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ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ

レトロフューチャー1960年代の別地球「Earth-828」を舞台に、ヒーロー結成から4年後の家族と惑星喰らいの神を描く、MCUフェーズ6開幕作。

媒体: 映画(実写) 米国公開: 2025年7月25日 日本公開: 2025年8月(日本では同年夏に劇場公開) 監督: マット・シャクマン
ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ 公式ポスター

作品データ

作品
ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ
原題
The Fantastic Four: First Steps
媒体
映画(実写)
米国公開
2025年7月25日
日本公開
2025年8月(日本では同年夏に劇場公開)
監督
マット・シャクマン
脚本
ジョシュ・フリードマン/エリック・ピアソン/ジェフ・カプラン/イアン・スプリンガー
原作
マーベル・コミック(スタン・リー/ジャック・カービー、1961年『Fantastic Four #1』)
製作
ケヴィン・ファイギ
音楽
マイケル・ジアッキーノ
撮影
ジェス・ホール
編集
ティム・ロッシュ
美術
ケイヴ・クイン
視覚効果
ILM/Wētā FX/Framestore ほか
製作会社
マーベル・スタジオ
配給
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
上映時間
約115分
製作費
約2億ドル前後とされる
興行収入
全世界 約5億ドル超とされる
MCU区分
フェーズ6・第1作/マルチバース・サーガ
時系列上の前後
『サンダーボルツ*』 → 本作 → 『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(公開予定)
公式予告編は
劇場サイトで確認
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📖 全33章 / 約17K字 🔄 最終更新 2026年5月26日 ✍️ Anna Movies 編集部

ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップは、2025年公開のマーベル・スタジオ製作の映画である。

レトロフューチャーな1960年代風の別地球「Earth-828」を舞台に、ヒーロー結成から4年後の家族が、惑星を喰らう神ギャラクタスの脅威に立ち向かう姿を描く。

MCUフェーズ6の開幕を飾る作品として位置づけられている。

00概要

『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』(The Fantastic Four: First Steps)は、マット・シャクマンが監督を務め、2025年7月25日に米国で公開されたアメリカのスーパーヒーロー映画である。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第37作にあたり、章立てでいえばフェーズ6の第1作、マルチバース・サーガの後半を切り開く一本だ。シャクマンは『ワンダヴィジョン』(2021)で長編に匹敵する濃密な感情劇を成立させており、その手腕を買われて本作のメガホンを託された。

原作は、スタン・リーとジャック・カービーが1961年の『Fantastic Four #1』で世に送り出した、マーベル・コミックス最古参のチーム作品である。宇宙線を浴びた四人——リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック、スー・ストーム/インビジブル・ウーマン、ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ、ベン・グリム/ザ・シング——を主人公に、家族の絆と倫理、そして未知を探る発見の喜びを物語の核に据える。アメコミ史上もっとも長く愛されてきた世界観のひとつだ。実写化は2005年版、2007年版、2015年版と重ねられてきたが、本作はディズニーによる21世紀フォックス買収を経て、ついにマーベル・スタジオ単独での映画化として実現した。

本作で最も大胆な語りの選択は、舞台をMCUの主世界(Earth-616)ではなく、並行世界のEarth-828に据えた点にある。丸みを帯びた自動車、真空管を思わせる宇宙船のパネル、レトロ・モダンな家具、ニューヨークの高層オフィスでヒーローが家事をこなす日常——1960年代が思い描いた楽観的な未来像が画面を満たす。それは当時のアメリカ的な家庭の理想を、2010年代以降の観客に向けて翻訳しなおした世界だ。地球外の脅威を前に各国が手を取り合い、ヒーローたちが「家族として」それに立ち向かう。創刊号が掲げた主題を、現代の映画の文法で組み直している。

物語の中心にあるのは、結成から4年が過ぎた家族と、そのもとへ届けられる「世界の終わりの予告」である。スー・ストームの妊娠という極めて私的な出来事と、惑星を喰らう神ギャラクタスの到来というスケール最大の脅威が、家族の意思決定の場で真正面からぶつかり合う。本記事は結末、ミッドクレジット、ポストクレジットまでを含むネタバレを前提に整理している。物語の驚きを未見のまま味わいたい読者は、鑑賞後に戻ってきてほしい。

概要

主要データ

原題
The Fantastic Four: First Steps
監督
マット・シャクマン
脚本
ジョシュ・フリードマン/エリック・ピアソン/ジェフ・カプラン/イアン・スプリンガー
音楽
マイケル・ジアッキーノ
撮影
ジェス・ホール
米国公開
2025年7月25日
上映時間
約115分
ジャンル
スーパーヒーロー、SF、ファミリードラマ
シリーズ区分
MCUフェーズ6・第1作/マルチバース・サーガ

01あらすじ

以下は結末、ミッドクレジット、ポストクレジットまでを含む全編のあらすじである。Earth-828の前史紹介、スーの妊娠発覚、シルバーサーファーの来訪と地球終焉の予告、ギャラクタスとの宇宙交渉、フランクリン誕生、ギャラクタス地球到来、サブスペースへの追放と再生、緑のフードの客人、1967年版アニメへのオマージュまでを順に追う。

あらすじ

プロローグ

映画はテレビ番組『The Ted Gilbert Show』の白黒映像で幕を開ける。番組のホストが「あの伝説の四人」を紹介し、宇宙ミッション「マーヴェル-1号」で帯電した宇宙線を浴びた彼らがいかにして地球へ帰還したのかを、観客に向けて駆け足で振り返る。リード・リチャーズが自らの身体を伸縮させる映像、スー・ストームが触れたものを透明にする映像、ジョニー・ストームが全身を炎に包む姿、そしてベン・グリムが岩石へと変じていく病院での痛々しい変身。これらの記録映像と、いかにもテレビ的な明朗なナレーションが、本作の舞台は「1960年代の人類がすでにヒーローの存在を知る、もう一つの地球」なのだと観客に告げる。

