失意のソーが、四期がんと闘いながらマイティ・ソーとして帰還した元恋人ジェーン・フォスターと再会し、神々を殺してまわる絶望の刺客ゴア・ゴッドブッチャーに挑む、MCUフェーズ4を締めくくる宇宙ロックオペラ。

基本データ 2022年・タイカ・ワイティティ監督

マーベル・スタジオ製作、ウォルト・ディズニー配給。MCUフェーズ4最終作にあたるソー単独シリーズの第4作。『ラグナロク』(2017)に続きタイカ・ワイティティが監督と脚本(ジェニファー・ケイティン・ロビンソンと共同)を兼ね、コーグ役で再び出演している。

物語上の位置 ジェーンの帰還とゴアの神殺し

『エンドゲーム』後にガーディアンズと放浪してきたソーが、四期がんを患いながらニュー・アスガルドで「マイティ・ソー」として現れた元恋人ジェーン・フォスター、王となったヴァルキリーとともに、神々を皆殺しにすべく聖剣ネクロソードを振るうゴア・ゴッドブッチャーに対峙する。

受賞・評価 賛否は割れ、ベイル演じるゴアは称賛

ロッテン・トマト批評家評は60%台、観客評はB+、メタスコアは50点台と賛否が分かれた。VFXの労働条件問題や、シリアスな悲劇とコメディの混在に対する批判が大きい一方、クリスチャン・ベイルのゴア、ナタリー・ポートマンの再演、Guns N' Rosesを軸にした音響設計、ヴァルハラのエンドクレジットなどは強く支持された。

この記事の範囲 結末・ヴァルハラ・ミッドクレジットまで完全解説

ゴアの神変節と『神を殺す者』の誕生、ニュー・アスガルドへの襲来、ジェーンと再構成されたムジョルニアの謎、オムニポテンス・シティとゼウス、シャドウ・レルムの白黒世界、エタニティの願い、ジェーン・フォスターの死とソーが養女ラブを引き取る結末、ヘラクレス登場のミッドクレジット、ヴァルハラでヘイムダルがジェーンを迎えるポストクレジットまで、すべてのネタバレを前提に整理する。

目次 34項目 開く

概要

『ソー:ラブ&サンダー』(Thor: Love and Thunder)は、タイカ・ワイティティが監督し、ワイティティとジェニファー・ケイティン・ロビンソンが脚本を共同執筆した2022年公開のアメリカのスーパーヒーロー映画である。マーベル・スタジオが製作し、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給した。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)通算第29作、フェーズ4の第10作にして同フェーズの最終長編であり、ソー単独シリーズとしては『マイティ・ソー』(2011)、『ダーク・ワールド』(2013)、『ラグナロク』(2017)に続く第4作にあたる。アメリカと日本では2022年7月8日に劇場公開された。

中心となるのは、『エンドゲーム』後にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとともに宇宙を放浪してきた雷神ソー(クリス・ヘムズワース)と、彼の元恋人で天体物理学者のジェーン・フォスター(ナタリー・ポートマン)である。ジェーンは進行した四期のがんに侵されており、化学療法でも余命を延ばせる見込みは薄い。砕かれていた魔法のハンマー、ムジョルニアがニュー・アスガルドの記念碑として安置されているあいだに、ジェーンへ「呼ばれ」、彼女を新たな雷神『マイティ・ソー』へと変身させてしまう——これが本作の最大の発明である。

敵役はゴア・ゴッドブッチャー(クリスチャン・ベイル)。砂漠の信仰深い民として登場する彼は、神に祈り続けた末に最愛の娘を失い、自分が崇めてきた神の正体が「信徒の苦しみに無関心な遊興者」であることを目撃する。怒りと喪失のなかで聖剣ネクロソード(オール・ブラック)が彼を選び、神々を一柱ずつ屠っていく「神を殺す者」が誕生する。ゴアはやがてニュー・アスガルドの子どもたちを誘拐し、宇宙の中心にある「エタニティ」へ願いを届けるための儀式に巻き込んでいく。

本作はジェイソン・アーロンによるコミック『マイティ・ソー:ゴッド・ブッチャー』『マイティ・ソー:アンワーシー・ソー』を主な下敷きにしつつ、ワイティティ色の強い80年代ハードロック調の映像言語と、Guns N' Roses の楽曲(『Sweet Child o' Mine』『Welcome to the Jungle』『November Rain』『Paradise City』ほか)に貫かれたサウンドトラックを携える。本記事は、ジェーンが力と寿命を引き換えに最終決戦へ向かい、ソーの腕の中で息を引き取ってヴァルハラへ昇る結末、ゴアが復讐ではなく娘ラブの蘇生を願って消える結末、生き延びていたゼウスが息子ヘラクレスを差し向けるミッドクレジット、ヘイムダルがヴァルハラのジェーンを迎えるポストクレジットまで、すべてのネタバレを前提として整理した完全ガイドである。

原題
Thor: Love and Thunder
監督
タイカ・ワイティティ
脚本
タイカ・ワイティティ/ジェニファー・ケイティン・ロビンソン
原作
ジェイソン・アーロン『マイティ・ソー:ゴッド・ブッチャー』『マイティ・ソー:アンワーシー・ソー』
音楽
マイケル・ジアッキーノ/ナミ・メルマド
撮影
バーズ・イドワン
米国公開
2022年7月8日
上映時間
119分
ジャンル
スーパーヒーロー、SFファンタジー、コメディ、悲劇

あらすじ

以下はミッドクレジットとポストクレジットを含む全編のあらすじである。物語はゴアが神に裏切られて『神を殺す者』に変節する遠い昔のプロローグから始まり、現代パートでソーがジェーン・フォスターの帰還と再離別を経験するロマンス、そしてアスガルドの子どもたちを救うための宇宙横断の冒険として並行して進む。最終的に、ジェーンは命を、ゴアは怒りを、ソーは恋人を失い、その代わりに養女として『ラブ』を得る——という三人の喪失と継承の物語へ収束する。

