人物
センリツ
音楽ハンター、センリツ。闇のソナタで容姿と引き換えに得た超人的な聴覚を武器にノストラード組の護衛を務め、王位継承編では第10王子カチョウ=ホイコーロを守る。
センリツは、ハンター協会に籍を置く音楽ハンターで、ノストラード組に雇われた護衛の一人である。原作第67話で初登場し、TVアニメでは1999年版第45話、2011年版第39話から姿を見せる。友人と酒を飲んだ一夜に闇のソナタのフルート独奏を一楽章だけ聴き、その代償として容姿が大きく変わった。同時に、心臓の鼓動ほどの小さな音まで聴き分ける常人離れした聴覚を得ている。念系統は放出系で操作系にも適性があり、フルートの音にオーラを乗せて周囲へ働きかける。ヨークシン編で同じ組の護衛としてクラピカと組んで以降、行動を共にする場面が多い。
ノストラード組を離れた後もクラピカとの縁は続き、ハンター協会の第13代会長を選ぶ選挙では第1回投票に加わり、入院中のゴン=フリークスを見舞った。王位継承編ではクラピカに誘われてカキン帝国の王子付き護衛に応募し、第10王子カチョウ=ホイコーロの護衛としてブラックホエール号に乗り込む。船内では双子の王子を継承戦から逃がす計画を組み立て、日曜の晩餐会では自ら舞台に立って船内の耳を引きつけた。後の時点ではカチョウの元護衛として紹介される。聴覚で得た情報をそのまま護衛や交渉の判断へつなげる点が、作中での持ち味である。

センリツ 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

センリツが見せた腕

音を通して相手へ働きかけるセンリツ
基本情報
| 所属・役割 | ハンター協会の音楽ハンター。ノストラード組の護衛を経て、カキン帝国第10王子カチョウ=ホイコーロの王子付き護衛を務めた。後の時点ではカチョウの元護衛と紹介される。 |
|---|---|
| 初登場・登場媒体 | 原作第67話。TVアニメは1999年版第45話、2011年版第39話。 |
| 状態 | 生存。物語の現時点では、暗黒大陸へ向かうブラックホエール号の船内で行動している。 |
| 念系統 | 放出系。操作系にも適性がある。フルートを吹くときにオーラを乗せ、発のほかに絶も使える。 |
| 能力 | 闇のソナタを聴いた後に得た極度に鋭い聴覚。数百メートル先の対象を追跡し、会話を聴き取る。心音から相手の感情、嘘、操作の有無を判別する。数百人の足音を聴き分け、人数や標的の歩き方を把握する。 |
| 主な関係 | ノストラード組でクラピカと出会い、以後も協力関係が続く。ブラックホエール号ではカチョウ=ホイコーロと双子の妹フウゲツ=ホイコーロの脱出を支え、同じ護衛のキーニと組んだ。 |
| 目的 | 闇のソナタの楽譜を見つけ出して破壊し、自分と友人が受けた不幸を誰にも繰り返させないこと。あわせて元の容姿に戻ることを願っている。 |
| 主な装備 | オーラの媒体となる西洋のコンサートフルートに近い笛、モールス信号などの符牒を送るモスキート音の装置、チョウライ=ホイコーロから贈られた念の硬貨。 |
人物像
センリツは背が低く、中性的な顔立ちにがっしりとした体つきをしている。頭髪は薄く、まっすぐな銀色の髪が肩まで垂れる。前歯は齧歯類のように大きく突き出ている。人前では帽子をかぶることが多い。服装は簡素で土のような色合いが中心だが、淡い桃色を差し色にすることもある。長袖とレギンスを欠かさないのは、闇のソナタによって容姿が一変したためで、露出した肌はクラピカが思わずひるむほど歪んでいる。王子付き護衛を務めた時期は、黒いスーツにネクタイという装いだった。
ソナタを聴く前の容姿は分かっていない。ただし、以前の姿を写した写真を見るかとクラピカに尋ね、元の姿に戻りたいと願っていたことから、変貌前は美しい若い女性だったとうかがわせる描写になっている。カチョウ=ホイコーロに「オールドミス」と呼ばれたときは気分を害し、そう言ってにやりと笑うカチョウを睨みつけた。
