物語 / 単行本
単行本 第23巻
『HUNTER×HUNTER』単行本第23巻「6-①」を解説。キルアとオロソ兄妹、イカルゴの救助、メレオロンの共闘、宮殿突入準備を整理する。
単行本第23巻「6-①」は2006年3月3日に発売され、No.236からNo.247までを収録する。東ゴルトーへ潜入した討伐隊が護衛軍との決戦へ備える一方、キルアとイカルゴ、ゴンとメレオロンの新しい共闘が生まれる。
巻内では敵だったキメラ=アントが、個人の記憶と選択によって討伐隊へ加わる。モラウとノヴもピトーの人形、ヂートゥ、フラッタへ対策を進め、宮殿突入までの残り時間を削っていく。

No.236からNo.247を収録する単行本第23巻の書影 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

最後の矢をつかみオロソ兄妹へ反撃するキルア 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

瀕死のキルアを救い診療所で見守るイカルゴ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

念空間でモラウへ鬼ごっこを仕掛けるヂートゥ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博
基本情報
| 媒体 | 漫画単行本 |
|---|---|
| 巻数 | 第23巻 |
| 巻題 | 6-① |
| 発売日 | 2006年3月3日 |
| 収録範囲 | No.236〜No.247 |
レオル陸軍を抜けるキルア
キルアは東ゴルトーでレオル配下の兵士に囲まれ、単独で突破する。敵の数だけでなく、情報を持ち帰らせない速度と手順が必要になる。
近接する兵士を倒しても、離れた場所から未知の射撃が続く。キルアは狙撃者の位置と弾道を探りながら、味方との合流を急ぐ。
この戦いは宮殿決戦の前段階だが、消耗と負傷は後へ残る。小隊を倒した事実だけで、安全に帰還できたとは言えない。
イカルゴが撃った蚤弾
狙撃者の正体は蛸型のキメラ=アント、イカルゴである。死体を操る「死体と遊ぶ子供達」で仲間の身体を利用し、空気銃から蚤弾を撃ち出す。
キルアは敵の能力を読み、直接対面した時に殺す機会を得る。しかし命令へ従いながら迷うイカルゴの性質を見て、とどめを刺さない。
キルアが「格好いい」と認めた言葉は、イカルゴが抱えていた劣等感を変える。敵同士の短い会話が、後の救助を選ぶ理由になる。
オロソ兄妹の死亡遊戯
地底湖へ導かれたキルアは、オロソ兄妹の念能力「死亡遊戯」に捕らえられる。実在のダーツと身体への攻撃が連動し、回避できない矢が次々に刺さる。
攻撃は相手が投げた瞬間でなく、ダーツが的へ触れた時に現れる。キルアは規則を見抜いても、最後の一投まで身体を動かす余裕が減っていく。
兄妹は安全な別空間から得点を重ねるため、通常の追跡では届かない。解除条件と最後の一撃を読むことが、反撃の唯一の入口になる。
最後の矢をつかむ反応
キルアは最終の矢が頭部へ現れる瞬間を予測し、刺さる前につかみ取る。矢が具現化してから命中するまでの極端に短い時間へ反応する。
つかんだ矢を使ってオロソ兄妹の位置へ攻撃を返し、二人の首を落とす。能力の規則を逆用し、姿の見えない術者へ結果を届ける。
勝利しても大量出血は止まらず、キルアは湖で意識を失う。最も難しい攻撃を防いだ後に、蓄積した傷が生命を奪いかける。
敵を救ったイカルゴ
イカルゴは瀕死のキルアを見つけ、命令どおり見捨てることができない。自分を殺さなかった相手を背負い、地下の診療所へ運ぶ。
救助は討伐隊への正式加入より先に行われる。所属を決める理屈ではなく、受け取った敬意へ返す個人の選択が行動を変える。
キルアとイカルゴの関係は、人間とキメラ=アントという分類だけで敵味方を決められない例になる。宮殿突入では、この救助者が重要な潜入役を担う。
メレオロンが明かした正体
メレオロンは姿を消した状態でゴンへ近づき、自分がキメラ=アントであることと能力を明かす。息を止める間、存在を認識させない「神の不在証明」を持つ。
さらに触れた相手へ効果を及ぼす「神の共犯者」により、強力な仲間を見えないまま敵へ近づけられる。本人の攻撃力不足を、共闘で補う能力である。
ゴンは敵の種族だけで拒絶せず、話と行動から信用を判断する。メレオロンもゴンの直感的な信頼へ驚き、作戦を具体化する。
ペギーの記憶と王への復讐
メレオロンには、人間だった頃に養父のように慕ったペギーの記憶がある。王がペギーを殺したことから、護衛軍側へ従わず王の打倒を望む。
復讐心は討伐隊と利害を一致させるが、同じ目的だけで実力差は埋まらない。息を止められる時間と、接触を保つ条件を作戦へ組み込む必要がある。
個人の記憶が軍団の命令より強く残る点は、イカルゴの選択とも響き合う。第23巻では、キメラ=アント内部の離反が戦力へ変わり始める。
モラウ対ヂートゥの鬼ごっこ
