エピソード7 フォースの覚醒は、2015年公開のアメリカ映画で、『スター・ウォーズ』続三部作の第1作である。旧三部作から約30年後、姿を消したルーク・スカイウォーカーを巡り、ジャクーの孤独な拾い屋レイ、脱走兵フィン、そして父を殺すカイロ・レンらの運命が交錯する。銀河の新たな世代による旅を描き、サーガを次代へ引き継ぐ物語の幕開けとなった作品である。
00概要
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(Star Wars: The Force Awakens)は、J・J・エイブラムスが監督し、2015年12月18日に米国と日本で同日公開されたスペースオペラ映画である。物語上はエピソード7にあたり、ジョージ・ルーカスがルーカスフィルムをウォルト・ディズニー・カンパニーへ売却した後、初めて作られたスター・ウォーズの実写映画である。スカイウォーカー・サーガの「続三部作」(シークエル・トリロジー)の第1作にあたる。
舞台はエンドアの戦いから約30年後の銀河。皇帝とダース・ベイダーはすでに討たれ、新共和国が再建された。だが帝国の残党から生まれた軍事組織ファースト・オーダーが、辺境でじわじわと勢力を伸ばしている。伝説のジェダイ・マスター、ルーク・スカイウォーカーは自ら姿を消し、レイア・オーガナ将軍率いる小さな民兵組織レジスタンスが、共和国の黙認のもとファースト・オーダーと対峙する——。そんな設定で物語は幕を開ける。
中心となるのは新世代の三人だ。砂漠の惑星ジャクーで孤独な拾い屋(スカベンジャー)として生きるレイ。良心の咎めからファースト・オーダーを脱走したストームトルーパーのフィン。そしてレジスタンス随一の花形パイロット、ポー・ダメロン。彼らの前に立ちはだかるのが、暗黒面の使い手カイロ・レンと、その背後で糸を引く至高指導者スノーク、そしてファースト・オーダーの若き将軍ハックスである。やがて物語が進むなかで、カイロ・レンの素顔——ハン・ソロとレイアの息子ベン・ソロ——が明かされ、旧三部作の英雄たちと新世代が地続きに結ばれていく。
本記事は結末を含む全編の内容に踏み込む。ハン・ソロの最期、ルークの再登場、スターキラー基地の崩落など、初見の驚きを大切にしたい読者は、本編を鑑賞してから読み進めてほしい。
主要データ
- 原題
- Star Wars: The Force Awakens
- 監督
- J・J・エイブラムス
- 脚本
- ローレンス・カスダン/J・J・エイブラムス/マイケル・アーント
- 音楽
- ジョン・ウィリアムズ
- 米国公開
- 2015年12月18日
- 日本公開
- 2015年12月18日
- 上映時間
- 135分
- ジャンル
- スペースオペラ、SF、冒険、ファンタジー
オープニング・クロール
シリーズおなじみの「遠い昔、はるか彼方の銀河系で——」の一文と「スター・ウォーズ」のロゴに続き、黄色い文字のオープニング・クロールが宇宙の奥へと吸い込まれていく。旧三部作から約30年。世界が大きく動き出していることが、わずか数行のうちに観客へと差し出される。
02あらすじ
以下は結末までを含む全編のあらすじである。物語はジャクーでの襲撃に始まり、レイとフィンの出会い、ハン・ソロとの合流、タコダナでの幻視、スターキラー基地の崩落、そして終盤の小さな再会へと収束していく。場面を一つずつ、時間の流れに沿って追っていきたい。
ジャクーの夜と虐殺
辺境の砂漠の惑星ジャクー。年老いた賢者ロー・サン・テッカが、レジスタンスのエース・パイロット、ポー・ダメロンに小さなデータ・ディスクを手渡す。そこには、姿を消したルーク・スカイウォーカーの居場所をたどる手がかりが収められている。「君に渡すものは、すべてを正しい場所へ戻すだろう」。だが手渡したその瞬間、夜空をファースト・オーダーの強襲シャトルが切り裂き、ストームトルーパーの一団が村トゥアヌルへと降り立つ。
指揮を執るのは黒衣をまとった暗黒面の使い手、カイロ・レン。レンはサン・テッカと短く言葉を交わすと、その場でライトセーバーを抜き、老人を斬り捨てる。逃れようとしたポーは捕らえられ、ただ一体、レジスタンスのドロイドBB-8だけが機転を利かせ、主人から託されたディスクを抱えて闇へと走り去る。レンは怯える村人たちを並ばせ、ハックスら若き将軍たちと、帝国軍譲りの冷酷な暴力装置の正体を観客の前にさらけ出す。やがて隊長キャプテン・ファズマの号令一下、ストームトルーパーが村人たちを一斉に虐殺する。
その隊列のなかに、命令を受けながらただ一発も撃たなかった兵士がいた。識別番号FN-2187。同僚の死で手を血に染め、ヘルメットの奥で揺れるその素顔こそ、のちに「フィン」と呼ばれる青年その人である。レンは彼の動揺を即座に見抜き、艦に戻り次第「再調整」に処すと冷たく言い渡す。彼の運命を変える決断は、この一夜から始まるのだ。
拾い屋レイとBB-8
翌朝のジャクー。墜落した帝国軍の旧式艦艇の残骸が砂に半ば埋もれた荒野で、若い女性レイは一本のブラスター式電気棒を頼りに暮らしている。残骸の内部に分け入ってはチタンの部品を回収する日々だ。住まいは横倒しになった旧式四脚歩行兵器AT-ATの胴体。集めた部品を村の取引業者ウンカー・プラットのもとへ運び、わずかなポーション・パック(即席食料)と交換する——それが彼女の毎日である。両親の帰りを待ち続けていると本人は言うが、いつ預けられ、なぜ置き去りにされたのかは語られない。
そんなレイの前に、砂地を転がる球状ドロイドが現れる。BB-8だ。胴体に絡みついた網からドロイドを救い出したレイは、高値で買い取りたがるウンカーの申し出を断り、行き場のないこのドロイドを連れて帰る。ジャクーの夜空を一筋の光跡が走り、星を見上げるレイの貌をひそかに照らす。
