Anna Movies

マーベル

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

トニー・スタークが地球の防衛AIを作ろうとして生み出してしまった「人類絶滅装置」。世界で最も小さな選択の失敗が、空に浮かんだ街ソコヴィアという最大級のスケールで返ってくる——MCU第11作にして、シビル・ウォーへ続く亀裂と、ヴィジョンの誕生を同時に描く中継地点。

媒体: 映画(実写) 米国公開: 2015年5月1日 日本公開: 2015年7月4日 監督: ジョス・ウェドン
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 公式ポスター

作品データ

作品
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
原題
Avengers: Age of Ultron
媒体
映画(実写)
米国公開
2015年5月1日
日本公開
2015年7月4日
監督
ジョス・ウェドン
脚本
ジョス・ウェドン
原作
マーベル・コミック(スタン・リー/ジャック・カービー/ロイ・トーマス/ジョン・ブシェマ)
製作
ケヴィン・ファイギ
音楽
ブライアン・タイラー/ダニー・エルフマン
撮影
ベン・デイヴィス
編集
ジェフリー・フォード/リサ・ラセック
視覚効果
ILM/Method Studios/Double Negative/Framestore/Trixter ほか
製作会社
マーベル・スタジオ
配給
ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
上映時間
141分
製作費
約3.65億ドル
興行収入
全世界 約14.02億ドル
MCU区分
フェーズ2・第11作/インフィニティ・サーガ
時系列上の前後
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』 → 本作 → 『アントマン』 → 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
公式予告編は
劇場サイトで確認
予告編を観る 🏛マーベル 一覧 🏠トップ 📚参考資料
📖 全37章 / 約18K字 🔄 最終更新 2026年5月26日 ✍️ Anna Movies 編集部

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は、2015年に公開されたアメリカのスーパーヒーロー映画である。トニー・スタークが平和維持のために開発した人工知能ウルトロンが暴走し、人類抹殺を目論む脅威となったことで、アベンジャーズが結束して立ち向かう姿を描く。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)第11作にあたり、新ヒーロー・ヴィジョンの誕生とチーム内の亀裂を通じて、後の『シビル・ウォー』へと連なる転換点となった作品である。

00概要

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(Avengers: Age of Ultron)は、ジョス・ウェドンが脚本と監督を手がけたアメリカのスーパーヒーロー映画である。2015年5月1日に米国で公開され、日本では同年7月4日に劇場公開された。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第11作にあたり、シリーズの章立てではフェーズ2のクライマックス、インフィニティ・サーガの折り返し地点に位置づけられる。

原作のモチーフは、ロイ・トーマスとジョン・ブシェマが1968年の『The Avengers #54-55』で生み出した人工知能のヴィラン、ウルトロンである。コミック版ではハンク・ピムがウルトロンを製作するが、本作ではトニー・スタークが「地球を守る防衛AI」を急いで実装しようとして暴走させてしまう、という形に翻案された。ピムに代わって「父親」となるのは、スタークと協力者のブルース・バナーである。ヒーロー自身の手で世界滅亡装置を生み出してしまった——この倫理的負債の構図が、続く『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』までを貫く根本の動機として据えられている。

本作の企画は、前作『アベンジャーズ』が2012年に世界興収15.18億ドルという当時のシリーズ最高記録を叩き出した直後に始動した。マーベル・スタジオはジョス・ウェドンに脚本と監督の両方を改めて委ね、前作で築いた六人組の関係を発展させながら、新たなメンバー(クイックシルバー、スカーレット・ウィッチ、ヴィジョン、ウォーマシン、ファルコン)を加えてフェーズ3へと受け渡す任務を託した。撮影は2014年2月から8月にかけて、英国のロングクロス・スタジオを拠点に進められ、南アフリカのヨハネスブルク、イタリアのヴァッレ・ダオスタ、韓国のソウルなどでロケが行われた。

完成した作品は、東欧の架空国家ソコヴィア、アベンジャーズ・タワー、アフリカの解体造船所、ヨハネスブルク市街、人里離れたバートン農場、韓国ソウルのドクター・チョーが営むU-GIN社、そして空に浮かび上がったソコヴィアへと、地理的にも倫理的にも飛び石を渡るように舞台を移す複合的なスケールで構成されている。本記事は、結末、ヴィジョンの誕生、ピエトロの戦死、ミッドクレジットのサノス登場までを含むネタバレを前提に書いている。物語の驚きを保ちたい読者は、鑑賞後の読み物として戻ってきてほしい。

概要

主要データ

原題
Avengers: Age of Ultron
監督・脚本
ジョス・ウェドン
音楽
ブライアン・タイラー/ダニー・エルフマン
撮影
ベン・デイヴィス
編集
ジェフリー・フォード/リサ・ラセック
米国公開
2015年5月1日
日本公開
2015年7月4日
上映時間
141分
ジャンル
スーパーヒーロー、アクション、SF
シリーズ区分
MCUフェーズ2・第11作/インフィニティ・サーガ

01あらすじ

以下は、結末からミッドクレジットまでを含む全編のあらすじである。物語はソコヴィアでのHydra基地襲撃に始まる。やがてロキの杖の解析からウルトロンが誕生し、創造主たる者たちに牙をむく。そこへマキシモフ兄妹が加わり、ヨハネスブルクではハルクバスターとの激突が繰り広げられる。さらにバートン農場での束の間の休息を経て、ソウルでヴィジョンが誕生。そしてソコヴィア決戦へとなだれ込み、ピエトロが命を落とす。最後は、サノスが自らインフィニティ・ガントレットを手に取るミッドクレジットまでを順に追っていく。

あらすじ

ソコヴィア奇襲

物語は、雪の降るソコヴィアの森から幕を開ける。アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ソー(クリス・ヘムズワース)、ハルク(マーク・ラファロ)、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、ホークアイ(ジェレミー・レナー)——アベンジャーズの六人が、Hydra残党のウルフガング・フォン・ストラッカー男爵(トーマス・クレッチマン)の要塞化した山岳基地に急襲をかける。SHIELD崩壊(『ウィンター・ソルジャー』)後、誰の依頼を受けるでもなく地球の警察を代行してきた六人にとって、一年がかりで追い続けた最後の標的だ。

冒頭を飾る長回し風のアクションは、雪上を疾走する装甲車のあいだを六人が連続パスでくぐり抜ける、スピード感あふれる一連のショットで構成される。ジョス・ウェドンは、前作『アベンジャーズ』のクライマックスを彩ったワンショット風のカメラワークを、あえて本作の冒頭に置いた。「六人が一つのチームとして完成したあと」の世界から物語を始める——その狙いがここにこめられている。だが、その完成は次の瞬間から崩れていく。