プロローグ:ゴアと『神を殺す者』の誕生

映画は乾ききった赤茶の砂漠から始まる。痩せ細った父娘——ゴアとその幼い娘——が、すでに死に絶えた仲間たちの間を、神ラプの加護を信じて歩いている。娘は『神は私たちを連れて行ってくれる』と父の信仰の言葉を繰り返しながら息絶える。砂塵に倒れた娘を抱きしめるゴアの前に、緑豊かなオアシスが現れる。神ラプ(ジョナサン・ブルー)が黄金の装身具を鳴らして登場するが、彼はゴアの一族の絶滅を一切意に介さず、新しい信徒など『砂漠にいくらでもいる』と嗤う。あなたのために生涯祈り続けたと崩れ落ちるゴアに、ラプは『お前たち下等な生物のための報酬などない』と告げる。

そのとき、近くで死に倒れていた別の神の手元から、漆黒の刃が転がってゴアの足元に止まる。刃が囁き、ゴアを『選ぶ』。聖剣ネクロソード(オール・ブラック)と呼ばれるその武器は、神を殺すために鍛えられた最初の獲物の延長であり、振るう者の生命と憎しみを糧に長く生き続ける呪われた剣である。ゴアは剣を握り、嘲笑するラプの首を一刀のもとに刎ね飛ばす。死にゆく神は『信仰は本物ではない。我々を殺せ』と命じるかのようにすら聞こえる。

ゴアは娘の亡骸の前で、宇宙のすべての神を皆殺しにすると誓う。タイトルカードに合わせて、彼が次々と神を屠っていく時間の経過がシルエットで示される——金色の宮殿、雪の山、海の底、星々のあいだ。ネクロソードは持ち主の肉体を徐々に蝕み、ゴアは色を失い、骨ばった蒼白い容貌へ変じていく。MCUにおける『神々の世界』が日常的に殺戮されているという、シリーズで類を見ないほど凄惨なプロローグである。

ガーディアンズと『太ったソー』の卒業

場面は変わって現代の銀河の片隅。バーグマンの惑星と呼ばれる星で、巨大な触手の侵略者から村人を守るために、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーがソーとともに戦っている。ピーター・クイル/スター=ロード(クリス・プラット)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)、ネビュラ(カレン・ギラン)、ロケット(ブラッドリー・クーパー)、グルート(ヴィン・ディーゼル)と並んでストームブレイカーを振るうソーは、『エンドゲーム』終盤で恥じた肥満体型を完全に絞り直し、再び神話的な戦士へ戻っている。コーグ(タイカ・ワイティティ声)が物語の語り手として、ソーの宇宙放浪が『自分探し』の旅であったことを観客に説明する。

勝利の宴の最中、ガーディアンズの通信機に銀河じゅうの神々からの遭難信号が立て続けに入る。神の宮殿がことごとく襲撃を受け、住人が皆殺しにされているという。ピーターは『お前の物語は他人を救うことじゃない。お前自身の物語が始まる場所に戻れ』と諭し、ソーをガーディアンズから送り出す。ソーは『仲間と離れるのは家族との別離だ』とおおげさに嘆きつつ、二頭の聖なる山羊トゥースナッシャーとトゥースグラインダー——たった今救った村から贈られた巨大な戦闘ヤギ——を引き連れ、最初の救援要請の発信地へ向かう。

発信地は、シフ(ジェイミー・アレクサンダー)が単身でゴアの追跡に向かっていた星だった。ソーが到着したとき、シフは片腕を斬り落とされ瀕死の状態で、雪原に倒れている。彼女は『神を殺す者がやってくる』『次の標的は新しいアスガルドだ』と告げ、戦士はみずから死を選び戦場で果てるべきだったと悔やむ。ソーは彼女をニュー・アスガルドへ送り届け、自身もすぐに後を追う。

マイティ・ソー誕生:ジェーン・フォスターの帰還

視点はソーから離れ、地球のジェーン・フォスター博士の物語へ移る。アスガルドの古典的な姿に再構成されたムジョルニアは、『ラグナロク』でヘラに砕かれたあと欠片がかき集められ、ニュー・アスガルドの記念碑として安置されている。ジェーンは天体物理学者として宇宙橋アインシュタイン=ローゼン橋の研究を続け、ベストセラーの自著も出した一方、四期のがんと診断され、抗がん治療では延命が難しいと宣告されている。

彼女は『最後の希望』として、かつて自分にも語りかけてきたムジョルニアの記憶を辿り、ニュー・アスガルドへ赴く。記念碑の前に立ったジェーンに、砕けたままだったムジョルニアの破片が応え、空中で再構成されてジェーンの手に飛び込む。雷光が走り、彼女はアスガルドの戦闘装束をまとった『マイティ・ソー』へ変身する。コミック原作で2014年から数年描かれた、ジェーン・フォスターがソーのマントルを継承するエピソードを忠実に映像化した瞬間である。

ただしムジョルニアの力は彼女の命と背中合わせである。マイティ・ソーに変身しているあいだ、ジェーンの体は痛みもがんも忘れて全盛期に戻るが、変身を解いた瞬間、変身していた分だけ進行したがんが彼女に押し寄せ、化学療法で抑えていた進行を打ち消す。すなわち、ハンマーを振るうたびに、彼女の残された時間は加速度的に短くなる——本作のロマンスを成立させると同時に最終的な悲劇を約束する、残酷な仕様である。

ニュー・アスガルド襲撃と子どもたちの誘拐

ニュー・アスガルドはノルウェーのトンスベルグ近郊にある漁村で、生き残ったアスガルドの民とミッドガルドの住民が共生し、観光地として運営されている。ヴァルキリー(テッサ・トンプソン)はアスガルドの王として民を治め、官僚的な書類仕事と平和な日常に倦んでいる。コーグ、マイク(彼が築いたパートナーのストーンマン)、子どもたちは普段どおりの生活を送っている。