舞台はニューヨーク市マンハッタンの中心部、本作の本拠地である「フューチャー財団ビル(バクスター・ビル)」へと移る。フューチャー財団はリードが代表を務める非営利の科学・人道団体であり、ビルは研究所と住居、司令室を兼ねた縦長の塔として描かれる。観客がまず迎えられるのはキッチンだ。エプロン姿のベンがパンケーキを焼き、リードはコーヒー片手に伸ばした腕で天井裏の配線を点検する。スーは妊娠検査薬を握りしめて廊下の鏡の前にたたずみ、ジョニーはバルコニーで朝の散歩がわりの自由飛行を楽しんでいる。

スーが鏡の前で深呼吸し、家族のもとへ歩み出る。四人の朝食は、そのまま「家族が一人増える」という発表の場へと変わる。リードは涙ぐみ、ベンは大喜びでパンケーキを焼き増しし、ジョニーは「君の最高傑作は鏡の中ではなく実験室の外にある」と兄夫婦をからかう。これと並行する短いカットには、世界各国の指導者たちが映し出される——ニューヨーク市長、ウクラニアの代理人、日本の科学技術大臣、ソ連風の制服に身を包んだ東欧の代表。彼らが世界都市圏統一会議に集う予定であることが、テレビニュースから示唆される。Earth-828では、すでに「国家連合(フューチャー・カウンシル)」のような枠組みが機能しているのだ。

オフィス棟では、HERBIE(ヒューマノイド・エクスペリメンタル・ロボット・B型・電子)と呼ばれる球状の家事兼研究補助ロボットが宙を漂いながら一家の世話を焼く。リードが開発した立体ホログラム式の都市監視盤には、海溝地帯から地下都市に潜むモル・ロカ(モール・マン)の発掘活動が映し出される。一家は地下勢力との小競り合いを軽くいなしつつ、夕方の市民集会へと向かう。集会ではそろって登壇し、世界の子供たちに向けて「我々は科学と希望のために働く」と語りかける。彼らが単なる英雄であるだけでなく、市民の文化的な中枢でもあることが、ここで観客に提示される。

シルバーサーファー来訪

ある夜、ニューヨークの空を銀色の閃光が切り裂いた。波乗りのボードのような金属板に乗った銀色の女性が、摩天楼の谷間をすり抜け、フューチャー財団ビルのバルコニーへと降り立つ。彼女は自らを「シャラ・バル」と名乗り、宇宙の彼方から遣わされた伝令——ハラルド・オブ・ギャラクタス——だと告げる。その声は静かで重く、感情の起伏はいっさい見せない。「あなた方の星は選ばれた。我が主、宇宙の飢えたるもの・ギャラクタスが、まもなくここへ来る。次の食事はこの惑星である」。

ジョニーは反射的に炎を放って応戦するが、シルバーサーファーは銀色のコズミック・パワーを薄い壁状に張り、その炎を残らず吸収してみせる。リードが「停戦だ」と叫ぶと、シャラ・バルは「我々と取引する余地はある。だが、その判断は私の務めではない。直接、我が主と話すがいい」と言い残し、空の彼方へ消えていく。屋上に取り残された四人は、雷鳴のような遠音を引いて離脱するサーファーの航跡を見上げるばかりだ。ジョニーひとりが、彼女の去り際に交わした視線を何度も反芻している——本作の中盤で効いてくる伏線である。

リードはすかさず深宇宙の観測機器を起動する。シャラ・バルの言葉どおり、彼方の星系がひとつ、またひとつと青白い光に呑まれて消えていく。その観測ログが、無言のうちにすべてを物語る。スーは「次の食事」という言葉の意味を冷ややかに悟った。やがて家族会議が招集され、結論は明確だった——四人で宇宙へ向かい、ギャラクタスと直接交渉する。ベンは「お前は身重なんだぞ」と妹に詰め寄るが、スーは「だからこそ私が行く。守るために行くんじゃない、止めるために行くのよ」と返す。そしてリードは、自ら開発した実験船「エクセルシオール号」の準備を急ぐのだった。

深宇宙の航海とギャラクタスの玉座

エクセルシオール号は、青い超光速航行装置「ブリッジ・ドライブ」を備えた、本作世界で最も先進的な惑星間船である。四人はHERBIEを操作補助役に据えて出発し、シャラ・バルの航跡を追って深宇宙へと針路を取る。やがて船内では、ジョニーがシャラ・バルの台詞の音響波形を解析しはじめる。彼女の声には、強制された服従の倍音が紛れていた。ジョニーは航海日誌にこう記す——「あの人は意志で奉仕しているのではない」。

彼方の星雲を抜けたエクセルシオール号は、巨大な金属球の連結体——ギャラクタスの移動要塞「タロス号」へ到達する。船は内側へ吸い込まれるように引き寄せられ、四人は玉座の間へと案内される。玉座に座すのは、紫色のヘルメットを被った巨人ギャラクタス(ラルフ・アイネソン)。低い声がこう告げる。「お前たちの星には、私の空腹を埋めるだけのエネルギーはない。だが、お前たちの女が今宿しているものには、ある」。

ギャラクタスは、スーの胎児フランクリンが「現実そのものを書き換えうる稀有な存在」だと言い、彼を譲り渡せば地球は救うと提案する。リードは即座に拒絶する。スーは沈黙のあと、自らの不可視のフォースフィールドを玉座の周囲に展開し、こう返す。「我が子はお前のものではない。私のものでもない。彼自身のものだ」。ベンとジョニーは武装し、四人は退却に転じる。シャラ・バルは口を開きかけるが、ギャラクタスの一瞥で沈黙した。

脱出戦は本作中盤の白眉だ。エクセルシオール号がタロス号の内壁を疾駆し、シルバーサーファーがこれを追う。やがて船内でスーの陣痛が始まり、リードは舵を握りながら片手で妻の手を握る。ジョニーは船外に飛び出してサーファーを引きつけ、ベンが艦尾の被弾箇所を岩石の腕で塞ぐ。ブリッジ・ドライブが起動する直前、スーは光速航行の重力波の中でフランクリン・リチャーズを産み落とす。狭い船内に、息子の最初の泣き声が響きわたる。