性格は温厚で、普段は落ち着いた物腰を保つ。並外れた聴覚と生来の聡明さから他人の感情の動きに敏く、周囲への気遣いを絶やさない。行動の軸にあるのは、闇のソナタを見つけ出して破壊し、自分と友人が味わった不幸を誰にも繰り返させないという目的である。あわせて、元の容姿を取り戻したいとも願っている。クラピカには特別な情愛を寄せて気にかけており、秘密を漏らせば自分を殺すという彼の決意を知っても、その姿勢は少しも揺らがない。
ブラックホエール号では、カチョウと双子の妹フウゲツ=ホイコーロを守るために優れた戦術眼を見せた。感情を読み取る力で気性の激しいカチョウに歩み寄って信頼を勝ち取り、暗殺者から政治的な圧力まで多様な危険に備えながら、双子を船から逃がす計画を組み立てている。
作中での動向(闇のソナタとノストラード組)
センリツは音楽ハンターである。その人生を変えたのは、友人と酒を飲んだ一夜の出来事だった。友人が闇のソナタのフルート独奏を吹き、センリツはその一楽章を聴いただけで身体が変形した。曲を演奏した友人は全身がひどく変異し、そのまま死亡している。生き延びたセンリツは引き換えに超人的な聴覚を得て、心臓の鼓動ほどの小さな音まで聴き取れるようになった。以後の目的は、ソナタの楽譜を探し出して破壊し、同じ運命をたどる者を出さないことに定まる。
センリツはほかの5人の応募者とともに、ノストラード組の護衛職に応募した。顔合わせの直後、覆面の襲撃者が部屋に押し入って応募者たちを襲う。背後にシャッチモーノ=トチーノがいると判明した後、センリツたちはもう一人の侵入者を捜した。センリツはバショウ、ヴェーゼ、クラピカとともに邸へ戻り、指定された品をダルツォルネへ届けている。センリツが差し出したのは龍皮病患者の皮膚だった。その後は護衛長に連れられ、雇い主であるネオン=ノストラードに引き合わされる。
地下オークション初日の夜、ダルツォルネはセンリツとクラピカを組ませ、セメタリービルの正面入口の監視に就かせた。監視の合間にセンリツはクラピカの目的を尋ね、自らの目的も打ち明けて、容姿を一変させ友人を死なせた闇のソナタを壊したいと語っている。まもなく二人は、幻影旅団のウボォーギンがマフィアの構成員を大量に殺す場に居合わせた。センリツは地下から微かな心音を聴き取る。陰獣のミミズ、ヤマアラシ、ヒル、ヤマイヌが現れてウボォーギンに挑んだが、四人とも短時間で倒された。
センリツは自分の能力で、激高したクラピカと動揺する仲間たちを落ち着かせた。二台の車で逃走する途中、ウボォーギンの脚に針が刺さっていることに気づく。ダルツォルネを除く護衛たちは逃げ延び、センリツはクラピカに連絡を取り、ダルツォルネにも連絡を試みたが応答はなかった。その夜、彼女はライト=ノストラードが到着すると伝える。到着したライトは、ネオンを無事に自宅へ帰すまで護衛するようセンリツとバショウに命じた。二人はネオンとその付き人の買い物に付き合ううちに、リンゴーン空港で彼女を見失っている。
セメタリービルでの戦闘の後、ライトは翌日もネオンの買い物に同行するようバショウとセンリツに割り当て、とりわけバショウを辟易させた。クラピカが残る旅団の追跡を決めるとセンリツに連絡し、センリツはキルア=ゾルディックと合流して尾行に加わる。市内を移動する旅団の動きを追いながら、キルアの足音はこれまで聴いた中でもっとも静かだと評し、クラピカにとって頼りになる相手だと見ている。
ヨークシン編の決着からハンター会長選挙まで
クラピカの代わりにゴン=フリークスとキルアが人質に取られた後、センリツはクラピカと合流し、その無謀な行動を叱っている。ゴンが知らせる手立てを考える一方、キルアは、センリツならクロロ=ルシルフルの通話を聴き取っており、クラピカには行き先が伝わるはずだと胸中で判断した。キルアはセンリツへ合図を送るよう二度ささやきかけたが、それが唯一の機会だと伝える前に、レオリオ=パラディナイトが新聞を叩きつけて電話口で怒鳴り、ベーチタクルホテルという名を相手に確実に伝える。クラピカはクロロの捕縛に成功し、センリツとレオリオとともに車で離脱した。人質交換の際には、電話を胸に当てたキルアの心音から、彼が操作されていないことを確かめている。
