人物
ボークセン
カキン帝国王室軍の一等兵で暫定ハンターのボークセン。ティア3へ移った先でエイ=イ一家に拉致され、モレナ=プルードとの交渉ゲームの末に加入した、特質系の素質を持つ人物。
ボークセンは、『HUNTER×HUNTER』の王位継承編に登場するカキン帝国王室軍の一等兵で、ハンター協会の暫定ハンターでもある。初登場の第394話では「準協会員」と表記され、これは暫定ハンターに用いられるのと同じ語である。単行本では第38巻にあたる。当初は新大陸へ向かう船ブラックホエールのティア1に配属され、王室区画の警備に就いていた。しかしギッパー伍長が出した転属申請の結果として彼と配置を入れ替え、ティア3勤務となる。移った先のティア3で、第407話にあたる場面でエイ=イ一家に拉致され、本人の意思に反して加入候補者に据えられた。
聡明で観察眼が鋭く、突発的な事態でも取り乱さずに筋道を立てて考える。望みは重い責任を負わない平穏な暮らしで、その願いが行動の基準になっている。拉致された後は、エイ=イ一家を率いるモレナ=プルードから12枚のカードを使う交渉ゲームを持ちかけられ、加入するか否かを賭けた長い読み合いを演じた。モレナは、およそ3000人に1人といわれる特質系の素質をボークセンに見いだしているが、能力そのものはまだ与えられていない。ゲーム終盤では自ら仕掛けた不正が引き金となり、意に反して「YES」を最終回答に選ばされる。第410話の時点では、本人の意思によらないままエイ=イ一家に属する。

ボークセン 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

モレナとの交渉ゲームに臨むボークセン

カードを選ぶボークセン

交渉の結論へ進むボークセン
基本情報
| 所属・役割 | カキン帝国王室軍の一等兵で、ハンター協会の暫定ハンター。第410話の時点では、本人の意思によらないままエイ=イ一家に属する。 |
|---|---|
| 初登場 | 第394話(単行本第38巻) |
| 状態 | 生存 |
| 念系統 | 特質系。モレナ=プルードに素質を見いだされたが、能力そのものはまだ与えられていない。 |
| 船内での配置 | 当初はブラックホエールのティア1で王室区画の警備に就き、ギッパー伍長の転属申請により彼と配置を入れ替えてティア3へ移った。 |
| エイ=イ一家での段階 | レベル0。加入の三条件のうち、エイ=イ構成員による殺害を目撃する条件だけが未了で、これを満たすと正式にレベル1になる。 |
| 暫定ハンターの資格 | ハンターとしての身分と免許は、新大陸への航海が終わった後に失効する。 |
| 主な関係 | 同じ仲間内にオトシンとモーモリーがおり、上官はギッパー伍長。ティア1ではテータと親しく、サルコフの様子の変化にも気づいていた。拉致後はモレナ=プルードと、その配下のオラルジに向き合った。 |
人物像
ボークセンは大きく色の濃い目と、耳の下まで届いて肩には掛からない明るい色の髪を持ち、その毛先は外側へ跳ねている。身に着けているのはカキン兵の標準的な軍装である。性格は聡明で観察眼が鋭く、長く気楽に流れていける人生という目標へ向けて要領よく立ち回る。不意に予期しない状況へ置かれても比較的落ち着きを保ち、急変にはっきり戸惑う様子を見せないまま論理的に考えを進められる。友人たちの輪の中では説得力があり、影響力を持つ位置にいる。
彼女が望むのは、世界の片隅で送る慎ましく平凡な暮らしである。貢献はしても多くの責任は負わない位置取りで、本人の言い方を借りれば、軍の予備校の教官と副長官付きの第四秘書との中間あたりにあたる。カキンが存続し平穏であってほしいという願いも、義務感や責任感から出たものではない。煩わされない生活を送れる見込みが自分にあるかどうかを映していた。何より正しさを優先する性質ではないものの、相応の良識は持ち合わせ、犯罪に関わることは望まない。学力についても本人の自認があり、士官学校に進める程度の頭はあると考えている。
