人物
ビスケット=クルーガー
ハンター協会の二つ星石ハンター、ビスケット=クルーガーの人物像と経歴。グリードアイランドでゴン=フリークスとキルア=ゾルディックを鍛え、王位継承編ではマラヤーム=ホイコーロ王子の護衛を務めた変化系の念能力者。
ビスケット=クルーガーは、ハンター協会が二つ星に認定した石ハンターである。ヨークシンシティでのグリードアイランド競売の後、ゲームを落札したバッテラから攻略を依頼された。本人は「ビスケ」と呼ばれることを好む。グリードアイランド編では、ゴン=フリークスとキルア=ゾルディックに次ぐ第三の主要人物として物語を担った。二つ星の石ハンターという肩書きは、単行本第31巻・第326話にあたる箇所に示されている。初登場時の年齢は57歳、その後は58歳から59歳とされる。
念系統は変化系で、魔法美容師と桃色吐息を持つ。心源流の拳法を修め、その流派をウイングに伝えた師でもある。グリードアイランドではゴン=フリークスとキルア=ゾルディックを弟子に取り、キメラ=アント編でも二人を鍛え直した。第13期ハンター会長選挙では第5回投票まで候補に残っている。王位継承編では、キルア=ゾルディックの推薦を受けたクラピカを介して、カキン帝国のマラヤーム=ホイコーロ王子の護衛に就いた。作中では一貫して生存が確認されている。

ビスケット=クルーガー 引用『HUNTER×HUNTER』冨樫義博

流を実演するビスケット

ゴンたちを導くビスケット
基本情報
| 所属・役割 | ハンター協会に所属する石ハンター(二つ星)。心源流の師範であり、念の指導者。王位継承編ではマラヤーム=ホイコーロ王子の護衛を務める。過去にはハンター試験の試験官、グリードアイランドの参加者、カヅスール連合の一員でもあった。 |
|---|---|
| 初登場 | 原作第51話で間接的に言及され、第125話で初めて姿を見せる。 |
| 状態 | 生存。 |
| 年齢 | 初登場時点で57歳。以後は58歳から59歳。 |
| 念系統 | 変化系。 |
| 主な念能力 | 魔法美容師、桃色吐息、肉体変身(説明名)。 |
| 師弟関係 | ウイングに心源流を伝えた師。グリードアイランドとキメラ=アント編でゴン=フリークスとキルア=ゾルディックを指導し、王位継承編ではウェルゲーら1013号室の面々にも念を教えた。 |
| 別称 | 「ビスケ」と呼ばれることを好む。敬称を付けるなら「ちゃま」を使えと冗談めかして要求したこともある。 |
| 会長選挙での順位 | 第13期ハンター会長選挙で1回目16位、2回目13位、3回目12位、4回目10位、5回目9位。第6回に進めるのは上位8名までのため候補から外れた。 |
人物像
ビスケット=クルーガーは少女のように振る舞い、少女のように見えることを好む。全体の印象は磁器人形を思わせる。袖のない衣服にブルマを合わせ、その上からマントとスカートを重ね、手袋と飾り気のない革靴を身につけた姿で描かれることが多い。髪はきちんと結い上げられており、その結い方はこれまでに三度変わっている。髪は茶色、瞳は青。1999年のアニメ版では原作より明るい茶色の髪になり、2011年のアニメ版では金髪と桃色の瞳になった。王位継承編で護衛を務める際は、髪を編んで結い上げ、スーツとネクタイという装いに改めている(単行本第35巻・第366話)。
本来の姿は、普段の姿の数倍はある巨躯で、極度に筋肉の発達した女性である。若い姿を通す理由を、本人は敵に自分を侮らせるためだと説明する。だが実際には、元の容姿を嫌っていることの方が大きい。厳しい鍛錬の末に手に入れた肉体でありながら、自身の考える女性らしさに合わないため、この姿を忌み嫌っている。どちらの姿でも実力は極めて高い。ただし元の姿に戻ると腕力は飛躍的に増し、一方で念の出力は姿によってほとんど変わらない(単行本第18巻・第177話)。