一方、ファースト・オーダーの旗艦フィナライザー艦上では、尋問のためポーが拘束されていた。レンはフォースで直接ポーの記憶を覗き、ディスクをBB-8に預けた事実を引き出す。脱出は絶望的に見えた。だがそのころ、良心の咎めに突き動かされたFN-2187が、捕らわれていたポーを解き放つ。「君が必要だ。パイロットがいる」とだけ言い置いて。二人は格納庫のTIEファイターを強奪し、艦から脱出する。ポーは彼に「フィン」という新しい名を与え、奇妙な戦友となった。だが艦の対空砲を浴びたTIEはジャクー上空で被弾し、砂漠へと墜落する。ポーは行方知れず、射出座席で砂に降り立ったのはフィン一人だった。
レイとフィン、ファルコン奪取
ジャクーの集落ニーマ・アウトポストで、レイは襲撃をかいくぐったBB-8と、これを連れたフィンに思いがけない形で出くわす。BB-8はフィンの腰に巻かれたポー・ダメロンのジャケットに反応し、レイは「このドロイドの持ち主か」と問い詰める。フィンはとっさにレジスタンスの一員を装い、レイは半信半疑のまま、その嘘に乗ってみせる。
そこへ、ファースト・オーダーの偵察隊が突き止めたBB-8の位置情報をもとに、TIEファイター隊が空爆を仕掛けてくる。三人は墜落したまま打ち捨てられた古い貨物船——のちに観客が知るとおり、ミレニアム・ファルコン号——へ飛び乗り、操縦経験の浅いレイがコックピットに座って強引に発進させる。航空管制の支援もないまま低空で飛び立ち、朽ちた旧式スター・デストロイヤーの船体の隙間を縫って追っ手をかわす。新世代の英雄が「いきなり」操縦席に着くことを高らかに宣言するような場面だ。フィンも後部砲座で初めてブラスター砲を握り、何とかTIEを撃ち落とす。
ファルコンが宇宙へ抜け出たのも束の間、巨大な貨物船にトラクター・ビームで引き寄せられてしまう。乗り込んできたのは、ほかでもないハン・ソロとチューバッカ本人だった。失ったはずの愛機を取り戻したハンは、「彼女が帰ってきた」と呟く。観客にとっても、長い歳月を経て幼なじみと再会する瞬間である。
ラスター事件と再会
ハンの近況は、決して穏やかなものではなかった。借金を重ねたうえ、カンジクラブとガヴァリアン・ハードライナーズという二つの組織から取り立てを受けている。船内には密輸目的で運んでいた三匹の凶暴な巨大触手生物ラスターが拘束されていたが、追っ手が乗り込んだ混乱のなかでケージが解き放たれてしまう。レイのとっさのハッキングがラスターを廊下に放ち、追っ手の半数を喰わせる。その隙にハン、チューバッカ、レイ、フィン、BB-8はファルコンで脱出する。
ようやく落ち着くと、ハンはBB-8が持つ手がかりの一部を目にして事態の重さを悟る。「あれはルークを見つける地図か」。だがBB-8のメモリにあるのは断片にすぎず、完全な地図はレジスタンスのアーカイブと照合しなければ完成しない。そこでハンは、古い友人マズ・カナタの城へ向かおうと提案する。マズは暗部の連絡網を握っており、レジスタンスへの仲介ができるというのだ。
ハンとレイのあいだには、早くも師弟めいた空気が芽生える。ファルコンを整備するレイの手際にハンは目を見張り、「君は本物の腕がある。副操縦士はどうだ」と冗談半分に持ちかける。それは後年の物語の伏線にもなる、ちいさな勧誘である。
タコダナ城と幻視
緑豊かな惑星タコダナに建つマズ・カナタの城は、密輸業者や賞金稼ぎ、船乗りたちが集う中立の酒場である。マズはオレンジ色の肌をした小柄なエイリアンで、千年以上を生き、フォースの動向を傍観しつづけてきた。彼女はレイをひと目見るなり、その目の奥に宿る「希望と痛み」を読み取る。
城の地下へ降りたレイは、見えない引力に導かれるまま、一本のライトセーバーが収められた箱を開ける。それはかつてアナキン・スカイウォーカーが造り、息子ルークが受け継ぎ、クラウド・シティで失われたはずの青いライトセーバーだった。柄に触れた瞬間、レイは強烈なフォースの幻視に襲われる——雨に濡れた廊下、震えるルークの手、燃える木立に立つカイロ・レンとその騎士団、雪の森で泣く幼い日の自分、そしてシスのように響くスノークの予言。
怯えるレイを追ってきたマズは、「あのライトセーバーは君を呼んでいる。受け取りなさい」と告げる。だがレイは怖気づき、「私はジャクーへ帰る。両親が戻る場所を離れたくない」と森へ駆け出す。マズは静かに、しかし重い声で言う——「君が待っている人々は、もう戻ってこないのだよ」。
城の上空には、すでにファースト・オーダーの艦隊が迫っていた。新兵器スターキラー基地から放たれた最初の閃光のなか、彼らはこの城へ強襲をかける。ハン、チューバッカ、フィン、BB-8は応戦するが、押し寄せるストームトルーパーの数に次第に追い詰められていく。
スターキラー基地の発射
時を同じくして、ファースト・オーダーが帝国の遺産をも凌ぐ破壊兵器として完成させたスターキラー基地が、ついに最初の標的に火を放つ。雪に覆われた惑星をくり抜いて築かれたこの基地は、近隣の恒星をエネルギー源に複数の星間ビームを超光速で放ち、ハイパースペースを越えて遠方の天体を一撃で粉砕する。
狙われたのは、新共和国の首都ホズニアン・プライムを擁するホズニアン星系だ。タコダナの空を異様な五本の閃光が遠い星系へと貫き、いくつもの惑星が一瞬で吹き飛ぶ。その光景を、観客は地上から見上げる視点と、滅びゆく星系の慟哭の双方で目撃することになる。新共和国艦隊はこの一撃で事実上壊滅し、レジスタンスは絶望的な少数派へと一気に追い込まれていく。デス・スターをはるかに上回る規模と、戦争映画さながらに描かれた住民の絶叫が、本作の悪役のスケールを観客の脳裏に深く刻みつける。