地球帰還

エクセルシオール号がニューヨーク市の上空へ帰還する。だが一家は、息子の誕生と引き換えに、ギャラクタスの追跡をこの地球へ呼び寄せてしまっていた。地下のモル・ロカが地表へ祝電を送るという皮肉なシーンを挟みながら、四人はバクスター・ビルの食堂で、市民へ事実を公表する決断を下す。リードのテレビ会見には、希望的観測など一切含まれていない——「ギャラクタスが来る。彼を止めるためにあなた方の協力が必要だ」。

場面は世界各地へと散っていく。中国の電力網管制塔、東京の海底ケーブル管制室、リオ・デ・ジャネイロの宇宙センター、レニングラードの研究所、ナイロビの太陽光発電プラント——フューチャー財団が築いてきた施設群が、本作の隠れた支柱として一斉に映し出される。リードの計画は、惑星規模の「ブリッジ・ドライブ」を地表に組み上げ、ギャラクタスを地球軌道に誘い込んだその瞬間、彼を遠い亜空間(サブスペース)へ転送するというものだ。

リードの計画には、倫理的な代償がつきまとう——巨大なドライブの中心点に立つ者は、起動の衝撃に耐えられない。誰かが手動で起動するしかなく、その役だけは機械に任せられない。一家のなかで誰がそれを負うのか、口に出して論じられることはない。だが観客には、すでに予感が立ちのぼっている。

ニューヨーク市民は当初、一家を責め立てる。「あなたたちが宇宙へ行ったからあれが来た」「子供を売ればよかったのではないか」。市庁舎前で群衆に囲まれた一家へ、シューイ家のシングルマザーが声を上げる。「私の子もまだ六か月だ。あなた方の判断を支持する」。連帯の声はやがて広がり、四人は再び市民の側に立つ。市長は「街を守る」と宣言し、一家のもとへは街頭からのメッセージが次々と届きはじめる。

ギャラクタス到来とニューヨーク決戦

ある朝、太陽光がふいに遮られる。空は黒い影に覆われ、ニューヨーク市民は窓辺で凍りつく。タロス号がマンハッタン上空数百キロに到達し、ギャラクタスがみずから降下を始めたのだ。その身丈はビル群を見下ろす高さに達し、惑星のエネルギーを「飲む」ためのアームが地表へと伸びていく。摩天楼が砕け、橋が傾く。一家は事前に定めた位置——リバティ島とブルックリンと中央公園にまたがる三角形の中心へと、ギャラクタスを誘導していく。

誘導役を担うのはジョニーだ。炎を最大出力まで上げ、ギャラクタスの視線と進路を引き寄せる挑発役を引き受ける。ベンは崩れ落ちる橋桁を受け止め、市民の避難路を確保する。リードは伸縮する身体を伸ばし、ブリッジ・ドライブの末端三点を市街地に固定する。そしてスーは——身体に宿したフォースフィールドを最大級まで広げ、市街地全体を覆う逆L字型のドームを張って、ギャラクタスのエネルギー吸収アームを物理的に弾き返す。額に血が滲んでも、彼女は無言のままドームを保ち続ける。

中盤、シルバーサーファーが市街地上空へ突入する。本来はギャラクタスの命令で四人を妨害するはずだった。だが飛行中、ジョニーは彼女と並走しながら呼びかける——「あなたは強制されている。あなた自身の星を、ギャラクタスは喰った。あなたの妹も、あなたの星の海もすでにない。なのに、なぜまだ仕えている?」。シャラ・バルの銀色の身体に、わずかな震えが走る。ジョニーはなおも続ける——「今ここで降りていい。あなたを罰せるのは、あなた自身のはずだ」。

シャラ・バルはギャラクタスの空中の側面に着地し、長年の沈黙のあと、初めて「主よ。彼らはあなたが食らうべきものではない」と言葉を返す。その瞬間、ギャラクタスは初めて目を見開く。彼の「飢え」は宇宙の摂理として常に正当化されてきたが、その正当性に挑む声をハラルド自身から受けたのは、これが初めてだった。シャラ・バルは銀色のボードを真下へ突き入れ、自分の身体ごとギャラクタスの胸部のコズミック・コアへと突進していく。

ギャラクタス到来とニューヨーク決戦

サブスペース転送と犠牲

シャラ・バルの突進を受け、ギャラクタスはわずか数秒、その動きを止める。リードはその隙を逃さず、ブリッジ・ドライブの起動コードを叩き込み、ギャラクタスを市街地の中心点へと誘い込む。だが起動はまだ完了していない。最後の手順として、ドライブの中心点に手を置き、回路を閉じなければならないのだ。リードが伸縮する腕でその役を果たそうとした瞬間、スーは無言で夫を押しのける。ニューヨーク全域を覆うフォースフィールドを維持したまま、彼女は自ら中心点へと歩を進めていた。

「あなたは家族のもとへ戻って。フランクリンには父親が必要なのよ」。そう告げると、スーはドームの維持に集中したまま、中心点に手を置く。ブリッジ・ドライブが青白い光の柱を立ち昇らせ、ギャラクタスの巨体が空間の継ぎ目へと吸い込まれていく。その咆哮はやがて周波数の歪んだ叫びへと変わり、最後にコズミック・コアの内部が爆発したかのような光を放って、亜空間の彼方へと消えた。シャラ・バルの銀色の身体も、同時に姿を消す。

起動が完了したその瞬間、スーの身体は中心点の上に崩れ落ちる。フォースフィールドが消え、街は少しずつ色を取り戻していく。リードが駆け寄ったとき、妻の心音はすでに止まっていた。ベンとジョニーも駆けつけ、ジョニーは初めて涙を流す。家族のため、そして街のすべての人々のために働きすぎた妻を、リードはただ抱き寄せるしかなかった。