そこへゴアが、ネクロソードから召喚した影の怪物——『シャドウ・モンスター』と呼ばれる漆黒の野獣の群れ——とともに襲来する。村は炎に包まれ、ゴアは子どもたちを次々と影の檻に閉じ込めて連れ去ろうとする。ソー、ヴァルキリー、コーグ、そして空からムジョルニアを振るって駆けつけたマイティ・ソー=ジェーンが応戦する。

戦闘の最中、ソーは自分のかつての恋人がムジョルニアを使いこなしていることに動揺し、ジェーンとぎこちなく再会する。離別の経緯(連絡を絶ったのはソーであり、ジェーンが治療中であることもこのとき初めて知る)が、戦いの合間の不器用な台詞で観客に明かされる。ゴアはネクロソードでストームブレイカーを呼び寄せようとし、ストームブレイカーは彼の手に触れて漆黒の刃と一瞬共鳴する——ストームブレイカーには『誰でも宇宙のどこへでも呼べる』機能があり、それを悟ったゴアは利用価値を覚える。コーグはこの戦いで肉体の大半を砕かれ、口元の岩塊だけになって生還する。

ゴアは満足な数の子どもたちを連れて『シャドウ・レルム(影の領域)』へ撤退する。最後にソーへ向けて『次に会うのは私の世界で、お前の武器を借りる時だ』と告げ、ストームブレイカーを誘惑する楔を残していく。ニュー・アスガルドには黒焦げの瓦礫と泣き叫ぶ親たちが残される。

オムニポテンス・シティとゼウス

正面から戦っても勝てないと悟ったソーは、銀河じゅうの神々が暮らす中立都市『オムニポテンス・シティ』へ援軍を求めに行くことを決める。トゥースナッシャーとトゥースグラインダーが引く戦闘船(屋根のないアスガルドのロングシップ)に、ソー、ジェーン、ヴァルキリー、口元だけのコーグが乗り込み、虹の橋ビフレストではなく旧式の星間航路を通って黄金の雲の上に浮かぶ都市へ到着する。

オムニポテンス・シティは、ありとあらゆる文化圏の神々が酒池肉林の宴を続ける半ば退廃した楽園として描かれる。日本の神、エジプトの神、ケルトの神、クトゥルー神話風の神なども群衆として登場する。中央の玉座に座るのはギリシャ神話のゼウス(ラッセル・クロウ)。雷を擬人化したような尊大な男であり、人間に対して横柄、神々の苦境に対して無関心であり、ソーが懇願する『神々連合軍』の発足を一蹴する。

気色ばんだソーは変装を解いて素性を明かすが、ゼウスは興味本位で彼の幻惑の衣装を裂き、観客と神々の前でソーを丸裸にして晒し物にする。羞恥と怒りに駆られたソーは、玉座近くの台座から雷神ゼウスの象徴である雷霆——通称サンダーボルト——を奪う。立ち上がろうとしたゼウスをそのサンダーボルトで貫き、四人は乱戦を制してオムニポテンス・シティを脱出する。

出立時、ヴァルキリーは脇腹に深い傷を負っているのに気づきながらも気丈に振る舞う。サンダーボルトの所有権はジェーンに渡され、後の決戦の鍵となる。なお『ゼウスを殺した』とこの時点では描かれるが、後段で『刺し貫いただけで殺せていなかった』ことが明らかになるため、観客の解釈はミッドクレジットまで保留される。

シャドウ・レルムと『ミニ・ソー』

サンダーボルトのエネルギーを用いて、四人はストームブレイカーが導く先——ゴアが立てこもる『シャドウ・レルム』へ転送する。シャドウ・レルムへ足を踏み入れると、世界からは色が消え、画面がモノクロームになる。本作で最も挑戦的な視覚演出であり、観客は突然、奪われた魂の領域に立たされる。

子どもたちは大きな漆黒の檻に閉じ込められている。ソーは『私が皆さんに力を分けます』と宣言し、檻越しに自分のフォースをストームブレイカーから子どもたちへ流し込む。子どもたちはまるで小さなソーとなり、目に雷光を宿し、武器をふるってシャドウ・モンスターの群れを撃退する——MCUきっての奇想シーンであり、ヘイムダルの息子アクスル(後にアストリッドからアクスルへと名を改めた)が檻のなかからソーへ精神感応で位置を伝える描写も挟まれる。

しかしゴアの目的は子どもたちの殺害ではなく、儀式に必要な『信仰の混じり気のない祈り』を集めることだった。檻のなかで戦う子どもたちは結果としてゴアに利用される祈りの源として残されてしまい、ゴアは隙を突いてストームブレイカーを奪取する。サンダーボルトと交換にネクロソードでストームブレイカーを切り裂く脅威を見せつけられ、ソーは斧の解放と引き換えに子どもたちを取り戻すしかなくなる。

戦いの末、ジェーンは大量に変身を重ねたために色を失った肌からも限界を感じ取り、戦場で意識を失う。ソーは子どもたちをアスガルドの船に避難させ、瀕死のジェーンを抱えてニュー・アスガルドへ戻る。ヴァルキリーも重傷を負って戦線を離脱する。

海辺のジェーンとソーの告白

ニュー・アスガルドの海辺の家で、ジェーンは医師から『マイティ・ソー化が彼女の最後の数週間を一気に削っている』と告げられる。ソーは初めて、彼女にすべてを話す。なぜ別れたのか、何が怖かったのか、宇宙のなかで何度も彼女のことを思い出していたのか。ジェーンは『二度と別れない』と微笑む。二人はムジョルニアを使う代わりに残された時間を一緒に過ごすことを選ぶ約束を交わす——だが、それは観客が約束として受け取った瞬間に裏切られることを予感させる、本作で最も静かな場面である。