タコダナでの戦いとレイ拉致
タコダナ襲撃のさなか、死んだと思われていた仲間ポー・ダメロンが、救援に駆けつけたX-ウィング隊の一員として現れる。フィンはその姿を目にする。ジャクーから脱出していたポーは、現地の住民に救われ、レジスタンスへと帰還していたのだ。新型X-ウィング部隊の対地攻撃が、ストームトルーパーを次々となぎ倒していく。
森へ逃げ込んだレイは、追ってきたカイロ・レンと対峙する。「君は私の地図を持っている」と低く呟いたレンは、フォースでレイを麻痺させ、その身を拘束する。気を失った彼女を抱え上げ、シャトルでスターキラー基地へと連行していく——「彼女には何かある。私は知らねばならない」。
戦いの終わったタコダナに、レジスタンスの輸送機が降り立ち、一行を回収する。船から姿を見せたのはレイア将軍だ。群衆をかき分け、まっすぐハン・ソロのもとへ歩み寄る。交わす最初の言葉は短い——「ハン」「レイア」。ベン・ソロ=カイロ・レンを我が子として失った二人の再会は、台詞よりも沈黙のほうが雄弁である。「子供のことは取り戻せる、まだ」——レイアは静かに、そう信じ続けている。
尋問とフォースの目覚め
スターキラー基地。拘束されたレイは、マスクを外したカイロ・レンの尋問を受ける。ヘルメットを脱いだ素顔は若く、年齢相応に屈折した、しかし驚くほど人間的な表情をたたえている。「彼が本当は何者なのか」を、その顔が観客に強く印象づける。レンはフォースでレイの心を覗こうとし、「ハン・ソロを父のように見ているな」「孤独だ。眠ると海が見える」と次々に言い当てていく。
だが対決のさなか、レイは初めて自分のフォースを意識して使う。侵入してくるレンに逆ねじを掛け、「君は彼(ルーク)に何を求め、そして恐れている」と逆に読み返してみせる。動揺したレンは部屋を出ると、スノークに「想定外の力が、あの女に目覚めつつある」と報告する。
見張りに立つストームトルーパーを前に、レイは初めてフォース・マインド・トリックを試みる——「君は拘束を解いて武器をここに置き、扉を開けて立ち去る」。最初の試みは失敗に終わるが、繰り返すうちに兵は朦朧とし、命令に従って戸口を残したまま去っていく。レイの覚醒が、ここで初めて、観客の前ではっきりと形を取る。
スターキラー基地への潜入
レジスタンスの拠点ディカール。突如壊滅した新共和国に代わり、本作の戦いはレジスタンス対ファースト・オーダーの局地戦へと縮小していく。アクバー提督らレジスタンス首脳は、スターキラー基地から得たデータを、BB-8と元ストームトルーパーのフィンの証言と照合する。そして唯一の弱点を突き止めた。熱振動を制御するオシレーターを直撃すれば、連鎖反応を起こして星もろとも崩壊させられるのだ。
作戦はこうだ。ポーが率いるX-ウィング隊が基地表面から熱排出装置の蓋を吹き飛ばし、その隙に地上からハン、チューバッカ、フィンの三人が潜入してシールド発生装置を内部から破壊する。フィンの本心は「レイを助けたい」、その一点にある。ハンはそれを見抜いたうえで引き受けた。「君の理由はそれでいい。ただし俺たちもそこに乗る」。
雪に覆われたスターキラー基地に潜入した三人は、フィンの元上官キャプテン・ファズマを脅し、脅威レベルとシールドを下げるコードを入力させると、巨大なゴミ・シューターへ突き落として封じ込める(彼女がのちにどう脱出したのかは語られず、続編へ持ち越される伏線となった)。基地内で偶然レイと合流したフィンとハンは、彼女が単独で脱獄してのけたことに目を見張る。
父と子の橋
シールド発生装置を内部から破壊した一行は、X-ウィング隊が熱排出口へ取りつくまでの時間を稼ぐべく、基地中央の巨大な通気立坑へと降りていく。そこに架かるのは、両側を奈落に挟まれた一本の細い橋だ。
離脱しようとするレイ、フィン、チューバッカを残し、ハンはひとり橋の上に立つ。霧の向こうから現れたのは、カイロ・レンだった。父は息子を、生まれたときの名で呼ぶ——「ベン」。「家に帰ろう。母さんが待っている」。
レンは苦悶の表情を浮かべ、「父さんに頼みがある」とつぶやく。ライトセーバーの柄を、父の手に預けるように差し出す。観客の半数には、それが赦しを請う仕草に映る。だが次の瞬間、彼はそのまま刃を発火させ、父の胸を貫いた。発火した十字型の真紅の刃が、橋の向こうへと突き抜ける。ハンは息子の頬に手を当て、彼を見上げたまま、無言で立坑の闇へと落下していく。
上方の足場でその一部始終を見届けたチューバッカは、絶叫とともにボウキャスターでレンの脇腹を撃ち抜く。レンは膝を突くが、致命傷ではない。レイは涙を堪えきれぬまま、その後の戦いへと駆け出していく。本作の物語的な決定打——シリーズ最大の英雄のひとりが、もっとも近しい者の手で命を落とす——は、ここで打たれる。
森の決闘とライトセーバー
雪の森を駆け抜けるレイとフィン。脱出をはかる二人の前に、肩から血を流したカイロ・レンが立ちはだかる。怒りに任せて木々を引き裂きながら追ってきたレンは、まずフィンと刃を交える。クロスガード型の赤いライトセーバーが、フィンの構える青いスカイウォーカーのライトセーバーを押し切り、その背中を斜めに切り裂く。フィンは雪の中へ崩れ落ちる。レンはそのまま刃を呼び寄せようとする——だが、宙を舞ったライトセーバーは、伸ばしたレンの手をすり抜け、レイの手の中へ飛び込んでいく。