観察力の高さは繰り返し示される。自分たちの部隊の刺青を彫った職人と、モレナ=プルードとのつながりに気づいたのはその一例である。念という言葉を聞いたテータとサルコフの反応から、それが重い意味を持つ事柄だと察するなど、人の機微を読む力も働かせている。相手の反応を読むことに長けており、質問に答えが返ってこない場合でも、その沈黙そのものから情報を引き出せる。念が機密扱いだと知りながら踏み込んで調べようとしていたが、そうする機会は与えられなかった。
一方で、決められた枠を押し広げることをためらわない面もある。重い結果のかかったカードゲームにモレナと臨んだ際には、許される範囲を試し、不正を仕掛けることもいとわなかった。モレナの生い立ちを聞いたときには、自分にとって張り詰めた不利な状況で顔を合わせた相手であるにもかかわらず、その育ちに同情を寄せている。ただしその同情は、求められたとおりに引き下がってモレナへ手を貸す動機にはならなかった。
作中での動向
ボークセンが関わる出来事は航海7日目から動き出す。エイ=イ一家の後ろ盾である第4王子ツェリードニヒのもとへシャ=ア一家から連絡が入り、下層ティアで相次ぐ大量失踪へのエイ=イの関与と、新たな頭領モレナ=プルードの居場所について問い合わせがあった。ツェリードニヒは確認したうえで、モレナはVVIPエリアにはいないと伝え、これとは別に、下層ティアへ駐留する兵にアジトの捜索を命じる。10日目、ギッパー伍長が率いるティア3の兵たちがアジトへ強行突入するが、内部はほぼ空で、シャ=ア一家の倉庫番二人の遺体だけが残されていた。
その場で二等兵オトシンが、エイ=イに念能力者がいる可能性を考えるべきではないかと口にし、ギッパーを戸惑わせる。オトシンは、それがツェリードニヒの緊急事態への応答がまだない理由と関わると説明し、王室区画の警備に就く友人の一等兵ボークセンからこの話を聞いたと明かした。ギッパーはボークセンを助言役としてティア3へ転属させると脅し、モーモリーは、ギッパーを挑発してボークセンを巻き込んだオトシンをたしなめる。オトシンは、ボークセンなら自分を支持するはずだという読みで自らの行いを正当化した。仲間内の計画の一環として、ギッパーは事態が申請を却下されるほど込み入っているかを試すために転属を願い出て、その結果ボークセンと配置を入れ替えることになる。
しばらく後、兵たちは倉庫に身を潜め、いらだった様子のボークセンからツェリードニヒの近況を聞き出す。彼女は、ツェリードニヒがテータから念を教わっていると認めたうえで、この情報は秘密であり、漏れれば降格もありうると釘を刺した。念とは何かと問われると、微笑みながらも不機嫌な調子で、機密であって自分もちょうど探りを入れようとしていたところだと答える。さらに、ギッパーへ告げ口したオトシンを名指しで咎め、彼が情報漏洩を口実に、自分を引き合いへ出して下層ティアとの通信制限を提案しかねないと指摘した。そのうえでため息をついて力を抜き、自分はもうティア1にはおらず、ギッパーが友人のテータから何かを聞き出せるはずもない以上、どのみち情報は入ってこないと述べる。
彼女は、ツェリードニヒが念を知って以降、テータとサルコフの様子が変わったことも伝えた。明確な答えが返らなくても、問い方次第で答えを推し量ることはできたはずだが、今はティア3でできることをするしかないとも述べる。一同はモレナがおそらく念を使うとみて、自分たちの命を守るため極力彼女を避ける方針で一致した。仲間はいつものボークセンが戻ったと喜ぶが、彼女は出世の望みを捨てたわけではないと冷ややかに返し、モレナを捜すふりをしながら避け続ける難しさを指摘する。部隊の刺青を彫った職人はかつてエイ=イの一員で、モレナの台頭に伴う粛清を免れる時期にツェリードニヒへ引き抜かれたものの、顧客名簿に残る程度には遅い時期だった。だからエイ=イは自分たちの顔を知っているだろう、というのがその根拠である。