ソーはジェーンを一旦置いて、子どもたちを救うために単身ゴアと対決する道を選ぶ。ゴアがエタニティの門(宇宙の中心に位置する『願いを叶える存在エタニティ』の住処)へ向かったことが、ヘイムダルの息子アクスルの精神感応で伝わる。願いの内容は明らかだ——『すべての神を消す』。

ストームブレイカーは奪われ、ムジョルニアは記念碑からの旅を終えてジェーンの寿命と引き換えに目覚めた。ソーは武器を持たず、子どもたちのためにエタニティの門へ単身向かう。

エタニティの門での最終決戦

宇宙の中心、星々の網目の交差点に、エタニティの門が浮かんでいる。ゴアはネクロソードとストームブレイカーを並べ、子どもたちの『無垢な祈り』を儀式の燃料として、巨大な石の門を開こうとしている。ソーが単身駆けつけ、ゴアに『お前の願いを止めに来た』と宣言する。

戦況は圧倒的に不利である。ストームブレイカーはゴアの側にあり、ソーは雷光と肉弾戦だけで応戦する。そこへ、ニュー・アスガルドで死を覚悟していたはずのジェーン・フォスターが、マイティ・ソーの装束で参戦する。彼女が変身している時間は、彼女の命を直接削っていることをソーは知っている。それでもジェーンは『私たちはチームよ。最後まで一緒よ』と宣言し、二人はゴアと並んで剣戟を交わす。

ジェーンは戦いの最中、子どもたちを抱えて檻から逃がす役回りに徹し、ムジョルニアを盾としても使って身を挺する。アクスルやヘイムダルの息子をはじめとする子どもたちは、ジェーンとソーの船に乗り込んで脱出する。最終局面で、ゴアの一撃を受け止めたムジョルニアは再び砕け、ジェーンの命を守ったまま小さな破片を残して散る。

ゴアはストームブレイカーで門を切り開き、エタニティへ手を伸ばす。ソーはもはや戦闘では止められず、剣ではなく言葉で語りかける——『お前が本当に願うべきは復讐ではない。あの子を取り戻すことだ。私の知っている娘の父親は、復讐を願わない』。瀕死のジェーンも『愛だけを残しなさい』と告げる。

ゴアは雷光の中で揺れる。ネクロソードは彼自身の肉体をもはや内側から食い尽くしており、寿命はあと数分しかない。彼は『私のために、彼女を生かして欲しい』と願いを変える——亡くした娘のラブ(インディア・ローズ・ヘムズワース、クリスの実娘がカメオ出演)を、生きてこの世界へ戻すことに。エタニティの光のなかで娘ラブが姿を現し、ゴアはその抱擁の中で『この子を頼む』と言い残し、ネクロソードの呪いとともに塵となって消える。ネクロソードと共謀してきた漆黒の刃も粉々に砕け散る。

ヴァルハラと『ラブ・アンド・サンダー』

戦いが終わったあと、エタニティの門の前で、ジェーン・フォスターはソーの腕の中で息を引き取る。マイティ・ソーの装束は静かに金色の粒子となって散り、最後に彼女は『この道は値打ちのある道だった』と微笑む。落雷とともに、彼女の魂は黄金の光に包まれて空へ昇り、戦場で戦った戦士だけが行ける死後の世界『ヴァルハラ』へ向かう。

ソーはひとりエタニティの門の前に残され、ゴアの娘ラブを抱きかかえる。子どもの両手は信じられないほど小さく、彼女もまた両親を失ったばかりだ。ソーは決意し、ラブを養女として引き取って『お父さん』として育てることを誓う。

結末の数か月後、ニュー・アスガルドの近所で、コーグの新しい身体が再構築されている。ヴァルキリーは王として復帰し、傷も癒えている。ソーはラブとともにキッチンで朝食を作り、二人で学校(あるいは戦場)へ向かう。ラブはジェーン由来の改造ストームブレイカーの片割れ——縮小版の小型雷斧——を肩に担いでいる。コーグの語りが『これは雷神とその恋人の物語ではない。これは雷神とその養女の物語だ』と締めくくり、二人は『ラブ・アンド・サンダー』の名で新たな冒険へ駆け出す。

ミッドクレジットとポストクレジット

ミッドクレジット・シーン:場面はオムニポテンス・シティの玉座室へ戻る。サンダーボルトに貫かれて死んだはずだったゼウスが、傷だらけながら生還しており、息子ヘラクレス(ブレット・ゴールドスタイン)に向かって、ソーへの復讐を命じる。『神々の時代は終わっていない。スーパーヒーローの時代を終わらせろ』。ヘラクレスは無言のまま立ち上がる——MCU初登場のキャラクターであり、ソーの次の戦いを予告する。

ポストクレジット・シーン:黄金に輝くヴァルハラの大広間で、新たな魂が一人到着する。彼女を出迎えるのは、『インフィニティ・ウォー』で命を落としたアスガルドのヘイムダル(イドリス・エルバ)だ。『見るものすべての門番』だった彼は、ジェーン・フォスターへ向けて穏やかに『あなたがここへ来てくれたことに感謝する。ようこそヴァルハラへ。神に値する者よ』と告げる。ジェーンが扉の向こうへ歩み入るところで本作は完全に幕を閉じ、彼女の魂が戦士として認められたことが視覚的に確認される。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して示す。固有名詞はシリーズ理解の手がかりだが、初見で暗記する必要はない。

主要人物

  • ソー/ソー・オーディンソン(クリス・ヘムズワース)
  • ジェーン・フォスター/マイティ・ソー(ナタリー・ポートマン)
  • ヴァルキリー/キング・ヴァルキリー(テッサ・トンプソン)
  • コーグ(タイカ・ワイティティ声)
  • アクスル(ヘイムダルの息子)
  • ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(ピーター・クイル/ドラックス/マンティス/ネビュラ/ロケット/グルート)
  • シフ(ジェイミー・アレクサンダー、序盤負傷)

