「俺の友達はみんな死んだ」——ロケットの過去を中心に据え、ジェームズ・ガンが13年にわたるガーディアンズ三部作を完結させたMCUフェーズ5の一作。

基本データ 2023年・ジェームズ・ガン監督

マーベル・スタジオ製作、ディズニー配給。脚本・監督ともにジェームズ・ガンが続投し、彼にとってMCUからの正式な置き土産となった。150分という三部作中もっとも長い上映時間に、ロケットの過去と一行の解散までを描く。

物語上の位置 『エンドゲーム』後・ナウヘア再建期

『アベンジャーズ/エンドゲーム』『ソー:ラブ&サンダー』『ホリデー・スペシャル』を経て、ガーディアンズは買い取ったコレクターの旧拠点ナウヘアを共同体として再建中。物語はそこへ謎の襲撃者が降り立つ場面から始まり、家族としての一行の終止符まで描く。

受賞・評価 シリーズ最高との声・興行8.45億ドル

ロッテン・トマトでは批評・観客とも高評価を獲得し、フェーズ4以降のMCU作品でとくに観客評価が高い一作となった。第96回アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。世界興行は約8.45億ドルでマルチバース・サーガ前半の主力作の一角となった。

この記事の範囲 ロケットの過去と全員の解散まで

アダム・ウォーロックの襲撃、89P13の檻、ライラ/ティーフス/フロアの最期、ハイ・エヴォリューショナリーの正体、オルゴコープ潜入、カウンター・アースの実態、アレーテでの最終決戦、檻の解放、各メンバーの旅立ち、グルートの一言、二つのポストクレジットまで、結末まで踏み込む。

目次 34項目 開く

概要

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(原題:Guardians of the Galaxy Vol. 3)は、ジェームズ・ガンが監督・脚本を務めたアメリカのスーパーヒーロー映画である。2023年5月5日に米国で、5月3日に日本で公開され、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第32作にあたる。シリーズ章立てではフェーズ5に属し、マルチバース・サーガの一本でありながら、内容としてはピーター・クイル一行が宇宙のはみ出し者として旅をしてきた三部作(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『:リミックス』『:VOLUME 3』)の完結編として設計されている。

前作『:リミックス』が「父親(father)」と「お父さん(daddy)」の違いを軸にしたピーター・クイルの自分探しであったのに対し、本作の縦軸はロケットの過去である。ナウヘアに突如降り立った金色の人型存在アダム・ウォーロックの一撃でロケットは瀕死の重傷を負い、彼の体内に埋め込まれた殺害コード——治療を試みた瞬間に作動する自爆装置——が発覚する。仲間がコードを解除するために銀河を駆け回る現在と、ロケット自身の意識の中で蘇る幼少期の記憶(89P13と呼ばれていた頃、檻の中で出会ったライラ、ティーフス、フロアたちとの友情)が交互に編まれ、150分の終盤、ロケットを生み出したハイ・エヴォリューショナリーの正体が物語の中央に据え直される。

監督ジェームズ・ガンは本作の脚本完成後、ディズニーとの間に生じた一連の問題で一度MCUを離れることになり、その後復帰した経緯がある。本作は彼にとってMCUに対する事実上の「置き土産」であり、脚本の自由度は他の同期の作品より明確に大きい。生体実験、虐待、子供と動物の苦痛の正面描写など、これまでのMCUが回避してきた要素が、PG-13の枠内ぎりぎりで踏み込まれている。完結編として、メンバーそれぞれが「次に何になるか」を選ぶ場面まで丁寧に描かれることもまた、シリーズ全体のなかで本作を特異な位置に置いている。

本記事は結末を含む全編の内容に踏み込む。ロケットの仲間たち(ライラ、ティーフス、フロア)の最期、ハイ・エヴォリューショナリーの正体と動機、アダム・ウォーロックの転換、アレーテ船での檻の解放、ガーディアンズの解散と各人の進路、グルートの最後の一言、二つのポストクレジット——シリーズ全体に区切りをつける重大なネタバレを含むため、未見の方はまず本編を鑑賞してから読むことを勧める。

原題
Guardians of the Galaxy Vol. 3
監督
ジェームズ・ガン
脚本
ジェームズ・ガン
音楽
ジョン・マーフィー
撮影
ヘンリー・ブラハム
編集
フレッド・ラスキン/グレッグ・ドーリア
米国公開
2023年5月5日
日本公開
2023年5月3日
上映時間
150分
ジャンル
スーパーヒーロー、スペースオペラ、アクション・コメディ、群像劇、過去物語
シリーズ区分
MCUフェーズ5・三部作完結編

あらすじ

以下は結末までを含む全編のあらすじである。物語は、再建途上のナウヘアにレディオヘッド『Creep』が流れる静かな冒頭から、アダム・ウォーロックの襲撃、ロケットの過去回想と現在を並行する三幕、オルゴコープ潜入、カウンター・アース、アレーテでの最終決戦、ガーディアンズ解散の見送りまでを順に辿る。ロケットの過去を構成する檻の場面は、本編の冒頭・中盤・終盤に分割して挿入され、現在のミッションのトーンと感情を内側から決定づける構造になっている。

ナウヘアと『Creep』——アダム・ウォーロックの襲撃

オープニング、宇宙空間に浮かぶコレクターの旧拠点であった巨大なセレスティアルの頭蓋骨——ナウヘア——を、ロケット(ブラッドリー・クーパー声)が一人歩いている。背景に流れるのはレディオヘッド『Creep』の弱々しいアコースティック・バージョン。賑やかな前作までのトーンとは正反対の、痛みと孤独を真正面から提示する選曲で、本作の主題が誰のためのものかが一発で示される。前作『:リミックス』の Awesome Mix Vol.2 を継いだ Vol.3 にあたるサウンドトラックは、ピーター・クイルではなくロケットの心情と並走するように設計されている。

