付き合う暇もないと告げる。章題の「発言」は、ここで軍の支配と結び付く。王子であっても自由に言葉を返せず、その場を制圧する第1王子が発言の可否まで決める。冒頭で一般人に突き付けられた移動の禁止が、最後には王子同士の会話にも及んでいる。

銃撃ではツェリードニヒの身体が大きく損なわれる。しかし読者は、その前に本人が偽装死を予告したことを知っている。撃たれた光景だけで現実の死亡が確定したと結論づけることはできない。No.416は、計画の結果やベンジャミンの退室後を描く前に終わる。見えている死と実際の状態の関係は、No.417へ持ち越される。

カミーラは殺されても戻れる能力を頼りに挑発し、ツェリードニヒは死を偽れるという見込みで待つ。どちらにも、死を目の前にした態度が普通とは違う理由がある。そしてベンジャミンも、自分の死が迫っていることを隠したまま二人へ対処した。三人がそれぞれ異なる意味で死を計算に入れているため、派手な銃撃の裏側でも、相手が何を知っているかの読み合いが続いている。

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