ここで初めて、レイは自ら武器を取って戦う。ヨーダもケノービもいない森のなかで、頼れるのは本能と棒術の経験だけ。それを支えに、彼女は暗黒面の使い手と打ち合う。レンは何度も「教えてやろう」と誘惑し、勝てると確信した瞬間に押し込まれていく。やがてレンを崖際まで押し戻したレイは、ライトセーバーを振り抜き、彼の額から右肩にかけて深い傷を負わせる。
戦いの決着の直後、二人を隔てる崖が地殻変動とともに大きく裂け、レイはレン側へ進めなくなる。そこへチューバッカがファルコンを横付けし、レイは負傷したフィンを抱えて飛び乗る。スターキラー基地は、ポーが熱排出口へ放った魚雷の連鎖反応で内側から崩れはじめ、星ごと潰れる閃光のなか、ファルコンは光速へ跳ぶ。一発で星間文明を消し去った兵器が、たった一度の戦いで自らも消えていくのだ。
終盤
ディカール基地に帰還した一行は、戦いの代償と、勝利と呼ぶにはあまりに小さな成果を噛みしめる。レイア将軍はレイを抱きしめ、夫ハンを失った悲しみを、言葉ではなくその腕の重さで分かち合う。フィンは医療カプセルの中で眠り続け、いつ目覚めるとも知れない。
そのとき、長らく待機モードに入っていたR2-D2が、突然起動する。レイア・オーガナや旧友C-3POの呼びかけにも応じなかったこのドロイドが、その内部にルーク自らの手で残された銀河系地図の大部分を保持していたのだ。BB-8が持ち帰った断片と組み合わせると、地図は一本の航路を指し示す——銀河の縁、人の住まぬ海に浮かぶ古代の孤島、ジェダイ寺院の惑星アクト=トゥへと続く航路である。
レイは、チューバッカ、R2-D2と共にミレニアム・ファルコンに乗り込む。その旅立ちは、レイア将軍の祝福と、短く交わした視線によって見送られる。一方、レンの傷を縫合台で塞いだスノークは、彼を呼び寄せて「儂のもとへ来い。彼の修行を完成させよう」と告げる——父殺しと引き換えに、ベン・ソロは暗黒面の弟子としての完成を求められるのだ。
ファルコンはハイパースペースを抜け、雲が低く垂れこめた海の惑星へと降り立つ。レイは古い石段を、ひと足ひと足、頂上へと登っていく。崖の頂きには、頭からマントを被り、海を見つめる老人が立っている。レイは肩に提げていた青いライトセーバーを取り出し、ゆっくりと、その柄を相手に向けて差し出す。老人が振り返り、視線が交わる——その顔は、年老いたルーク・スカイウォーカーを演じるマーク・ハミルのものだった。台詞は一切ない。この数十秒のショットをもって、本作は幕を閉じる。
登場要素
本作に登場・言及される主な要素を分類して紹介する。固有名詞はシリーズ全体を読み解く手がかりになるが、初見ですべてを覚える必要はない。それぞれの場面で人物が何を選び取るのかに目を向ければ、自然と頭に入っていくはずだ。
- レイ
- フィン(FN-2187)
- ポー・ダメロン
- カイロ・レン/ベン・ソロ
- ハン・ソロ
- レイア・オーガナ将軍
- ルーク・スカイウォーカー
- チューバッカ
- C-3PO
- R2-D2
- BB-8
- 至高指導者スノーク
- アーミテイジ・ハックス将軍
- キャプテン・ファズマ
- マズ・カナタ
- ロー・サン・テッカ
- ウンカー・プラット
- アクバー提督
- ジェス・パヴァ
- ニーン・ナム
- テミン・ウェクスリー
- ジョー・コーティ
- 人間
- ウーキー
- マズの種族(小柄な千年種)
- ロダン
- イシ・トゥブ
- アバドネドン
- クリスタル・フォックス(ヴァルプテックス)
- 様々なエイリアン
- BB-8
- R2-D2
- C-3PO(赤い義腕)
- ファースト・オーダー尋問用フローティング・ドロイド
- ニーマ・アウトポストの作業ドロイド
- メディカル・ドロイド
- ラスター
- ハッピーボング
- ステアダー
- ナイトワッチャー・ワーム
- ニマ・アウトポストのラックス
- アクト=トゥの夜行性鳥類
- タコダナ湖の魚
- ジャクー(ニーマ・アウトポスト、トゥアヌル村、墜落スター・デストロイヤー)
- タコダナ(マズ・カナタの城)
- ディカール(レジスタンス基地)
- スターキラー基地(イルム改造)
- ホズニアン・プライム(共和国首都、破壊)
- アクト=トゥ(最古のジェダイ寺院)
- フィナライザー(カイロ・レンの旗艦)
- 新共和国
- レジスタンス
- ファースト・オーダー
- ナイツ・オブ・レン
- シス(言及)
- ジェダイ・オーダー(旧称)
- 賞金稼ぎギルド
- カンジクラブ
- ガヴァリアン・ハードライナーズ
- ミレニアム・ファルコン
- X-ウィング(T-70型)
- TIE/foファイター
- TIE/sf スペシャル・フォース
- アップシラン・コマンド・シャトル(カイロ・レンのコマンド・シャトル)
- リザレクト型強襲輸送機
- スター・デストロイヤー〈フィナライザー〉
- AT-AT(廃墟)
- クォッド・ジャンパー
- ホッパー型砂上スピーダー
- イレヴァス(マズの船)
- ライトセーバー
- カイロ・レンのクロスガード・ライトセーバー
- ブラスター
- Z6 ライオット・コントロール・バトン
- 尋問機
- コミック・コード
- ハイパードライブ
- シールド発生装置
- スターキラーのオシレーター
- BB-8の地図ディスク
- フォース
- ライト/ダーク両側面の覚醒
- フォース・マインド・トリック
- フォース幻視(フォース・ヴィジョン)
- フォースを通じた精神侵入
- フォースを通じた呼びかけ
- フォース・ボンド(暗示)
- ジェダイ最後の地(アクト=トゥ)
16主要登場人物
本作の物語は、新世代の三人と、彼らに立ちはだかる暗黒面の若き使い手、そして両者の橋渡しとなる旧三部作の英雄を軸に展開する。旧作の登場人物は前面に立ちながらもやがて物語から退き、新たな主役たちがその後を受け継いでいく。世代交代のドラマとしての側面も色濃い一作だ。