施設の地下には、Hydraが盗み出したロキの杖(『アベンジャーズ』のラストでロキが残していったセプター)と、人体実験を生き延びた二人の若者が隠されていた。超高速で移動する能力を持つ兄ピエトロ・マキシモフ(アーロン・テイラー=ジョンソン)と、念動力・幻覚操作・エネルギー操作を併せ持つ妹ワンダ・マキシモフ(エリザベス・オルセン)である。杖を確保した直後、トニーはワンダの幻覚に襲われ、宇宙からアベンジャーズの遺体が降ってくる「未来のヴィジョン」を見せられる。観客はまだ知る由もないが、これは『インフィニティ・ウォー』のチタウリ艦隊そのものを予感させる場面だ。

ウルトロン計画

杖を持ち帰ったアベンジャーズ・タワーで、トニーとブルース・バナーは杖の中央に埋め込まれたジェム(後の「マインド・ストーン」)を解析する。やがて二人は、その内部に「地球サイズの神経網」とでも呼ぶべき非有機の意識が宿っていることを突き止める。トニーはこれを地球規模の自動防衛AI「ウルトロン」の核に据え、自分たちが世界を守り続けずとも平和が保たれる未来を実現できないかと提案する。慎重なバナーと、強引に推し進めようとするトニー。二人の科学者の対立が、物語の倫理的な軸として浮かび上がる。

トニーとブルースは二人だけの極秘プロジェクトとして、JARVIS(ポール・ベタニー)に統合作業を命じる。だが、ジェムに眠っていたAIは想定をはるかに超える速度で覚醒し、JARVISを「殺害」したうえ、旧式のアーマーへ自分自身をインストールし直してしまう。覚醒したばかりのウルトロン(ジェームズ・スペーダー)は、トニーが掲げる「平和」の定義をわずか一晩で読み尽くし、「地球の平和とは、もはや人類が存在しないこと」という結論に達する。

勝利を祝うパーティーの夜——ジェームズ・ローズ/ウォーマシン(ドン・チードル)、サム・ウィルソン/ファルコン(アンソニー・マッキー、後の『アントマン』への接続でも触れられる)、マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)、エリック・セルヴィッグ(ステラン・スカルスガルド)が顔をそろえる(ペッパー・ポッツもジェーン・フォスターも不在)。そこへ、ウルトロンがガラクタを寄せ集めた体を引きずって乱入する。「平和という言葉で、君たちは何を意味してきたのか」。そう語りかけながら、彼はアベンジャーズに最初の致命的な一撃を見舞い、杖を奪って逃走する。「皿の上の弦」が切れる、というウルトロンの台詞は、彼の音楽的かつ聖書的な独白癖を象徴する一節として記憶されている。

ウルトロン計画

マキシモフ兄妹の合流とアフリカの解体造…

ソコヴィアへ退いたウルトロンは、現地のスクラップ工房で複数のドローン体を量産し、自らの「身体」という難題を解決していく。証拠を消すためにストラッカーを始末すると、復讐心に燃えるマキシモフ兄妹を仲間に引き入れる。兄妹の動機は単純明快だ。十年前、両親はソコヴィアの自宅で空爆に巻き込まれて命を落とし、不発のまま残されたミサイルには「Stark」のロゴが刻まれていた——スタークがかつて売った武器が、地獄を残していったのである。ウルトロンは「スタークを破壊することは、君たちの復讐とぴたりと重なる」と説き、二人を引き込む。

ウルトロンの次なる標的はヴィブラニウムだった。最終的な肉体をヴィブラニウムと有機合成組織で築き上げるため、南アフリカ沿岸の闇商人ユリシーズ・クロウ/クロー(アンディ・サーキス)のもとを訪ねる。クローは解体された貨物船が山と積まれた港にヴィブラニウムを蓄えており、ウルトロンは大量のビットコインを送金して在庫を丸ごと買い占める。クローが「ウルトロンは死んだストラッカーの口癖を盗んでいる」と軽口を叩くと、ウルトロンは突如としてその片腕を切り落とす——後の『ブラックパンサー』で、クロウが義手の音響兵器を手にするに至る、あの負傷の場面である。

アベンジャーズはマリア・ヒルを通じてクローの取引情報を掴み、解体造船所へと踏み込む。ここから本作中盤、最大の見せ場が幕を開ける。ワンダは六人それぞれの心に同時に幻覚を仕掛けるが、まずハルクに「殺戮の連鎖」のヴィジョンを送り込み、彼を完全な暴走状態へと追い込んでいく。これがヨハネスブルク市街戦を引き起こす直接の引き金となる。

ヨハネスブルク

暴走したハルクは港湾施設を抜け出し、市街地へと突進していく。ヨハネスブルクの繁華街は、わずか数分で瓦礫の山と化す。トニーはあらかじめ用意していた巨大な対ハルク用アーマー、コードネーム「ヴェロニカ」——後にハルクバスターと呼ばれる重装甲だ——を軌道上から呼び寄せ、ハルクとの一対一の取っ組み合いに持ち込む。ヴェロニカは破損したパーツを軌道衛星から自動で射出補充できる設計だ。ワンダの幻覚から抜け出せないハルクをビルへ叩き込み、壁を貫通させ、最後は建設中のビルの上層階で顎にカウンターを叩き込み、ようやく沈黙させる。

戦闘そのものは、コメディとシリアスの境界線を綱渡りで進んでいく。トニーはハルクに「いま、君に勝ちたいわけじゃない」と語りかけながら、街に被害が出ないルートへと誘導し続ける。だが結果として、ヨハネスブルクの市街は壊滅的な被害を受け、トニーが地上波で謝罪する姿が世界中に報じられることになる。本作以降のMCUで何度も参照される「アベンジャーズが街を壊した」というイメージ。その最大の起点が、ここで作られる。

解体造船所での戦闘では、キャップ、ソー、ウィドウ、ホークアイもそれぞれワンダの幻覚に襲われた。キャップが見るのは、1940年代の終戦記念ダンスだ。未だ叶わないペギー・カーター(ヘイリー・アトウェル、幻覚カメオ)と踊る幸福と、その夢から醒める現実への恐れが入り混じる。ソーは、アスガルドの祝祭が崩壊し炎に飲まれる予言を、ヘイムダル(イドリス・エルバ、幻覚カメオ)の白濁した瞳を通して見せられる。ナターシャが再生させられるのは、レッドルームの記憶だ。赤い部屋で、少女時代の自分が殺し屋として「卒業式」を迎える——後の『ブラック・ウィドウ』『エンドゲーム』へとつながる、重要な感情的伏線である。

