『魔法少女まどか☆マギカ』の時系列は、暁美ほむらが同じ一か月を繰り返し、鹿目まどかの願いが過去と未来の法則を書き換えるため、一本の年表だけでは表せない。視聴順としては公開順が適しているが、鑑賞後に因果を整理するなら、ほむらの複数時間軸、TV本編の時間軸、円環の理成立後、『叛逆の物語』の改変後という層に分けると理解しやすい。
時系列と視聴順は同じではない
物語内部で早く起きた出来事を先に見ると、第10話から始めることになる。しかし第10話は、第1〜9話で蓄積したほむらへの疑問を解くために作られている。初見で時系列へ並べ替えると、意図された謎と発見を失う。
時系列順は、すでに結末を知る視聴者が因果を確認する読み方である。ほむらがどの失敗から何を学び、次の時間軸で行動を変えたかを追える。一周目は放送順、二周目に時系列を意識するのがよい。
また、世界改変は以前の出来事を単純に削除するのではなく、宇宙全体の法則を置き換える。改変前と後を同じ年表の隣り合う日付として書くより、異なる世界状態として段を分ける必要がある。

起点:ほむらが最初に転校した時間軸
最初のほむらは、病気で入院していたため自信がなく、魔法少女でもない。見滝原中学校へ転校し、すでに魔法少女として活動していたまどかと巴マミに救われる。ワルプルギスの夜との戦いで二人を失い、キュゥべえと契約する。
ほむらの願いは、まどかとの出会いをやり直し、今度は自分が守る側になりたいというものだった。これにより時間を操作する力を得て、約一か月前へ戻る。ここが反復の起点となる。
最初のまどかは、TV第1話のまどかより先に契約し、経験のある魔法少女としてほむらを支える。時間軸によって誰が先輩か、誰が真実を知るかが変わるため、人物の性格が同じでも関係は同一ではない。

反復された複数の時間軸
ほむらはまどかを救うため、何度も時間を戻す。魔女の正体を仲間へ知らせる、キュゥべえの勧誘を妨害する、武器を集める、ワルプルギスの夜を単独で倒そうとするなど、失敗のたびに方法を変える。
ある時間軸では、美樹さやかが魔女化し、真実を知ったマミが仲間のソウルジェムを破壊しようとする。まどかはマミを止め、最後に残ったグリーフシードをほむらへ使い、自分が魔女になる前に殺すよう頼む。ほむらが他者との共有を諦めていく重大な経験である。
別の時間軸では、まどかが巨大な魔女クリームヒルト・グレートヒェンとなり、地球を滅ぼす。ほむらは、契約させてから救うのでは間に合わないと理解し、契約そのものを阻止する方針へ移る。
反復がまどかへ因果を集める
ほむらが時間を巻き戻すたび、世界の因果はまどかを中心に重ねられる。ほむらの目的が一貫して「まどかを救うこと」であるため、多数の時間軸の可能性が一人へ束ねられ、まどかの魔法少女としての潜在力が増大する。

これは、努力を重ねれば救出確率が単純に高まる仕組みではない。ほむらが繰り返すほど、まどかが契約した場合の力と、魔女化した場合の破壊規模も大きくなる。救おうとする行動が危機を拡大する逆説である。
キュゥべえは、普通の少女に異常な素質がある理由を調べ、ほむらの時間操作と因果の集中へたどり着く。TV本編の時間軸で契約を強く迫るのは、過去の反復で生じた価値を回収するためでもある。
TVシリーズ第1〜9話の時間軸
視聴者が第1話から見る時間軸は、ほむらにとって最後の試みの一つである。転校初日からまどかへ契約を避けるよう告げ、キュゥべえを攻撃し、魔女の情報を共有しようとしない。過去の失敗を知らないまどかには、敵対的で謎の多い人物に見える。

マミの死、さやかの契約と魔女化、杏子の死は、この時間軸でも起こる。ほむらは結果を予測していても、人間関係を築けず、すべてを防げない。第9話までの出来事は第10話の回想より後に起きるが、視聴順では先に提示される。
第10話終盤が第1話冒頭へ接続し、第11話で現在へ戻る。反復の全体を知った視聴者は、ほむらの冷静さが元の性格ではなく、失敗を重ねて作った防御だと理解する。
第11〜12話:ワルプルギスの夜と最終契約
ほむらは単独でワルプルギスの夜へ挑むが、蓄積した武器でも倒せない。再び時間を戻そうとすれば、まどかへさらに因果を重ねる可能性がある。希望が失われ、ほむら自身のソウルジェムも濁り始める。
まどかはほむらの経験とキュゥべえの仕組みを知ったうえで契約する。願いは、過去と未来のすべての魔女を生まれる前に自分の手で消すこと。因果を束ねられた力を、特定の時間軸だけでなく宇宙全体の法則変更へ使う。