ヂートゥはモラウを念空間へ閉じ込め、制限時間内に自分へ触れれば解除する鬼ごっこを始める。圧倒的な速度を生かし、追いつけない状況を楽しむ。
モラウはむやみに追わず、煙を使いながら相手の性格と空間の条件を読む。ヂートゥが退屈に耐えられないことを利用し、注意を誘導する。
速度に正面から対抗せず、待つことで捕まえる。ヂートゥは敗北後に新しい能力を思いつくが、条件を深く検討しない性質も変わらない。
ノヴが作る宮殿への入口
ノヴは四次元マンション「ハイドアンドシーク」の出入口を宮殿周辺へ設置し、突入時の移動経路を準備する。見つからずに近づく作業が決戦の成否を左右する。
ピトーが操る人形兵はモラウの「紫煙機兵隊」が引き付け、監視の数を減らす。フラッタの上空偵察も、排除すべき対象として計画へ入る。
第23巻末では突入そのものより、入口、陽動、偵察対策が積み上がる。能力の派手さではなく、担当を接続する準備が次の戦いを成立させる。
巻題の数字が刻む突入時間
第23巻の巻題「6-①」は、宮殿突入へ向かう時間の区切りと対応する。収録話の題も「8」「7」「6」と数字が減り、決戦への接近を示す。
数字だけでは何が起きるかを説明しないが、複数の場所で進む準備を同じ時刻へ束ねる役割を持つ。読者は別行動の人物を残り時間で比較できる。
巻末でも突入は完了せず、六日前の段階で次巻へ続く。題名は結果より、迫る期限の中で整えられる関係と作戦を強調する。
キルアが敵へ向けた敬意
イカルゴは蛸である自分を嫌い、格好いいイカへ憧れている。敵であるキルアから行動を評価されたことが、本人の自己認識へ初めて別の基準を与える。
キルアは命を助ける見返りを要求しない。相手が仲間を守ろうとする姿勢を認め、その場で殺す必要がないと判断する。
この敬意が、後にイカルゴが危険を冒して救助する理由となる。善意を交換条件にしなくても、受け取った側の自由な選択を動かす。
二組の共闘が生まれた違い
キルアとイカルゴの協力は、戦闘後の救助から始まる。ゴンとメレオロンの協力は、能力と復讐目的を明かす交渉から始まる。
入口は異なっても、人間側が種族だけで即座に処刑しなかった点は共通する。キメラ=アント側も王の命令より個人の記憶を選ぶ。
討伐隊の戦力増加は、敵を減らした数だけでは測れない。元敵対者が持つ地下知識や不可視化能力が、正規メンバーにない選択肢を作る。
モラウが速度を無効にした方法
ヂートゥの念空間では、モラウが追うほど速度差が相手の有利になる。そこで地面へ煙の縄を巡らせ、相手が自分から近づく状況を待つ。
ヂートゥは勝利条件を作った本人でありながら、静かな時間に耐えられずモラウの動きへ興味を示す。性格が能力の安全性を崩す。
触れる瞬間だけを作れば、長距離の最高速度で勝つ必要はない。モラウは相手の得意分野を避け、条件達成に必要な一点へ作戦を縮める。
紫煙機兵隊と人形兵
ピトーは円と人形を使って東ゴルトーの国民を管理し、宮殿周辺へ近づく者を監視する。討伐隊が隠れて移動するには、監視対象を増やして注意を分散させる必要がある。
モラウの紫煙機兵隊は煙の兵士を多数作り、ピトーの人形兵と各地で衝突する。個々の兵士の勝敗より、敵の操作量と視線を奪う陽動が目的になる。
ノヴの出入口設置は、この陽動があるから進めやすい。別々の能力は、煙で監視を引きつけ、空間移動の入口を隠す一連の準備として機能する。
単行本 第23巻が残したもの
単行本第23巻の要点は、キルアとイカルゴ、ゴンとメレオロンの間に種族を越えた協力が生まれ、宮殿突入の戦力と経路が整い始めたことである。
死亡遊戯やヂートゥの念空間では、純粋な速さだけでなく能力の規則と相手の性格を読む判断が勝敗を決めた。
討伐隊はノヴの入口、モラウの陽動、メレオロンの不可視化を組み合わせ、護衛軍へ正面から力比べを挑まない作戦を作る。
キルアはオロソ兄妹へ勝っても出血で倒れ、イカルゴの救助がなければ帰還できなかった。戦闘の勝敗と任務の生還は、別の人物の選択でつながる。
メレオロンの不可視化は強力でも、息を止める限界と接触条件を持つ。ゴンの攻撃力と組み合わせることで、単独では得られない王への接近手段になる。
ヂートゥは自作のルールを速度で支配したつもりだったが、退屈しやすい性格をモラウに使われた。能力の条件には使用者の判断も含まれる。
ノヴとモラウの準備は、ゴンやキルアの直接戦闘より目立ちにくい。しかし入口と陽動がなければ、討伐隊は護衛軍へ同時に近づけない。
第23巻は決戦前の六日間に、新しい仲間と作戦の部品をそろえる。敵軍の離反者を受け入れたことが、次巻以降の潜入経路と情報量を変える。
巻内で生まれた信頼は口約束だけで終わらず、救助、能力の開示、突入準備という具体的な行動へ変わる。共闘の成立を結果から確認できる。
収録話はNo.236からNo.247までで、キルアの地下戦、二組の共闘、モラウとノヴの準備が交互に進む。場所ごとの出来事を残り日数で束ねる巻である。
戦闘で負傷した者、寝返った者、入口を作る者の行動は、宮殿突入時に初めて一つの作戦として交差する。第23巻はその因果を先に配置している。