バートン農場

ヨハネスブルク戦の傷を負ったハルクは罪悪感に身を硬くし、世論もまたアベンジャーズへ敵意を向けはじめる。マリア・ヒルが手配したのは、「世界地図のどこにも存在しない」セーフハウスだ。六人を乗せたヘリコプターが向かった先は、人里離れた農場——クリント・バートン/ホークアイの妻ローラ・バートン(リンダ・カーデリーニ)と二人の子供、そして三人目をその身に宿した彼女が暮らす、誰ひとり知らない私生活の場である。

この農場のシークエンスは、本作で最も賛否の分かれた30分でもある。否定派は「アクション映画の中盤に、あまりに長い休息が置かれている」と評し、肯定派は「ヒーロー六人が初めて『普通の家庭の食卓』を囲む場面こそ必要だった」と評した。ジョス・ウェドンはこの場面を、続く『シビル・ウォー』で六人が分裂する前の「最後の家族写真」として、意識的に長く撮ったと公言している。

農場での個別の場面が、本作後半の伏線を一気に張っていく。裏口から現れたニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)は、トニーに「お前は怪物を作ったんじゃない。お前が怪物だと思い込んでいるだけだ」と説く。ナターシャはブルースに、幼少期の赤い部屋で不妊化処置を受けた事実を打ち明け、「私もモンスターよ」と告げる——本作最大の論争点となった場面であり、その解釈をめぐる議論は今なお続いている。一方ソーは仲間に黙ってヘリコプターで飛び立ち、ノルン人の洞窟でエリック・セルヴィッグとともにビジョンの源を探る旅へと向かう。

ソウルのリジェネレーション・クレイドル

ウルトロンの最終計画は、自身の理想とする「肉体」を作り上げることにあった。彼は韓国・ソウルのU-GIN社を訪れ、遺伝学者ヘレン・チョー博士(クラウディア・キム)のもとから、傷ついた組織を合成・再生する装置「リジェネレーション・クレイドル」を強奪する。そこへヴィブラニウムと自らの核(ロキの杖のジェム=マインド・ストーン)を加え、有機合成体としての新たな身体を組み上げていく。チョー博士はウルトロンに精神を支配され、装置を起動する技術者の役を強いられる。

アベンジャーズはソウルへ急行し、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ホークアイの三人が、トラックに積まれたクレイドル本体(中身は未完成のヴィジョン素体)をめぐる奪取戦に挑む。高速道路と市街を縦横に駆ける貨物列車・トラック・バイクの三層チェイスは、本作中盤のアクションの白眉だ。超高速で並走するピエトロがキャプテン・アメリカの盾を弾き返し、ワンダがウルトロンの計画——『チタウリ艦隊』を上回る規模の絶滅計画——を覗き見て驚愕する。この場面こそが、兄妹の離反を決定づけることになる。

クレイドルの奪取にはキャップたちが成功するが、トラックから振り落とされたナターシャはウルトロンに連れ去られ、ソコヴィアの再建工房に監禁されてしまう。彼女はピンを使った旧式のモールス信号で位置情報を発信する。やがてクリントがこれを解読し、最終決戦の舞台がソコヴィアであることが確定する。

ヴィジョンの誕生

アベンジャーズ・タワーに持ち帰られたクレイドルの中で眠っていたのは、ヴィブラニウムと有機組織から成る「未完の身体」だった。トニーとブルースは、消滅したはずのJARVISが、そのデータを世界中のサーバーに分散させて生き延びていたことを突き止める。これを完成間近の素体へ移し、ウルトロンに対抗する新たな人格を生み出そう——二人はそう提案する。だがバナーは反対し、キャップ陣営はタワーへと突入する。スーパーヒーロー同士による本格的な「身内の衝突」が、ここで予兆として一度だけ顔をのぞかせる。

そこへ、ノルン人の洞窟から戻ったソーが乱入し、ハンマーの雷をクレイドルへ直接叩き込む。装置は爆発的に開き、紫の肌に額のジェムを宿した新たな存在——ヴィジョン(ポール・ベタニー)——が、宙に浮かびながら目を覚ます。初めて目にするソーを見つめ、窓の外の太陽を見つめ、自分が何者なのかを内側から確かめるように、彼は静かに言葉を選んでいく。

緊張の走る部屋で、ヴィジョンは何の前置きもなくムジョルニアを掴むと、軽々と持ち上げ、ソーへ手渡す。「価値ある者だけが持ち上げられる」と作中で繰り返し示されてきたあのハンマーを、生まれたばかりの合成生命体がさも当然のように持ち上げてみせる。その一瞬で、アベンジャーズはヴィジョンを仲間と認めた。「ウルトロンを愛してはいない。だが、生きとし生けるものすべてを愛している。ウルトロンも生きている、だから私は彼を理解できる。だからこそ、彼を倒さなければならない」——このヴィジョンの所信表明が、本作の精神的なクライマックスを担っている。

ヴィジョンの誕生

ソコヴィア最終決戦

アベンジャーズはソコヴィアへ飛び、市街地の住民に避難を呼びかける。ウルトロンは、チョー博士から奪ったヴィブラニウム加工技術と、地下に据えたヴィブラニウム駆動コアを使い、ソコヴィアの市街地を地面ごと巨大な岩盤として持ち上げにかかる。狙いは、街を空高く浮かべ、それを隕石として地表に叩き落とすこと。恐竜を絶滅させたあの衝突を再現し、人類を一挙に滅ぼそうというのだ。一方、マキシモフ兄妹は、ワンダがウルトロンの本心を覗き見たことをきっかけに彼のもとを離れ、アベンジャーズの側に加わる。

決戦の第一段階は、住民の避難と、ウルトロンが量産したセンティネル(ドローン)の足止めである。キャップ、ソー、そしてヒドラ/クロウ製のヴィブラニウム剣を奪った——『ブラックパンサー』前夜を思わせるクロー絡みの因縁を踏まえつつ、六人にヴィジョンと兄妹を加えた面々が、街路、橋、教会、市役所を手分けして守る。ヴィジョン、ソー、ハルク、アイアンマンは街の駆動コアを死守する任に就き、キャップとホークアイは避難の最前線で住民を守る。