ピーター・クイル(クリス・プラット)は依然として、エンドゲームで失われた『2014年版』ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)の不在を引きずり、ナウヘアの酒場で泥酔している。2014年からタイムスリップして現代に取り残された彼女はラヴェジャー側へ移っており、ピーターとの記憶を共有していない。チームは、ピーター(艦長)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)、マンティス(ポム・クレメンティエフ)、ネビュラ(カレン・ギラン)、ロケット、そして大きく成長したグルート(ヴィン・ディーゼル声)の構成で、ナウヘアを多種族の共同体として再建する任務に就いている。クラグリン(ショーン・ガン)はヤカ・アローの口笛操作の習得を続けているが、空気犬コスモ(マリア・バカローヴァ声)は彼の練習に冷たい。

そこへ、上空から金色に光る人型存在——アダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)——が高速で降り立ち、無差別にロケットへ襲いかかる。ロケットはアダムの一撃に背中から胸まで貫かれ、致命傷を負ったまま地表に投げ出される。一行は懸命に交戦し、グルートが巨大化してアダムを叩き伏せると、アダムはそのまま撤退する。アダムは前作のポストクレジットでソヴリンのアイーシャ(エリザベス・デビッキ)が試験管で『完成』させた存在であり、彼女がガーディアンズへの復讐とは別の目的でロケット個体の身柄を求めていることだけが現時点では分かる。

倒れたロケットを医務室へ運んだネビュラとマンティスは、応急手当を施そうとした瞬間に致死的な発作を確認する。スキャナーが体内に埋め込まれた小さなデバイスを検出する——殺害コード(killswitch)である。一定の操作で『修理』を試みた瞬間にロケットの全身を内側から焼き切るよう設定されており、解除コードを知らないまま手術に踏み込めば確実に死ぬ。チームはロケットを延命する方法を一つに絞らざるを得なくなる:解除コードの所在をたどり、そこへ赴いて持ち主から強奪することである。

89P13の身元——オルゴコープ侵入

ネビュラがロケットの体内情報を解析した結果、彼に埋め込まれた殺害コードはオルゴコープ(OrgoCorp)という遺伝子工学企業の特許に紐づいていることが分かる。オルゴコープは銀河じゅうの違法生物実験を引き受けてきた巨大バイオ企業で、表向きは合法的な医療コングロマリットの体裁を取っている。ロケットの全身改造に関する記録の原本は、彼らの本社『オルゴ・スフィア』のサーバーに保管されている。

鍵を握る人物として、ピーターはガモーラとの再接触を試みる。2014年版ガモーラは現在、スタカー・オゴード亡き後にスタカルが率いるラヴェジャーの一員となっており、酒癖と荒っぽさが目立つ。ピーターは「君は本物のガモーラだ」と訴えるが、現在の彼女には共有された記憶がない。「私はあんたが愛した女じゃない」というセリフは、彼の一方的なロマンスをすげなく拒絶する一方、本作が二人の関係に明快な復縁を与えないことを早い段階で宣言する。それでもガモーラは、オルゴ・スフィア潜入に必要な内部情報を握っており、義理ではなく取引としてチームに同行する。

潜入計画は、グルート、ロケット(昏睡したまま運搬)、コスモ、ドラックス、マンティス、ネビュラ、クラグリン、ピーター、ガモーラの全員参加で進行する。ピーターはハイテク強化スーツに身を包み、ガモーラと共に内部へ侵入。ガモーラは旧訓練で覚えていた一般職員のIDを使い、ピーターは『何でもバキバキにする』ドラックス節を活用する。コスモは念力で内部の感知システムを撹乱し、ネビュラは外でハッキングを担当する。サーバー部屋にたどり着いたピーターは、ロケットの作成者を特定する『起源タグ』を見つけ出す——『Subject 89P13. Property of The High Evolutionary(被験体89P13。所有者:ハイ・エヴォリューショナリー)』。

潜入は途中で警備に発覚し、ピーターは無重力区画へ放り出される。それでも一行は当該データを抽出し、解除コードそのものではなく、コードを持つ本人——ハイ・エヴォリューショナリー(チュクウディ・イウジ)——の所在へとミッションを切り替える。彼はかつて『神を超える生物』を作ろうとして失敗し続けてきた執着型の科学者で、ロケットはその実験体の一つだったということが、ここで初めて明確になる。

89P13の檻——ライラ、ティーフス、フロア

ロケットの意識下では、半ば現実の延長として、幼少期の記憶が逆向きに走っている。本作は『過去回想』を独立のフラッシュバックではなく、彼が瀕死の意識で再体験する内省として描く。観客はロケットが見ているものを、ロケットと同じ時間で受け取る。

幼いラスカル(後のロケット)は、ハイ・エヴォリューショナリーの実験施設の檻に入れられている。同じ列の檻には、左前腕に車輪のような義肢を持つカワウソの少女ライラ、四本の歯がはみ出した大柄なセイウチのティーフス、片足が義足のウサギ・フロアが入れられている。彼らはハイ・エヴォリューショナリーの『バッチ89』として知能を与えられ、しかし身体は同種族からまったく逸脱した不格好な改造を施されている。

夜、檻の中で四匹は囁き合う。ライラは「私たちはいつか、空のあの星に行くんだよ」と告げ、ロケットに『友達』という概念を教える。彼らはそれぞれ、ハイ・エヴォリューショナリーの『完璧な世界(Counter-Earth/対地球)』に住む『新しい種族』の試作品として作られたが、規格外の不格好な体は『失敗作』として処分される運命にある。それでもライラたちは、檻の中で互いに名前を付け合い、星を見て、語り合うことで、束の間の家族として暮らしている。

後の場面で、四匹は脱走の計画を立てる。ロケットは持ち前の機械いじりの才能で電子錠を解除し、檻を開けることに成功する。しかし出口の手前でハイ・エヴォリューショナリーが現れ、ライラを正面から撃ち抜く。ティーフスとフロアも続けて殺される。ロケットは仲間の死体を目の前にして、初めて『悲しみ』と『憎しみ』を同時に経験する。彼はハイ・エヴォリューショナリーの顔に切りつけて逃げ、その顔の傷は本編現在のハイ・エヴォリューショナリーの頬に今も残っている。

この回想は、現在パートでロケットの意識が落ちる節目ごとに数分単位で挿入され、観客は彼が何を抱えて生きてきたのかをじわじわ知らされる。前作までの『毒舌のしゃべる動物』の正体が、四匹の友達のうち唯一生き残ってしまった『生存者』だったことが、終盤の選択に向けて積み重ねられていく。

