物語 / 単行本
HUNTER×HUNTER 第25巻
漫画『HUNTER×HUNTER』第25巻「突入」を解説。王宮突入の初動、龍星群、ネテロとピトー、ユピー戦、コムギを抱く王までを収録順に整理する。
第25巻「突入」はNo.261からNo.270を収録し、2008年3月4日に発売された。東ゴルトー王宮へ討伐隊が入る数秒間を細かく分解し、各員の判断と護衛軍の反応を並行して描く。
龍星群による予定外の損傷、ユピーによる分断、コムギを抱いたメルエムの変化が、侵入前の計画を順に書き換える。作戦は開始直後から、想定通りに進む部分と即興へ切り替える部分へ分かれる。

No.261からNo.270を収録する単行本第25巻の書影 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

突入直後に対峙するネテロとピトー 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

宮殿中央階段を破壊するユピー 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

コムギの治療をピトーへ託すメルエム 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

ユピーの攻撃を避けながら戦うシュート 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博
基本情報
| 媒体 | 漫画単行本 |
|---|---|
| 巻数 | 第25巻 |
| 巻題 | 突入 |
| 収録話 | No.261〜No.270 |
| 発売日 | 2008年3月4日 |
午前零時の突入
討伐隊は午前零時を合図にノヴの四次元マンションから王宮へ出る。ゴン、キルア、ナックル、シュート、モラウ、メレオロン、イカルゴが役割別に動く。
侵入前の作戦は王と三護衛を分断し、各担当が限られた時間を稼ぐことにある。全員で一体を集中攻撃する計画ではない。
入口に出た瞬間、中央階段のユピーが想定外の位置にいる。作戦開始と同時に、担当へ着く前の障害へ対処しなければならない。
空から降る龍星群
ネテロとゼノは龍頭戯画で上空から接近し、ゼノが龍星群を王宮全体へ降らせる。地上班とは別経路で王へ近づく。
無数のオーラの龍は建物を貫き、護衛軍の注意と配置を崩す。一方、人間側にも着弾位置を完全共有できない攻撃である。
ピトーとプフは巨大な龍を感知し、地上の侵入者より先に上空へ意識を向ける。奇襲は敵の視線を分ける効果を持つ。
ピトーを弾いた百式観音
ピトーは空中のネテロへ向かい、黒子舞想で身体能力を最大限に引き出す。王へ接近する敵を先に落とそうとする反応である。
ネテロは百式観音でピトーを遠方へ弾き飛ばす。祈りから攻撃までが極端に速く、ピトーが認識しても回避へ移る前に打撃が届く。
護衛軍を倒したのではなく、王から離す初動である。ピトーが帰還できる時間を作るため、完全な排除と同じ成功にはならない。
一日一万回の感謝
ネテロの速さは、山中で一日一万回の感謝の正拳突きを続けた修行へさかのぼる。拳、祈り、構えを毎日反復した。
当初は一日を使い切った動作が、年を重ねるうち日没前に終わる。余った時間に祈るようになり、突きは音を置き去りにする。
百式観音は突然得た必殺技ではない。肉体の全盛を越えた後も残る、動作と感謝を分離できないほど繰り返した結果である。
中央階段のユピー
地上班は中央階段でユピーと対面し、護衛軍を予定位置へ誘導する前に戦闘へ入る。ユピーは王のいる二階への入口を守る。
メレオロンは神の共犯者でナックルの存在を消し、最初の一撃を当てる。ハコワレを付ければ、直接倒せなくても利息で絶へ近づけられる。
しかし息を止められる時間には限界がある。見えない攻撃を一度成功させても、ナックルが逃げ、再接近する手段が必要になる。
恐怖で止まる数秒
ピトーの円と龍星群の圧力に触れ、討伐隊の身体は一瞬止まる。訓練していた者にも護衛軍のオーラは判断を遅らせる。
数秒の停止は作戦全体では短く見えるが、ユピーの攻撃範囲では致命的になる。シュートは自分の恐怖を抱えたまま前へ出る。
ゴンはピトーへ向かう目的を失わず、キルアは周囲の敵と仲間の動線を読む。同じ圧力を受けても、担当によって次の行動は異なる。
階段を壊したユピー
ユピーは身体を変形させ、中央階段そのものを破壊する。侵入者を倒すだけでなく、二階へ続く共通経路を消す。
討伐隊は落下と瓦礫で分断され、事前に決めた組合せを維持できなくなる。場所を守る護衛軍にとって、地形破壊は有効な防衛になる。
シュートが正面へ残り、ナックルとモラウが別角度から機会を作る。担当外の状況でも、互いの能力が続く配置へ即座に組み替える。
コムギを傷つけた予定外
龍星群の一撃は王宮内のコムギへ当たり、重傷を負わせる。討伐隊は彼女の存在も、王にとっての価値も作戦前に把握していない。
メルエムは負傷したコムギを抱き、到着したピトーへ治療を命じる。人間を餌として扱っていた王が、一人の生命を優先する。