9月6日、ゼパイルは額に手拭いを載せて眠るクラピカの発熱についてセンリツに尋ねた。センリツはフルートが効かなかったことを説明し、単なる疲労による症状ではないと判断している。ゼパイルは回復しなければ病院へ連れて行くこと、病院が危険なら知り合いの医者を呼ぶことを申し出て、センリツを喜ばせた。クラピカが目を覚ますと、センリツは眠っていた間の出来事をすべて伝える。リンゴーン空港から街を発つ前には、レオリオにクラピカの面倒を見ると約束し、彼の心音が街で一番心地よかった、教師か医者に向いていると告げた。その後、ライトが話したがっているとクラピカへ伝える場面で再び姿を見せる。
ハンター協会の第13代会長を選ぶ選挙では、センリツは第1回投票に加わり、入院中のゴンを見舞った。レオリオが携帯電話に向かって怒鳴り、キルアと話させろと迫った際には、その声に取り乱している。キルアがアルカ=ゾルディックを連れてゴンのもとへ着くと、センリツはゴレイヌの隣で外の警備に立ち、ナニカの力がゴンの治療に使われる際には、その場の全員とともに凄まじい力を感じ取った。その後、ハンターたちが新しい会長を選ぶ会場でレオリオと会うゴンに、ほかの面々とともに付き添っている。
王位継承編でのカチョウ護衛
センリツはクラピカに誘われ、カキンの王子たちが公式サイトに出した6件の護衛募集に応じ、暗黒大陸へ向かうブラックホエール号の航海期間中、第10王子カチョウ=ホイコーロの護衛を務める契約を結んだ。航海初日、センリツは第1層の式典会場へ向かい、カチョウを1010号室まで送り届ける。その道中、カチョウが妹の第11王子フウゲツ=ホイコーロと手を組んでほかの王子を退ける計画を、誰にも聞かれないと信じて口にするのを聴き取り、腹に一物ある人物だという印象を持った。ところが歩きながら心音を聴くうちに、カチョウが見せる我儘で不機嫌な態度は、本人が自分自身に向けている嘘だと分かる。1014号室が守護霊獣に群がられた際、クラピカが各室の状況を確認すると、センリツは1010号室に念獣がいないと報告した。
出航から4時間後、カチョウは出された食事に癇癪を起こして皿を叩き落とし、使用人たちを罵倒した。センリツは護衛や使用人がひそひそと交わす不満を聴き取り、カチョウの我儘な振る舞いが身を守るための演技だとすれば、かえって裏目に出かねないと案じている。2日目には、カチョウの使用人ロベリーがバリゲンの死に関与したとして拘束され、船内の司法当局の調査官が、第6妃セイコ=ホイコーロへの聴取と1010号室を72時間監視下に置くために訪れた。センリツはもう一人のハンターとともにその場の警護に立つ。
3日目の未明、午前1時30分ごろ、センリツはカチョウの心音が速まるのを聴きつけて駆けつけた。途中、異変を察したもう一人のハンターも加わり、二人で主寝室に入ってカチョウの無事を尋ねる。心を開かせようとする穏やかな働きかけをカチョウが頑なに拒み続けた末に、センリツは真実を知らせるべきだと判断し、念について話してよいかと切り出した。同じ3日目、カチョウはセンリツを勉強の手伝いに呼び出す。カチョウは勉強するふりをしながら高い音を出す装置を使い、モールス信号でもう一つの装置の在り処を伝えた。センリツはそれを回収し、カチョウの努力に心を動かされて、彼女を助ける決意を新たにしている。
カチョウがセイコを説き伏せ、日曜の晩餐会で自分とフウゲツに演奏させるようナスビ=ホイコーロへ願い出てもらった後、カチョウは計画の進み具合と、センリツとキーニを指定の場所に待機させる手配を伝えた。センリツは了承し、演奏を第1層の全フロアへ放送で流すこと、驚かせるために内容を秘密にしておくようナスビへ念を押すことを求めている。カチョウがフウゲツと会う間、センリツは経路を調べた。準備を進めるカチョウを見ながら、悪役を演じるのはやめてほしいと胸の内で願う。その演技は、どちらか一人しか助けられない状況で護衛たちがフウゲツを選ぶよう仕向けるためだろうと察していた。それはフウゲツ自身が望むことではない。もっとも、二人とも無事に船を出られるなら問題にはならないと考えて、センリツはその思いを打ち消している。