レイ
ジャクーでひとり暮らす拾い屋。いつか両親が必ず帰ってくると信じ、あの砂漠を離れずに育った。機械の構造を直感で読み解く才に恵まれ、耳にしたことのある言語ならその先まで聞き分ける。フォースの修行は一切受けていない。それでもライトセーバーに触れただけで強烈な幻視に襲われ、囚われの身となった先では初めてのフォース・マインド・トリックを成功させ、ついには暗黒面の使い手と斬り結び、これを退けてみせる。
彼女の出自は、本作では明かされない。タコダナで「両親はもう戻ってこない」とマズに告げられても、レイは納得しないまま物語を先へと進めていく。本作のレイは「待つ娘」から「迎えに行く娘」へと、その姿勢を変えていく存在だ。そして最後にライトセーバーを差し出す相手は、ずっと探し求めていたはずの両親ではなく、ジェダイの先達なのである。
関連リンク
フィン/FN-2187
幼児期に攫われ、ファースト・オーダーで衛生兵として訓練を受けたストームトルーパーである。冒頭で下された虐殺命令を遂行できず、その夜のうちにポーを脱獄させ、自らも軍に背を向ける。「英雄」という言葉に惹かれてはいるものの、本心はただ生き延び、レイを取り戻すことだけにある。スターキラー基地への潜入を志願する動機も、「兵器を破壊する」ためではなく、「彼女を奪い返す」ためだ。
観客から見た彼の魅力は、嘘と本音の境目があまりにあからさまな点にある。レジスタンスの一員を装い続けたフィンが、やがて本物の戦士として剣を取るその瞬間まで、恐れと優しさは絶えず画面に晒されている。ジョン・ボイエガは、戸惑い、笑顔、恐怖、誠意が次々と入れ替わる表情で、シリーズにこれまでにない肌触りの主人公像を持ち込んだ。
関連リンク
ポー・ダメロン
レジスタンスきっての腕利きパイロットで、ブラックワン号と呼ばれるT-70 X-ウィングを操る。物語の冒頭でカイロ・レンに捕らえられ、フィンの手で救い出される。だが墜落から生き延び、終盤の空中戦では指揮を執る。観客の前に姿を見せるのは前半と後半の二か所だけ。それでも「彼が生きていてくれてよかった」と思わせるだけの感情の積み重ねが、脚本のなかに緻密に仕込まれている。
オスカー・アイザックの軽妙な持ち味は、シリーズに新たな風通しのよさをもたらした。BB-8の頭を撫でながら「いい子だ」と声をかける一連の仕草、フィンにとっさに新しい名を授ける即興、ホロを撃つ前にこぼす短い口癖——彼の存在そのものが、シリーズの肩の力をふっと抜いてみせる。
関連リンク
カイロ・レン/ベン・ソロ
ハン・ソロとレイア・オーガナの息子。ルーク・スカイウォーカーのもとでジェダイの修行に励んでいたが、やがて内なる暗黒面に魅入られ、スノークの呼び声に応じて師を裏切った。本作の時点ではナイツ・オブ・レンの長を名乗り、ファースト・オーダーにあって暗黒面の力をふるう。
彼の特異さは、ベイダーのように完成された悪としてではなく、光と闇に内側から引き裂かれる若者として描かれた点にある。マスクを脱いだ素顔は驚くほど人間的で、声は震え、感情を抑えきれない瞬間には手近な機材をライトセーバーで滅多斬りにする。父を手にかけることで「光を消す」つもりが、その後の負傷とレイへの敗北は、かえって彼の自我の不安定さを露わにしていく。アダム・ドライバーの繊細な芝居は、こうしたカイロ・レンを悪役の定型から救い出し、シリーズ全体の感情を担う中心人物の一人へと押し上げた。
関連リンク
ハン・ソロとチューバッカ
旧三部作の伊達男ハンは、本作では密輸業に舞い戻り、息子が暗黒面へ堕ちたのを機にレイアと別れて暮らしている。年齢相応の疲れと諦めをにじませながらも、レイの才能を見抜いて副操縦士に誘うなど、若い世代へ向ける目線は静かに優しい。観客にとっては、シリーズの「兄貴分」が「父」の役を引き受け、そして散っていく物語でもある。
息子に名を呼びかける橋上の場面は、ハンというキャラクターの集大成として演じられている。武器を捨て、頬に手を当て、息子の刃を受け入れる——ハリソン・フォードがあの場所で見せた静かな目は、シリーズの一つの時代の終わりを刻む芝居だ。チューバッカは旧来の盟友のまま変わらず、ハンを失った直後にも臆せずレンを撃ち抜き、エンディングまでレイの隣に立ち続ける。
関連リンク
レイア・オーガナとルーク・スカイウォー…
レイアは「姫」「上院議員」を経て、いまや新共和国の枠外で動く民兵組織レジスタンスを率いる「将軍」だ。我が子ベンを暗黒面に奪われた母として、軍を率いる指揮官として、夫ハンを失った妻として——あらゆる立場の重みが、本作では彼女ひとりに集中する。タコダナの戦いを経たハンとの再会、終盤の抱擁、そしてR2を起動させる場面での祈り。いずれも台詞ではなく、その姿勢こそが雄弁に語る。
ルーク・スカイウォーカーは物語の中心にいながら、最終ショットを除いて一度も姿を見せない。台詞すらない。だが、その不在こそが本作を動かす原動力だ。登場人物は皆、彼を語り、彼を探し、彼の居場所を記した地図を奪い合う。ラストでレイが差し出すライトセーバーへの沈黙——その答えは、次作『最後のジェダイ』へと持ち越される。
スノーク/ハックス/ファズマ/BB-8
至高指導者スノーク(アンディ・サーキスのモーション・キャプチャー)は、ファースト・オーダーの背後でカイロ・レンを操る、巨大な暗黒面の使い手だ。本作では立体通信に映る巨像としてのみ姿を見せ、その正体は最後まで謎に包まれる。アーミテイジ・ハックス将軍(ドーナル・グリーソン)は、若く神経質で野心に燃える軍人。スターキラー基地の発射台で兵を熱狂させる演説をぶつ場面は、旧世紀の独裁を明確に下敷きにした映像だ。銀色の鎧をまとうストームトルーパー隊長キャプテン・ファズマ(グウェンドリン・クリスティ)は、出番こそ短いものの、その冷酷な存在感が観客の記憶に深く刻まれる。