ネテロとゼノはその姿を見て、王の行動が予想した怪物像と一致しないと知る。敵を理解する前提が着地直後に揺らぐ。
戦場を移す王
メルエムはコムギの治療を確保した後、ネテロとゼノへ別の場所で戦うと告げる。王宮内での戦闘が治療を妨げる事態を避ける。
ピトーを治療へ固定できれば、人間側は護衛軍を一体戦線から外せる。しかしゴンにとっては、カイトの仇が目の前で別の人間を治す状況になる。
王が自ら移動を受け入れることで、ネテロは護衛軍から切り離した決闘へ進める。奇襲の目的は、予想外の理由から部分的に成立する。
イカルゴへ返された貸し
キルアはイカルゴの進路にいる二体の兵隊蟻をヨーヨーで倒す。フラッタに化けた潜入が見破られないよう、声を上げる前に排除する。
攻撃をウェルフィンに目撃され、完全な隠密にはならない。それでもイカルゴ本人は通過でき、地下の任務を続ける。
イカルゴは礼を長く述べず、キルアへ貸し一つと返す。その言葉がキルアの意識を任務へ戻し、ゴンへの不安だけに留まる時間を切る。
突入直後に崩れた前提
侵入地点、護衛軍の配置、王の心理、非戦闘員の存在は、どれも完全には予測できなかった。作戦は失敗か成功かの二択ではなく、部分ごとに更新される。
龍星群は敵の配置を崩す一方、コムギを傷つける。味方の大技が有利だけを生むのではなく、新しい交渉条件と罪悪感を作る。
ネテロの百式観音はピトーへ命中しても倒し切らない。初撃の圧倒的な速さと、護衛軍の耐久力を分けて評価する必要がある。
ナックルのハコワレも一撃でユピーを無力化しない。時間を稼いで利息を増やす能力のため、シュートとモラウの継戦が発動後の条件になる。
シュートは恐怖を消してから戦ったのではない。逃げたい身体を抱えたまま、仲間が役割へ移れる時間を作るため前へ出る。
モラウはユピーを引き付けてナックルへ打撃機会を渡し、その後パイプを持ってプフ戦へ移る。一本の武器が複数担当の継続に必要になる。
プフは王の変化を自分の失敗と考え、玉座の間で泣き笑う。コムギを大切にする王を守ることと、理想の王へ戻すことが本人の中で衝突する。
モラウは煙の牢でプフを囲み、王へ戻る経路を断つ。倒すことより隔離する時間が、ネテロの分断作戦へ直結する。
ゴンは王と老人二人を見ても追わず、ネテロの指示したピトーの方角へ向かう。討伐対象の中心より、カイトへつながる個人的な目的を優先する。
キルアはゴンの感情を理解しながら、周辺の兵隊と仲間を処理する。二人が同じ場所へ向かっても、見ている危険と役割は同じではない。
メルエムがコムギを抱く姿は、人間側へ和平を約束するものではない。一人への配慮と、人類全体への選別計画はこの時点で併存する。
ゼノは依頼で王を分離するため来たが、無関係な少女を傷つけた結果へ動揺する。暗殺者でも、依頼対象外の負傷を同じ結果として無視しない。
ピトーは王の命令に従い、敵の前で治療へ集中する。護衛軍の戦闘力を封じる状況でも、王の望みを優先する忠誠がある。
第25巻は数秒を長く描くことで、誰かが迷った間にも別の場所で攻防が進む事実を示す。時系列を戻さなければ同時行動の因果を見失う。
巻末時点で王の分離は進むが、ユピーとプフの戦いは続き、ゴンは治療中のピトーへ向かう。初動の成果がそのまま討伐完了にはならない。
巻題の突入は入口を越えた一度の動作ではない。計画から外れた現実へ各員が入り込み、担当を保つため判断を連続して更新する段階を指す。
突入直後の分断と時間差
討伐隊が宮殿へ入る瞬間、ゼノの龍星群は味方にも事前共有されていない。上空からの攻撃で護衛軍の注意を散らす効果がある一方、コムギを負傷させ、王の行動を計画外の方向へ変える。作戦上の援護と民間人への被害が同じ一撃から生じる。
ネテロがピトーを遠方へ弾き飛ばした場面は、護衛軍を王から離すという突入の目的に沿う。しかしピトーは即座に能力で軌道を変え、宮殿へ戻ろうとする。排除の成功は距離を作った時点で完了せず、復帰までの時間をどう使うかに移る。
階段付近のユピーに対し、ナックルの天上不知唯我独損は即死攻撃ではない。貸し付けたオーラと利息を積み上げ、破産まで持ち込む長期戦の能力である。正面から注意を引くシュートの負担が大きく、時間を稼ぐ役割が戦況を支える。
王がピトーへコムギの治療を命じたことで、ゴンが求めるカイトの治療は後回しになる。ゴンは護衛軍への敵意を持ちながら、目の前の負傷者を治す行為を妨げられない。ここで戦闘と交渉の境界が生まれる。
第25巻の突入は、全員が同じ敵へ進む総力戦ではない。王を移動させる者、護衛軍を分断する者、階段を維持する者、潜入した仲間を救う者が別々に動く。数秒の遅れが別の場所の生死へ波及する構成である。
HUNTER×HUNTER 第25巻が残したもの
第25巻は、王宮突入の数秒間に生じた分断、恐怖、誤算を各人物の視点から描く巻である。
龍星群は護衛軍を動かす一方でコムギを傷つけ、王の人間への態度を討伐側へ見せる。計画外の負傷が王の分離を実現させる。
ユピー戦、プフの隔離、ピトーの治療は未決着のまま続く。侵入成功は、各担当が時間を稼ぎ続ける次の局面へ移る。