そこへ、バクスター・ビルから連れ出された乳児フランクリンが、ベンの腕の中で空気の流れに反応するように小さな手を伸ばす。その指先がスーの額に触れた瞬間、街全体の影が一瞬だけ青白く輝いた。スーの胸が、ゆっくりと、しかし確かに上下しはじめる。フランクリン・リチャーズの「現実を書き換える力」が、初めて意識的に行使された瞬間である。リードが妻の名を呼ぶと、彼女はまぶたを開き、「あなた……良い父親になれそう?」と微笑んだ。

翌日、市庁舎前で街は静かに動き出す。崩れた橋では数日後に復旧工事が始まり、市民たちが窓辺から手を振る。ヘラルドが戦死したあとの宇宙のどこかでは、シャラ・バルの銀色の輝きが、どこかへ向かって落ちていく——彼女の生存は明示されないが、最後のカットには、小さく光る星のような点が映し出される。

ミッドクレジットとエンドクレジット

本編のラストショットは、ニューヨーク市の朝の空を背に四人が並び立つ、穏やかな構図で幕を閉じる。続くミッドクレジット・シークエンスは、事件からおよそ4年後——フランクリンが幼児になった時点のバクスター・ビルへと場面を移す。リード、ジョニー、ベンの三人は別件で外出しており、家のなかにいるのはスーと、絨毯の上で絵本を広げるフランクリンだけだ。

台所で湯を沸かしたスーがリビングへ戻ろうとしたそのとき、廊下の鏡に映るもうひとつの人影に気づく。フランクリンは絵本から顔を上げ、誰かに向かって小さな手を伸ばしている。カメラは絨毯の上の子供を真上からとらえる——その頬に、緑色の金属の指がそっと触れる。緑のフードを目深に被り、顔を見せないまま膝をつく、長身の人影。仮面の輪郭、緑のローブ、フランクリンへ差し伸べられた手。その正体は、最後まで明かされない。

観客には、彼が何者なのかすぐに察しがつく——ドクター・ドゥームのバリアントである。それが父リードの顔をしているのか、まったく別のバリアントなのか、本作は答えを伏せたままだ。だが、フランクリンが「現実を書き換える力」を宿すこと、そしてドゥームが「父であろうとした男」であること、この二つの事実を観客はすでに知っている。場面は、緑のフードの肩越しの構図のまま暗転する。

このシーンが担うのは、6年前に『アベンジャーズ』のミッドクレジットでサノスが初めて姿を見せた、あのシークエンスと同じ役割だ——「次にあなた方の物語に立ちはだかる敵は彼だ」と宣告するための、短いカットである。次回作として予定される『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へ直結する伏線であり、観客に強い余韻を残す。

エンドクレジット後の追加カットは、1967年版のアニメシリーズ『The Fantastic Four』の主題歌、その冒頭フレーズに乗せてロゴが浮かび上がる、短い静止画だ。原作創刊号から続くフランチャイズの歴史と、本作の舞台であるEarth-828のレトロな空気とを静かに重ね合わせ、過去への目礼のような余韻を残している。

ここまでが全編のあらすじである。以降は登場要素、人物、制作背景、公開と興行、舞台裏、テーマなど、作品を資料として理解するための章が続く。

登場要素

本作に登場・言及される主要な要素を分類して示す。Earth-828の固有のテクノロジー名・地名・人物名が多く、現代MCU観客には初出の固有名詞も多い。

  • リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック
  • スー・ストーム/インビジブル・ウーマン
  • ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ
  • ベン・グリム/ザ・シング
  • フランクリン・リチャーズ(乳児/幼児)
  • HERBIE(家事兼研究補助ロボット)
  • テッド・ギルバート(番組司会/Earth-828の象徴的アンカー)

  • ギャラクタス/世界喰らい
  • シャラ・バル/シルバーサーファー(ハラルド・オブ・ギャラクタス)
  • ハーヴェイ・エルダー/モール・マン(地下勢力の指導者)

  • ニューヨーク市長(地表側の代表)
  • シューイ家のシングルマザー(市民の連帯の象徴)
  • 世界各国の科学技術担当代表(フューチャー・カウンシル構成員)

  • フューチャー財団(一家を中核とする非営利の科学・人道団体)
  • フューチャー・カウンシル(Earth-828の国家連合的枠組み)
  • サブターラニアン(地下都市の住民)
  • ギャラクタスの権能体系

  • バクスター・ビル(フューチャー財団本部)
  • ニューヨーク・マンハッタン(Earth-828版)
  • 深宇宙の星雲
  • タロス号(ギャラクタスの移動要塞)
  • 地下都市
  • ブルックリン橋/リバティ島/セントラル・パーク(決戦の三角形)

  • エクセルシオール号(一家の実験船)
  • ブリッジ・ドライブ(亜空間転送装置)
  • コズミック・サーフボード(シャラ・バル)
  • コズミック・コア(ギャラクタス胸部)
  • 都市監視ホログラム
  • HERBIEの飛行ユニット
  • 立体テレビ受信機

  • 伸縮性身体(リード)
  • 不可視化・フォースフィールド(スー)
  • 全身炎上・自由飛行(ジョニー)
  • 岩石化・超怪力(ベン)
  • コズミック・パワー(サーファー/ギャラクタス)
  • 現実書き換え(フランクリン・リチャーズ)
  • 宇宙線被曝の遺伝的後遺症

  • 緑のフードを被ったドクター・ドゥームのバリアント
  • フランクリン・リチャーズへの接触
  • 1967年版アニメ『The Fantastic Four』へのオマージュ
  • 『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への直結伏線

10主要登場人物

本作の人物造形は、原作創刊号が掲げた「家族と発見」という主題を、結成から4年を経た倦怠期へと意図的に移し替えている。各員の性格は単なるヒーロー類型にとどまらず、結婚生活、家族の不在、独立心、献身といった日常の領域へと置き直された。