カウンター・アース——人型動物の社会

オルゴコープでの追跡情報をもとに、一行はハイ・エヴォリューショナリーの旧拠点『カウンター・アース』にたどり着く。地球によく似た外観の人工惑星で、地上には人型に再構成された動物——犬、ヤギ、豚、牛、爬虫類が二足歩行で生活する『新しい人類』が暮らしている。郊外の住宅街は、観客が見慣れた地球の郊外を逐一似せて再現しており、芝生、車寄せ、屋根裏のある一軒家、家族の写真までが整っている。

ピーターとロケットを家に運び込んだのは、ヤギの中年男に再構成された住人と、その家族である。彼らはガーディアンズの正体を知らず、しかし負傷者を当然のように手当てし、夕食まで分けてくれる。一行はここで、ハイ・エヴォリューショナリーが『完璧な社会』を実験するために、何世代もかけて動物たちを人間の形へ書き換え、田舎町を作り、互いに親切に振る舞うよう調整してきたことを目の当たりにする。

しかし夕食の途中、上空にハイ・エヴォリューショナリーの巨大艦『アレーテ』が現れる。住人の何かが基準値から逸脱したとの判定が下り、ハイ・エヴォリューショナリーは一切の躊躇なくカウンター・アースの地表に対して焼却の指令を出す。家屋、住人、家族、芝生——観客が直前のシーンで親しんだすべてが、上空からの一斉砲撃で焼き払われる。MCUがそれまで踏み込まなかった『罪なき市民が画面上で大量に殺される』正面描写であり、ガンが本作で意図的に踏んだ一線である。

ガーディアンズは命からがら艦から脱出し、夕食を共にしたヤギの家族の生存を一部のみ確保する。ハイ・エヴォリューショナリーは部下のラヴァン・ホー・キール(ガジェット系武人)と、忠誠を失いつつあるアイーシャ&アダム・ウォーロック母子の協力を得て、自らの完成形である『バッチ90』を作るために、ロケットの脳の構造データだけはどうしても回収しようとする。彼にとってロケットは『一度だけ成功した実験体』であり、生体まるごと回収して脳を切り出すことが目的である。

アレーテへの突入と檻の解放

ガーディアンズはハイ・エヴォリューショナリーの旗艦『アレーテ』に正面突入する。船内は、彼が長年実験してきた無数の生物の収容区画と、未完成の『バッチ90』の保育区画が並ぶ巨大な実験施設になっている。中央の透明な培養槽には、人類の幼児にあたる無数の子どもが眠っており、その隣の壁面には実験用に改造された動物たちが檻に詰め込まれている。

ピーターとマンティスは中央区画を制圧しに、ドラックスとガモーラは培養区画の子どもたちを救出するために、ネビュラとロケット(再起動した意識で歩行可能)はハイ・エヴォリューショナリーの本人と直接対峙する道へ別れる。ドラックスは少しずつ、自分が『破壊者』としてだけ生きてきたのではなく、子どもに対しては父親としての反応が自然に出ることを発見していく。培養槽の蓋を割って赤ん坊を抱き上げる彼の手つきは、本作で最も静かで力強いカットの一つである。

ロケットはハイ・エヴォリューショナリーの実験室で、檻の中に並ぶ哀れな改造動物たちを目にする。アライグマ、犬、ウサギ、サルが、毛皮を剥がれ、機械を埋め込まれ、苦痛のうめき声を上げている。観客はここで、ロケットが89P13としてかつて並んでいた檻の現在版を見せられる。ロケットは、これらの動物すべてを生かしたまま船外へ運び出すよう仲間に号令する。

ネビュラとガモーラ、マンティス、ドラックス、クラグリン、コスモ、グルート、ピーターは、檻ごと動物を機外へ放出する大規模解放作戦に切り替える。ドラックスは小さなアライグマの檻を片手で抱え、もう片手で人間の子どもを抱え、両方の重さに迷わず船尾の射出口へ走る。マンティスは廊下に押し寄せる警備兵を共感能力で恐怖と眠気の混在状態に陥らせ、戦闘なしで無力化する。

ロケットとハイ・エヴォリューショナリーの対峙

中枢ブリッジで、ロケットはついに自分を作った男ハイ・エヴォリューショナリーと向き合う。ハイ・エヴォリューショナリーは「私は完璧な世界を造ろうとしただけだ。そのために、お前は通過点として必要だった」と告げる。ロケットは銃を構え、引き金にかけた指がしばらく震える。

重要なのは、ロケットがここで彼を撃ち殺さないという選択をすることである。仲間(ライラ、ティーフス、フロア)の復讐としてなら、彼にはあらゆる正当性がある。しかしロケットは銃を下ろし、ハイ・エヴォリューショナリーに対し『私はあんたが必要だと考えた家族なんかじゃない。ライラのほうが、お前なんかより遥かに人間だった』と告げて去る。本作の最も静かなクライマックスである。撃たなかったロケットを、観客は『過去のロケット』とは違う場所にいる人物として認識する。

ロケットを撃ち殺さなかったロケットの代わりに、ハイ・エヴォリューショナリーへ実質的な終止符を打つのはアダム・ウォーロックでもアイーシャでもなく、暴走した自分自身の艦である。命令系統を失ったアレーテはガーディアンズの破壊行為と彼自身の自暴自棄な指示で炎上崩壊を始め、ハイ・エヴォリューショナリー本人は最後に部下を切り捨て、わずかな手勢とともに退却するか自滅するかの瀬戸際に追い込まれる。映画は彼を画面で処刑するのではなく『負けた相手として残す』という選択をとる。

なお、アダム・ウォーロックは終盤、母アイーシャの真意ともハイ・エヴォリューショナリーの命令とも切り離され、自分の判断で行動を始める。混戦の中で宇宙空間へ放り出されたピーターを救うのは、母から離脱したアダムである。直前まで敵側だったアダムが、最後の一場面で味方の側に立つ転換は、続編における彼の合流を強く予告する。