BB-8は、本作でシリーズに新たに加わった球状ドロイドである。頭部だけが胴体の上を独立して回転する独特の動きは、CGではなく実物大の遠隔操作ロボットで再現され、撮影現場では即興的なリアクションが数多く取り入れられた。R2-D2と並び、本作以降の続三部作を象徴する愛されキャラクターとなった。
関連リンク
舞台と用語
舞台となるのは、おもに五つの惑星だ。旧帝国の戦場跡が今も砂に埋もれる砂漠の星ジャクー、マズの城が建つ古い森と湖の星タコダナ、レジスタンス本拠地のジャングルに覆われた星ディカール、雪と氷に閉ざされた極寒の人工要塞スターキラー基地、そして終盤の舞台となる、古代ジェダイの石塔が海から立ち上がる孤島の星アク=トゥ。これらの惑星は、登場人物の心理状態とそれぞれ一対一で響き合うように設計されている。
用語の面で押さえておきたいのは、二つの系統だ。ひとつは旧三部作との連続性を示すもの——ライトセーバー、ハイパードライブ、ジェダイ、そしてシスの遺産。もうひとつは本作で初めて広く語られる新概念で、ファースト・オーダー、レジスタンス、スターキラー基地、ナイツ・オブ・レンがこれにあたる。本作は続三部作の世界観をあえて説明し尽くさず、固有名詞をオープニング・クロールと会話の断片だけで提示していく。観客は『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』を経て、その空白を少しずつ埋めていくことになる。
25制作
ディズニーがルーカスフィルムを買収した後、初めて制作された実写のスター・ウォーズ映画が本作である。企画の段階から、並々ならぬ重圧を背負っての出発となった。以下では、企画から特撮に至るまでの主な経緯を順を追って整理していく。
企画と脚本
2012年、ジョージ・ルーカスはルーカスフィルムをウォルト・ディズニー・カンパニーへ約40億ドルで売却し、続三部作のトリートメントを手渡した。ディズニーと、ルーカスフィルムの新たな代表に就いたキャスリーン・ケネディは、そのトリートメントを下敷きにしながらも、より大胆に作り変える方向で企画を進めていく。
脚本は当初、ピクサー出身でアカデミー賞ノミネートの経歴を持つマイケル・アーントが手がけていた。だが製作スケジュールと方向性の都合から交代となり、最終的にローレンス・カスダン(『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』の脚本家)とJ・J・エイブラムスのコンビが書き直すこととなった。物語の骨格——ルークの失踪を起点に新キャラクターが立ち上がる構成、新旧世代の橋渡し、暗黒面に堕ちた血族——は、この過程で固まっていった。
本作の構成は、旧三部作の幕開けである『新たなる希望』との反響を意識的に組み込んでいる。砂漠の惑星から物語が始まり、捜索対象のデータを携えたドロイドが主人公と出会い、年老いた導き手とともに古い宇宙船に乗り込み、巨大な球状兵器の弱点を撃ち抜きに向かう——。この骨子は明確に意図された対比であり、批判の的にも、擁護のよりどころにもなった。
キャスティング
新たな主役レイを演じるのは、長編映画の主演経験がなかった英国の若手デイジー・リドリー。大規模なオーディションを勝ち抜いての抜擢だった。フィン役には英国出身のジョン・ボイエガ(『アタック・ザ・ブロック』)、ポー・ダメロン役には当時すでに人気を集めていたオスカー・アイザックが起用された。そしてカイロ・レン役には、テレビドラマ『GIRLS/ガールズ』で頭角を現したアダム・ドライバーが選ばれている。
旧三部作からは、ハリソン・フォード(ハン・ソロ)、キャリー・フィッシャー(レイア)、マーク・ハミル(ルーク)、ピーター・メイヒュー(チューバッカ/一部の動きはジューナス・スオタモが代役を務めた)、アンソニー・ダニエルズ(C-3PO)、ケニー・ベイカー(R2-D2のクレジット/実演はジミー・ヴィー)が再集結した。さらにマックス・フォン・シドーがロー・サン・テッカ、ルピタ・ニョンゴがマズ・カナタ(モーション・キャプチャー)、アンディ・サーキスがスノーク(モーション・キャプチャー)として加わっており、こうした顔ぶれからも本作の俳優陣の厚みがうかがえる。
撮影とロケ地
撮影監督はダニエル・ミンデルが務め、フィルム(コダックの35mm、一部はIMAX 65mm)で撮影された。エイブラムスは「スター・ウォーズはフィルムの質感を保つべきだ」と一貫して訴え、シリーズ後期の作品としてはほぼ初めて、フィルム撮影を全面的に復活させた。
撮影地は世界各地に及ぶ。ジャクーの砂漠はアラブ首長国連邦のアブダビと、パインウッド・スタジオに組まれた巨大な屋外セット。タコダナの森林部はイギリスのダービーシャーとパインウッドの屋内。スターキラー基地の屋外はアイスランドのスカフタフェットル氷河、レジスタンス基地(ディカール)はウェールズのカンブリア山岳地帯で撮影された。そしてラスト・ショットのアク=トゥには、アイルランド沖に浮かぶ世界遺産スケリッグ・マイケル島が選ばれた。本物の石段と石塔を背景にしたこのラスト・ショットは、CGに頼らないスター・ウォーズへの回帰を象徴するものとなった。
視覚効果と実物造形