ヴィラン

  • ゴア・ゴッドブッチャー(クリスチャン・ベイル)
  • ネクロソード/オール・ブラック・ザ・ネクロソード
  • シャドウ・モンスター(ゴアの召喚獣)
  • 神ラプ(プロローグ)
  • ゼウス(ラッセル・クロウ、ミッドクレジット)

サポート

  • ヘイムダル(イドリス・エルバ、ポストクレジット)
  • ラブ(クリス・ヘムズワースの実娘インディア・ローズ・ヘムズワース)
  • オムニポテンス・シティの神々(バスト、ディオニュソス、エジプトの神、ケルトの神 ほか)
  • マイク(コーグのストーンマンの伴侶)
  • ダリル・ヤコブソン(旧『ティーン・パンク』テレビ風プロモ)

組織

  • ニュー・アスガルド王国
  • ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
  • オムニポテンス・シティ評議会
  • サムシング・スペースイヤーズ(ゴアの神なき教団)
  • ヴァルハラの戦士たち

場所

  • プロローグの砂漠(ラプの神域)
  • バーグマンの惑星
  • ニュー・アスガルド(ノルウェー、トンスベルグ近郊)
  • シャドウ・レルム(影の領域、モノクロ世界)
  • オムニポテンス・シティ
  • エタニティの門
  • ヴァルハラ
  • シフが倒れていた雪原

アイテム・技術

  • ストームブレイカー
  • ムジョルニア(再構成版)
  • ネクロソード/オール・ブラック
  • ゼウスの雷霆(サンダーボルト)
  • アスガルドのロングシップ
  • 戦闘ヤギ トゥースナッシャーとトゥースグラインダー
  • ジェーンの治療薬(化学療法)
  • ヘイムダルの息子の精神感応

能力・概念

  • 雷神の力(ソー)
  • マイティ・ソー化(ジェーンの一時的覚醒)
  • ネクロソードの呪い
  • 神殺し(ゴアの復讐)
  • エタニティの願い
  • ヴァルハラ入り
  • アスガルドのフォースを子へ分与する儀式

ポストクレジット要素

  • ヘラクレス(ブレット・ゴールドスタイン、MCU初登場)
  • 生き延びていたゼウス
  • ヴァルハラのヘイムダル
  • 次回への復讐の予告

主要登場人物

本作は『ソー(雷神)が誰のために雷を振るうのか』を問う物語であり、ソーの周囲を取り囲む人物それぞれにも『誰のために生き、誰のために死ぬか』という同じ問いが課されている。以下、本作の中心となる五人を取り上げる。

ソー/ソー・オーディンソン(クリス・ヘムズワース)

本作のソーは、『ラグナロク』『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』を経て、王座も、母国も、両親も、片目も、兄弟ロキも失ったあとの『独り身の戦士』である。物語冒頭ではガーディアンズと旅をしながら、自分が何のために戦うのか分からないまま、銀河を巡回する『他人の物語の脇役』に甘んじている。

ジェーンとの再会、ゴアの脅威、そしてジェーンの病という三つの試練は、彼を『誰かのために雷を振るう存在』へと作り変える。最終的にラブを養女として育てる決断は、雷神という孤高の英雄像を放棄して、家族の一員としての父親像を選ぶ転換であり、ソー単独シリーズが12年かけて辿り着いた終着点でもある。

クリス・ヘムズワースは本作のために大きく筋肉を増やし、海岸の脱衣シーンを含むコメディと、ジェーンの最期を看取る悲劇の双方を演じ分けた。コメディ面ではコミカルな求愛と歌唱が前景化する一方、エタニティの門前で『あなたの娘を取り戻して』と語りかける場面は、彼が演じてきたソーの中で最も静かな抑制を見せる。

ソーの人物ページ 前作:マイティ・ソー バトルロイヤル

ジェーン・フォスター/マイティ・ソー(ナタリー・ポートマン)

ジェーンは『マイティ・ソー』(2011)と『ダーク・ワールド』(2013)に登場した天体物理学者だが、ナタリー・ポートマンが原作者陣との軋轢を背景に長らくMCUを離れていた経緯がある。本作で『マイティ・ソー』としてマントルを受け継ぐかたちで復帰し、戦士ジェーンと病人ジェーンの二面性を一人で演じ切った。

原作コミック『マイティ・ソー:ゴッド・ブッチャー』および『マイティ・ソー:アンワーシー・ソー』で描かれた『がんと闘うジェーンがムジョルニアの担い手になり、変身時間が彼女の余命を奪う』設定は、本作でほぼそのまま採用された。彼女の選択は『戦って早く死ぬか、戦わずにゆっくり死ぬか』であり、最終決戦に駆けつける場面でその究極の答えが提示される。

ヴァルハラのポストクレジットで彼女がヘイムダルに迎えられる瞬間は、彼女の人生が『科学者』『恋人』にとどまらず『戦士』として完成したことを示唆する。MCUにおける女性主人公の死の描かれ方として、犠牲と尊厳の両立が試みられた重要な場面でもある。

初登場作:マイティ・ソー(2011)

ゴア・ゴッドブッチャー(クリスチャン・ベイル)

クリスチャン・ベイルが本作のために肉体を絞り、髪を全て剃り上げて演じた本作の象徴的悪役。MCUの悪役のなかでも、サノス、キルモンガー、ヴァルチャー、ロキらと並んで『信念の悪役』に分類される人物である。

彼の物語は『信仰が報われなかった父親』の悲劇から始まる。神を信じ続けた末に最愛の娘を失い、神は自分の苦しみを嘲笑った——その絶望が、彼にネクロソードを握らせる動機となる。ベイルは囁くような低音と、子どもをあやす穏やかな歌声、神を屠るときの恍惚という三段階を、ほぼ全編モノクロームに近い灰色の容貌の中で表現した。