性格は狡猾で、可憐な外見と物腰を情報収集や交渉に利用し、戦闘では無力を装って相手を欺く。敬称を付けて呼ぶなら「ちゃま」を使えと冗談めかして求めたこともある。会話から外されたり、実年齢に触れられたりすると暴力的な癇癪を起こし、その軽口ゆえにキルア=ゾルディックがしばしば標的になる。自分と性格の異なる相手とは衝突しやすく、クラピカとも口論になった。ただし容姿を褒められると途端に態度が軟化し、クラピカから王女のようだと言われたときには機嫌を直して素直に応じている。グリードアイランドの当初はゴン=フリークスとキルア=ゾルディックの友情を面白半分に壊そうとしていたが、編の終わりには二人に親のような感情を抱きかけていると自ら認めた。
武術と修行に関しては、相手が敵であれ弟子であれ厳格な態度を崩さない。戦闘中に敵を殺すことに躊躇はないが、戦いの外での殺しは正しくないと考えており、危機のさなかでは高潔な道徳が足枷になるとみている。弟子は限界まで追い込む。才能を持ちながらそれを浪費する者を見ると深く落胆し、逆に能力を磨き上げることには喜びを見いだす。石ハンターとして宝石や希少な原石の収集を好み、集めた石に名前を付ける習慣がある。金銭欲も強い。若く見目のよい男性の姿には露骨に心を躍らせ、裸のヒソカ=モロを見て興奮した場面もある。余暇には男性向けのファッション誌を読む。
念を学び始めたのは17歳のときである。心源流の拳法を修め、その技をウイングに伝えた。本人によれば、昔から筋金入りの嘘つきだという(単行本第16巻・第159話)。
作中での動向:グリードアイランド編
ビスケット=クルーガーは、バッテラのグリードアイランド攻略のため、ツェズゲラが実施した選抜試験に参加した。最初に列を作った組にすぐさま加わり、ほかの20人とともに試験を通過している。その後バッテラの邸宅へ移され、ゲーム内へ入った。アントキバに着くとニックス連合の構成員に声をかけられ、ニックス、ゲンスルー、アッサムが新規参加者にゲームの基本を説明し「爆弾魔」への警戒を促す集まりへ連れて行かれる。ニックスは新参者に連合への加入を勧めたが、ゴン=フリークスはこれを断り、キルア=ゾルディックもその判断を尊重した。
店の外でゴン=フリークスとキルア=ゾルディックに出くわした彼女は仲間に入れてほしいと頼むが、キルア=ゾルディックに冷たく断られる。腹を立てた彼女は二人の友情を取り返しのつかないほど壊してやろうと決め、か弱い少女の仮面を保ったまま後をつけた。マサドラへ向かう道中も追跡を続け、内心では二人の体力を評価している。三人は途中で山賊の一団と出会い、村を助けてほしいと頼まれた。村では、住人が皆病に倒れ、薬を買う金が要るのだと説明される。ビスケット=クルーガーは自分の金を出そうとしたが、キルア=ゾルディックに黙っているよう言われ、怒りをさらに募らせた。
山賊との一件でゴン=フリークスとキルア=ゾルディックはほとんど無一文になり、そのまま魔物の出る岩石地帯へ進んだ。ビスケット=クルーガーは離れた場所から二人を注視する。当初は感心していたものの、失敗が重なるにつれて苛立ちを募らせ、内心では自ら魔物を倒して回っていた。そしてリモコンラットに遭遇した場面でこらえきれず、凝を使えと口を出す。二人が相手を倒したところで、これからは自分が師になると告げた。キルア=ゾルディックを二度吹き飛ばしてから名乗り、自分がウイングの師であると答えて反論を封じている。さらに、二人が倒せなかった魔物のカードを見せ、危険を自覚させた。
その最中、ビノールトの殺気を感じ取った彼女は二人に警告し、何も気づいていないふりをさせたうえで、自分だけが集団を離れる形を装って殺人者を誘い出した。鋏で髪を切らせたところでビノールトは彼女の実力に気づき、正式に果たし合いを申し込むが、ビスケット=クルーガーはこれを難なく退ける。もしゴン=フリークスとキルア=ゾルディックが相手をしていれば殺されていただろうと彼女は述べた。ゴン=フリークスから島へ来た目的を問われると、稀少な宝石ブループラネットのためだと明かす。逆に問い返した際に相手がジン=フリークスの息子だと知り、アイザック=ネテロによれば父親は世界有数の念能力者だと伝えている。