彼女は、念が公にすべきではない類の武器だと認めた。先に同じ主張をしたオトシンには、それを納得させるだけの説得力が足りていなかった。モーモリーが、仲間の誰かがエイ=イに捕まる事態もありうると持ち出し、一同はその場合に備えた取り決めもまとめることにする。12日目の早朝、彼らはシュウ=ウ一家とシャ=ア一家と会い、倉庫が倉庫番の遺体を除いて放棄され、現在は封鎖されていることを伝えた。シャ=ア一家の若頭オウ=ケンイは、3101号室の奥に隠しアジトが見つかり、ノブナガ=ハザマが幻影旅団の二名とともに調べる予定だと告げる。加えて、自身とシュウ=ウ一家の若頭ヒンリギ=ビガンダフノが、ヒンリギのカメラ映像に写った二人組を追い、警察の介入を抑えるために生け捕りを試みるとも述べた。ボークセンはエイ=イに顔を知られているため協力できないと答え、代わりに別の兵が、二人が殺された場合の責めを引き受けると申し出る。
拉致と交渉ゲームの提示
航海12日目、ボークセンの友人たちはティア3に集まり、彼女が行方不明であること、最後に連絡が取れたのはおよそ30分前で、第9王子ハルケンブルグの葬列が彼女のそばを通ったときだったことを一同へ知らせた。彼らは、なぜ、どのようにして拉致されたのかを議論し、仲間の誰かが捕まった場合には交渉も救出もしないという、ボークセン自身が示していた取り決めをこのまま守るのかどうかで迷う。
意識を取り戻したボークセンは、一人の女と向き合っていた。女がエイ=イのアジトへの歓迎と、ここへ連れてきた理由を手短に述べると、ボークセンは相手がモレナ=プルードだと言い当て、自分に何を求めるのかと問う。モレナが詳しい説明を始める間、彼女は周囲を見回して状況を測り、身体を拘束されてはいないものの、六人に囲まれ、武器は取り上げられていることを把握した。モレナは、適合する提供者のような存在として仲間に加わってほしいと述べ、そのための説得は全力で行うと告げる。ボークセンは、拉致された記憶がないことから念が使われた可能性を考えつつ、まだ答えられる段階ではないと返した。
モレナは、答えを保留したのは賢明だと認めたうえで、説明が進むほど自分たちが引き下がって帰すことは難しくなると告げる。それは脅しかと問われると、好きなように受け取ればよいと答え、理由は明かせないが、やり取りが長引くほど双方の危険が増すと説明した。ボークセンが、そういう状況を作り出したのはそちらだと批判すると、モレナは指摘そのものは認めつつ、犯罪組織に公正な物の見方を期待するなと返す。そのうえで、交渉を早く決着させながらボークセンにも望むものを得る機会を与える方法を提案し、これが最初で唯一の譲歩だと付け加えた。
モレナは12枚のカードを掲げ、交渉ゲームで決めると告げるとともに、ゲームを降りれば「はい」か「いいえ」を言う以外の自由を失うと警告した。ボークセンは規則の説明を聞くことを選ぶ。彼女は先回りして、手札は「YES」が4枚と「NO」が1枚だと推測したが、モレナは取り合わず、左から順にめくるよう促す。めくった順に「YES」、「NO」と出て、三枚目は「R」だった。モレナは、それが「リターン」であり、墓地から好きな一枚を自分の場へ戻せるカードだと説明する。最後に「リターン」が残った場合には、墓地から望みの回答カードを回収できる。四枚目は「ジョーカー」で、「YES」にも「NO」にもなり、最後の一枚として残れば回答を自分で決められるという。
ボークセンは、カードにできることについてモレナが伏せている部分があるのではないかと疑った。ゲームを拒めば「はい」「いいえ」以外の自由を奪うと言った以上、承諾するまで帰さないという含みがあるとして、ゲームをやる意味はどこにあるのかと問う。モレナは答えないまま、最後の一枚をめくるよう告げた。現れたのは「X」で、「YES」でも「NO」でもなく、決定しないでいることを許すカードだと説明される。ボークセンは、「X」が最後に残ればゲームそのものを無効にできるのかと確認した。モレナは理解が正しいと認め、後から捜し出して交渉をやり直すことはしないと約束する一方、最後が他のカードだった場合には回答の結果に全責任を負ってもらうと告げる。ボークセンは、まだ規則の半分も聞いておらず答えられないと返し、張り詰めた場をわずかに緩めた。