結末で彼が選ぶ『復讐ではなく娘の蘇生』という願いは、彼を真の悪に堕としきれない最後の良心の現れであり、ソーが養女として娘ラブを引き取る次の物語への橋渡しとしても機能する。批評の多くが本作のコメディの強さに賛否を述べる一方、『ゴアのトーンだけは完璧』と評価したのは、ベイルの抑制された演技に依るところが大きい。

ヴァルキリー/キング・ヴァルキリー(テッサ・トンプソン)

『ラグナロク』で初登場した戦士ヴァルキリーは、本作でニュー・アスガルドの王として描かれる。書類仕事と政治の退屈に倦み、剣を振るう日を待ち焦がれていた彼女にとって、ゴアとの戦いは『戦士に戻る機会』である。

オムニポテンス・シティでの乱戦で深手を負ったあとも王として民を守る役割を全うし、結末では再び玉座へ戻る。MCUにおける数少ない明示的なLGBTQ+キャラクターでもあり、彼女のセクシュアリティはコーグの語りや過去の戦友への悼みを通して自然に描かれている。

コーグ(タイカ・ワイティティ)と語り手としての機能

クロナンの戦士コーグは『ラグナロク』『エンドゲーム』に続いて再登場し、本作では物語の語り手として機能する。アスガルド近郊の子どもたちに英雄譚を聞かせる『吟遊詩人』として冒頭と末尾を担い、観客に物語の枠組みを与える。

中盤では肉体の大半が砕かれ、口元の岩塊だけになって生き延びるという過酷な状況に陥るが、後段でストーンマンの生殖儀礼(マグマの噴火口に手を取って『パパ』を二人作る)を通して新しい身体を取り戻し、伴侶マイクとともに静かな未来を得る。

舞台と用語

舞台は四つの異なる質感の空間に分かれる。ゴアのプロローグは砂漠と『神の楽園』の対比で構成され、信仰の崩壊を視覚化する。中盤のニュー・アスガルドは観光地化したノルウェーの漁村として描かれ、アスガルドの神話的威光が日常へ溶け込んだ姿が提示される。一方、シャドウ・レルムは完全なモノクロームに塗り替えられ、色の喪失そのものが『神を失った世界』のメタファーとなる。終盤のオムニポテンス・シティは神々の堕落を体現し、エタニティの門は宇宙のもっとも深い所にある『願いを叶える存在』の住処として、決して人や神が立ち入るべきでない聖域として描かれる。

用語面ではネクロソード(オール・ブラック・ザ・ネクロソード)、マイティ・ソー、シャドウ・レルム、エタニティ、ヴァルハラ、ヘラクレスが鍵となる。ネクロソードはコミックでもMCUでも『神を殺すために鍛えられた最初の刃』であり、振るう者の生命を蝕みつつ強大な力を与える呪われた武器として描かれる。マイティ・ソーはソーのマントルそのものを継承する者であり、本作ではジェーン・フォスターがその担い手となった。エタニティはMCUの宇宙において概念存在の一つで、本作では『願いを叶える』アスペクトが具体的に描写される。ヴァルハラはアスガルドの神話における戦士の死後の世界で、本作のラストで初めて画面に登場する。

用語:アスガルド 用語:アベンジャーズ

制作

『ラグナロク』の興行的・批評的成功を受けて、マーベル・スタジオはソー単独シリーズの第4作を即座に承認した。タイカ・ワイティティが続投することは早期に決まり、彼が共同脚本家として迎えたのが、それまでロマンティック・コメディの分野で活躍してきたジェニファー・ケイティン・ロビンソンである。以下、企画から特撮までの主要な経緯を整理する。

企画と脚本

本作の原案は、2019年のサンディエゴ・コミコンでケヴィン・ファイギが正式発表した。骨格はジェイソン・アーロンが2010年代に書き続けた一連の『マイティ・ソー』コミック、とくに『ゴッド・ブッチャー』(2013年連載)と『アンワーシー・ソー』『マイティ・ソー:ジェーン・フォスター』(2014年〜)に拠っている。ジェーン・フォスターが乳がんを患い、その治療中にもかかわらずムジョルニアを振るうたびに余命が削られていく原作の設定は、本作でほぼ忠実に再現された。

脚本はワイティティとロビンソンが二人三脚で執筆した。ワイティティは『ラグナロク』で確立した即興とアドリブを許容する撮影方針を本作にも持ち込み、コメディとシリアスを大胆に切り替える構成を採用した。なお脚本のドラフト段階では、ジェーンの死後、ヴァルハラ到着までを描かない案や、ゴアの結末がより悲劇的(願いを変えずエタニティに殺される)に終わる案も存在したと、複数の制作インタビューで言及されている。

監督ワイティティは、本作の主題を『失った人をどう抱きしめ続けるか』と公言してきた。ソーが家族を失い続けた12年の旅と、ジェーンが命を投げ出して恋人と並ぶ最後の戦い、ゴアが復讐ではなく娘を選ぶ結末は、その主題の三つの応答として組まれている。

キャスティング

クリス・ヘムズワース、テッサ・トンプソン、タイカ・ワイティティ(コーグ声)が続投し、ナタリー・ポートマンが約9年ぶりにMCUへ復帰した。ポートマンは『ダーク・ワールド』後に同シリーズと距離を置いていたが、ワイティティが直接『マイティ・ソー化』のプランを提示したことで参加を決めたとされる。撮影に向けてポートマンは10か月にわたるウェイトトレーニングを行い、ハンマーを振るう物理的説得力を準備した。