脱出とコスモの念力

アレーテの自爆寸前、ガーディアンズは数百人の人間の子どもと、無数の改造動物を抱えて脱出区画に集結する。アイーシャの孤立、ハイ・エヴォリューショナリーの放棄、アレーテの炎上が同時進行する中、艦の構造は急速に崩壊しはじめる。

決定打になるのは、ナウヘアから合流したコスモ(マリア・バカローヴァ声)の念力である。彼女は元ソ連の宇宙犬として登場した『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』からの継続キャラクターで、本作で初めてその念力の規模を見せつける。コスモは生存空間ごとアレーテの外殻を浮揚させ、ナウヘアまで運ぶ。クラグリンは『良き犬だ、よくやった』と彼女に声をかけ、二人の前作からの口論じみた関係はここで和らぐ。

ナウヘアに帰還した一行は、運び込んだ子どもたち、改造動物たちを共同体に引き渡す。子どもの一部は、ナウヘアの住人たちが養子として引き取り、動物の中で再社会化可能な者は彼ら自身の意思で残るか去るかを選ぶ。ベイビー版ではなく成体になった改造アライグマたちの『新しいロケットたち』が、ナウヘアの広場でぎこちなく歩く姿は、ロケットが背負ってきた『個別の事故』が、別の星の別の生き方に変換されていく希望のショットになっている。

解散とそれぞれの選択

ナウヘアでの再建を終えた直後、ガーディアンズは互いに長い対話の時間をかけ、各人がこれから何をするかを口に出して決める。ジェームズ・ガンは本作の最後30分を、戦闘ではなく『お別れの言葉』に使い切る。三部作の完結作にして、MCUのほかの作品が滅多に確保しない長さの解散シークエンスである。

ピーター・クイル/スター・ロードはチームを離れ、地球の祖父(グレッグ・ヘンリー)のもとへ向かう。1988年に少年の頃ヨンドゥに誘拐されてから一度も再会していなかった祖父との再会のシーンが、エンドクレジット直前に置かれる。「お前はずっと、私の孫だ」と祖父はピーターに告げ、二人は雪のミズーリの庭で並んで朝食を取る。1988年に時を止めていた彼の心が、ようやくその年から動き出すことが画面で描かれる。

ロケットがガーディアンズの新たな艦長になる。彼はアレーテ脱出後にようやく自分自身を『生かしてもよい存在』として受け入れることができ、ライラの遺した『友達』という概念を、新世代の仲間とともに引き継ぐことを選ぶ。新メンバーは、グルート(最年長の側)、コスモ、クラグリン、フィラ(実験施設で出会った成長系新人類)、そして合流したアダム・ウォーロック。コミック原作の『新生ガーディアンズ』編成への明確な橋渡しである。

ガモーラはピーター・クイルとの関係を再構築するのではなく、自分が今属している場所——スタカル・オゴード亡き後のラヴェジャーを率いる——へ戻る。「私は、ここでの私だ」と彼女は告げる。MCUが珍しく『元の関係に戻さない別れ』を選んだ場面である。ネビュラはナウヘア共同体の指導者として残ることを選ぶ。ドラックスとマンティスは、保護した子どもの父親代わり、別の星で別の使命を見つけたいというマンティスの旅へ、それぞれ別の道で進む。マンティスはエゴ亡き後にようやく『自分のために生きる』選択ができるようになり、最後の場面で『私は私のためにこれを選ぶ』と一行に告げて去る。

そして、ハグの輪の最後で、グルートが初めて明瞭な英語で『I love you guys(みんなのことを愛してる)』と言う。本シリーズで彼がずっと言っていた『I am Groot(私はグルート)』の本当の意味が、最後にやっと観客にも理解可能な形で開示される。ロケットの右肩で『Mr. Blue Sky』ではなく『Dog Days Are Over』(フローレンス・アンド・ザ・マシーン)の弾むビートが始まり、新生ガーディアンズが艦の階段を上がっていく姿で、本編は幕を閉じる。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を、シリーズ完結編としての位置と新生ガーディアンズへの繋がりを意識して分類して示す。初見で全て記憶する必要はなく、後の MCU 作品で再登場した際の参照用に位置づけてほしい。

主要人物

  • ピーター・クイル/スター・ロード
  • ロケット
  • グルート(成体)
  • ガモーラ(2014年版)
  • ネビュラ
  • ドラックス・ザ・デストロイヤー
  • マンティス
  • クラグリン・オブフォンテリ
  • コスモ

ヴィラン

  • ハイ・エヴォリューショナリー
  • アダム・ウォーロック(中盤まで敵側)
  • アイーシャ
  • ラヴァン・ホー・キール
  • オルゴコープ警備部隊

サポート/カメオ

  • スタカル・オゴード(言及)
  • ラヴェジャー新世代の盗賊団
  • ピーターの祖父
  • カウンター・アースのヤギ家族
  • フィラ(実験施設から保護された新人類)
  • アライグマ・テウフェル等の改造動物たち

ロケットの過去の仲間

  • ライラ(カワウソの少女)
  • ティーフス(セイウチ)
  • フロア(ウサギ)
  • 若き89P13

組織

  • ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
  • ハイ・エヴォリューショナリーの実験施設
  • オルゴコープ
  • ソヴリン
  • ラヴェジャー連盟(後継体)
  • ナウヘア共同体

場所

  • ナウヘア(セレスティアル頭蓋骨内部の共同体)
  • オルゴ・スフィア
  • カウンター・アース
  • アレーテ(ハイ・エヴォリューショナリー旗艦)
  • アレーテ内部の檻区画と培養槽
  • 1988年のミズーリ

アイテム・技術

  • 殺害コード(killswitch)
  • 89P13の起源タグ
  • アダム・ウォーロックのコクーン
  • ヤカ・アロー(クラグリン継承)
  • コスモの念力
  • アレーテの培養槽
  • Awesome Mix Vol.3 のカセット
  • 宇宙服一式(前作からの継承)

能力・概念

  • ハイ・エヴォリューショナリーの『完璧主義』
  • 改造動物(バッチ89)
  • 対地球(カウンター・アース)プロジェクト
  • アダム・ウォーロックの未熟さ
  • コスモの念力
  • ロケットの応用工学
  • マンティスの共感能力
  • セレスティアルの遺骸