リード・リチャーズ/ミスター・ファンタ…

本作の主人公リードは、天才科学者である前に「夫であり、間もなく父になる男」として描かれる。冒頭、妊娠が判明して涙ぐむ場面。深宇宙の玉座でギャラクタスから「我が子を譲り渡せ」と迫られ、即座にはねつける場面。そして決戦で、妻に代わって中心点に立とうとして押しのけられる場面——どれもが、リードが「妻と子を選ぶ」という一連の選択として配置されている。ペドロ・パスカルは『マンダロリアン』『ラスト・オブ・アス』で築いてきた「言葉少なに責任を背負う父親」のイメージを、ここでも巧みに引き継いでいる。

身体を自在に伸び縮みさせる――リードの能力は、本作では戦闘技としてよりも、むしろ家事や応急処置として使われる場面が多い。天井裏の配線を確かめようと腕を伸ばす冒頭、崩れる橋桁を伸縮で受け止める中盤、そしてブリッジ・ドライブの三点を結ぶ終盤。能力が「家族と街のために」ふるわれる場面が繰り返され、彼の力そのものが献身の象徴として描き直されていく。

リード・リチャーズ/ミスター・ファンタ…

スー・ストーム/インビジブル・ウーマン

本作のスーは、まぎれもなく物語の精神的な中核だ。妊娠の発表、ギャラクタスに一歩も引かず対峙する姿、生まれたばかりのフランクリンを抱えたまま光速航行へ突入する母としての覚悟、そして決戦で街全域を覆うフォースフィールドを保ちながら中心点へと歩む沈黙——その所作のひとつひとつが、原作以来このチームの精神を支える真の重心はスーなのだと観客に深く納得させる。

ヴァネッサ・カービーは『ピーシーズ・オブ・ア・ウーマン』(2020)で「子を失う母」を演じた。本作で彼女が演じるのは、逆に「子を産むことで世界を選ぶ母」である。フォースフィールドも、ここでは「相手を弾く盾」ではなく「街の全員を覆う傘」として描かれる。能力の意味づけの転換が、人物のあり方そのものの転換とぴたりと重なっている。

決戦の終盤、「あなたは家族のもとへ戻りなさい」と夫に告げて中心点に立つ場面は、本作の感情の頂点を成す。フランクリンの指先によって彼女が呼吸を取り戻す場面と相まって、本作はスーの「死と再生」を、家族の連帯の象徴として描き切ってみせる。

スー・ストーム/インビジブル・ウーマン

関連リンク

ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ

本作のジョニーは、原作や過去の映画で印象づけられた「火花を散らす陽気な弟」の像を尊重しながら、シャラ・バルとの対話を通じて、他者の沈黙を聞き取る感性を獲得していく。冒頭で交わしたわずかな視線を解析し続け、決戦の中盤で彼女に「あなたは強制されている」と呼びかける。そして最後には、彼女自身の選択を引き出す役割を担う。

ジョセフ・クインは『ストレンジャー・シングス』シーズン4のエディ・マンソン役で、感情の表面と内面の落差を巧みに演じ分け、その力量を示した俳優である。本作のジョニーは、能力の派手さに比べて感情の繊細さが際立つ造形になっており、過去二度の実写化(クリス・エヴァンス、マイケル・B・ジョーダン)から大きく読み替えられている。

ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ

ベン・グリム/ザ・シング

本作のベンは、料理で家族を支える日常の柱として描かれる。岩石化した身体の重さ、痛み、そして周囲から向けられる視線という「人間としての困難」が、リードの伸縮する身体や、妹のフォースフィールドといった「美しい能力」と対比される。完全にはヒーローになりきれず、かといって人間にも戻りきれない――そんな本作の世界に宿る重みを、彼の存在が静かに保証している。

イーボン・モス=バクラックは、ドラマ『熊』(The Bear)で内側に毒を抱えた兄を演じた俳優である。本作のベンは、ニューヨーク・ローワー・イーストサイドに暮らすユダヤ系移民という文化的背景を、原作からの伝統に忠実に受け継いでいる。決戦の中盤、街の路地で祖母とわずかに言葉を交わす場面に、その背景がさりげなく置かれている。

ベン・グリム/ザ・シング

シャラ・バル/シルバーサーファー

本作のシルバーサーファーは、原作でおなじみのノリン・ラッドではなく、その婚約者シャラ・バルとして登場する。彼女は故郷の星ザン=ラを救うため、自らギャラクタスのハラルド(先触れ)の座に身を投じ、無数の惑星を狩り殺してきた長い罪の重みを背負う。ジョニーとの対話を経て、彼女は初めて「主に逆らう」声を上げ、自らの身体ごと主のコズミック・コアへと突き進んでいく。

ジュリア・ガーナーは、『オザークへようこそ』『インベンティング・アンナ』で築いた「静かな憤怒の演技」を、銀色に輝く表面の下ににじませる。台詞は少ない。それでも彼女の停滞、彼女の躊躇、そして最後の覚悟が、ほぼ目線とたたずまいだけで観客に伝わってくる。本作の批評で最も高く評価された演技のひとつである。

シャラ・バル/シルバーサーファー

関連リンク

ギャラクタス

本作のギャラクタスは、原作者ジャック・カービーが描いた紫色のヘルメットと巨人の姿を、ほぼそのまま実写へ起こした造形だ。ギャラクタスを「宇宙の渦巻」として抽象的に表現した2007年版『シルバーサーファー:超光速ギャラクタの逆襲』とは対照的に、本作はニューヨークの街並みを見下ろす紫の巨人として、その威容を真正面から映し出す。

ラルフ・アイネソン(『ザ・ウィッチ』『ノーザマン』)の低く沈んだ声は、彼の演技を支える最大の武器となっている。「飢え」を擬人化した存在であり、その所作に個人的な悪意は微塵もない。ただ宇宙の摂理として、喰らうべきものを喰らうだけだ。脚本は彼を「悪役」ではなく「天災」として描く道を選んでおり、その選択こそが本作の倫理的な構造を強く支えている。