カードの効果と序盤の駆け引き
「YES」が1枚しかないことから、ボークセンは、自分が有利に見える錯覚が仕込まれていると考えた。実際にそれを引けば、エイ=イが後から足していく規則すべてに従うほかない完全な敗北を意味する。「NO」と答えれば、身の回りに降りかかる恐ろしい出来事を延々と並べられ、「YES」の方がましだと思わされる展開になるはずだと想像し、「NO」と「ジョーカー」は事実上意味を持たず、自分の本当の札は「リターン」と「X」の二枚だと判断する。説明が続く間も、さらに悪い第三の罠が潜んでいるのではないかと警戒を解かなかった。
残るカードの効果も順に示された。「狙い」を選べば、モレナは自分の目的と、ボークセンを招いて勧誘しようとしている理由を説明する。「能力」を選べば、ボークセンが理解できるまで、望むだけ詳しく自分の能力を説明する。「質問A」を選べば、目的と能力に関わるものを除き、ボークセンの質問すべてに答える。「質問B」を選べば、「質問A」のときに最後に尋ねた質問についてだけ、さらに踏み込んで問いを重ねられる。
ボークセンは説明を遮り、答え方の癖をつかむために試しの質問をしてよいかと尋ねた。承諾を得ると、ゲーム中に一切不正をしないと言えるか、答えは「YES」か「NO」かと問う。モレナは彼女の引っかかりどころを見て取り、否定の形で問われたときに「はい、しません」と答える文化と、「いいえ、しません」と答える文化があるという横道の話を挟んだ。その間にボークセンは、このゲームが新規の勧誘における通過儀礼であると同時に面接でもあり、モレナがやり取りを通じて相手の人格と知力を観察し、仲間としての適性を判断しているのだろうと見当をつける。同時に、モレナから強い怒りを感じ取り、何がそれほどの怒りの源なのかと考えた。
「YES?」と「NO?」のカードは、「YES」または「NO」が最後の一枚として残った場合に何が起きるかを、モレナに詳しく説明させるものだった。「D」すなわち「取引」のカードでは、モレナが「ささやかな頼み」を出し、ボークセンがそれを聞き入れれば墓地から一枚を戻せる。頼みを断った場合はモレナの手番となり、彼女がボークセンの残り札から一枚を消せる。モレナは、ゲームは手札が一枚になった時点で終わるため、「取引」を使える最後の機会は残りが二枚のときだと述べて説明を締めくくった。ボークセンの求めに応じ、モレナの手番で消される札は本人が指定できることになり、二人は開始の準備に入る。
交渉ゲームは、ボークセンが「狙い」のカードを選ぶところから始まった。モレナがなぜそれを選んだのかと尋ね、ボークセンは雑談が許されるのか、罰則が生じないのかを確かめたうえで応じる。彼女は不意にモレナの手下たちへ向き直り、ほかに何人いるのかを探ろうとした。手下たちは黙し、モレナは彼らが口を開くことはないと告げたうえで、ほかにも仲間はいる、質問があるならカードを使えと言う。ボークセンは、最終的な回答を決めるために「狙い」を選んだのは当然だと見下すように言い返し、モレナの質問には一切答えないと高飛車な調子で宣言した。モレナは、答えた質問の数だけこちらも質問してよいという譲歩を示す。ボークセンは礼を述べつつ、モレナの答え方からエイ=イの人数は50人に満たないと推測した。
モレナ=プルードの目的と能力の開示