ポストクレジット要素

  • 新生ガーディアンズの艦長ロケット
  • アダム・ウォーロックの合流
  • ピーターの祖父との地球の朝
  • 『The legendary Star-Lord will return(伝説のスター・ロードは帰ってくる)』のカード

主要登場人物

本作は三部作の完結編として、各メンバーに『この一作で最終的にどう変わったか』を明確に与える。ジェームズ・ガンの演出は、誰一人として序盤と同じ場所では終わらせないという徹底ぶりで貫かれている。

ロケット(ブラッドリー・クーパー声/ショーン・ガン演技)

本作の真の主役。前作までは『毒舌でしゃべるアライグマ』というキャラクター造形が中心だったが、本作で初めて、彼の毒舌が『友達を全員失った生存者の防衛反応』として説明される。仲間ライラ、ティーフス、フロアの存在を観客が知った瞬間、過去シリーズで彼が放ってきた一言一言の意味が、後ろから書き換えられる。

終盤、彼がハイ・エヴォリューショナリーを撃たなかったという選択は、本シリーズ全体のテーマである『家族は選び直せる』の最終回答である。ライラの『あの星に行こう』を、復讐ではなく、新生ガーディアンズの艦長として受け継ぐ。アレーテで救出した動物たち、そしてかつての自分の姿である改造アライグマたちの存在は、ロケットが孤独な突然変異から『同じ仲間がいる種族の一員』へと書き換えられたことを画面で示す。

起点:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 前作:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

ピーター・クイル/スター・ロード(クリス・プラット)

本作のピーターは、エンドゲームで失った2014年版ガモーラの不在を抱え、序盤は泥酔と無気力に沈んでいる。前作までの軽口・選曲・ヨンドゥの継承といった彼の魅力的なアイデンティティは、本作の前半で意図的に剥がされる。

終盤、彼が選んだのはチームを率いる艦長としての復帰ではなく、地球の祖父との再会である。1988年に少年のままヨンドゥに連れ去られた彼の人生は、本作のラストで初めて1988年から先に進む。雪のミズーリの庭で祖父と並ぶ最終ショットは、ガーディアンズというチームが彼を『家族の代用品』ではなく『家族そのもの』として遇したという事実の最終確認でもある。彼はチームを離れることで、初めてガーディアンズが家族だったと言える地点に到達する。

ピーター・クイル/スター・ロードの人物ページ

ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)

本作のガモーラは、『エンドゲーム』でサノスとともに2014年から現代へタイムスリップしてきた個体である。観客がよく知る『ピーターと愛し合った』ガモーラの記憶は彼女のなかには存在せず、現代のラヴェジャーで荒っぽい生き方を選んでいる。

ピーターとの再接続を期待していた観客に対し、ジェームズ・ガンはあえて元の関係への復縁を与えない。「私はあんたが愛した女じゃない」と告げる彼女は、相手のために自分の人生を書き換えることを拒否する。本作のテーマである『家族は選び直せる』が、必ずしも『元のかたちに戻す』ことではないという、もうひとつの解答である。終盤、彼女はラヴェジャーへ戻ることを選び、ガーディアンズには合流しない。

ドラックス、マンティス、ネビュラ(バウティスタ/クレメンティエフ/ギラン)

ドラックスは本作で『破壊者』から『父』へ書き換えられる。培養槽の子どもたちを抱きしめて運び出す彼の手つきは、亡き娘と妻の喪失をようやく別のかたちで埋め直す行為である。マンティスは彼に『あんたは戦士じゃない、お父さんだ』と告げる。本作で最も多く泣いたと述懐する観客が多い一節である。

マンティスは前作で『他人のために生きてきた』背景を持っていたが、本作で初めて『自分のために生きる』を選択する。彼女は終盤、保護した子どものいる星には残らず、別の銀河へ自分の旅を始める。エゴの装置として作られた彼女が、ようやく自分の人生を持つ瞬間である。

ネビュラは本作で誰よりも安定したリーダーとして機能し、ナウヘア共同体の指導者として残ることを選ぶ。サノスの娘として暴力を受け続けた彼女が『場所を治める者』として落ち着くことは、シリーズの初期から積み上げてきた贖罪の終着点である。

ハイ・エヴォリューショナリー(チュクウディ・イウジ)

本作のヴィラン。マーベル・コミックの古参キャラクターで、長い起源は1960年代の『マイティ・ソー』誌にまで遡る。MCU 版のハイ・エヴォリューショナリーは、神を超える完璧な社会を作ろうとし、自分の作った生物が基準値から逸脱した瞬間に焼却するという、自己中心と科学万能主義の結合体として造形される。

彼を演じるチュクウディ・イウジの芝居の手柄は、知性と苛立ちを同居させた表情にある。ハイ・エヴォリューショナリーは観客から見て滑稽なほど自分が正しいと思っており、その滑稽さが恐怖そのものに直結する。子どもや動物に対する暴力を画面で実行することで、観客はこの男に対し、これまでの MCU ヴィランとは違う種類の生理的嫌悪を抱く。終盤、ロケットが彼を撃ち殺さなかったことの倫理的重みは、彼が『撃ち殺すに値する』と観客自身が感じてきたことを前提に成立している。

そしてもう一点重要なのは、ハイ・エヴォリューショナリーが言うところの『完璧な世界』が、本作の冒頭でカウンター・アースとして観客の眼前に提示され、わずか30分後にそれを彼自身が焼き払うという反転構造である。彼にとって作ったものは執着の対象ではなく、修正可能なベータ版の被験体に過ぎない——その姿勢こそ、ロケットが89P13として味わわされたものの再演である。

アダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)

前作のポストクレジットで、ソヴリンの女王アイーシャが造った『完成形』の存在として予告されていた人物。本作では生育を急いだまま戦場へ放り込まれたため、見た目こそ大人だが精神は幼児に近く、戦闘力は規格外、判断力は支離滅裂という不安定な存在として登場する。