二人に師事を請われた彼女は、ビノールトが持っていたカードをすべて取り上げ、岩場の闘技場で二週間、命がけで二人の攻撃をかわし続けるよう命じた。弟子たちにビノールトの正体を明かしたうえで修行を始めている。ゴン=フリークスの必殺技と、持久戦に持ち込まない判断は高く評価した。二人の動きが上達していくのを早々に見て取り、その素質を楽しんでいる。三人が休む間も見張りを続け、ビノールトの絶は不完全だから眠っている二人を殺すことはできないと考えていた。十日後、二人が殺人者を打ち負かすと、島を出て自首したいという本人の申し出を受け入れ、それがゴン=フリークスの狙いだったことを理解した。
作中での動向:修行の完成と攻略
次に彼女が課したのは、三時間でマサドラまで走る課題だった。カードを何枚か買った後は、帰りを二時間半で走らせている。続いて手持ちのカードを実体化させ、行く手を阻む岩を掘り抜きながらマサドラへ戻るよう指示した。夜は座ったまま眠らせ、頭上の岩が落ちてこないよう縄を握らせ続け、その岩を毎晩より大きなものに取り替えている。こうして二人は周を会得し、再びマサドラへたどり着いて、第一段階の修行を終えた。
三人はマサドラで呪文カードを60枚購入し、その中に稀少な「堅牢」を見つけたが、使い道が分からず色めき立った。キルア=ゾルディックがクラピカに電話をかけ、ゲーム内にいる人物が本物のクロロ=ルシルフルではないと結論づけた後、ビスケット=クルーガーはゴン=フリークスに、自分の得意技をキルア=ゾルディックへ見せるよう促している。指定ポケットのカードが50枚を超えたところで、三人はゲームのクリアを狙うゲンスルーを止めるための連合に加わらないかとカヅスールに誘われた。
レイザーの海賊たちを相手にした試合の情報を集めた後、三人はゴレイヌ、ヒソカ=モロ、ツェズゲラの一行を加えて陣容を強化し、レイザーと14人の悪魔に挑む。三連勝を収めると、レイザーは8対8のドッジボールを持ちかけた。ビスケット=クルーガーは一切傷を負わなかったものの、衣服に球が当たったため脱落している。最終的にゴレイヌがツェズゲラのカードを三人に譲り、指定ポケットのカードを99枚そろえてゲームのクリアに至った。
作中での動向:キメラ=アント編と会長選挙
キメラ=アント編では、カイト救出のためNGLへ戻ろうとするゴン=フリークスとキルア=ゾルディックが、ナックル=バインとシュート=マクマホンとの戦いに備えられるよう、パーム=シベリアから協力を求められて合流した。昼食後に戻った二人を待ち構え、一週間でNGLへ戻るという無茶な決意をゴン=フリークスが口にすると、これを厳しく叱責している。そして練を三時間維持できるようになるまでは何も教えないと言い渡すが、二人は一時間ももたなかった。夜更けまで何度もやり直させ、そのうえでマッサージを施させ、三十分で二人を回復させている。
パーム=シベリアからは、見込みがないと分かった時点で早めに諦めるように、そうすれば自分の怒りもそこまで激しくならないと忠告された。ビスケット=クルーガーは、それはゴン=フリークスとキルア=ゾルディックに直接言うべきだと返し、続く一か月のあいだアイザック=ネテロ、モラウ=マッカーナーシ、ノヴが何をするのかを尋ねている。十日後、二人が三時間続けて練を保てるようになると、疲れきったままの状態で即座にナックル=バインとシュート=マクマホンに挑ませ、手持ちの札だけは持って行くなと言い添えた。その日からは、三時間練を維持した直後に相手へ挑むという形を続けると宣言している。
さらに十日が経つと、二人が雑談しながら一時間は練を保てるようになったのを確認する。それでもナックル=バインに全力を出させるにはあと十日が必要で、その時点でも修行はまだ折り返しにすぎないと彼女は見ていた。弟子たちが自分に足りないものを自覚できればそれで満足だと考える一方、パーム=シベリアの不穏な気配を感じ取り、逃げ道の確保を考え始める。パーム=シベリアは二人の上達の速さを正確に把握していたが、ゴン=フリークスがその不安を和らげてみせ、キルア=ゾルディックとともに舌を巻いた。それでも彼女はパーム=シベリアの怒りから逃れることを気にし続けている。