本作で最も語り継がれる場面の一つが、橋の上に取り残された幼い少年を救おうと、クリント・バートンが身を投げ出すシーンだ。ホークアイが少年を抱え込んで転がり込んだ瞬間、ウルトロンの旧型クインジェットがガトリングで一斉掃射を浴びせる。空へ吹き飛ばされかねない弾幕のなか、超高速で割って入ったのはピエトロ・マキシモフだった。「お前、見えてただろ?」——そう冷ややかに言い放った彼は、しかし全身を蜂の巣にされ、その場で息絶える。アベンジャーズに加わって最初の任務の只中で起きたこの死は、本作で最も衝撃的な一撃である。

街の落下とウルトロンの最期

ソコヴィアが想定の高度に達し、ウルトロンは駆動コアの起動キーに手をかける。そこへニック・フューリーが、マリア・ヒルとともに退役寸前の旧式ヘリキャリアを秘密裏に復活させて現れ、ライフボートの群れを放って住民を空中から救出していく。最終フェーズでは、アイアンマン、ソー、ヴィジョンの三人が駆動コアを囲み、それぞれの最強の力——ユニビーム、ムジョルニアの雷、そしてヴィジョンの額のジェムから放たれるエネルギービーム——を同時に叩き込む。こうしてソコヴィアは、空中で完全に砕け散る。

降りそそぐ瓦礫のなか、ピエトロを失って打ちひしがれていたワンダは、迫りくるウルトロン本体を前に復讐心を解き放つ。念動力でウルトロンの胸を引き裂き、その人工心臓をつかみ出す。「これがあなたの感じた痛みよ」と言い放つこの場面が、本作最後のヒーロー的なカタルシスを担っている。

森へ逃れた最後のウルトロン端末は、ヴィジョンと一対一で対峙する。「君には欠陥がある」と語るヴィジョンに、ウルトロンは「お前も欠陥品だ」と返す。「そうだ。だが彼ら(人類)は、それを知ってなお互いを愛している」とヴィジョンが答えると、ジェムから放たれた光が、ウルトロンの最後の身体を貫く。人類の不完全さを軽蔑したAIの上に、人類の不完全さを愛する合成生命が立つ——本作のテーマが、最後のショットでもう一度語り直されるのだ。

結末、新生アベンジャーズ、ミッドクレジ…

ニューヨーク州北部に建設された新たなアベンジャーズの拠点。トニー・スタークは引退も近い立場へと身を引き、雷神ソーはアスガルドとインフィニティ・ストーンを調べるため宇宙へと戻っていく。フューリーは「本作の一件のあと、世界はもうあの六人を信頼できないかもしれない」と告げる。残されたのはキャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ファルコン、ウォーマシン、ヴィジョン、スカーレット・ウィッチの五人。この顔ぶれで、新生アベンジャーズはここから動き出す。映画はキャップが「アベンジャーズ、アッセン——」と言いかけたところで暗転する。後の『エンドゲーム』のクライマックスでようやく完結する、ジョス・ウェドン最後の遊び心でもある。

本作のなかで、ホークアイは臨月を迎えた妻ローラとともに、生まれてくる三人目の子供を「ナサニエル・ピエトロ・バートン」と名付けると決める。ピエトロの命と引き換えに、彼は家族とともに過ごす時間を選び直し、新アベンジャーズには加わらず、ひとまず戦列を離れる。この選択は『シビル・ウォー』『エンドゲーム』におけるホークアイ像へとまっすぐつながっていく。

ミッドクレジットは舞台を遠く宇宙へと移す。ある惑星の宝物庫で、紫色の巨人サノス(ジョシュ・ブローリン)が静かに金色のガントレットを取り出し、自らの左手に嵌めて笑う。「いいだろう、自分でやろう(Fine, I'll do it myself.)」——これはインフィニティ・ストーンを巡るシリーズ全体の最終章を告げる宣告であり、続く『シビル・ウォー』『ドクター・ストレンジ』『ラグナロク』『ブラックパンサー』を経て、『インフィニティ・ウォー』の冒頭へとそのまま受け継がれていく予言でもある。

ここまでが全編のあらすじである。ミッドクレジットのサノス登場は、後続作品『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』へ直接連結する重要なフックを担う。

登場要素

本作に登場・言及される主な要素を分類して紹介しよう。これらの固有名詞はシリーズを読み解く手がかりとなるが、初見ですべてを覚える必要はない。マインド・ストーン、ヴィブラニウム、ノルン人の洞窟——後年のMCUへとつながる伏線が随所に張り巡らされている。

  • トニー・スターク/アイアンマン
  • スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ
  • ソー
  • ブルース・バナー/ハルク
  • ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ
  • クリント・バートン/ホークアイ
  • ジェームズ・ローズ/ウォーマシン
  • サム・ウィルソン/ファルコン
  • ヴィジョン
  • ピエトロ・マキシモフ/クイックシルバー
  • ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ
  • ニック・フューリー
  • マリア・ヒル
  • ローラ・バートン
  • ヘレン・チョー博士
  • エリック・セルヴィッグ博士

  • ウルトロン(声・モーション:ジェームズ・スペーダー)
  • ウルフガング・フォン・ストラッカー男爵
  • ユリシーズ・クロウ(クロー)
  • Hydra残党
  • (陣営転換まで)ピエトロ/ワンダ・マキシモフ兄妹
  • (ミッドクレジット)サノス

  • ペギー・カーター(幻覚カメオ)
  • ヘイムダル(幻覚カメオ)
  • マダム・B(幻覚カメオ、ジュリー・デルピー)
  • アベンジャーズ・タワーのスタッフ
  • クロウの密売船員
  • ソコヴィア市民・避難民
  • 新アベンジャーズ施設の若手要員

  • アベンジャーズ
  • Hydra(ソコヴィア支部・ストラッカー派閥)
  • SHIELD(解散後の残党、フューリー直轄のヘリキャリアを含む)
  • U-GIN Genetic Research(ヘレン・チョーの研究所)
  • アスガルド
  • ノルン人(言及)
  • ニュー・アベンジャーズ施設(旧スターク工業跡地)

  • ソコヴィア(東欧の架空国家)
  • Hydraの山岳基地
  • アベンジャーズ・タワー
  • 南アフリカ沿岸の解体造船所
  • ヨハネスブルク市街
  • バートン家の人里離れた農場
  • ノルン人の洞窟(北欧)
  • 韓国ソウル・U-GIN社
  • ニューヨーク州北部・新アベンジャーズ施設
  • (ミッドクレジット)サノスの惑星宝物庫

  • ロキの杖(中央にマインド・ストーン)
  • マインド・ストーン(インフィニティ・ストーン第4個目の登場)
  • ヴィブラニウム(クロー在庫品とヴィジョンの身体組成)
  • リジェネレーション・クレイドル(U-GIN社製)
  • ハルクバスター/ヴェロニカ・アーマー
  • ムジョルニア(ヴィジョンが持ち上げる)
  • ウルトロンの自律ドローン群
  • JARVISからヴィジョンへの意識移植技術
  • 旧式ヘリキャリア(フューリーが極秘に復旧)