視覚効果の中核を担ったのはILM(インダストリアル・ライト&マジック)だが、本作が掲げた明確な制作方針は「実物造形への回帰」だった。BB-8は手持ちのリモコンで動く実物大の球体ロボットとして製作され、レッドカーペットや会見の場にそのまま登場できるほど、現実の機構として完成された。マズ・カナタやスノークといったモーション・キャプチャーを用いるキャラクターはあるものの、レジスタンスやファースト・オーダーの兵士、各種エイリアン、メカニカルな小道具の大半は、本物のクリーチャー・スーツや義腕、機械仕掛けのパペットで作り上げられている。
もちろん大規模なX-ウィング戦やスターキラー基地の崩落、ホズニアン星系の破壊などはデジタルで合成された。だが、舞台の重みの多くは、実在のセットと屋外撮影から生まれている。本作はアカデミー視覚効果賞、編集賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞の5部門にノミネートされた(受賞は逃している)。
音楽と音響
音楽はジョン・ウィリアムズが続投した。フォース、レイアのテーマ、スカイウォーカー一族のテーマ、インペリアル・マーチといったシリーズおなじみの主題を引用しつつ、本作のために新たな旋律をいくつも書き下ろしている。「レイのテーマ」「カイロ・レンのテーマ」「レジスタンスのテーマ」「ジェダイの足跡」などは、続三部作を通じて繰り返し展開される主題となった。
なかでも「レイのテーマ」は、寂しさと希望をあわせ持つ単純で覚えやすい旋律だ。ジャクーで生きる彼女の姿から、物語の最後にライトセーバーを差し出す瞬間まで、登場人物の心情に寄り添いながら何度も姿を変えていく。サウンドデザインは旧作から引き続きスカイウォーカー・サウンドが担当し、TIE/foの甲高い新たな駆動音や、カイロ・レンのクロスガード・ライトセーバーの不安定な発火音など、新時代を彩る音の語彙が加わった。
編集と公開準備
編集を手がけたのはメアリー・ジョー・マーキーとマリアン・ブランドン。ともにエイブラムスとは『LOST』時代から組んできた長年の盟友で、本作ならではの「短いショットを畳みかけ、その連なりを物語の感情に正確に重ねていく」リズムは、二人の仕事に多くを負っている。ハン・ソロが命を落とす橋上の場面は、夕焼けから黒へと沈んでいく照明の変化と、観客の視線をどう導くか、その双方を編集段階で何度も練り直した末に生まれた。
本作の核心、とりわけハン・ソロの死、そしてラストショットでのルークの再登場、レイの主役格という設定は、撮影現場でも一部にしか明かされなかった。公開直前まで予告編にもポスターにも一切姿を見せず、徹底した情報統制が、公開初週の世界的な熱狂を最大限にまで押し上げたのである。
32公開と興行
2015年12月18日に世界同時公開された本作は、開幕から記録を塗り替える勢いを見せた。北米初週の興行収入は約2億4800万ドルで歴代最高、世界初週も歴代最高を記録し、最終的に北米約9億3600万ドル、全世界約20億7100万ドルを稼ぎ出した。公開当時、北米歴代第1位、世界歴代第3位という堂々たる興行成績である。
第88回アカデミー賞では編集賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞の5部門にノミネートされたが、受賞は逃した。批評面では集計サイトで高い評価を集め、新世代キャラクターと旧キャストの再会、実物造形への回帰、そしてハン・ソロの死がもたらす物語的な賭けが支持された。一方で『新たなる希望』との構造的な相似を「安全策」と見る声も、初公開時から絶えなかった。
日本国内では2015年12月18日に全国公開され、最終的に約116億円超の興行収入を記録、その年の洋画No.1に輝いた。続三部作の入口として、国内のシリーズ視聴人口を一気に押し広げた功績も大きい。
公開素材と各種版
本作には、旧三部作のような大規模な「特別篇」改訂は存在しない。35mmフィルムで撮影された劇場版がそのまま正典として扱われ、デジタル4K UHDブルーレイ、Disney+での配信版にも、編集・色調・台詞の差はほぼ無い。
DVD/ブルーレイ初回盤、コレクターズ盤、4K UHD盤には、撮影風景を追ったドキュメンタリー「Secrets of The Force Awakens: A Cinematic Journey」、削除シーン集(ニーマ・アウトポストでのレイの追加場面など)、BB-8の制作記録、デイジー・リドリーのオーディションテープなどが収録された。撮影現場が実物造形へ回帰しようとした努力を視覚的に検証できる、貴重な資料といえる。
34批評・評価・文化的影響
本作は『スター・ウォーズ』というブランドを、ジョージ・ルーカスの退場を経てなお生きた現代的なフランチャイズとして再起動させた、商業的にも文化的にも決定的な一作である。封切から数か月にわたり、世間の話題はBB-8、レイのコスプレ、カイロ・レンのライトセーバーで埋め尽くされた。その影響は玩具やアパレル、さらには遊園地施設の改修にまで広く及んでいった。
一方、批評をめぐる議論は今日まで続いている。肯定派は、旧作の感情を呼び戻しつつ、女性主人公と黒人ストームトルーパーという新しい中心像を打ち出した世代交代の宣言だと評価する。否定派は、物語の構造が『新たなる希望』を強くなぞりすぎており、新鮮味に欠けると指摘する。多くの観客にとっては、その両方が同時に正しい。本作は安全策と賭けを一本のなかに同居させた映画なのである。