期限の前日、彼女はナックル=バインに挑む前の休息を二人に許した。戻ってきた際には、意識を失ったゴン=フリークスにマッサージを施させ、キルア=ゾルディックには自分と組手をするよう命じる。その手合わせを通じて、格上の相手に対したときに働く劣等感を本人に自覚させ、それは戦い方を教えた者の歪んだ愛情によって刷り込まれた癖だと指摘した。そのうえで、翌日シュート=マクマホンに勝てなければゴン=フリークスのそばを離れると約束させ、いずれ友人を見殺しにしかねないと警告している。その晩、二人を送り出した彼女は、結果を見届けられないまま、なおパーム=シベリアを警戒して街を離れた。
第13期ハンター会長選挙では、故ネテロ会長の遺志に従って自らも投票し、1回目の投票で16位に入った。2回目は13位、3回目は12位となる。ネフェルピトーとの戦いの後に危篤となったゴン=フリークスを見舞ったハンターたちの中にも彼女の姿があった。4回目では10位、5回目では9位につけたが、第6回に進めるのは上位8名だけだったため候補者から外れている。ゴン=フリークスの近くにいた彼女は、アルカ=ゾルディックがゴン=フリークスを癒やした後、病院の外で異様に強大な気配を感じ取った一人でもある。その後、ハンターたちが新会長を選ぶ投票を行う会場へレオリオ=パラディナイトに会いに行くゴン=フリークスに付き添った。
作中での動向:王位継承編
王位継承編では、カキン帝国の王子の一部を監視するために信頼できるハンターを護衛として送り込もうとしていたクラピカに、キルア=ゾルディックが彼女を推薦した。当初クラピカに激怒したものの、褒めそやされるとたちまち機嫌を直し、言われたことは何でもすると請け合っている。最終的に彼女を選んだのはマラヤーム=ホイコーロ王子だった。出航の日、ハンターたち以外は王子本人さえ気づかないうちに、マラヤーム=ホイコーロの守護霊獣が部屋を出てワブル=ホイコーロ王子の部屋へ入り込む。クラピカが緊急連絡の回線を使った際、彼女は念獣を目撃したこと、それらがすでに立ち去ったこと、寄生型の念によるものだと考えていることを報告した。
その日の夕食時には、ハンゾーとともに、マラヤーム=ホイコーロの念獣が大きくなっていること、そして自分たちに見えていると念獣の側も承知していることに気づく。モモゼ=ホイコーロ王子が護衛の一人の手にかかって急死すると、彼女は、助けられなかったと自分を責めて激高するハンゾーをなだめようとした。問いかければかえって怒らせるかもしれないと承知しながら、落ち着かせるために計画を尋ねている。ハンゾーは、犯人は分身を使ったのであり、モモゼ=ホイコーロの死亡時に休憩していた二人の護衛のどちらかだと見ていた。ビスケット=クルーガーはその見立てに同意し、ハンゾーは必ず犯人に報いを受けさせると誓う。彼女は心配して休むよう勧めた。
その後、二人はマラヤーム=ホイコーロの念獣の変化に気づき、彼女はそれを王子自身の内面の動揺の表れだと解釈した。当番が明けると、ハンゾーは能力を使ってモモゼ=ホイコーロ殺害の犯人を探すあいだ自分の体を見張るよう頼み、彼女は自然素材の美容パックと引き換えにこれを引き受ける。ところが戻ってきたハンゾーは、彼女と自分の体が消えていることに気づいた。彼女自身は知らないまま、1013号室にいる全員が念能力によって外界から切り離されていたのである。次の当番の時刻になると、一晩中起きていることを強いられた苛立ちを見せながらハンゾーを起こし、マラヤーム=ホイコーロの部屋の状況を聞かされた。