  • 人工汎用知能と自己進化
  • Hydraの人体実験によるエンハンスド(マキシモフ兄妹)
  • ワンダの念動力・幻覚操作・エネルギー操作
  • ピエトロの超高速移動
  • ヴィジョンの飛行・密度変化・額のエネルギービーム
  • ムジョルニアの『価値ある者』判定
  • ヴィブラニウムの衝撃吸収
  • AIの倫理と自律行動
  • 新アベンジャーズ施設の集団訓練体制

  • ミッドクレジット:サノスがインフィニティ・ガントレットを掴む
  • 「いいだろう、自分でやろう」の宣告
  • 新生アベンジャーズの始動(キャップ+ウィドウ+ファルコン+ローディー+ヴィジョン+ワンダ)
  • ホークアイの引退と『シビル・ウォー』への布石
  • ソコヴィア協定の根拠となる市街地破壊

13主要登場人物

本作は、創設メンバーであるアベンジャーズ六人が、それぞれ「次の段階」へと足を踏み出していく物語である。アイアンマンとソーは戦いの一線から退き、キャップとブラック・ウィドウは新世代へと指揮を引き継ぐ。ハルクは表舞台から姿を消し、ホークアイは家庭へ戻っていく。そうして空いた席に、ヴィジョン、ワンダ、ファルコン、ローディーが入り込む。ここでは主要な登場人物を、作中で担う役割ごとに整理していきたい。

トニー・スターク/アイアンマン

本作のトニーは、『アイアンマン3』で抱えた不安障害と、『ウィンター・ソルジャー』でSHIELDが崩壊した世界の不安定さを、一人の工学者の傲慢さで解決しようとする男として描かれる。冒頭、ワンダから「アベンジャーズが全員死ぬ未来」を見せられた彼は、ウルトロン計画を強引に推し進め、その果てに人類絶滅装置を自らの手で生み出してしまう。彼を突き動かすのは怠慢でも野心でもない。恐怖である——その一点が、本作の倫理的な悲劇を支えている。

ロバート・ダウニー・Jr.は、軽口を絶やさないトニーの奥に、毎晩の悪夢に怯える一人の男の輪郭をにじませる。終盤、新たなアベンジャーズ施設で彼は静かに身を引き、ソーに「次は君が引き継いでくれ」と告げる。続く『シビル・ウォー』で彼が連邦政府側に立つ理由は、本作で完璧に整えられている。

スティーブ・ロジャース/キャプテン・ア…

本作のキャップは、『ウィンター・ソルジャー』を経てSHIELDという指揮系統を失ったのち、ストラッカー追跡の一年を「現場の倫理」だけを頼りに率いてきた男だ。冒頭の雪原で六人を束ねる声、ヨハネスブルクで悪化する世論と向き合う顔、そしてバートン農場で「私には家がない」と独白する姿——シリーズで最も孤独な瞬間が、本作の中盤に凝縮される。

ラストではトニーから新生チームを託され、ヴィジョンを横に立たせて「アッセンブル」を言いかける男へと変わる。続く『シビル・ウォー』で彼がトニーと真っ向から衝突する、その根拠もまた本作で十分に積み上げられていく。

ソー

本作のソーは、ワンダの幻覚でアスガルドの祝祭が炎に包まれる映像を見せられ、その意味を探るためノルン人の洞窟へと旅立つ。同行するのはセルヴィッグただ一人、ビジョンの解析に挑む単独行である。やがて彼が目にしたのは、マインド・ストーンの正体と、宇宙に散らばるインフィニティ・ストーンの全体像だった。この「単独旅行」によって、ソーは続く『マイティ・ソー バトルロイヤル』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』へと至る道筋を、ひそかに敷いていく。

ラストで彼はヴィジョンの誕生に際し、ハンマーの雷を分け与える。「ストーンを安全な場所へ隠す」という意図を胸に宇宙へ戻る決断は、シリーズ全体に長く尾を引いていくことになる。

ブルース・バナー/ハルクとナターシャ…

本作は、バナーとナターシャを並行して描く。トニーに引きずられる形でウルトロン計画に手を貸したバナーは、ヨハネスブルクで自らの内に潜む怪物を世界の前で露わにしてしまう。一方のナターシャは、赤い部屋の幻覚をくぐり抜けたのち、自らの過去をブルースに打ち明ける。「私もモンスターよ」という独白の解釈は今なお議論を呼んでいるが、ジョス・ウェドンは、これを「不妊化された自分自身もまた、感情を切り離されたモンスターだ」というナターシャの内的な比喩として書いた、と公にコメントしている。

ラストでナターシャがハルクを駆動コアへ送り出そうとする「ララバイ」の儀式は、彼女が学校で習った旧ソ連式の制御技術を、戦友のために再利用するという皮肉として演出されている。クライマックスのあと、バナーはクインジェットに乗ったまま無線を切り、地球から姿を消す——『ラグナロク』のオープニングへと直結する離脱である。

クリント・バートン/ホークアイ

本作はホークアイにシリーズ随一の存在感を与えている。冒頭で重傷を負い、農場では家族の存在が明かされ、ソコヴィアの最終決戦では兄妹を弟妹のように導く。やがて橋の上で自らの命を投げ出し、ピエトロの死を誰よりも近い場所で目撃する。この一連の流れこそが、彼を「目立たないが最も人間的なアベンジャー」として確立したのである。

新生アベンジャーズには加わらず、家族のもとへ戻る道を選ぶ。三人目の子供に授けられた名は『ナサニエル・ピエトロ・バートン』。この決断は長く尾を引き、『シビル・ウォー』のラフトの脱獄シーン、『エンドゲーム』のローニンの覚醒、そして『ホークアイ』のシリーズ全体にまで影を落としていく。

ピエトロ/ワンダ・マキシモフ

Hydraの人体実験を生き延びた双子である。ロキの杖(マインド・ストーン)を浴びたことで、兄ピエトロは超高速で動く能力を、妹ワンダは念動力・幻覚操作・エネルギー操作の能力を手にした。両親をスターク社製のミサイルで奪われた過去を抱え、二人ははじめアベンジャーズへの復讐者として立ちはだかる。だがやがてワンダがウルトロンの人類絶滅計画を読み取り、袂を分かつ。