キーニはセンリツに近づき、マンホールから出てくるようにカチョウの寝台へ頭が現れるのを感じたと告げた。カチョウが反応しなかったことから、二人はフウゲツが守護霊獣の能力を使ったのだろうと結論づける。キーニは、移動の能力は使いようによっては継承戦を覆しうるが、戦闘能力がないと知られれば真っ先に狙われると指摘した。センリツは脱出を整える材料は揃ったと考えつつ、まだ姿を見せないカチョウの守護霊獣が継承戦から降りることを望まないのではないかと懸念し、それを召喚できないようにする手立てを考えている。
脱出計画の決行と晩餐会での演奏
4日目の水曜、センリツは同僚の護衛に呼ばれて電話に出た。ミザイストム=ナナは人を介して、フウゲツが船の第3層で見つかったと伝える。これはフウゲツの守護霊獣の能力についてのセンリツの推測を裏づけるもので、その情報が広まることを彼女は心配した。ミザイストムはさらに、キーニと協力してカチョウとフウゲツの脱出を阻止せよという任務を伝えたが、そこには逆に脱出を成功させよという裏の意味が込められていた。センリツはその指示をキーニへ伝える。キーニは懐中時計に納めた亡き妻と娘の写真を見せ、二年前に二人を亡くしてから死に場所を探しており、カチョウとフウゲツが脱出した後、協会の関与を疑われないよう自ら命を絶つと語った。動揺しながらも、センリツは計画をやり遂げる覚悟を決める。
5日目、セイコと調査官が1011号室から戻ると、カチョウが音楽に耳を傾ける場で、センリツは鎮魂曲「ハイルの鎮魂曲」を演奏した。セイコは熱心に称賛し、日曜の演奏を船内全域へ放送できるよう取り計らうと約束する。センリツはカチョウと小さくうなずき合った。見送りに出た際、調査官は演奏の感銘を語り、二人の王子を助けて国王の考えを変えるための助言を口にする。しかしその心音は、職業柄を差し引いても落ち着きすぎていた。センリツは、彼が操作されているか、双子の脱出計画を阻もうとしているのではないかと疑う。
8日目の日曜、センリツはカチョウとフウゲツとともに晩餐会に出席した。出番はキーニの直後、双子の直前という最後から二番目に組まれている。念を使うベンジャミン=ホイコーロとカミーラ=ホイコーロの両王子が欠席と聞いて安堵した。キーニの演奏の後、センリツは舞台に立ち、国王ナスビ=ホイコーロへ一礼して演奏を始め、三分間にわたって聴く者すべてを陶然とさせる。演奏の間、彼女はカチョウの守護霊獣がついに現れなかったことを思い、キーニが双子を脱出へ導く中で二人に祈りを送った。キーニとの会話を思い返し、その言葉と心音に心を動かされた彼女は、脱出が失敗した場合にハンター協会へ累が及ばないようにするという彼の自死を、止めなかった。
演奏が終わると、ヴァンタインはツェリードニヒ=ホイコーロに自分たちが受けた陶酔を報告した。銃声を聞いて向かおうとした瞬間、目の前に美しい風景が広がり、動けなくなったという。ヴァンタインはこれを、センリツというハンターの放送された演奏によるものと推測する。ツェリードニヒは、断ることのできる「招待」として彼女を呼ぶよう指示し、その反応から推論しようと考えた。センリツはその後、船内の司法当局に身柄を預けられ、一夜を過ごす。
9日目の朝、セイコの調査官が話をしに訪れた。彼は、キーニが脱出の全責任を一人で負うと記した遺書を残し、司法当局はそれを説明に使うだろうと告げる。続いて、演奏に感じ入った王子たちから招待が来ていることを持ち出し、彼女の関与を疑っていることを遠回しに伝えた。その言い回しと振る舞いから、センリツは自分が身の安全のために留め置かれていること、司法当局が本当に中立な部門であることを理解する。二人の王子について尋ねると、調査官は、彼らも脱出未遂にどこまで責任があるかを詳しく調べるために身柄を預かっていると答えた。センリツは、自分と王子たちをほかの王子から遠ざけてくれたことに心の中で礼を述べ、この時間を次の手を考えるために使おうとする。
拘留後の交渉とフウゲツ救出の模索