ビスケット=クルーガーは、ウェルゲーに念の存在を納得させるため、部屋にいる全員へ念を教えることを決めた。相手が信じないのを見て取ると、彼の前で本来の姿に戻り、クラピカのように二週間で念を習得させると約束はできないが、素質さえあれば一か月で体力を二倍から三倍にできると言い切る。ウェルゲーは自分にも教えるよう頼み、ベレレインテが部屋を出ることを認めた。ベレレインテがすぐには消えなかったため、彼女は結界には三つの種類があり、敷居をまたぐことが発動条件になっている可能性を指摘する。実際にベレレインテが部屋へ戻れなくなったことから、その能力はマラヤーム=ホイコーロの念獣のものだと推論した。
日曜日には、マラヤーム=ホイコーロが上陸まで隠し部屋の安全な場所から出ずに済むのが理想だという点で、ウェルゲーと意見を合わせた。そのうえで、残った使用人の負担を減らし、体裁を保つためにも、隠し部屋に配置されたハンターを「本物」の部屋へ移すことを提案する。部屋が外界から切り離されている以上、そこにハンターがいる意味は薄いと述べ、ウェルゲーの反論を先回りして封じた。さらに、女性が付き添う必要があると考えていること、王子に懐かれていることを理由に、自分はマラヤーム=ホイコーロのもとに残ると付け加えている。その後は王子を肩車して遊んでやった。11日目には、使用人二人とともに、1013号室で積み木遊びをするマラヤーム=ホイコーロに付き添っている。
能力・特徴・関係
プロのハンターであることから、ビスケット=クルーガーは潤沢な資金と機密情報に触れることができる。ブループラネットがグリードアイランドでしか手に入らないと知っていたことが、その一例にあたる。ハンター協会内での評価も高く、会長選挙で第5回投票まで残った事実がそれを裏づける。関係の面では、ウイングの師であり、グリードアイランドとキメラ=アント編を通じてゴン=フリークスとキルア=ゾルディックを鍛え、王位継承編ではクラピカの依頼を受けて動いた。
戦闘者としての力量は極めて高い。凄惨な鍛錬によって肉体の限界まで到達しており、レイザーとのドッジボールでは、若い姿のまま参加しながら、参加者の中で唯一まったくの無傷で終えている。攻撃に特化した特殊能力はいまだ披露していない。豊富な念の知識、鍛え上げた肉体、武術の技量だけで、これまでの相手をすべて退けてきたからである。全力の程は分かっていないが、ビノールトやバラといった厄介な相手を単独で下しており、いずれも彼女の真の力に恐怖した。その力は、若い姿のときにはかなり巧みに覆い隠されている。キルア=ゾルディックでさえ彼女の腕前を恐れている。
戦闘技術のほかに、明晰な頭脳と年齢に見合う経験を備える。筋金入りの嘘つきである彼女は、ヒソカ=モロほどの相手でさえ何かを隠していることを察知できる感覚を身につけており、幼い外見を使って相手に自分を侮らせる。精神力と自信は揺るがず、戦闘中に迷いを見せない。鍛錬の結果、常人より脳の広い部分を覚醒させたまま休むことができ、眠っていても警戒を解かない。ビノールトの殺気を感じ取り、その位置を即座に割り出した場面では、ゴン=フリークスもキルア=ゾルディックも相手の存在にまったく気づいていなかった。相手の力量を測る目も特に鋭い。念に関する知識と分析力にも優れ、グリードアイランドの魔物の弱点を難なく見抜き、経験に裏打ちされた戦術眼から立てる予測はしばしば的中する。
腕力は人間の域を大きく超える。元の姿に戻らないまま、念すら使わずに掌打を背へ一撃入れただけで、ビノールトに大量の吐血をさせて短時間気絶させ、そうでなければ死んでいたと本人は述べた。レイザーの念獣は威力の高い投球さえ弾き返せるにもかかわらず、彼女の投げた球は捕らえられなかった。本来の姿に戻ると腕力はさらに大きく跳ね上がる。若い体では六発当てても倒しきれなかったバラを、その状態では一撃で顔面ごと打ち砕いて昏倒させている。