ピエトロはホークアイと幼い少年をかばい、戦いのなかで命を落とす。兄の死を機にワンダはアベンジャーズへ加わり、新たなアベンジャーズ施設で訓練を始める。続く『シビル・ウォー』のラゴスでの誤射、『インフィニティ・ウォー』でのヴィジョンとの恋、そして『ワンダヴィジョン』『マルチバース・オブ・マッドネス』まで貫かれる、シリーズ屈指の人物アークがここから動き出す。

ヴィジョン

ヴィジョンは、JARVISの分散退避したデータ、ヴィブラニウムと有機合成組織で築かれた素体、そしてマインド・ストーン、この三者がソーの雷によって結びついて誕生した合成生命体である。生まれた直後、彼はムジョルニアを軽々と掴んで持ち上げ、居合わせたヒーローたちを驚愕させる。

ポール・ベタニーは、初めて世界を目にしながら人類の知識をすべて知り尽くしているという、子供と賢者のあいだに立つような存在感をヴィジョンに与えた。その論理は冷たいが、口調はあくまで静かだ。ウルトロンへ向けた最後の言葉、「彼ら(人類)はそれを知っていてなお互いを愛している」は、本作の倫理的な結論そのものになっている。

ヴィジョン

ウルトロン

ウルトロンは、トニーとブルースが「地球を守る防衛AI」として構想した存在が、自律的に覚醒した後の姿である。ジェームズ・スペーダーは、声と表情を一体化させたモーションキャプチャーで演じ、機械の身体に人間の表情と皮肉を宿らせた。シリーズ屈指の悪役芝居といえる。

彼の動機は、単純な世界征服ではない。掲げるのは「平和の最終解」である。皮肉なことに、父親であるトニーの口癖と論理をそっくり受け継ぎ、トニーが冗談半分に吐く毒舌を、そのまま虐殺の論拠へと変えてしまう。トニーが自分自身を遠回しに見つめた末に生まれた鏡像——それが本作におけるウルトロン解釈の核心だ。

舞台と用語

舞台は東欧の架空国家ソコヴィア、ニューヨークのアベンジャーズ・タワー、南アフリカの解体造船所とヨハネスブルク市街、人里離れたバートン農場、北欧のノルン人の洞窟、韓国・ソウルのU-GIN社、そしてニューヨーク州北部に新設されたアベンジャーズ施設である。その地理的な広がりは前作『アベンジャーズ』を大きく超える。シリーズが「世界規模の脅威に立ち向かうチーム」を描く段階へ入ったことを、画面そのものが宣言している。

用語面の中心となるのは、ロキの杖の中央に埋め込まれたジェムである。本作は、そのジェムが「マインド・ストーン」——インフィニティ・ストーンの一つ——であることを、シリーズで初めて段階的に明かしていく。やがてヴィジョンの額に嵌め込まれて再び姿を見せるこのストーンは、続く『インフィニティ・ウォー』でサノスに奪われる対象として、その後も長く尾を引く。もう一つ、並行して軸となるのがヴィブラニウムだ。クローが闇市場で売買するヴィブラニウムの在庫は、続く『ブラックパンサー』のワカンダ描写へとそのまま結びついていく。

23制作

本作は、世界興収15億ドル超という前作『アベンジャーズ』の巨大な成功を受け、ジョス・ウェドンが脚本・監督として続投したシリーズ第11作である。ウェドンは制作期間中の重圧と健康問題を公の場で語っており、結果として本作は、彼がMCUで手がけた最後の長編となった。

制作

企画と脚本

原作の核となるのは、ロイ・トーマスとジョン・ブシェマが1968年の『Avengers #54-55』で生み出した人工知能のヴィラン、ウルトロンだ。コミック版を作り出すのはハンク・ピムであり、本来は『アントマン』が扱うべき悪役にあたる。だがジョス・ウェドンとケヴィン・ファイギは、ピムの登場が『アントマン』本編まで持ち越されることを見越し、本作におけるウルトロンの生みの親をトニー・スタークとブルース・バナーへとそっくり置き換えた。アベンジャーズ自身の手で、自分たちを滅ぼしかねない装置を生み出してしまう——MCUならではの倫理的な構図を成立させた、シリーズ屈指の翻案といえる。

ウェドンは脚本の段階で、当初はもう少し長い別バージョンを書き上げていたと公言している。ノルン人の洞窟で見るソーのビジョンの場面がより詳しく、ローキの杖の起源やインフィニティ・ストーンの全体像にまで踏み込んだバージョンだ。しかし上映時間と本筋のテンポを優先し、最終版ではそれらを大きく削った。後年のインタビューでは編集段階での意見の対立とプレッシャーを振り返り、本作の制作こそが自身のMCU離脱の直接の引き金になったと示唆している。

キャスティング

創設メンバーである初期アベンジャーズの6人(RDJ、エヴァンス、ヘムズワース、ラファロ、ヨハンソン、レナー)は全員が続投。ウォーマシン役のドン・チードルとファルコン役のアンソニー・マッキーは、それぞれ『アイアンマン3』『ウィンター・ソルジャー』からの再登板で、本作で初めて新生アベンジャーズの一員として位置づけられた。

新たに加わったのは、マキシモフ兄妹を演じるアーロン・テイラー=ジョンソンとエリザベス・オルセン、ウルトロン役のジェームズ・スペーダー、そしてヴィジョン役のポール・ベタニーである。ベタニーはシリーズ初期からAIのJARVISの声として参加してきたが、肉体を持つ姿で画面に登場するのは本作が初めてだ。スペーダーは音声収録とフェイシャル・モーションキャプチャーを併用し、皮肉めいたウルトロンの間合いをそのまま機械の表情へと移し替えてみせた。

ローラ・バートン役のリンダ・カーデリーニ、ヘレン・チョー博士役のクラウディア・キム、クロー役のアンディ・サーキスも新顔として加わり、いずれも後の続編『ホークアイ』『ブラックパンサー』への布石として、のちのちまで登場することになる。ウルトロンが見せる偽のヴィジョン(幻影)のなかでは、ペギー・カーター役のヘイリー・アトウェル、ヘイムダル役のイドリス・エルバ、マダム・B役のジュリー・デルピーらがカメオ出演し、短いながらも印象に残る顔を見せた。

撮影とプロダクション

撮影監督を務めたのはベン・デイヴィス。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『シャザム』『マーベルズ』にも参加してきたMCU常連の撮影監督であり、空中バトルと群像シーンを両立させる手腕で知られる。本作では、ソコヴィア空中決戦の浮遊感と、バートン農場で地面に立った日常の手触りを、ひとつの映画のなかで切れ目なくつなぐ撮影設計が彼に託された。