10日目、センリツは事の顛末を聴きながら身を震わせ、自分のせいだと涙ぐんだ。「カチョウ」は、自分は死ぬつもりでフウゲツを王にしたかったのだから脱出を悔いてはいないと言って慰める。調査官は、幽霊や念の力をいまだ受け止めきれずにいるとしながら、軍の報告とセンリツの様子から信じるに至ったと語った。センリツは落ち着きすぎたその心音から言葉を信じなかったが、疑念は口に出さない。調査官が、自分の半分ほどの年齢の少女が待っていると持ちかけると、彼女は協力を承諾した。承諾を受けて調査官は状況の説明を始め、五人の王子が面会を求めており、うち第3王子チョウライ=ホイコーロと第4王子ツェリードニヒ=ホイコーロは自室へ招きたいと自ら申し入れたと伝える。「カチョウ」が恩赦とは何かと口を挟むと、センリツは合図を送ってキーニの死を伏せるよう促した。調査官によれば、王子たちは念への理解を深め、センリツが脱出に関わったと気づいており、その関与を理由に死刑をちらつかせて演奏をさせようとしている。「カチョウ」が、王子の数を間接的に減らす手伝いの何が悪いのかと言い放つと、センリツはその言葉の険しさに息をのんだ。耳をふさげば意識を失わずに済むと知れば王子たちは諦めるだろうか、とも考える。調査官は、王子たちの出方は交渉次第だとし、位の高い王子の間で「本当のアンコール」が競りにかけられるかもしれないと述べた。自分の演奏が暗殺と結びつくことに、センリツは心を痛めている。
王子を殺すという提案に衝撃を受けながらも、センリツは毒を用いる手立てと、同意すれば必要な物はすべて用意できるという説明を黙って聞いた。失敗すれば命を落とすのになぜそこまでするのかと問うと、調査官は一拍おいて、あなたに恋をしている、演奏が忘れられず眠れない、胸の高鳴りに戸惑っていると率直に述べる。「カチョウ」はうろたえ、センリツは時計のように規則正しい心音を聴きながら信じられずにいた。言葉と心音の隔たりを測りかねたまま、彼女は協力を承諾する。その後、相手には自分たちを始末する手もあり、わざわざ暗殺を持ちかける必要もなかったと気づいて再び迷い、彼は操作系の能力者で、自らを操って念を使わない人物を装い、自分と「カチョウ」を別の目的に使おうとしているのだと結論づけた。調査官は必要な物を調達すると述べ、面会の場を使ってできるだけ多くの王子を次の晩餐会へ呼ぶよう頼む。チョウライからの贈り物は箱に入れて渡され、中身は本人が自作したという「1」と記された硬貨だった。ヴァンタインがツェリードニヒの名代として自室への招きを伝えると、センリツは契約を理由に自分の一存では決められないと答え、1014号室のクラピカを訪ねてすべてを伝えるよう頼んだ。信頼できるのは彼だけだと述べ、急ぐよう促している。
11日目の午前6時、センリツは「カチョウ」からフウゲツの背中を写した写真を見せられる。右の肩甲骨に目立つ痕があった。「カチョウ」は虫刺されのようで脱出前にはなかったと言い、センリツは注射痕の可能性も挙げたが、それを否定されて念による痕跡だと見方を改める。念能力には複数の段階を踏むものがあると説明し、フウゲツは罠にかかって印を付けられたのだろうと述べた。能力を使えば扉が二つ現れるはずで、それに気づけば罠だと分かる。そう見立てて、「カチョウ」にフウゲツへ知らせるよう頼んだ。短期間での急激な変化はほかに説明がつかないとして、薬物を打たれて依存の兆候が出ているとも考えている。続けて、面会に来た王子の一人がフウゲツを交渉に使っているという自分の推測は誤りだったと認め、能力を使い続ければフウゲツは衰弱し、次の週末を待たずに死ぬと告げた。罠にかかった者を無差別に攻撃する能力だからである。犯人を突き止めてやめさせるよう促しつつ、手がかりがなければ特定は難しいとも指摘した。仮にルズールス=ホイコーロの守護霊獣が原因なら、本人に攻撃している自覚はなく、説得もできない。センリツは焦る相手をなだめ、無闇に飛び込まず計画が要ると諭している。