物語の面では、ハン・ソロを冒頭の一作で退場させたことが、続三部作の倫理的な重みを決定づけた。「子が親を殺す」というモチーフは、エピソード9『スカイウォーカーの夜明け』に至るまで、シリーズの中心テーマとして反復され、反転され続ける。レイの覚醒、フィンの脱走、そしてカイロ・レンの仮面剥ぎは、後年の『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』だけでなく、ストリーミング展開の各作品における人物造形にも影響を残している。
舞台裏とトリビア
BB-8はすべてがCGで描かれたわけではない。本撮影の現場には、リモコンで実際に転がる実物大のロボットが用意され、ニーマ・アウトポスト、タコダナ、ディカール基地の各シーンで俳優とともに演技した。観客には不可能としか見えないあの頭部の独立した回転は、磁気を使った精巧な機構によって物理的に実現されている。レッドカーペットの会見にも、本物のBB-8が姿を見せた。
ラスト・ショットを飾るアク=トゥの石段は、アイルランド南西部沖に浮かぶ小島スケリッグ・マイケルに実在する、中世の修道院の石段である。世界遺産でもあり撮影許可は厳しく、現地での撮影はわずか数日に限られた。雨と霧に閉ざされることの多い島で、ハミルの登場ショットを撮れた好天は奇跡的だったと、現場スタッフが後に語っている。
カイロ・レンが手にする十字鍔(クロスガード)型のライトセーバーは、企画段階で、物理的に不安定なその発火形態をどう表現するかが議論になった。最終的に、コイル状のクリスタルが破裂しかけているという設定のもと、左右の小刃は「漏れ出た」エネルギーとして視覚化された。柄を握る手の周りにブレード型の小さなガードを立てるこの演出は、彼の精神状態の「制御の効かなさ」を視覚で語る装置になっている。
ハリソン・フォードは本作の撮影中、パインウッド・スタジオで油圧式の扉の事故に巻き込まれ、左脚を骨折した。撮影は彼の回復を待つために一時中断されたが、最終版では負傷の影響をほとんど感じさせない演技へと編集されている。後にスタジオ側は安全上の責任を認め、罰金を支払った。
36テーマと解釈
本作の中心テーマは「継承」である。三十年前のヒーローたちが一斉に老いた姿で再登場する——その事実そのものが、観客にも作中人物にも、世代交代の時が来たことを突きつける。レイがライトセーバーを掴み、フィンが青い刃を抜き、ポーがX-ウィングを駆る。それぞれが旧作のアイコンを引き継ぐ身振りだ。そして終盤、待ち続けた古いドロイドが「もうそろそろ動いてよい」と判断したかのように、R2-D2が覚醒する。
もう一つの軸は「失われた家族の探索」だ。レイは両親を、フィンは奪われた幼少期を、カイロ・レンは父との関係をそれぞれ抱えている。本作はそれらを解決しない。むしろ「探すこと」そのものを主題に据える。ライトセーバーがレイの手に飛び込む瞬間、レイが両親への約束を一度諦めて旅立つ瞬間、ベンが父を呼び戻そうとしながら自ら断ち切る瞬間——どれもが「家族とは血ではなく選び取るものだ」という続三部作のテーゼを萌芽させている。
形式の面では、旧作との反復が明白に組まれている。砂漠の若者、捜索対象を運ぶドロイド、酒場での出会い、年配の指南役、巨大な球状兵器、父と子が橋上で対面する場面——これらの相似は批判の的になる一方で、約三十年ぶりに帰ってきた観客への「同じメロディから始めよう」という挨拶でもある。エイブラムスとカスダンが選んだのは、リスクを取りに行く前に、まず観客の身体へ古いリズムを再導入することだった。本作の真の賭け——ハンの死、カイロ・レンの素顔、女性主人公の覚醒——は、その安全な土俵の上にこそ置かれている。
37見る順番
初見なら、まず旧三部作(エピソード4〜6)を観てから本作に入るのが最も自然だ。ハン、レイア、ルーク、チューバッカ、R2-D2、C-3POへの思い入れが積み重なっているほど、冒頭の「彼が消えた」「彼らは老いている」という衝撃が深く効いてくる。プリクエル三部作(エピソード1〜3)は、のちに語られる「アナキンとパドメ」や「銀河共和国の崩壊」を理解する助けになるが、本作を楽しむためだけなら必須ではない。
本作を観終えたら、迷わず『最後のジェダイ』へ進みたい。ラストでレイがアクト=トゥの崖に立ち尽くしたまま物語は宙吊りで終わるため、続けて鑑賞してこそ一連の感情がほどけていく。続三部作を通しで観たあと、もう一度本作へ戻れば、レイ、フィン、ポーをめぐる伏線の張り方がいかに周到だったかに気づくはずだ。
38よくある質問
「あらすじだけ知りたい」なら、ジャクーでの出会い、ハン・ソロとの合流、タコダナでの幻視、スターキラー基地への潜入と崩落、そしてレイがルークの元へ向かう最終ショット——この流れを押さえれば十分だ。「結末・ネタバレまで知りたい」なら、核となるのは次の三点である。ハン・ソロが、カイロ・レンこと我が子ベン・ソロの手にかかって命を落とすこと。レイが暗黒面の使い手と斬り結び、勝利すること。そして最終ショットで、レイがルーク本人と再会を果たすこと。この三つを押さえておきたい。
「カイロ・レンの正体は」「スターキラー基地はどこに築かれたのか」「BB-8は本物のロボットなのか」——本作にまつわるよくある疑問の多くには、本記事の各章の本文ですでに答えてある。一方、「レイの両親」については、本作であえて明かさない設計だ。続三部作の二作目・三作目を経て、ようやく答えにたどり着く構成になっている。
39参考資料・脚注
作品名、キャラクター名、画像、および各種権利は、それぞれの権利者に帰属する。公開年や興行成績、制作・配信状況、外部の評価は変動しうるため、視聴の前に公式サイトおよび各データベースの最新情報を確認されたい。なお本記事の本文は、各種の公開情報をもとに、Anna Movies独自の日本語記事として構成したものである。