モレナは率直に、自分の目的はカキン帝国の滅亡であり、それを果たした後も全人類が滅びるまで試み続けると語った。そのためにボークセンが必要だと述べ、微笑んで返事を待つ。ボークセンは困惑し、完全な理解を100とすれば今の説明は3ほどにしかならず、まるで足りていないと告げた。モレナは自分の生い立ちから説明することにし、「二番手の偽物」という言葉を聞いたことがあるかと尋ねる。ボークセンは、それはモレナのような、継承権を持たない王族を指す語だと答えた。モレナは、それは本物のモレナ=プルードには当てはまるが、今ここで話している自分は王族ですらなく、本物のモレナは現在のモレナの名が刻まれた墓の中にいると明かす。ボークセンはいっそう混乱し、では誰なのかと問うた。
モレナが自らの背景をほのめかすと、ボークセンはそれだけで意味を汲み取り、理解していることを示すために相手を「祭りの孤児」と言い当てた。数年に一度、無作為に選ばれた村で催される「宴」で、村人がカキン王家を「もてなす」結果として生まれる孤児のことである。モレナは薄く笑いながら、自分の不遇な過去を語るボークセンを見つめた。ボークセンは目を伏せて聞き入り、返す言葉を持たない。モレナは、目的の達成には特別な能力を持つ者が必要であり、なかでも最も重要な役割をボークセンに担ってほしいと述べた。なぜ自分なのかと問われると、それは「狙い」のカードでは答えられないと言い、そのカードを墓地へ滑らせる。
オラルジが残りの回答カードを切り、整えて並べ直した。ボークセンは最初に捨てる札として「ジョーカー」を選び、めくって示す。続けてモレナの能力そのものを尋ね、モレナはこれに応じた。説明を聞きながら彼女は、どちらを先に選んでももう一方を知りたくなるように組み立てられていた狡猾さに気づく。カキンを守ること自体に思い入れはないものの、誰かが乗り込んできて、のんびり漂って暮らすという算段を断ち切りかねない事実には落ち着かなさを覚えた。カキンを滅ぼすという目的の説明を聞いても、身の回りにいる、置いておきたいとは思っていない人々を殺すことには同意できない。念能力が本人の性格や心の状態に左右されるという説明を聞くうちに、モレナの目的には共感できない以上、何としてもこの場を抜け出すしかないと決めた。
ボークセンは会話へ意識を戻し、まだ手に入れてもいない自分の能力が、ほとんど自分を知らないモレナにとってなぜ重要だと分かるのかと問うた。モレナは、ボークセンが自分にとっての特質系であると明かし、エイ=イがどのようにしてそれを見分けたのかを説明する。さらに、特質系はおよそ3000人に1人だと述べ、その数字が何を意味するか分かるかと問うた。カードが墓地へ送られた後、ボークセンは特質系そのものについて掘り下げ、能力を与えられるとしたらモレナはどのような能力を望むのかと尋ねる。
モレナは、その問いが「YES?」「NO?」のカードに触れる内容であることを気にしてためらったが、まず特質系は都合のよい系統だと説明を始めた。特質系は分類をまたぐ難しい技も、どの分類にも属さない能力さえ扱えるからである。だからこそボークセンの能力には具体的な要望があるが、それ以上を語るには「YES?」を選ぶ必要があり、それは加入後に期待される役割の話になると告げた。オラルジが残りの札を切る間、ボークセンは、カードが墓地へ送られた後でもモレナは筋の通った答えを返すだろうと判断する。居合わせたエイ=イの面々の反応からは、過去に不正が行われるのを見た者はいないと結論づけたが、それでも油断はしないでおいた。
交渉ゲームの終盤と特別戒厳令
ボークセンはモレナの誘導を読み取って「NO?」を選び、「YES」と「NO」の二択で「YES」を選ばせる脅しが来ると身構えた。モレナは、ボークセンとその周囲の人々が自分たちの側ではない「他者」と見なされ、目的へ近づくために積み上げていく点数として扱われることになると述べる。二度と勧誘はしないが、秘密を知られた以上そのまま帰すこともできないとも告げた。ボークセンは、「X」さえ意味を持たず、ゲーム全体が「YES」を言わせるための罠なのではないかという第三の罠の気配を感じる。ところが予想に反し、モレナは、「X」が残った場合には秘密を知ったという事実までゲームの無効化に含まれると説明した。思わず顔を上げたボークセンに、モレナは、記憶を消すのではなく彼女を信用し、交渉はなかったことにして、本人にも大切な人にも接触しないよう努めるのだと補足する。ボークセンは三枚目として「X」を捨てることを示した。