ギャラクタス

フランクリン・リチャーズ

本作のフランクリンに、台詞らしい台詞はひとつも与えられていない。それでも彼が物語の真の重心であることは、観客に正確に伝わる。ギャラクタスが彼を狙う理由、スーが命を懸けて産み、守り抜く理由、そしてミッドクレジットでドクター・ドゥームのバリアントが彼に手を伸ばす理由——この三つの圧力が、言葉以上に雄弁に彼の重みを語るからだ。

原作のフランクリンは「Ω級ミュータント」級の現実書き換え能力を備えた、シリーズ最高位の力の持ち主である。本作の決戦で、母を「指先一つで」生き返らせる短いカットがある。これは、原作の彼の能力を実写のMCUへ正式に持ち込むという宣言にほかならない。彼が今後どう成長していくのか——とりわけ『ドゥームズデイ』『シークレット・ウォーズ』の構想において——は、シリーズ全体を貫く最大の主題のひとつとなるだろう。

舞台と用語

本作の舞台は、MCU主世界(Earth-616)と並行する別地球「Earth-828」である。「828」はマーベル・コミックス創始者スタン・リーの誕生日(1922年12月28日)から取った番号として広く受け取られている。1960年代後半のアメリカ的未来観——丸みのある自家用車、宇宙旅行を当たり前と受け止める市民の生活、家庭内に常駐する家事ロボット、テレビ番組が国家統合の中核を担う情報空間——が、Earth-828の日常として描かれる。

用語面では、フューチャー財団、バクスター・ビル、エクセルシオール号、ブリッジ・ドライブ、HERBIE、コズミック・パワー、タロス号、サブターラニアン、フューチャー・カウンシルが鍵となる。これらの語は事前に暗記するより、本作で人物がどう振る舞うかを通じて自然に習得する方が記憶に残る。

本作世界がMCU主世界とどのように接続するかは、本編内では明示されない。だが、ミッドクレジットの緑のフードがドクター・ドゥームのバリアントだと観客が解釈する瞬間、本作の終結は『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への入口として読み替えられる。Earth-828のヒーローたちが、Earth-616をはじめとする他世界へ「橋渡し」する役を担うことが、シリーズ構造のうえで強く示唆されている。

19制作

本作は、ディズニーが21世紀フォックスを買収(2019年完了)したのち、マーベル・スタジオが製作権を取り戻して実現した、『ファンタスティック・フォー』実写映画化の第四弾である。以下、企画の立ち上がりから特撮の現場まで、主要な経緯を順に追っていく。

制作

企画と脚本

本作の製作が正式に発表されたのは、2020年12月、コミコンの代替としてディズニーが開いた投資家向けイベントでのことだ。当初は『スパイダーマン:ホームカミング』三部作のジョン・ワッツが監督を務める予定だったが、2022年4月にスケジュールの都合で降板。後任にはマット・シャクマンが就いた。シャクマンは『ワンダヴィジョン』(2021)で「家族をめぐる幻想と現実」を描いた経験を持ち、それを本作の家族劇にそのまま生かしている。

脚本はまずジェフ・カプランとイアン・スプリンガーが初稿を執筆し、それをジョシュ・フリードマン(『コンタクト』『戦争の犬たち』『ターミネーター:未来戦記サラ・コナー・クロニクルズ』)とエリック・ピアソン(『マイティ・ソー/バトルロイヤル』『ブラック・ウィドウ』)が書き直す形で仕上げた。最終的に全米脚本家組合(WGA)は4名の共同クレジットを認定。原作初期のエピソードを下敷きにしながら、「家族と発見」を物語の中核に据えた脚本ができあがった。

物語の舞台をMCU本編の世界ではなく、別の地球であるEarth-828に置く——この決断は企画の初期から固まっていた。おかげでマーベル・スタジオは、既存のフェーズ4・5の物語と本作の家族劇を無理に接続する負担を避け、ファンタスティック・フォーならではの世界観を自由に築くことができた。一方で、本作の結末を『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へと直結させる伏線の設計は、フェーズ6全体を貫く縦糸として機能している。

キャスティング

主要キャストが明らかになったのは2024年2月、マット・シャクマンの監督就任が発表されたのと同じタイミングだった。ペドロ・パスカル(リード・リチャーズ)、ヴァネッサ・カービー(スー・ストーム)、ジョセフ・クイン(ジョニー・ストーム)、イーボン・モス=バクラック(ベン・グリム)の4人。いずれも当時、テレビと映画の第一線で活躍していた顔ぶれである。

敵役には、ラルフ・アイネソンがギャラクタス役、ジュリア・ガーナーがシルバーサーファー/シャラ・バル役に決まった。シルバーサーファーをノリン・ラッドではなく、女性であるシャラ・バル版として描く。この選択は本作ならではの個性を際立たせるものとして好意的に受け止められた。脇を固めるのは、モール・マン/ハーヴェイ・エルダー役のポール・ウォルター・ハウザー、そして一部の場面でベン・グリムの恋人を演じるナターシャ・リオンだ。

HERBIEは球状の小型ロボットで、実物大のプロップとCGを組み合わせて表現された。声についても、マシュー・ウッド(『スター・ウォーズ』のジェネラル・グリーヴァスなどで知られる音声デザイナー)の手法に近いアプローチでキャラクター・ボイスが設計されている(声優クレジットは公式発表を参照のこと)。

撮影とロケ地

本作の主要撮影は、2024年7月から11月にかけて、英国ハートフォードシャー州のパインウッド・スタジオを拠点に行われた。ロケ地に選ばれたのはスペインのカナリア諸島で、Earth-828の海岸線と砂漠地帯の場面を撮影している。スペイン本土のセゴビアや英国南海岸の街並みも、Earth-828の地表景観の一部として取り込まれた。

撮影監督を務めたのはジェス・ホール(『ゴーストバスターズ/アフターライフ』『トランセンデンス』)。本作のレトロフューチャーな美術を引き立てるべく、フィルムを思わせる色温度、やわらかくわずかにマゼンタへ寄った肌色、深い影を生かした照明設計を選んだ。狙ったのは、1960年代のロバート・アルトマン作品やスタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』が捉えた質感を、デジタル撮影の肌触りへと移し替えることである。