ゴア役にはクリスチャン・ベイルが起用された。ベイルがMCUに参加するのは本作が初めてであり、ワイティティは彼に対し『犬笛のように囁け』『神を屠るときは祈る』とだけ演技指示したと語っている。ゼウス役のラッセル・クロウは、息子の薦めでマーベル映画への出演を快諾し、ギリシャ語訛りの英語と装飾過剰な振る舞いを自身のアイデアで肉付けした。ガーディアンズ陣(クリス・プラット、デイヴ・バウティスタ、ポム・クレメンティエフ、カレン・ギラン、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼル)はカメオ扱いで序盤に出演している。

アスガルドの神話劇カメオには、再びマット・デイモン(ロキ役者)、サム・ニール(オーディン役者)、ルーク・ヘムズワース(ソー役者)が登場し、本作で新たにメリッサ・マッカーシー(ヘラ役者)も加わった。これらは『ラグナロク』のジョークを継承する自己言及的な遊びである。ミッドクレジットのヘラクレスにはブレット・ゴールドスタイン(『テッド・ラッソ』のロイ・ケント役)が起用された。

撮影と美術

本作の主要撮影は、コロナ禍下の2021年1月から6月にかけて、オーストラリアのシドニーにあるフォックススタジオ・オーストラリアと、ニュー・サウス・ウェールズ州の各地で行われた。当初2020年内の撮影開始を予定していたが、世界的なパンデミックで延期された。新アスガルドの海岸シーン、ヴァルハラの黄金の大広間、シャドウ・レルムの白黒空間など、多くがLEDウォールと従来のセットを組み合わせたバーチャル・プロダクションで撮影されている。

美術設計は『ラグナロク』のサイケデリックなネオン基調を継承しつつ、ニュー・アスガルドはノルウェーの寒色を、オムニポテンス・シティはバロック調の黄金を、シャドウ・レルムは完全なモノクロームを、エタニティの門は古代インド美術風の幾何学を採用するなど、場面ごとに視覚言語が明確に分けられている。とくにシャドウ・レルムのシークエンスは、撮影段階からモノクロームを前提に照明と衣装を設計し、ポスト処理ではなく素材レベルで色を抜く方針が貫かれた。

視覚効果

本作の視覚効果は、ILM、Framestore、Method Studios、Wētā FX、Luma Pictures、RISE ほか複数の主要VFXハウスが分担した。シャドウ・モンスター、ネクロソードの黒い触手、雷神化したジェーンの装束、エタニティの宇宙描写などが主な担当領域である。

公開後、複数のVFXアーティストが匿名で『短納期と低予算でクオリティ管理が困難だった』と海外メディアに証言し、マーベル・スタジオの労働条件問題として大きく報道された。とくにディズニー+シリーズで顕在化したVFXの過密スケジュールが本作にも及び、最終ショットの修正が直前まで続いた経緯が後年複数のインタビューで明かされている。完成版ではエタニティの門、ゴアの神殺しのモンタージュ、ヴァルハラのエンドカットなど、強い印象を残すショットが多数存在する一方、一部の合成にはクオリティのばらつきが残った。

音楽と音響

音楽はマイケル・ジアッキーノが、女性作曲家ナミ・メルマドと共同で担当した。ジアッキーノは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に続くMCU長編の作曲で、80年代ハードロックの語法とアスガルドの神話的金管とを織り交ぜたスコアを書き上げた。ジェーンの『マイティ・ソー』テーマは新規作曲され、彼女の登場と退場の双方で使われる。

挿入歌としてGuns N' Rosesの楽曲が大々的に使用された点が本作の大きな特徴である。冒頭の戦闘シーンに『Welcome to the Jungle』、ジェーンとソーの再会のフラッシュバックに『Sweet Child o' Mine』、エタニティの門のクライマックスに『November Rain』、エンドクレジット導入に『Paradise City』が用いられ、ロックオペラ的な構成が貫かれた。ABBA『The Winner Takes It All』も、ソーがガーディアンズと別れる場面で重ねられる。ワイティティはGuns N' Roses本人たちにスクリプトの一部を見せてライセンスを得たと語っている。

編集と完成

編集は、ニュー・アスガルド、シャドウ・レルム、オムニポテンス・シティ、エタニティの門という性格の異なる場面を、観客が緊張感を失わずに巡れるよう緻密に並べ替えられている。コメディとシリアスの切り替えはカット単位で行われ、ゴアのシーンとソーのシーンが断片的にクロスカットされる構造は、編集段階でかなり再構成されたと制作インタビューで語られている。

ミッドクレジットとポストクレジットは、本作完成のかなり後段で追加された。とくにヘラクレスの登場シーンは、当初『Daredevil: Born Again』寄りの予告にする案も検討されていたが、最終的にMCUの神話路線を継承するゼウス→ヘラクレスの差し向けに落ち着いた。

公開と興行

2022年7月8日、米国・日本などで同日公開された。コロナ禍を経て劇場興行が部分的に回復した時期にあたり、初週末の北米興収は約1億4400万ドル、世界興収は約3億ドルと、MCU長編としては好調なスタートを切った。最終的な全世界興収は約7億6千万ドルに達し、製作費2億5千万ドル前後を踏まえても黒字を確保したと一般に解釈されている。

ただし『ラグナロク』の全世界興収8億5千万ドル、『エンドゲーム』の29億ドルといった直近のMCU長編と比較すると、観客動員の鈍化を象徴する作品の一つに位置付けられた。日本興収は約26億円で、同年公開のMCU作品の中ではミドル・ティアにとどまった。

批評・評価・文化的影響

公開時のロッテン・トマト批評家評は60%台前半、観客評はB+(CinemaScore)、メタスコアは50点台と賛否が大きく分かれた。批判の多くは、ゴアの絶望的な物語とアスガルドのコメディの切り替えが性急であること、CGの一部が荒削りであること、ガーディアンズの扱いが浅いこと、ヴァルキリーやコーグの掘り下げが不足していることに集中した。一方、ナタリー・ポートマンの再演、ジェーンの最期、クリスチャン・ベイルのゴア、Guns N' Rosesに統一されたサウンドトラック、ヴァルハラ/ヘラクレスへの拡張は強く支持された。