速度と反応も並外れている。実力を隠した若い姿のままでも、正体を知らないうちからゴン=フリークスとキルア=ゾルディックは、森を走る自分たちの速度に彼女がついてくることに感心していた。後には、警戒していて反射神経にも優れるキルア=ゾルディックが、動きをまったく捉えられないまま平手打ちを受けている。70キロメートルを150分、平均時速28キロメートルで難なく走破でき、三時間で走った同じ距離を、短い休憩の後に二時間半で走り直しても汗一つかかなかった。ゴン=フリークスとキルア=ゾルディックは二度目で息が上がっている。矢を空中で掴めるほど素早いバラを相手にしても、若い姿のまま反応される前に背後を取り、わざと打たせるまで反撃を許さなかった。元の姿に戻ってからは、相手が動きを認識する前に距離を詰めて殴り倒している。
体術・念の練度と弟子への修行法
これまでの相手が力量で及ばなかったため、体術の熟練度がどの程度かははっきりしない。それでもビノールトとの立ち合いでは、攻撃をかわしながら相手を投げ返し、致命的な一撃を入れやすい体勢に持ち込んでいる。バラを相手にしたときは、顎や首といった急所を正確に打ち、死角を的確に突いてみせた。武術家としての力量が現れたもう一つの例が、キルア=ゾルディックとの組手である。回避に徹していた相手に複数の打撲を負わせながら、自分はまったくの無傷で終えている。彼女はウイングに心源流の拳法を教えた張本人であり、この流派の達人でもある。またレイザーが、キルア=ゾルディックを狙うと見せかけて自分の方へ曲げてきた球も、体そのものは完全にかわしており、ヒソカ=モロと違って被弾を免れたが、スカートの裾が当たったため脱落した。
硬では纏、練、絶、凝、発を組み合わせることができる。堅を使っていたゴン=フリークスを、手を極めてゆっくり動かしただけで数メートル吹き飛ばし、鼻血を出させるほどの威力があった。彼女は、もし技を緩めるのではなく解いていたら顔面を打ち砕いていたと言い添えている。硬は三十分間、苦もなく維持できる。爆弾魔たちから身を隠す際には絶を見せ、別の場面では堅、周、隠も使った。流は、殴りかかる際の気の流れの変化をゴン=フリークスが見分けられないほどの速さで行える。見積もりの精度も高く、二十代の後半にはすでに、誤差1パーセント未満でオーラを配分できていた。
念の理解も広い。特質系を除く五つの系統すべてについて弟子向けの修練法を作り上げており、しかも自ら手本を示す習慣があることから、いずれの系統でも高い水準に達していると考えられる。理論面の知識は自分が持たない能力にも及び、瞬間移動や寄生型の能力についても具体的に語れる。基本技術と応用技術はすべて修めており、作中で披露していないのは円だけである。
指導者としての手腕も高い。ゴン=フリークスとキルア=ゾルディックは、短い期間のうちに体力と念能力を大きく伸ばした。相手の資質、環境、手持ちの資源に応じて修行法を組み立てることができ、ヒソカ=モロもこの点を認めている。素質のある初心者であれば、一か月で体力を二倍から三倍にできると本人は述べた。ビスケット=クルーガーは、弟子の念能力を伸ばすための修練法を自ら考案している。作中で示されたのは強化系、変化系、放出系の一部だけだが、操作系と具現化系についても練習法を用意していた。強化系の第1段階にあたる岩砕きでは、周と硬で岩の耐久力を高め、決められた時間のうちに、あらかじめ定めた多数の岩をできるだけ多く砕く。通常は一日に一巡し、失敗せずに目標の数へ届くまで繰り返す。
変化系の第1段階は念の数字と呼ばれる。走りながら、人差し指の上でオーラを0から9までの形に変えていく課題である。決められた時間内に一巡し、前方への注意を保ったまま所要時間を縮めることを目指して繰り返す。放出系の第1段階は名称が伝わっていない。まず距離と目標となる物を定め、小さなオーラの球を放出して形を保ち、持続時間を伸ばす練習から入る。放出と維持の感覚を掴んだら、その球を目標へ向けて飛ばし、届くまで繰り返す。纏と練を積んだ者ほど習得は容易で、十分に鍛えれば二日から三日にわたってオーラの球を保てるようになる。第5段階の浮き手では、片腕での逆立ちの姿勢から、体を地面から浮かせるだけの強さのオーラを放出し、あらかじめ決めた高さに達するまで反復する。