二人が同時に見上げると、特別戒厳令の発令が告げられた。ティア3向けの指示が流れる間、ボークセンはその意味を考える。王室軍の兵には、不審な人物を警告なしに射殺する権利と、武装した市民を排除し、破壊分子を掃討する義務が与えられるからである。モレナが少し緊張して見えても、彼女はそれを責めなかった。つい先ほどまでティア1にいた自分でさえ予想していなかったからである。上層への指示も聞こえてくることを期待しつつ、彼女は「取引」を選ぶと告げた。ティア2への指示が流れるなか、モレナはこの状況でも落ち着いているとボークセンを褒める。ボークセンは、放送は自分の声が届かなくなるほど大きくはないはずだから、モレナは放送に気を取られたか、考えを整理する時間が要ったのだろうと推測した。どちらであってもゲームは滞りなく進み、結果を巡って争いにならない点では同じだと判断する。
彼女は特別戒厳令がゲームに及ぼす影響も考え続けた。王室軍が踏み込んでエイ=イを制圧するのが最善だが、それには流れ弾に当たる危険や、モレナの一味と見なされ、撃たれずに済んだとしても拘束されて尋問と拷問を受ける危険が伴う。モレナは「取引」の効果を確かめ、すでに口づけと決めていた「ささやかな頼み」を聞き入れれば、墓地から好きな一枚を戻せると告げた。口ごもるボークセンを遮り、指を合わせながら、求めるのは一度きりだが自分が満足するまで続くのだと戯れるように言い直す。さらに、その口づけは自分の能力に関わり、追随者へ能力を授けるための条件の一つでもあると警告した。加入には口づけを含む三つの条件が必要で、順序は問わないものの、すべてを満たさなければ加入とは見なされない。
ティア1への指示が聞こえてくると、ボークセンは自分たちがティア1にいるのだと早合点した。知らなければならないことがあり、「X」も取り戻す必要があると考えて、彼女はモレナの頼みに応じる。モレナに自分の側へ来るよう促され、口づけの後にからかわれると、うろたえながら「X」を返すよう求め、続きを促した。オラルジが三枚を取って切ろうとすると、ボークセンは待ったをかける。モレナのからかいの間、カードから完全に目を離していたとして、自分の側に伏せられた二枚を表にして確かめたいと申し出た。皮肉には取り合わず、不正をしていないのなら困ることはないはずだと返す。モレナは、困りはしないが悲しい、その振る舞いは自分を信用していないという意味だと言った。ボークセンは意に介さずめくると宣言し、二枚が確かに「NO」と「R」であることを示す。
オラルジが切り直し、ボークセンは左端の札を前へ滑らせてめくった。現れたのは、戻したばかりの「X」である。モレナは残念だったと告げ、最後の一枚を選ぶよう促した。ボークセンは「質問A」を選び、モレナは望むだけ質問に答え始める。彼女はまず、自分たちがどのティアにいるのかを絞り込む質問を重ねた。どのティアでもないと分かると、アジトはブラックホエールの中かと尋ねて初めての「YES」を得る。少し間を置いて、アジトは念能力で作られているのかと問うと、「YESでもありNOでもある」という答えが返った。混乱は続いたが、そのとき大きな地鳴りを聞き、身体で感じ取る。ひらめいた彼女は、アジトはティア2とティア3の間にあるのかと問い、モレナは「YES」と答えた。
加入の決着と能力・特徴・関係
ボークセンはその音を、ティア2とティア3をつなぐ中央ゲートが完全に閉じる音だと聞き分け、この状況がブラックホエールの建造以前から仕組まれていたことを悟った。自分たちはティアの間のほぼ中央にいるはずだと見当をつけ、質問を再開する。アジトの入口は一般の人が立ち入れる場所にあるのかと問うと、また「YESでもありNOでもある」と返った。答える前の間を、彼女は、モレナが嘘にならないよう頭の中で数えているのだと読み取る。誓約と制約を自分の側の武器として使い、自分が去った後にエイ=イが仲間へ手を出せないようにしようとも決めた。続いて人数を尋ね、エイ=イは21人だという確認を得る。最後の質問に至ると、実際に話してあなたを知ることができてよかったとモレナへ伝えた。