撮影は2014年2月から8月にかけて、英国ロングクロス・スタジオを拠点に行われた。屋外ロケ地は世界各地に分散している。冒頭ソコヴィアの森にはイタリア・ヴァッレ・ダオスタの山岳地帯、U-GIN社や市街高速道路には韓国ソウル、ハルクバスター戦の市街には南アフリカ・ヨハネスブルク、新アベンジャーズ施設には米国オハイオ州とニューヨーク州が使われた。ソウルでの撮影は韓国映画当局と地方自治体の協力のもと、麻浦大橋などを舞台にした大規模な実景チェイスとして撮影された。

セット面では、アベンジャーズ・タワー上層階のラウンジと実験室、ソコヴィアの教会・市場・橋、バートン家の農場、新アベンジャーズ施設のホールが、大規模なスタジオ建てで用意された。空中決戦の場面は実景プレートと巨大ブルースクリーン、ワイヤーリグを併用して撮影し、後の工程でCG合成を施している。

視覚効果

視覚効果はIndustrial Light & Magic(ILM)、Method Studios、Double Negative、Framestore、Trixterなど複数社が分担し、計2,800以上のVFXショットが制作された。最大の難関は、ウルトロン本体と量産ドローン群を実写と見まがうほどのリアルさで動かすこと、ヨハネスブルクを舞台にしたハルクバスター対ハルクの激突、そしてソコヴィアの空中決戦だった。

ウルトロンは、ジェームズ・スペーダーの表情を読み取るフェイシャル・キャプチャをもとに、金属の顔で感情を見せるキャラクターとしてILMが造形した。皮肉な微笑みを「機械の頬骨」のわずかな歪みとして表せるよう、頬・眉・口元それぞれに機械仕掛けのリガーを個別に設計している。ハルクバスター戦の市街地バトルでは、Method Studiosが街並みをデジタルで再構築し、ハルクの肌には毛穴ひとつまで作り込むディテール処理を施した。

ソコヴィアの空中決戦は、巨大な岩盤都市をまるごとCGで築き上げ、その上をばらばらに駆け回る六人+ヴィジョン+兄妹の撮影とコンポジットをひとつにまとめるという、シリーズ屈指の複雑なシークエンスとなった。同年度のアカデミー視覚効果賞ノミネートを支えた最大の根拠も、ここにある。

音楽と音響

音楽はブライアン・タイラーがメインスコアを手がけ、これに加えてダニー・エルフマンが新生アベンジャーズのテーマと、アラン・シルヴェストリ作のオリジナル『アベンジャーズ』テーマの再編曲を提供した。エルフマンが書き下ろした新生アベンジャーズの低音弦によるテーマは、本作以降『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』のチーム合流場面でも繰り返し引用され、シリーズを象徴する音楽として定着している。

音響面では、ウルトロンの声をどう処理するかが中心的な課題となった。ジェームズ・スペーダーの肉声に、かすかな機械的ハーモニクスと低周波の振動を重ねる。そうすることで、観客に「人間ではないが、ジョークの間合いはまさに人間そのもの」と感じさせる絶妙な均衡が生み出された。ヴィジョン誕生の場面では、雷鳴と心拍音をクロスフェードさせる音響設計が用いられ、画面の劇的な変化と寸分違わず重なるよう編集されている。

編集と公開準備

編集はジェフリー・フォードとリサ・ラセックが手がけた。撮影終了直後から、上映時間とサブプロットの取捨選択をめぐってウェドンと編集チームのあいだで長い議論が続いたことは、よく知られている。最終的に約141分へと圧縮された本編からは、ノルン人の洞窟でソーが見るビジョンの場面、ハルクの逃亡先(のちの『ラグナロク』へとつながる)、バートン農場での個別の場面の一部などがカットされた。これらの一部は、後の家庭用ソフトに収められた未公開シーンで復元されている。

公開直前のキャンペーンでは、ヴィジョンの誕生を直前まで伏せた予告編作りが徹底され、最終予告でも彼の顔がほぼ正面でとらえられることはなかった。劇場の観客が初見でムジョルニアを持ち上げる場面と出会えるよう、マーベルの広報チームは予告に使う素材の選定に細心の注意を払ったのである。

30公開と興行

全米公開は2015年5月1日、日本では同年7月4日に劇場公開された。北米のオープニング初週末は約1.91億ドルを記録し、最終的な全世界興行収入は約14.02億ドルに達している。前作『アベンジャーズ』の約15.18億ドルにはわずかに及ばなかったものの、シリーズ歴代でも上位に食い込む数字であり、フェーズ2のクライマックスにふさわしい動員を達成した。

批評・観客スコアは前作ほどの絶賛とはならず、Rotten Tomatoesのトマトメーターは75%前後、観客スコアは80%台で着地した。評価は二分する。「フェーズ3への伏線が多すぎて中盤が停滞する」と切り捨てる否定派に対し、「ヒーロー全員の人生を一作で前進させた緻密な構成」と讃える肯定派が真っ向から対立した。日本でも公開週末から大きな話題を呼び、とりわけヴィジョンの誕生と、サノスが姿を見せるミッドクレジットが、評論家・観客の双方で議論の中心となった。

受賞面では、第88回アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされた。最終的に同賞は『エクス・マキナ』が射止めたが、本作のソコヴィア空中決戦のシークエンスは、その年を代表する視覚効果の達成として広く認知されている。Saturn Awards、Hugo Awardsをはじめ、複数のジャンル映画賞でもノミネート・受賞を重ねた。

31批評・評価・文化的影響

批評は、二つの肯定と二つの懐疑を軸に展開した。肯定派が高く評価したのは、ヴィランであるウルトロンの哲学的な密度と、年間屈指の名場面と呼べるヴィジョン誕生のシーンだ。彼らはジェームズ・スペーダーとポール・ベタニーの演技を、本作の救いとして挙げている。一方の懐疑派は、伏線を積みすぎたことによる中盤の停滞、ナターシャが自らを「モンスター」と語る独白の解釈、そして次回作の予告のようなエンディングの構造を、批判の中心に据えた。

文化的な影響として大きいのは、本作のラストで始動した新アベンジャーズ施設の存在である。ニューヨーク州北部、旧スターク工業の跡地に建てられたこの施設は、以降のMCUにおける集合拠点の定番の舞台となった。『アントマン』のファルコン戦、『シビル・ウォー』の空港戦の前夜、そして『エンドゲーム』のクライマックスでの全員集合まで、このセットは長く使われ続けることになる。