本作の終盤、彼は母アイーシャと自分を作った目的のいずれにも縛られず、混戦の中で宇宙空間に放り出されたピーターを救うという独立した判断を下す。これは MCU 系列における彼の最初の倫理的な選択であり、続編の『新生ガーディアンズ』メンバーとしての位置づけの根拠となる。ウィル・ポールターのコメディと不気味さを同居させた芝居は、本作の重い主題のなかで観客に小さな笑いと余白を与える役割も果たす。

舞台と用語

本作の舞台は、再建途上のナウヘア、オルゴコープ本社のオルゴ・スフィア、ハイ・エヴォリューショナリーの人工惑星カウンター・アース、彼の旗艦アレーテ、そしてラストの1988年ミズーリ(および現代の祖父宅)に分けられる。MCU の宇宙パートとしては、前作『:リミックス』『:インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』を支えた銀河の地理に、いよいよシリーズを締めくくる新地点を追加する位置にある。

重要用語は、ハイ・エヴォリューショナリー(神を超える生物を造ろうとする科学者)、バッチ89/90(彼が量産した実験体のロット番号)、カウンター・アース(地球を模した『改良版人類』社会)、オルゴコープ(遺伝子工学企業)、アダム・ウォーロック(ソヴリンが完成させた金色の人型存在)、コスモ(強力な念力を持つロシア宇宙犬)、ナウヘア(セレスティアル頭蓋骨内部の自治共同体)、Awesome Mix Vol.3(ピーターの新たなカセット)。これらは続編の『新生ガーディアンズ』『マーベルズ』以降の MCU で言及・参照される可能性が高いため、本作で意味を押さえておくと後の鑑賞が滑らかになる。

本作の宇宙には、もはや『インフィニティ・ストーン』のスコープは存在しない。物語が独立して見える理由でもあるが、ハイ・エヴォリューショナリーの『完璧主義』とサノスの『均衡主義』は、銀河規模で人類を再設計しようとする支配欲という点で同根である。ロケットが本作で下す『撃たない』選択は、その種類の支配欲そのものに対する答えにもなっている。

ガーディアンズ用語集 MCU基本用語 フェーズの定義

制作

本作の制作はジェームズ・ガンの一時的なディズニー降板、その後のDC側スタジオ社長就任という前例のない経緯を経て進められた。本作はその一連の動きのなかで、ガンにとって MCU からの『置き土産』として位置づけられた一本である。

企画と脚本

ジェームズ・ガンは三部作の構想を最初から持っており、ロケットの過去を中心に据えた完結編の脚本は前作『:リミックス』公開以前から下書きが存在していたとされる。2018年7月、過去のソーシャル投稿を理由にディズニーから一時降板の決定がなされたものの、キャストの強い擁護声明と業界内の世論を受けて翌2019年3月に復帰が公表された。降板期間中にガンはワーナー側で『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』『ピースメイカー』を完成させており、本作はその後で改めて MCU 側に戻って撮影された。

脚本に明示的に置かれた感情のキーは、子供時代のロケット(ラスカル)が檻の中で言う『友達』という概念である。前作『:リミックス』が『父性とは何か』を中心に組み立てられていたのに対し、本作は『友情とは何か』『生かしてよい存在とは何か』を中心に組まれている。ガンは本作のテーマについて『動物虐待というセンシティブな題材を MCU に持ち込んだ理由は、ロケットというキャラクターを最初から最後まで誠実に描くためだけだった』と度々語っている。

キャスティング

ハイ・エヴォリューショナリー役のチュクウディ・イウジは、ガンが『ピースメイカー』のキャスティング過程で出会い、本作にスケールアップさせて起用した俳優である。アダム・ウォーロック役のウィル・ポールターはオーディションを通じて決まり、見た目と精神年齢のギャップを身体で演じる挑戦的な役どころが評価された。

ロケットの幼少期(ラスカル)の声優としてキャストされたのは、別の若手俳優ではなく、ブラッドリー・クーパー本人が声色を変えて演じている。これにより、現在のロケットと幼少期のラスカルが同じ声の延長線上にあることが画面下で常時担保されている。ライラ(リンダ・カデリーニ)、ティーフス(アサド・ヤール)、フロア(ミキ・モンロー)のキャスティングは、ガンが意図して『TV・映画の脇役で広く愛されてきた声』を集めたという経緯がある。

ガモーラのゾーイ・サルダナ、ピーターのクリス・プラット、ドラックスのデイヴ・バウティスタ、マンティスのポム・クレメンティエフ、ネビュラのカレン・ギラン、グルートのヴィン・ディーゼル、ロケットのブラッドリー・クーパー、クラグリンのショーン・ガン、コスモのマリア・バカローヴァといった三部作の主要キャストは全員続投。バウティスタとプラットはそれぞれ、本作をもってこれらの役柄を一区切りとする意向を公にも発表している。

撮影

撮影はヘンリー・ブラハム(前作・前々作に続き三作連続)が担当した。本作はマーベル・スタジオ作品としては Red V-Raptor 8K VV カメラで全編が撮影された最初期の作品である。ロケットの過去回想の檻シーンは、現在パートと色温度を意図的に大きく変え、暖色寄りの黄色を強くした照明で、童話のような苦さを画面に与えている。

撮影は2021年11月から2022年5月にかけて、米国アトランタ近郊の Trilith Studios で行われた。カウンター・アースの郊外住宅は、ハイ・エヴォリューショナリーの『完璧な世界』を観客に違和感なく信じさせる必要があったため、ロケーション撮影に近い実寸住宅セットを建設している。アレーテの内部の檻区画は、当該区画の最終的な空撮までを意識した広い面積のセットとして組まれた。

視覚効果

視覚効果は Framestore、Weta FX、Sony Pictures Imageworks、ILM、Wylie Co.、DNEG、Method Studios ほか多数のスタジオが分担した。ロケットの体毛のシミュレーション、改造動物たちの毛皮・皮膚・目の感情表現、アダム・ウォーロックの金色の人型描写、カウンター・アース上空の砲撃シーケンス、アレーテ内部の浮揚と崩壊シーンが、本作で特に技術的に高く評価された。