願いの結果、改変前の歴史に存在した魔女化は起こらなくなり、まどかは円環の理として契約者を救済する。ほむら以外の人々から、人間としてのまどかの記憶は失われる。
円環の理成立後の世界
改変後も魔法少女は存在し、人間の呪いから生まれる魔獣と戦う。ソウルジェムが限界へ達した少女は魔女にならず、円環の理に導かれる。さやかは恭介の治癒を願った結果を受け入れ、魔獣との戦いの後に消える。
ほむらは、まどかから託されたリボンと記憶を持ち続ける。家族や友人がまどかを知らない中で、一人だけ以前の宇宙を証言できる。キュゥべえへ魔女とエネルギー回収の話をしたことが、次の事件の原因になる。

ここでは「過去が全部なかった」とだけ考えない方がよい。まどかは過去と未来の魔法少女を救うため、以前の時間軸を認識している。ほむらの記憶と感情も改変前から連続する。
『叛逆の物語』:結界内の偽りの日常
『叛逆の物語』は円環の理成立後を起点とする。インキュベーターは、魔女化直前のほむらのソウルジェムを外界から隔離し、円環の理が迎えに来る過程を観測しようとする。その内部に、ほむらの望みを反映した見滝原の結界が形成される。
結界内ではまどか、マミ、さやか、杏子、ほむらが一緒にナイトメアと戦い、百江なぎさもいる。住人は記憶と役割を与えられ、不自然さを疑いにくい。出来事の時刻は円環の理成立後だが、景観は改変前の日常を再現する。
ほむらが真相を知り、仲間が外部の封印を破ると、円環の理としてのまどかが救済へ現れる。本来ならここでほむらは導かれ、世界は円環の理成立後の状態へ戻るはずだった。

悪魔ほむらによる二度目の世界改変
ほむらは救済の直前、まどかを捕らえ、円環の理から人間としての記録を引き離す。自分のソウルジェムを愛によって変質した存在だと語り、世界の関係を再配置する。まどかは転校生として家族と日常へ戻り、ほむらは秩序を監視する側に立つ。
円環の理が完全に消滅したのか、まどかの力と人間性がどう分かれたのかは、映画内だけで細部まで確定しない。まどかは一時的に自分の本質を思い出しかけ、ほむらが制止する。新しい世界は安定した最終解決ではなく、緊張を抱えた状態で終わる。
『ワルプルギスの廻天』は、この二度目の改変後を扱う。時系列上は最新段階だが、公式ストーリーで示された範囲と、本編鑑賞後に確定する事実は分けて更新する必要がある。

『マギアレコード』は年表のどこに入る?
『マギアレコード』は神浜市を舞台に、環いろはと妹うい、マギウスの翼を描く外伝である。見滝原の人物が登場し、魔法少女と魔女の仕組みも共有するが、TV本編から『叛逆の物語』へ続く一つの時間軸の空白へ、そのまま差し込む作品ではない。
特に原作ゲームとTVアニメ版では展開と結末が異なるため、全シリーズ共通の一本の年表へ固定すると矛盾が生じる。並行する可能性、外伝固有の世界として扱い、本編時系列とは別の欄に置くのが安全である。
視聴順としてはTVシリーズ後が分かりやすい。時系列を確定することより、どの作品版の神浜市を論じているかを明示する方が重要になる。
時系列を理解する要点
順序は、ほむらの最初の時間軸→複数回の反復→TVシリーズ第1〜12話の時間軸→円環の理成立後→『叛逆の物語』の隔離結界→悪魔ほむらの改変後、となる。ただし前半の反復は第10話で回想されるため、初見の視聴順は第1話からである。

まどかの願いとほむらの改変は、同じ世界で翌日へ進む出来事ではなく、過去と未来の因果を再定義する。改変前後を層に分け、誰が前の世界を記憶しているかを見ると混乱を減らせる。
外伝は無理に直線へ入れない。時系列は作品を理解する道具であり、すべてを一つの暦へ押し込むことが目的ではない。
時系列順は出来事を一本の年表へ並べる方法ではなく、誰の経験を基準にするかを決める読み方である。ほむらは複数の時間軸を記憶するが、まどかたちは各時間軸の出来事を共有しない。さらに第12話の世界改変と『叛逆の物語』の結界内世界は、単純な前後関係だけでは整理できない。再鑑賞では、客観的な時間より、ほむらが何を知った時点かを追うと因果関係をつかみやすい。