「カチョウ」は策があると答え、フウゲツが能力を試して救命艇の内部まで移動できたこと、ほかの者が通路に入れるかを確かめたいことを説明して協力を求めた。センリツは、フルートで眠らせたルズールスを運べるだけの力を持つ人手が要ると述べ、悪くない案だとしながら、フウゲツの扉がどこへつながるのかを尋ねる。「カチョウ」とカイザルが視線を向け、しばしの沈黙の後、「カチョウ」がルズールスの寝室につなぐ必要があると答えると、センリツはフウゲツが先にその場所を訪れなければならないと補い、実際に足を運んだ場所でなければ守護霊獣の力で戻ることはできないとカイザルに説明した。カイザルは二人の視線に気づき、センリツへの気持ちはすでに伝えたはずだと促す。センリツはその言葉を受け流し、確認のためもう後戻りはできないと告げて、本当にすべてを賭ける覚悟があるのかと問うた。カイザルは肯定し、フウゲツを王にする未来のためなら手を汚すと語ったが、心音に変化はなく真意はつかめない。そこでセンリツは、彼は敵側にいて、彼か彼を操る者がまだ自分たちを役に立つと見ているのだと考えることにした。
カイザルの提案を受け、センリツは、カチョウが「最後の手紙」の内容を知っている理由を王子たちに怪しまれた場合どうするのかと尋ねた。「カチョウ」は一刻も早く動くべきだと促したが、センリツは、バショウがフウゲツに低級霊を遠ざける護符を渡したことで時間が稼げていること、まだ犯人を突き止めていないことを挙げて抑えている。移動の都合からオカリナを使うことを提案しつつ、演奏している間は自分が何もできなくなるとも断った。彼女が気を揉んだのは、ハルケンブルグの手紙が抱える情報の重さである。そこにはベンジャミンの秘密、ツェリードニヒの残虐さ、差出人自身の出生など、継承そのものを揺るがしかねない事柄が並んでいた。手紙を拒んだのは第4王子と第13王子だけで、ハルケンブルグ本人は治療中で受け取れていない。第2王子カミーラ=ホイコーロが今回の場に人を送ると決めた理由を測りかねたクラピカは、センリツが伝えた各王子の秘密にカミーラの件が含まれていない点に注目し、彼女にも動かざるをえない秘密があるのではないかと考えた。12日目の早朝、カイザルは司法当局にある自室で「カチョウ」にフウゲツの容態を尋ねる。センリツは、自力で目覚められるまで休ませる必要があると答えた。「カチョウ」が自分のせいで余計な力を使わせていると気に病むと、センリツは決してそう考えないよう言い、フウゲツにはあなたが必要で、あなたなしでは持ちこたえられないと諭している。
能力・特徴・関係
センリツはハンターの資格に伴う便益をすべて受けられる立場にある。ノストラード組の採用試験で指定された品を回収してみせた点からも、相応の実力がうかがえる。モールス信号を解し、平手一つで机をひっくり返すほどの腕力を見せた。速度と反射も高く、トチーノの操り人形の攻撃をかわし、幻影旅団を追うクラピカに遅れずついていっている。
最大の特徴は、闇のソナタを聴いた後に得た極度に鋭い聴覚で、これを多方面に応用する。数百メートル離れた対象を追跡し、会話を盗み聞くことができる。心音を聴けば相手の感情の動きや、嘘をついているか、操作されているかを判別する。ただし、聞き覚えのある心音の変化は部屋一つ隔てても捉えられる一方、心音から感情を読み取る力は、通常の会話に近い距離を超えて示されたことはない。数百人の足音を聴き分けて人数を割り出し、その中から標的の歩き方を拾い出すこともできる。音から相手の技量を測ることもでき、キルアの足音の静かさから元暗殺者だと見抜いた。
音楽家としてはあらゆる楽器を修めたといい、もっとも得意なのはフルートである。フルートはオーラを投射する媒体でもあり、その腕前はセイコを驚嘆させた。音楽の素養は、心音やわずかな物音の差を聴き分けることにも役立っている。会話を装いながらモールス信号でカチョウと連絡を取ったのも、その応用である。
装備としては、西洋のコンサートフルートに近い笛を主な媒体とし、多くは高ぶった周囲を鎮める音を出すのに使う。親指で押して作動させ、一定の年齢より下の者にしか聞こえない高音で符牒を送るモスキート音の装置も持つ。継承戦の9日目にチョウライから与えられた念の硬貨は、所持して三日しか経っていないため価値が「1」のままである。念系統は放出系で操作系にも適性があり、フルートを吹くときにオーラを乗せる。発のほかに絶も使える。演奏で聴き手を陶然とさせるこの力に作中で正式な名称は与えられておらず、参照資料でも説明用の呼び名として「魅惑の音楽」が当てられているにとどまる。