改造動物群の表現については、ガンが当初から『リアルすぎる動物虐待にならないラインを慎重に取る』方針を示した。動物の苦痛は明確に描かれるが、観客に過度な拷問描写を見せず、むしろ動物の目の感情で痛みを伝えるという方針が VFX 各社の作業基準として共有された。第96回アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされ、ロケットの過去キャストの実体造形が高く評価された。

音楽とAwesome Mix Vol. 3

劇伴音楽はタイラー・ベイツに代わりジョン・マーフィー(『28日後』『サンシャイン2057』ほか)が担当した。三部作で初めてコンポーザーが交代した形である。ジョン・マーフィーは現在パートの宇宙的スケールと、ロケット過去回想の童話的な弱々しさを使い分けるアプローチを取った。

挿入歌のサウンドトラック・アルバム『Awesome Mix Vol. 3』は、これまでの『70年代〜80年代』縛りから外し、レディオヘッド『Creep』、ビースティ・ボーイズ『No Sleep Till Brooklyn』、ハートのジョン・ライヴァス『Crazy on You』、フェイスズ『Ooh La La』、フローレンス・アンド・ザ・マシーン『Dog Days Are Over』、スパイス・ガールズ『Spice Up Your Life』など、より広い年代の楽曲を含めている。これは『ピーターの母メレディスのカセットを継いだ』という前作までの設定ではなく、ピーター自身が新たに作ったプレイリストという物語上の位置づけが反映されている。

象徴的に使用されるのは、冒頭ナウヘアでの『Creep』、オープニング戦闘のスパイス・ガールズ、ロケット手術ロックの『In the Meantime』、ラスト解散シーンの『Dog Days Are Over』。葬儀的でも勝利的でもない、『次の朝が来た』に近い感触のラストである。

編集と尺

編集はフレッド・ラスキンとグレッグ・ドーリアが担当。本編の最終上映時間は150分で、三部作中最長である。ガンは本作のラフカットを当初『3時間近かった』と公の場で述べており、削除された場面はカウンター・アースの市民描写、アレーテ突入直前のチーム内の対話シーンの一部、エンドクレジット直前のピーター・祖父シーンの長尺版だったとされる。

本作の編集は、ロケットの過去回想を独立した長尺フラッシュバックとせず、現在パートに数分単位で挿入するという構造を採用した。これにより観客は、ロケットが現在直面しているハイ・エヴォリューショナリーへの感情と、過去に失った仲間に対する罪悪感を、同時に体験することになる。三部作の感情的な負荷を最も大きく受ける編集設計である。

公開と興行

本作は2023年4月22日にロサンゼルスのドルビー・シアターでワールド・プレミアを迎え、4月末から欧州・アジアで段階的に公開、米国・日本は5月の連休帯に劇場公開された。北米のオープニング3日間は約1.18億ドル、世界初週末は約2.83億ドルを記録し、フェーズ4・フェーズ5前半の興収傾向を一段押し戻すスタートを切った。

最終的な世界興行収入は約8.45億ドルに達した。マルチバース・サーガ前半のなかで興収面でも観客評価面でも明確な高水準を維持し、観客評価(CinemaScore、PostTrak)はフェーズ4以降の MCU 作品で最上位クラスを記録した。日本国内では公開後数週にわたって週末興行上位を維持し、最終的に約36億円の興収を上げている。

第96回アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた(受賞は『哀れなるものたち』)。サターン賞では最優秀コミック原作映画賞、ヒューゴー賞では長編映像作品部門ノミネートを獲得した。Awesome Mix Vol. 3 サウンドトラックは Billboard 200 にチャートインし、リリース週には全米トップクラスのセールスを記録した。

ポストクレジット要素

本作は MCU としては珍しく、ポストクレジットを多数並べる前作とは対照的に、二つだけに絞った構成を取っている。それぞれが本作の主題および続編への伏線を最小限の言葉で示している。

ポストクレジット一覧

  • ①ミッドクレジット:新生ガーディアンズの艦長として再構成されたロケットが、グルート、コスモ、クラグリン、フィラ、アダム・ウォーロックと共に『I Will Survive』(旧ガンプレイリスト由来)に合わせて任務へ向かう短いシーン。本シリーズが宇宙の盗賊団から正式なヒーローチームへと書き換えられたことの宣言である。
  • ②ポストクレジット:地球の祖父宅でピーター・クイルが朝食を取り、祖父と並んで新聞を読む静かなショット。1988年に時を止めていた彼の人生が、ようやくその先へ進んだことを画面で確認する。続いて『The legendary Star-Lord will return(伝説のスター・ロードは帰ってくる)』のカードが入り、ピーター個別の続編可能性を公式に予告する。

批評・評価・文化的影響

本作は、フェーズ4以降のMCUが直面していた『観客との温度差』を一段押し戻す転換点として位置づけられた。批評は前作よりも一段強い支持を示し、特に『ロケットの過去を主役に据えた完結編』としての完成度が、続編もの全体の基準点として再評価された。

他方、批評の論点は、動物虐待の正面描写がPG-13の枠内ぎりぎりであり親子鑑賞に対しては別途の判断が必要であるという指摘、150分という上映時間の長さ、ハイ・エヴォリューショナリーがやや一面的な悪役として描かれているとの意見が挙げられた。これらは作品の倫理的重さに対する『重すぎる』『重さに見合うだけの完成度がある』という二分された反応として残った。

文化的影響としては、『ロケット』というキャラクターが MCU で最も愛されたキャラクターの一人として確定したこと、『動物実験』『虐待』というシリアスな主題をスーパーヒーロー映画の本筋に持ち込む試みが今後の本数の指標になったこと、そして三部作完結作として『チームを解散させてもよい』という選択肢を MCU が示したことの三点が大きい。ジェームズ・ガンが直後にDCスタジオの共同代表に就任したこともあり、本作は彼の MCU 期の事実上の最終作として記憶されている。

舞台裏とトリビア

幼少期のロケット(ラスカル)の声を、ブラッドリー・クーパー本人が現役のロケットと地続きの声色で演じている。当初は若手俳優を別途キャストする案もあったが、ガンが『ロケットの過去と現在が同じ存在であることを観客の耳で担保したい』と申し入れ、最終的にクーパー本人の演じ分けに統一された。