ボークセンは沈んだ様子でこれを受け入れる。オラルジは最後の二枚を掲げて「NO」と「R」であることを確かめ、切ってから彼女の前へ並べた。モレナは、捨てる方を決めて前へ滑らせるよう告げる。これが最後の一枚を決める場面だった。エイ=イの手下たちが見つめるなか、ボークセンは右の札を指一本で前へ押し出し、モレナと目を合わせて、同時に開こうと提案する。彼女は、渡した札が「リターン」なら自分は死に、手元に残った札が「リターン」ならエイ=イのアジトで起きたことをすべて忘れて去ることになると確認した。二人は3から数えて同時にめくり、モレナの手に「NO」、ボークセンの側に「リターン」が残っていたことが分かる。ボークセンは即座に札を握りしめ、安堵を口にした。
モレナは拍手して祝い、惜しいが結果は結果だと告げ、「リターン」を望みの札と交換すればゲームは終わりだと述べた。見物していた手下たちがゆっくり離れていくなか、ボークセンは「リターン」を握り潰したことを詫びる。身を乗り出して戻す札を選ぶと、離れかけていた手下たちが振り返り、彼女が「YES」を選んでいるのを見た。ボークセンはそれが誤りではないと認める。モレナは厳しい調子で、これ以降は答えを変えられないと念を押して最終確認を求めた。ボークセンはモレナの目を見つめ、無表情のまま最終的な選択だと告げる。内心では「YES」を最終回答にしたくないと叫び、抗おうとしていた。やめろ、「YES」を選びたいなどというのは本当ではないと自分に言い聞かせながら、それでも指はその札を指し示し、これが最後の一枚だと確定させた。
モレナは回答を受け入れ、仲間になってくれるのはうれしいが少し失望もしていると述べ、ボークセンの不正を指摘した。ボークセンは前を向いたまま表情を変えない。離れていた手下たちが戻って彼女を取り囲むなか、モレナは、「取引」のカードを使った後、手元の札を確かめるために切るのを止めた際に、「リターン」の表側の両縁へごく小さなくぼみを付けて印としたのだろうと示す。さらに、このカードゲームには、相手が不正を働くと自動で作動し、「YES」か「NO」しか選べなくする操作の仕組みが備わっていると明かした。不正を選んだ以上は自分を責めるほかなく、不正が真剣な勝負を投げ出すのと同じだと察するべきだったとも告げる。改めて「YES」はエイ=イに加わるという意味かと問われ、ボークセンは加わると答え、手下たちは拍手した。
顔を上げた彼女の前でモレナは、ゲーム中に選ばれなかった「YES?」の内容を、歓迎を兼ねて説明した。ボークセンが生きていてエイ=イの側にいる限り、エイ=イは彼女にも大切な人にも手を出さない。能力についてもさらに詳しく語られ、モレナは常にボークセンのレベル、点数、位置、状態を把握しており、その効力はレベル100に達するか、ボークセンが死ぬか、モレナが死ぬまで続く。露骨でない限り内輪もめや裏切りも禁じられておらず、おおむね自由に振る舞ってよいという。片膝をついたボークセンは、加入条件をまだすべて満たしていないため現在はレベル0であり、エイ=イ構成員による殺害を目撃するという最後の条件を満たせば正式にレベル1になると告げられた。彼女は、エイ=イが別の特質系の候補を見つければ自分の価値は失われるという、期限の分からない猶予の中にいることを胸に留める。同じ12日目、ギッパーはクラピカによる二度目の念の講習が行われる1014号室に現れ、ボークセンの後任だと名乗ってダンジンに注意点を尋ねた。危うい状況でも落ち着いたまま策を立てられる鋭い知性が、彼女の最も際立つ資質である。ハンターとしての身分と免許は、新大陸への航海が終われば失効する。