公開後、本作は『フェーズ4の終盤におけるMCUの方向性を象徴する作品』として議論の的になった。多くの評者が『ジェーンの死とラブの登場がMCUにおける家族の物語を新たに切り開いた』と指摘する一方、コメディとシリアスのトーン管理を巡る批評は、後続作『アント・マン&ワスプ:クアントマニア』『マーベルズ』への批評と結びつき、MCU長編のトーン論議の起点の一つになった。VFX労働条件問題が公然と議論されるきっかけにもなり、業界全体の労働環境改善議論を加速させた。

舞台裏とトリビア

クリスチャン・ベイルは撮影開始の数か月前から減量と剃髪を進めた。撮影現場では彼の登場時にスタジオ全体が静まり返ったと、複数のスタッフがプロモーション・インタビューで証言している。

ゴアの娘ラブは、結末の場面でクリス・ヘムズワース本人の実娘インディア・ローズ・ヘムズワースが演じた。彼の双子の息子もアスガルドの子ども役で参加しており、家族総出のキャスティングとなった。

ガンズ・アンド・ローゼスの楽曲使用権は、ワイティティがスクリプトの一部を直接バンドへ提示して交渉した。完成版に楽曲が大量に用いられているのは、その個別交渉によるものとされる。

コーグの恒星間結婚式の場面(マグマの噴火口で手を取り合いながら『パパ』を二人作る)は、撮影段階で複数のテイクが撮られ、最終版ではコーグの伴侶マイクが登場するエンドクレジット直前の短いカットに収まった。

ヴァルハラを訪れたヘイムダルがジェーンを迎えるポストクレジット・シーンは、当初は別のキャラクターを迎える案も検討された。最終的にイドリス・エルバがヘイムダル役で再登場し、『私の娘がここへ来てくれたことを誇りに思う』という台詞を加えた。

テーマと解釈

中心にあるのは、喪失と継承の物語である。ソーは父オーディン、母フリッガ、兄弟ロキ、母国アスガルド、片目、ハンマーといった大切なものを次々に失ってきた孤独な戦士であり、本作ではさらに再会したばかりのジェーンまでも失う。だが、失う代わりに彼は『養女ラブ』という新しい家族を得る。喪失が継承を呼び、その継承が次の喪失の準備になるという循環が、本作の構造を貫いている。

もう一つの軸は、神は救うのではなく救われる側になりうるという視点の転換である。ゴアは神を信じ、神に裏切られ、神を屠る側に回る。ゼウスは神々の王として腐敗し、ヘラクレスを差し向ける。ジェーン・フォスターは人間でありながら『マイティ・ソー』を名乗ることでアスガルドのマントルを継承する。神を超越的な存在ではなく『誰でもなり得る役柄』として描き直すこの視点は、MCUのフェーズ4が一貫して提示してきた『多元宇宙の中に絶対者は存在しない』というメッセージと響き合う。

そして本作の中心的な問いは『愛と雷(love and thunder)』の関係である。雷神とは破壊の力を握る存在であり、愛とはその力をどこへ落とすかを決める指針である。ジェーンが命を引き換えにムジョルニアを取り戻す行為、ゴアがエタニティに復讐ではなく娘の蘇生を願う転回、ソーがラブを養女として育てる結末——いずれも『破壊の力を、誰のために使うか』という同じ問いの異なる答えである。本作のタイトルが二者の連結(and)で結ばれているのは、そのためである。

見る順番(補助)

ソー単独シリーズとして観るなら、『マイティ・ソー』(2011)→『ダーク・ワールド』(2013)→『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)→本作の順が公式の流れである。とくに『ダーク・ワールド』のジェーンと『ラグナロク』のヴァルキリー/コーグの紹介を踏まえると、本作の人間関係と感情移入のスピードが格段に上がる。

MCU全体の文脈で観るなら、『アベンジャーズ/エンドゲーム』までを公開順に視聴し、フェーズ4の各作品(『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『エターナルズ』『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』)を経た後に本作を観る方が、ガーディアンズの旅、新アスガルドの定着、マルチバース・サーガの予兆を自然に受け取れる。

  1. 前々作『マイティ・ソー バトルロイヤル』でラグナロクとアスガルド崩壊
  2. 前作『アベンジャーズ/エンドゲーム』でサノス戦終結、ソーがガーディアンズへ
  3. 本作ジェーン・フォスターの帰還とゴアの神殺し、ラブの引き取り
  4. 次作ミッドクレジットで予告されたヘラクレス/ゼウスとの対決へ
前々作:マイティ・ソー バトルロイヤル 前作:アベンジャーズ/エンドゲーム 関連:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 MCU公開順ガイド エンドゲーム後ガイド

よくある質問(補助)

『あらすじだけ知りたい』場合は、ゴアが神を屠るプロローグ、ジェーンがマイティ・ソーとして帰還する中盤、エタニティの門でゴアが娘ラブの蘇生を願って消える結末、ジェーンがヴァルハラへ昇る幕切れを押さえれば十分である。『結末・ネタバレを知りたい』場合は、ジェーンの死、ラブをソーが養女として引き取る選択、ミッドクレジットのゼウスとヘラクレス、ポストクレジットのヘイムダルとヴァルハラまでが核となる。

『評価を知りたい』場合は、ベイルのゴアとポートマンのジェーンが本作の重心であり、Guns N' Rosesに乗ったロックオペラ調と神話悲劇のハイブリッドという狙いを理解の鍵にするとよい。『見る順番』は前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観ておくと、ソーの心情変化の振れ幅が最大化する。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・制作・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Marvel公式 作品ページ
  2. IMDb: Thor: Love and Thunder (2022)
  3. Marvel Cinematic Universe Wiki (Fandom)
  4. ロッテン・トマト
  5. Box Office Mojo: Thor: Love and Thunder

関連ページ

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参照・確認先

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