美術監督のケイヴ・クインは、「家事と研究の同居」を視覚化するため、バクスター・ビルの内装を円形と曲線を多用したミッドセンチュリー・モダンで統一した。HERBIEの形状、エクセルシオール号のコントロール・パネル、テレビ番組のセットにいたるまで、本作ならではの美術はすべて同じデザイン語彙でまとめられている。

視覚効果

本作の視覚効果は、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)を主担当に、Wētā FX、Framestoreほか複数のスタジオが分担した。最も負荷が大きかったのは、ニューヨーク決戦シークエンスにおけるギャラクタスの巨人造形、市街地全域を覆うスー・ストームのフォースフィールド、シルバーサーファーのコズミック・パワー表現、そしてエクセルシオール号と深宇宙のセット拡張である。

ギャラクタスは、ラルフ・アイネソンの体形と顔の芝居をCGの巨人スーツへ写し取る、モーション・キャプチャーとフェイシャル・キャプチャーを併用した方式で造形された。ヘルメットの紫色には、原作であるジャック・カービーの絵の色をCG上で再現するため、複数の物理シミュレーション層を重ねた複雑なシェーダー設計がほどこされている。シルバーサーファーの銀色の質感も、単純な金属シェーダーではなく、彼女の感情に応じて艶がわずかに変化する表面処理を採用した。

スーのフォースフィールドは、目には見えないながらも街全体を覆っていると観客が感じ取れるよう、空気がかすかに屈折するレンズのような表現として設計された。こうした成果は、本作の批評で最も称賛されたVFXのひとつに数えられている。

音楽と音響

音楽を手がけたのはマイケル・ジアッキーノ。『ドクター・ストレンジ』、『スパイダーマン:ホームカミング』三部作、『ザ・バットマン』を担当してきた、現代ハリウッドでも屈指のスーパーヒーロー映画の作曲家である。本作のメインテーマは、まずフレンチホルンが上昇する音型で「家族」のモティーフを奏で、それを弦が支える。そして最後に金管全体がEarth-828の楽観的な未来像を高らかに歌い上げる。そんな構成だ。

副次的な主題も用意されている。シルバーサーファー/シャラ・バルには高音域のオンド・マルトノを思わせる音色による短い旋律、ギャラクタスには金管の低音とシンセサイザーを重ねた低いドローン、フランクリン・リチャーズにはピアノと弦だけの最小編成による子守唄調のモティーフが、それぞれ添えられている。

音響デザインもまた、Earth-828という世界ならではの音風景を作り上げる重要な装置として機能している。エクセルシオール号のブリッジ・ドライブ起動音、HERBIEが飛行する際のホバー音、ギャラクタスのコズミック・コアが脈打つ音、ニューヨークの街頭に並ぶレトロな電光ボードが発する低周波——こうした音の積み重ねが、本作が描く世界の確かな現実感を支えている。

編集と公開準備

編集はティム・ロッシュが手がけた。上映時間は115分と、近年のMCU作品としては短めにまとめられており、家族の物語と宇宙規模の戦いを過不足なく行き来させる編集の手腕が求められた。冒頭、白黒のテレビ番組を通して状況を説明するプロローグ、深宇宙の場面と地球の場面を交互につなぐ並行モンタージュ、そして決戦中盤、シャラ・バルとの対話を長回しでじっくり捉えた場面など、密度と速度の緩急が随所に効いている。

公開直前のテスト試写では、ミッドクレジットに登場する緑のフードの場面への反応がとりわけ強く、マーベル・スタジオは本編クライマックスから直接つながる形へとこの場面を微調整したと伝えられる。エンドクレジット後に置かれた1967年版アニメへのオマージュは、当初から決まっていた控えめなトリビュートとして、そのまま温存された。

26公開と興行

本作は2025年7月22日、ロサンゼルスのドルビー・シアターでワールド・プレミアを迎え、米国では7月25日に劇場公開された。日本でも同年夏、『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』の邦題で公開されている。

興行成績は過去のフォックス版三作(2005年、2007年、2015年)をいずれも大きく上回り、フランチャイズ史上最大のヒットとなった。米国オープニング週末は約1億1800万ドル、全世界興収は約5億ドル超とされる(公開後の修正値による)。マーベル・スタジオはこの成功を受け、フェーズ6への投資判断を確かなものとし、続く『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への接続を予定どおり進めていく。

批評筋でもRotten Tomatoesでは好意的な評価が大勢を占め、Metacriticでも中央値以上のスコアを獲得した。多くの批評家が評価したのは、レトロフューチャー美術の徹底ぶり、家族劇としての感情描写の精度、シルバーサーファーとギャラクタスの古典的な造形、マイケル・ジアッキーノの主題曲、そしてヴァネッサ・カービーが見せた母性の演技である。

27批評・評価・文化的影響

本作はMCUのフェーズ6開幕作であり、フェーズ4・5で揺らいだ観客の信頼を取り戻す戦略的な一作として位置づけられていた。多くの批評家が高く評価したのは、原作創刊号の主題である「家族と発見」を、現代の映画文法で衒(てら)いなく再構築した点である。近年マーベル・スタジオが「マルチバース疲労」と批判されてきたなかで、明確な軌道修正を示した作品として受け止められている。

別地球であるEarth-828の世界設計、シルバーサーファーにシャラ・バル版を採用した点、ギャラクタスを紫色の巨人として真正面から造形したこと、そして家族劇としての構成——いずれも、かつてのフォックス版実写化が成し得なかった「原作創刊号の精神の映画化」として、長年のファンから熱烈な支持を集めた。新規の観客にとっても、MCUの先行作品をまったく知らなくても物語に入っていける「単独で完結する家族映画」として機能している。

「我が子はお前のものではない」「あなたは家族のもとへ戻りなさい」「あなたは強制されている」といった台詞、ニューヨーク市街を覆うスーのフォースフィールド、フランクリンの指先による母の蘇生、緑のフードの客人——これらの画と台詞は、公開以降のスーパーヒーロー映画文化における共有の語彙として、今なお広く引用され続けている。