カウンター・アースの郊外住宅の小道具は、米国の中西部郊外を再現するために、米国産の家庭用品ブランドを実際に取り寄せて並べたとされる。冷蔵庫の磁石、車寄せの自転車、家族写真の額縁といった細部は、上空からの砲撃の前後で観客に『失われたものの具体性』を感じさせるために、意図的に密度高く配置された。

アレーテで救出された改造アライグマたちの群れは、終盤のナウヘア帰還のシーンで一斉に二足歩行する。これはロケット個体のクローンや双子ではなく、同じハイ・エヴォリューショナリーが量産した『同種の被験体たち』である。ロケットの孤独が、本作の最後に初めて『同じ種類の仲間』を得るという密かな救済として配置されている。

アダム・ウォーロック演じるウィル・ポールターは、本作出演にあたって筋肉の増量、頭部脱色、ボディスーツによる金色の表皮表現を含む大規模な肉体改造を経ている。彼が本作の中盤までほぼ無言で行動し、終盤で初めて他者を助けるという演技プランは、ガンの脚本指示によるものである。

葬儀的セレモニーを行わないことも本作の選択である。前作『:リミックス』のヨンドゥ葬儀に対して、本作ではガーディアンズが互いに『お別れの言葉』を生きたまま伝える時間を最後の30分に充てる。死による別れではなく、生きたままの選択による別れというトーンが、シリーズの締めくくり方を決定づけた。

テーマと解釈

本作の中核は『友達とは何か』である。第1作で『寄せ集めのはみ出し者』として出会い、第2作で『父親とお父さんは別だ』と告げて家族になった一行は、本作で『友達』というもう一段親密な関係に書き換えられる。ライラがラスカルに教えたのは家族でも父親でもなく『友達(friend)』であり、そこから生まれる『私たちはいつかあの星に行く』という願いが、本作のすべての行動を裏打ちしている。

もう一つの主題は『生かしてもよい命とは誰が決めるのか』である。ハイ・エヴォリューショナリーは『完璧でないものは焼く』と宣言し、それを実行する。ロケットは『友達を全員失った生存者』として、その同じ世界観のなかをかろうじて生きてきた。終盤、彼がハイ・エヴォリューショナリーを撃たないという選択をすることで、本作は『生かしてもよい命を決めるのは作った側ではなく、生きている側だ』という回答を提示する。

三つ目の主題は『別れと続行』である。MCUの他作品の多くがメンバーの死や和解を中心に置くのに対し、本作は『元の関係に戻さない』ことを最終形態として選ぶ。ピーターは地球へ、ガモーラはラヴェジャーへ、マンティスは自分の旅へ、ドラックスとネビュラはナウヘアへ、ロケット・グルート・コスモ・クラグリン・アダムは新生ガーディアンズへ。同じ家族でいることが正解ではない、それぞれが自分の選びたい場所へ行くこと自体がチームの成功であるという、シリーズ全体に区切りをつけるための主題である。

見る順番(補助)

本作はガーディアンズ三部作の完結編であり、必要な前提は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)、『:リミックス』(2017)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』である。さらに2022年配信の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル』を見ておくと、コスモ、ナウヘア共同体、ピーターの祖父の存在感を完全に把握できる。

本作の後については、MCUがピーター・クイル個別の続編可能性を予告しているため、それを待ちながら、関連の人物が登場するであろう将来作品で再会する位置づけになる。ジェームズ・ガンによるシリーズの監督復帰の予定は本作の時点では未定であり、本作をシリーズの一区切りとして鑑賞することが推奨される。

  1. 第1作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)でメンバーが集結し、ロナンを退ける
  2. 第2作『:リミックス』でピーターが父エゴの正体を知り、ヨンドゥが犠牲となる
  3. 合流『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』でサノスとの宿命の対決
  4. 前段『ホリデー・スペシャル』でナウヘアとコスモが定着する
  5. 本作ロケットの過去とハイ・エヴォリューショナリー、一行の解散
起点:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 前作:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 合流:アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 結末合流:アベンジャーズ/エンドゲーム 外伝:ソー:ラブ&サンダー ガーディアンズ視聴順ガイド MCU時系列順 MCU公開順

よくある質問(補助)

「あらすじだけ知りたい」場合は、ナウヘア襲撃→殺害コード発覚→オルゴコープ潜入→カウンター・アース焼却→アレーテ突入→ロケットの撃たない選択→改造動物と子どもの解放→解散と各人の選択、という骨格を押さえれば十分である。「結末・ネタバレを知りたい」場合は、ライラ・ティーフス・フロアがハイ・エヴォリューショナリーに殺されたこと、ロケットがハイ・エヴォリューショナリーを撃たない選択をすること、ピーターが地球の祖父のもとへ帰ること、ロケットが新生ガーディアンズの艦長になること——この四点が核となる。

「初めて観る」場合の最低限は、前作『:リミックス』までと『エンドゲーム』の鑑賞である。本作のガモーラが現代の彼女ではない理由は『エンドゲーム』に直結しており、これを飛ばすと冒頭からの彼女の冷たさが伝わらない。可能であれば『ホリデー・スペシャル』も追加で見ておくと、コスモとナウヘア共同体の存在感が完全になる。

「動物の描写は子どもと一緒に観て大丈夫か」については、PG-13 の枠内ではあるが、動物実験・檻・手術・殺害の正面描写が含まれるため、低年齢層の鑑賞は保護者の判断を強く勧める。本作は MCU のなかでも倫理的な重さを正面から扱う一本である。

参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、各種権利はそれぞれの権利者に帰属する。公開年・興行・受賞・配信状況・外部評価は変動しうるため、視聴前に公式および各データベースの最新表示を確認されたい。本記事の本文は各種公開情報をもとに、Anna Movies 用の独自の日本語文章として構成している。

  1. Marvel公式 Guardians of the Galaxy Volume 3
  2. Marvel Cinematic Universe Wiki: Guardians of the Galaxy Vol. 3
  3. IMDb: Guardians of the Galaxy Vol. 3 (2023)
  4. Box Office Mojo: Guardians of the Galaxy Vol. 3
  5. Rotten Tomatoes: Guardians of the Galaxy Vol. 3

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参照・確認先

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