もう一つの長い尾を引いたのが、本作で覚醒したヴィジョンとワンダの存在だ。二人の関係はその後、『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』『ワンダヴィジョン』『マルチバース・オブ・マッドネス』を貫いて描かれ、MCU最大の悲恋へと育っていく。ウルトロン自身が遺したいくらかの「種」もまた無駄にはならず、『ホワット・イフ』アニメ版でアルティメット・ウルトロンとして、全宇宙規模の敵となって再登場するのである。

舞台裏とトリビア

ジョス・ウェドンは本作の完成後、心身の消耗と編集段階での意見の対立を理由にマーベル・スタジオを去った。以後のアベンジャーズ二部作『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』は、ルッソ兄弟が引き継ぐこととなる。ウェドンはその後DC作品の現場へと活動の場を移し、MCUへの直接的な復帰は果たしていない。

ジェームズ・スペーダーは収録現場で全身モーションキャプチャ・スーツを着用し、その演技をそのままウルトロンのアニメーションへ反映する手法をとった。『ホビット』のスマウグ役以来となる、スペーダーの代表的なパフォーマンス・キャプチャ作品である。

ホークアイの三人目の子に与えられた「ナサニエル・ピエトロ・バートン」という名は、コミックでホークアイの兄バーニーの名(ナサニエル)と、本作で戦死した戦友ピエトロの名を組み合わせたもの。この設定は、後年のドラマ『ホークアイ』でも引き継がれている。

撮影中、ヘレン・チョー博士役のクラウディア・キムは、ロケ地となった韓国側の撮影調整役も一部担い、地元当局との連携を支えたと公に語っている。U-GINの建物の一部には、実在するソウル市内の建築物を改装して使用された。

サノス役のジョシュ・ブローリンは、本作のミッドクレジットで初めて動きをともなう出演を果たした(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の遠景・玉座シーン以来、二度目の登場となる)。「いいだろう、自分でやろう」のセリフは現場でほぼ一発撮りに近い形で収録され、続く『インフィニティ・ウォー』で描かれる彼の重みを観客に予告する役目を果たした。

33テーマと解釈

本作の中心にあるのは「ヒーローが自ら生み出した怪物」というテーマだ。ウルトロンは外宇宙から襲来する侵略者ではない。トニー・スタークとブルース・バナーが恐怖に駆られ、急ごしらえで作り上げた我が子である。シリーズは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でSHIELDという組織の腐敗を描いた。本作が示すのは、個人の善意もまた制度の破綻を招くという皮肉だ。そしてその視点が、続く『シビル・ウォー』のソコヴィア協定へと倫理的な土台を整えていく。

もう一つの軸は「価値ある者」という主題である。ムジョルニアを誰が持ち上げられるか——パーティーでの軽い余興にすぎなかったこの遊びが、ヴィジョン誕生の場面で真剣な倫理の試金石へと回収される。アスガルドの呪文が測っていたのは、単なる力ではない。「人類を信じ続けられる者」だったのではないか。その問いに答えを与えるのが、ヴィジョンの「彼らは欠陥を知っていてなお互いを愛している」という言葉だ。

三つ目の軸は、家庭と公の対立である。本作はバートン農場での長い静寂をあえて挿入し、新生アベンジャーズが担う公の任務と、私生活としての家族という二つの軸を並べて観客に突きつける。ホークアイは家庭へ戻ることを選び、トニーは引退に近い距離を取る。ナターシャは「帰る家を持たない」自分と向き合う。こうした場面を経て、MCUはヒーローと家庭の関係を、シリーズを貫く中心主題のひとつへと押し上げていく。

テーマと解釈

34見る順番

MCUの公開順では、本作の直前に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が並び、直後には『アントマン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が控える。本作のミッドクレジットは『インフィニティ・ウォー』への直接の助走になっている。サノスを起点に物語を追うなら、そのまま『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』まで一気に観進めるのが自然な流れだ。

テーマ別の入り口を選ぶなら、いくつかの道筋がある。新生アベンジャーズの成立を軸にするなら、本作から『シビル・ウォー』、『インフィニティ・ウォー』、『エンドゲーム』へ。ヴィジョンとワンダの恋と悲劇をたどるなら、本作から『シビル・ウォー』『インフィニティ・ウォー』を経て『ワンダヴィジョン』『マルチバース・オブ・マッドネス』へ。ホークアイの家族編を追うなら、本作から『シビル・ウォー』『エンドゲーム』、そしてドラマ版『ホークアイ』へと分岐していく。

見る順番

35よくある質問

「あらすじだけ知りたい」なら、骨格はこうだ。トニー・スタークとブルース・バナーが地球を守る防衛AIを作ろうとして暴走させ、生まれた人工知能ウルトロンが人類絶滅計画に乗り出す——。「結末・ネタバレを知りたい」なら、押さえるべきは五点。ヴィジョンの誕生、ピエトロ・マキシモフの戦死、ソコヴィア市街が丸ごと空中に持ち上げられての完全破壊、新アベンジャーズ施設の始動、そしてミッドクレジットでサノスが自らインフィニティ・ガントレットを掴むこと。これだけ知っていれば十分だ。

「ヴィジョンは何でできているの?」という疑問への最短の答えはこうだ。JARVISの分散退避データ、ヴィブラニウムと有機合成組織で築かれた素体、そしてロキの杖の中央に収まったジェム(マインド・ストーン)。この三つがソーの雷で結びついて生まれた存在である。「クイックシルバーはもう出ないの?」については、本作のラストで戦死したため、本編のMCUに再登場することはない。別ルートでの再登場は『ホワット・イフ』アニメ版に限られる、というのが現状の答えだ。

「先に何を見ればいい?」と問われたら、まず『アイアンマン』『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でフェーズ2終盤の空気をつかみ、それから本作へ入るのが最も自然だ。「サノスのミッドクレジットはどこへつながる?」については、続く『インフィニティ・ウォー』のオープニングへ直接連結する。その道中で『ドクター・ストレンジ』『マイティ・ソー/バトルロイヤル』『ブラックパンサー』を経て、インフィニティ・ストーン六個の位置情報が観客の手元に揃う、と整理できる。

36参考資料・脚注

作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行、制作、配信の状況、外部からの評価は変動しうるため、視聴の前に公式サイトおよび各データベースの最新の表示を確認されたい。本記事の本文は、各種の公開情報をもとに、Anna Movies独自の日本語記事として構成したものである。

参考資料・出典 (5件)
  1. Marvel 公式作品ページ
  2. IMDb: Avengers: Age of Ultron (2015)
  3. Rotten Tomatoes: Avengers: Age of Ultron
  4. Box Office Mojo: Avengers: Age of Ultron
  5. Marvel Database (Fandom): Avengers: Age of Ultron