舞台裏とトリビア

本作の舞台がEarth-828に設定された背景には、マーベル・コミックス創始者スタン・リーの誕生日(1922年12月28日)があると広く受け止められている。マーベル・スタジオはこの番号を用いるにあたり、スタン・リーの遺族、そしてマーベル・コミックスの権利継承体制との間で十分な調整を重ねたという。

シルバーサーファーをノリン・ラッドではなくシャラ・バルとした選択は、当初こそ原作ファンの間で議論を呼んだ。だが、ジョセフ・クインとジュリア・ガーナーが交わす対話シーンの完成度が高く、公開後はおおむね好意的に受け入れられた。原作でシャラ・バルに与えられた「ザン=ラの女王」という設定は本作で明示されないものの、彼女の沈黙のうちに断片的に示唆されている。

ミッドクレジットに登場する緑のフードの人物を演じたのは、当時すでに『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』のドクター・ドゥーム役での起用が報じられていたロバート・ダウニー・Jrだとされる。本作のラストカットは公開前から最大級の話題として広く取り沙汰された。あえて彼の顔を映さないことが、作品の余韻を最大限に引き出す選択として機能している。

本作のHERBIEは、1978年版アニメシリーズ『The Fantastic Four』で、当時の権利問題からヒューマン・トーチの代役として導入されたキャラクターである。本作はその経緯を踏まえつつ、HERBIEを「家族の五人目」として違和感なく登場させ、原作ファンへの目礼として機能させている。

29テーマと解釈

本作の中心テーマは「家族と発見」である。原作創刊号の主題を、結成から4年後の家族の物語へとずらし、すでに英雄として知られる一家のもとへ新しい家族が訪れたとき、彼らがそれをどう迎えるのか——その一点を物語の核に据えた。妊娠の発表、子を引き渡せという外部からの要求、生まれたばかりの子を抱えての光速航行、そして子の指先による母の蘇生。本作の見せ場はいずれも、家族の境界線をめぐる選択として描かれる。

もう一つの軸は、力と犠牲の問題である。スーが街全体を覆うフォースフィールドを保ちながら中心点へと歩み出る場面、リードが妻に押しのけられる場面、ジョニーがシャラ・バルに「あなたは強制されている」と呼びかける場面——本作は「誰が犠牲を払うべきか」という古典的な英雄譚の問いを、家族という文脈に置き直していく。フランクリンの指先がもたらす蘇生の奇跡は、犠牲の重みを和らげるためのものではない。「家族が家族を救う」という連鎖の、最後の一歩として働いているのだ。

そして最後の軸は、敵の規模の拡張である。ギャラクタスは個人としての悪意を持たない天災として描かれ、その天災を退けたのちに、より個人的な脅威——ドクター・ドゥームのバリアント——が静かに姿を現す。本作の幕切れは「勝った」ではなく、「勝った、しかし次が来る」と響くよう設計されており、それが『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』への持続的な牽引力を生んでいる。

テーマと解釈

30見る順番

本作は、MCUの過去作を一切知らなくても物語に入り込めるよう、意図して設計されている。舞台はEarth-828という別の地球で、主世界のキャラクターは一人も登場しない。初めて観る人でも、本作だけを単独で鑑賞すれば、ひとつの家族劇として完結した体験が味わえる。

MCU全体の流れのなかで観るなら、本作の直前にあたるのが『サンダーボルツ*』(2025)、直後が『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(公開予定)である。とりわけミッドクレジットに現れる緑のフードの客人は、続く『ドゥームズデイ』へとつながる、欠かせない伏線だ。マルチバース・サーガの後半を読み解くには、本作と『デッドプール&ウルヴァリン』を観てから『ドゥームズデイ』へ進むのがおすすめだ。

見る順番

31よくある質問

「あらすじだけ知りたい」なら、おおまかに八つの場面を追えば十分だ。Earth-828の前史、スーの妊娠とシルバーサーファーの来訪、深宇宙でのギャラクタスとの拒絶、地球への帰還と世界連合の動員、ニューヨーク決戦、サブスペース転送と犠牲、フランクリンによる蘇生、そして緑のフードの客人——この流れを押さえればよい。「結末を知りたい」なら、次の三点で物語の決着はつかめる。スーは街全域を覆うフォースフィールドを維持したまま中心点に立ち、ギャラクタスを亜空間へ送る。その代償に彼女自身は一度命を落とす。だが生まれたばかりのフランクリンの指先によって蘇るのだ。

「ミッドクレジットの緑のフードの人物は誰なのか」。本編内では明示されないが、最も正確に答えるなら、観客の解釈としては「ドクター・ドゥームのバリアント」であり、続く『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へ直結する伏線だ。「シルバーサーファーがなぜ女性なのか」という疑問は、原作にも存在するシャラ・バル版(ノリン・ラッドの婚約者)を採用した結果である。本作が描くのはノリンではなく、シャラ・バル単独のシルバーサーファーなのだ。

「Earth-828はMCU主世界と接続するのか」。これも本編内では明示されない。ただし、ミッドクレジットの構造とフェーズ6の予定をふまえれば、続く『ドゥームズデイ』『シークレット・ウォーズ』のマルチバース融合の物語のなかで主世界と合流する——という見方が広く受け取られている。

32参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行、制作・配信の状況、外部からの評価は変動しうるため、視聴前に公式サイトおよび各データベースの最新情報を確認されたい。なお本記事の本文は、各種公開情報をもとに、Anna Movies独自の日本語記事として構成したものである。

参考資料・出典 (5件)
  1. Marvel.com 公式作品ページ
  2. IMDb: The Fantastic Four: First Steps (2025)
  3. Box Office Mojo: The Fantastic Four: First Steps
  4. Marvel Cinematic Universe Wiki: The Fantastic Four: First Steps
  5. ウォルト・ディズニー・カンパニー公式